「ライザーがあんな事を言うとはな…」
私はあいつとの付き合いが長い…だから、あいつがどう言う奴なのか知ってる気になっていた…だが、それは思い込みだったのか……いや…
「あれは…寧ろ成長、と言うのか…」
少なくとも出会った頃のあいつなら…あんな事は絶対言わないだろうな…いつの間にか、あいつも変わっていたんだな…
「ふぅ…母親、か…」
状況はどうあれ、こうして私は教えられてしまった訳だ…ならば、"ソレ"に一度思いを馳せてみるのも悪くは無いだろう……ただ…
「分からん…」
実際私はオフィーリアに意見したし、テレーズのスタンスを聞いて…マリアの未来を憂いたりもした…だがこうして考えてみると、私には"親"と言うのが一体どう言うものなのか…それが分からない…
「子を産んだ女…そしてそれに連れそう男…子を育てるもの…」
改めて考えると…定義として"親"と言う言葉の意味は分かるし、一応の説明も出来る…だが、それだけだ…
「何故だ…?」
私は今の身体になってこの世界に来る前……少なくとも人間としての私を産み、育てた者が確かに居る筈だ…あるいは、私自身も"親"だったのかも知れない…なのに、今の私には"親"と言うものがただの言葉としてしか分からない…
「ッ……久々、だな…」
頭にズキッと強い痛みが走り、思考が一瞬途切れる…ここ何年かはほとんど考えない様にしていた為忘れていたが、私は…今の身体になる前の事を思い出そうとするとこうして頭痛を感じて、それ以上何かを考える事が出来無くなる事が有る…
「…ハァ…今回はやめる訳には行かないか…マリアのこれからの事を考えるなら、今の私のままではどうにもならないんだ…どうしても、私は"親"がどう言う存在なのかを考えないとならない……ッ!…くそ…何故だ、何故思い出せない…!?」
だが、いくら頑張ってもそこから先を考える事が出来無い…ッ!駄目だ、考えるのをやめても頭痛が消えなくなった…
「チッ…気持ちも悪くなって来た…少し休むしか無いか…」
考え事をしたせいで、頭痛がして体調も崩したとか…一々グレイフィアに言うのも馬鹿らしい…と言うか、何で私が赤の他人の子供の将来の事で悩まないとならんのか……いや…
「他人の子、じゃ…無かったな…」
テレーズの子なら私にとって"他人の子"ではないな…あいつは私にとってある意味で、友人すらも超えた唯一無二…それに、立場上私はあいつの妹だ…つまり…私はマリアの叔母で、彼女は私にとって姪に当たるわけだ…他人の子などでは無い…全く、さっきライザーの奴にも教えられたばかりだと言うのにな…
「大体、私だけで考える話でもないのか…」
決して幸せでは無い身の上だったとは言え、テレサやオフィーリアはこんな状態の私よりはずっと…親がどんな存在か分かっている筈だ…あの二人が親の自覚をきちんと持って、これから先マリアと接して行こうとするなら…私がこれ以上悩む必要は無いし、それに…本当にマリアを引き取ると言うなら…当然黒歌とセラフォルーとも色々話し合わないとならん…
「ハァ…寝るか…」
頭痛がまるで止まらんし、吐き気もする…どっちみち、今私が一人で悩んでも仕方の無い事だと分かったし…それが今、私の出来る最良だ……後の事は、"未来の私"にでも丸投げすれば良い…