旗旗旗、旗がたくさん。死亡フラグとか友情フラグとかそういう意味じゃなく、文字通り字義通りに旗がたくさん立っている。
まあ、全部牙門旗って種類の、馬鹿みたいにでかくて豪華な旗なんだけど。勿論恋ちゃんの上にも立っている。
適当に見回してみると、『劉』やら『曹』やら『袁』やら『公孫』やら『夏候』やら『呂』やら『陳』やら『関』やら『張』やら『孫』やら……まあ、他にもたくさんあるんだがもう面倒になったので無視することにする。
それに、ここにどんな奴が居ようと俺の仕事は恋ちゃんの食事係。やることは変わりゃしない。
いつもの通りに料理を作り、食材を出して下拵えをして暇になったら眠る。
恋ちゃんも出力任せの行動で無駄に腹を減らすようなことは自重してくれているし、眠る時間があって本当によかった。
ちなみに、俺にとっての睡眠は恋ちゃんにとっての食事であると同時に睡眠であると言ったら恋ちゃんは自重してくれるようになった。それまでは食べたら動いてすぐにまた来るようになってたし。
……そう言えば、さっきから多種多様な旗を見ていたら鰰(はたはた)を食べたくなった。蒸し魚にして食べようか。食事は久しぶりだし、食おうとすればいくらでも食えるのがこの体のいいところだし。
食わないでもなんにも問題はないが、食ったら食ったで何となく満足する。味はわかるしな。
「そんなわけで、鰰の蒸し物ですよっと」
「……美味しそう……」
どうやら鰰の蒸し魚は恋ちゃんにロックオンされたらしい。とりあえずもう一匹作っておくが、どうやらそっちもすぐに無くなってしまいそうだ。
まあ、俺はどうしても食べたいって訳じゃないし、構いやしないけどな。恋ちゃんはかなりの速度で食べるが、しっかり綺麗に食べきってくれるから気分はいいし。
何より、俺には必要ではないが恋ちゃんにはそれが必要だと言う点が重要だ。
……さて、と。おやつはこのくらいにして、そろそろ夕飯の支度をするか。カレー粉を使った揚げ物とかどうだろうか? 前に作った時にはサラシさんとちっちゃい娘さんには好評だったんだが。
ついでに、なんと言うか儚げな中に一本芯が通っていそうな娘さんも気に入ったらしい。美味しいですと笑顔を向けてくれたし。
それじゃあ今日はカレー系統で攻めてみようか。見た目はこの国の人間からすれば最悪だろうが、恋ちゃんはそんなことは一切気にしないからな。
市販のカレーでも悪くはないんだが、ここはやっぱり自分で調合したカレー粉を使うべきだろう。それなりに頑張ったからカレーの調合は得意とまでは言わないにしろ苦手じゃないし。
そう言うわけで、俺はてきぱきと食事の準備を始めたのだった。
……こんなところで突然食用中枢を直撃するような匂いがしたらどうなるか、なんて考えることもなく。
side 呂布
……もきゅもきゅ……はむはむ……。
side 織斑 一夏
……今の視点変更にいったい何の意味があったのかは適当にそこら辺にでも放り出しておくとして、こんなところでカレー主体の料理を作って連合をいい匂いで包んでしまった結果、どうやら色々な所から注目を集めてしまったようだ。
様々なところから送り込まれてくる目や耳をさっさと完全に無視しながらも作り方の肝は見せず、嫌がらせのようにいい匂いを漂わせてやる。
どれだけいい匂いをさせていても再現すら不可能と言う状況に絶望して自殺してしまうがいい。
……まあ、その程度で自殺するような奴はここにはいないと思うけどな。
何と言っても三國志の平行世界のような場所だ。そんな神経の細い奴がこんな所にいたらすぐさま呑まれて死んでるだろう。どうでもいいけど。
……武将のかなりの割合が女になっているような平行世界とか、最早平行世界じゃなくてただの異世界と言うような気もするが……どうでもいいな。
男だろうが女だろうが会った相手は会った相手。中身が違えばそれはただの同姓同名の別人として扱える。
…………もしもちー姉さんが男だったら…………それはそれで可愛がられそうな気がするな。大して今と変わらんか。
さて、かなりどうでもいい考え事は放り出して、嫌がらせをしながらカレー作るか。
カレーうどん用とカレーライス用とルーは変えなくちゃいけないし、カレーライス用のルーは種類をいくつも作りたい。
とりあえずチキンカレーとグリーンカレーとレッドカレーと……作れるだけ作っておこう。時間はたっぷりあるんだから。
甘口? 無くはないけど少ないよ。恋ちゃんは辛口でも中辛でも普通に食べられる人だから。
そんな理由で甘口よりも激辛の方がまだ多い。美味しい辛口と美味しい甘口だったら俺は辛口の方が作りやすいから、楽でいいんだけどな。
「邪魔するわ」
「邪魔するなら帰れ」
「そんじゃさいなら~」
サラシさんはそう言ってさっさと帰っていった。
「……って帰るかい!」
そして二秒後にまた来た。いったい何の用だろうな?
あと、ノリツッコミができる奴に悪い奴はあんまりいない。シャルしかり、マゾカしかり。だからきっとサラシさんも悪い人じゃないんだろう。
「……で、冗談はほどほどにしとくとしてどうしたの?」
「こんな美味そうな匂いをさせとるもんを食ってみたくてな。うちも混ぜてな~」
言うが早いかサラシさんは恋ちゃんの隣に座って持ち込んできた酒を呑み始めた。
……まあ、別にいいけどさ。そこそこ気心知れた相手なら、一緒に食べる方が楽しいだろうし。