ここはいったい、どこだろう?
ここはどこだろうか。とりあえず草原だと言う見たままのことはわかるんだが、正確な場所はとんとわからない。
周囲を見渡してみるが、人影も建物もまるで見えない。見えるのは一面の草原と、その果てに薄く見える山岳くらいだ。
…………さて、現状把握は出来る限り(じゃないけど)やったし、寝るか。
情報収集をキラーレイビース500体に任せて、俺は柔らかな草の上に寝転がる。
時間があるのかないのかもわからないような状態でよく寝れるなと思うかもしれないが、俺の場合はほとんど起きていることに意味がないから仕方無い。
とりあえず眠れるようになっている上、空は晴れてて暖かくて、絶好の昼寝日和だと言うところには感謝してもいいかもしれないな。
……やっぱり、こんないい天気なんだから昼寝をするべきだよな。昼寝はいいぞ? 体にもいいし、健康にもいいし、何より心を豊かにしてくれる。
とりあえず顔に帽子を置いて日差しを遮り、それからゆっくりと微睡みの中に沈んでいく。
草の香りを纏った風を思いきり吸い込みながら、俺はとりあえずこの場所で眠りに落ちていくのだった。
……なんだか身体が揺られているような気がして目を開いてみると、目の前には見知らぬ誰かの後頭部があった。どうやら俺は誰かに背負われているらしい。
誰かは知らないが、恐らく性別は女。髪は赤で、肌は浅黒い。背は……160代か、高くて170前半。細身だが筋肉はしっかり……と言うか、かなりがっちり付いているようだ。
近くにちらちらと槍だか戦斧だかわからない武器があるが、どうやら俺を運んでいるこの娘さんはこの武器を使うらしい。
「起きた……?」
「……ん、起きてる。でもすぐ寝る」
「……そう。おやすみ」
普通におやすみと言われたので、こっちも普通に寝ることにした。
……まあ、悪い気配はしないし、嫌な予感もあんまりしないし……ただ、どこに向かってるのかはわからないってのが若干怖いけど…………大丈夫だろ。多分。
……ってか、本当に俺はどうしてこうして運ばれてんだろうな?
side 呂布
……賊が出て、詠に『倒してきて』ってお願いされた。
ねねも着いてきたいって言ったけど……ねねにはねねの仕事があるからダメって……。
それで、賊をたくさん倒した帰り道で……子供を拾った。……まるで、おひさまみたいにぽかぽかする、男の子。
……どうしてこんなところで寝ていたのかはわからない。わからないけど…………なんだかほっとけなかったから、連れて帰る事にした。
途中で一回起きたけど……それからは月の所に行くまで一度も目を覚まさなかった。
少し心配……だけど、なんとなく大丈夫な気がする。どうしてかはわからないけど……。
……この子が起きたら、まず名前を聞こう。
……それからこの子の名前も聞いて、ねねと一緒にご飯を食べに行こう。
そして……できたら一回戦ってみたい。
……きっとこの子は、恋より強いから。
この子とは戦ってないし、この子が戦ってる所を見たわけでもないけど……なんとなく、そう思った。
それに……この子の周りの銀色の犬も、よくわからないけどそれなりに強い……と思う。
……でも、この子は恋と戦ってくれる? その前に、ちゃんと起きる?
どうしてかそんな不安に包まれたけれど……背中の感触がその不安を拭ってくれた。
ふっ、と笑ってその子を背負い直し、帰り道を急ぐ。……そんなに離れてないから、あと二刻もしないうちに到着すると思う。
急いで帰って、この子をちゃんとした布団で寝かせてあげないと。
side 織斑 一夏
……よう、俺だ。起きたらなんでか大量の動物に囲まれてるんだが、一体なんでか知らないか?
「……すぅ…………」
……ついでに、寝る前に俺を背負っていたらしい娘さんが俺の前で寝息を立てているんだが……気にしないようにした方がいいだろうな。
まあ、そんな感じで拉致されたと言うか保護されたような状態になった俺は、早速一宿の恩を返そうと働くことにした。
俺にとって一飯の恩はそんなに大きくないが、一宿の恩はかなり大きいからな。食事は暫くしないでも問題ないと言うか、全くしないでも大丈夫だし。
そんなわけで、とりあえずこの家を掃除して料理を作る。当然のことだが犬猫用にネギやら香辛料やらの入っていない簡単なものも作って、後は人間用にそれなりの量を…………?
……何でだ? それなりの量じゃ全く足りないような気がしてならないんだが……。
……とりあえず、もっと多目に作っておくか。材料はマテリアルマーチでいくらでも出せるわけだし。
ほら、人参とか大根の先端で目を突かれたら痛いし、トマトも目に入ったりしたら酸味が効いて痛いし、若干無理がある気がするかもしれないが、実際できちゃうから武器なんだよ。多分。
しぱぱぱっと野菜を切って中華鍋に放り込み、マテリアルマーチで出したガスコンロで炒める。換気扇がないから窓を開けて、そこに扇風機を設置。足踏み式で羽を回すためとてもエコだ。
……電気がないからってのが一番大きな理由だけど。
くぅ~~…………、と、なんだか切なくなるような音が後ろから聞こえた。振り向いてみると、さっきまで寝ていたはずのこの家の宿主(多分)が目を醒ましていた。
……俺の手元……と言うか料理をキラキラした目で見ている所からかなり空腹の様子だし、とりあえず先におつまみでも出して凌いでてもらおう。
簡単にできて、ちみちみと食べられるやつ……といえば、やっぱりポテトチップスかね? 時間がないから完成品を出して、しばらく待っていてもらおう。
「はい、どうぞ」
「……いいの?」
「勿論。でも、暫くそれで我慢してて。すぐ作るから」
「……わかった」
そう言って娘さんは素直にポテトチップスを食べ始めた。
素直でよかった……と思いつつ、俺は料理に戻るのだった。