「来てみたのは良いが…寝てるとはな…」
「……」
「…寝てるんだよな?今、僅かに反応が有った様な…」
「……」
「気の所為か…」
「……」
「ふぅ…全く、こっちはどうにか借りを返せないかと思ってるんだがな…ま、お前は何も要らないと言いそうだが…」
「……」
「まぁ、良い…また今度、改めて話をしよう…」
「あら?もう良いんですか?」
「ああ、あいつは私にも目を掛けてくれてはいるが…元々あまり仲が良いとは言えんしな…長居はせんよ。」
「…彼女はそんな事気にしないと思いますが…」
「…前から思っていたが、私に敬語は要らん…正直、やりにくそうに見えるぞ?」
「…そう?じゃあ普通に話すわね…イレーネ。」
「お前、この屋敷のメイド長を務めてるんだったか…ふむ、私にはとても出来無い仕事だな…」
「う~ん…案外合ってるんじゃないかと思うけど?」
「勘弁してくれ……と、あまり仕事も邪魔出来んな…私はもう行く。」
「…彼女に何か伝える事は有る?」
「…いや、特に無い。今日だって気になって顔を見に来たのが主だ、大して用は無かった。…まぁ、何か有ったら目が覚めてから自分で話す。」
「そう…」
「じゃあな。」
「あ…ガラテア姉さん、テレーズさんとはお話し出来ました?」
「ああ…すまんな、待たせて…」
「いえ、気にしないでください…それじゃ、そろそろ行きましょうか?」
「ああ、そうだな。」
「遠くから遥々やって来たのにごめんなさいね…生憎、彼女は昨日から眠ったままなのよ…」
「…成程…いや、お前が謝罪する事は無いさ…あいつの状況を考えればそう言う可能性は有ったのに、先に連絡して確認しなかったこっちが悪いからな。」
「はい、気にしないでください。」
「…そう言ってくれると助かるわ。」
「…ふむ、取り敢えず顔を見ていくだけ見て行っても良いか?」
「ええ、大丈夫よ。」
「本当に不思議ですよね、彼女とテレーズさんは顔は同じなのに…以前この目が見える様になってからお二人に会った時も思いましたけど…何故か、お二人から感じる印象が全然違うんですよね…」
「…私はせいぜい表情とかで多少印象が違うと感じる程度なんだが、そんなに大きく違って見えるのか?」
「…基本、お二人は笑顔一つとっても微妙に違いますね…と言うか、テレサさん自身は元々あまり笑わないですけど。」
「…ここに来る前にテレーズに会ったばかりだが、やはり良く分からん…」
「表情以外に…例えば声も少し違いますよ…まぁ、コレは本当に微妙な違いですし…私が以前まで目が見えなかった所為も有るとは思いますけど。」
「…それ以前に今は喋ってないがな…」
「……まさか、このままテレサさんが目覚めないなんて事…無いですよね…?」
「それは私も断言しかねるな…まぁ、結局テレサの意思一つじゃないか?」
「…テレサさんが帰りたくないと感じたなら、帰って来ないと?」
「話聞く限り…確実に普通の睡眠じゃないしな…そもそも、私たち半人半妖が一日以上寝る様な深い眠りに陥ると言うのは通常無い…本人も無意識かも知れんが、多分…この状況を望んだのはテレサ自身だと思う…」
「それは…単に精神的か、肉体的にかは別にして…とにかく休みたいと思ったから深い眠りに落ちた…あるいは、もう現実を否定したいと思ったから眠る事を選んだ……その、どちらかと言う事ですか…?」
「ああ…ちなみに、テレサ自身は以前…実際に現実を否定して深い眠りに落ちかけた事が有るそうだ…幸い、内側で眠っていたテレーズのお陰で落ちきらずに済んだ様だが…」
「でも…今、テレーズさんはこっちに居ますよね…?」
「…テレサが現実を否定していたとしても…引き戻す存在はもう居ない事になるな…」
「本当に…もう帰って来ないんでしょうか「いや、大丈夫じゃないか?」…え?」
「そんな事を許さない連中が、テレサの周りには居るからな…」
「そう、ですよね「それに、テレサ自身があいつらを残して居なくなるとは思えん」……」
「どうした?」
「…いえ、チラッとですが…以前、テレサさんが全部捨てて家出しようとした事が有ると聞いた事が有るので…」
「あー…まぁ、何とかなるだろ…コイツは…その家出すら、もう許されんだろうしな…」
「……依存されてません?」
「…まぁ、テレサとその家族の関係性については…私たちが口を出す話じゃないな…」
「本当にあのままで良いんでしょうか…」
「下手に踏み込むと、最悪戻れなくなりそうだが…」
「……やめておきましょうか。」
「お前がリスク管理出来る様になって、本当に何よりだ…」
「…受け身ばかりだと色々酷い目に遭うと、いい加減学びましたから…」
「分かってるなら良い…さて、そろそろ行くか?」
「…もう少しテレサさんの様子を見たいんですけど…」
「気持ちは分かるが、今回は仕事のついでだからな…こっちの教会にはもう日本に着いたと連絡してしまったんだろう?そろそろ出発しないと向こうに着くのが遅くなる…」
「…どっちみち、予定は明日なんですけどね…」
「今泊まってるホテルとの兼ね合いも有る…何より、そっちはキャンセルするにしてもこのままここに泊まるとなると…サーゼクスとグレイフィアに迷惑も掛かるからな…」
「…ふぅ…そう、ですよね…分かりました。」
「…良し、そろそろ行くか?」
「はい…と言うか、姉さんにも教会の仕事…普段からもっと真面目にして欲しいんですけど…今日だって、テレサさんの事が無かったら来るつもり無かったでしょう?」
「…私はあの教会の維持の為に外で働く方が性に合ってる。」
「…まぁ、姉さんが働いてくれてるからこうやって日本に限らずあちこちの国で交流出来る様になった訳ですけど……あ、そう言えば姉さんへの相談事…また色々溜まってますよ?」
「どうせまたろくでも無い話じゃないのか?…ふぅ…分かったよ、なら私が休みの日にでもそいつらを回してくれ。」
「それだと、また姉さんが休めないじゃないですか…」
「その辺は別に良いが、大抵は私じゃなくても別にお前に話しても問題無い相談事や…そもそもあまりにもくだらない内容の話を持って来る連中ばかりなのも問題だがな……いや、ここでする話じゃないな…どっちにしても、一回出ないか?」
「…そう、ですね…テレサさんに迷惑ですしね…じゃあ、一旦ホテルに戻りましょうか。」
「ああ。」