黄巾賊の拠点は見事に燃えていた。どこかの諸侯が火をつけたらしいが、色々勿体無いよな。物資とかは有限だってのに。
そんな火の中を、恋ちゃんは走り抜けていた。生き延びている黄巾賊をばったばったと薙ぎ倒しているのが見える。
双眼鏡とか望遠鏡が無くても、俺の目はなぜか地平線くらいまでは普通に見える。一夏だった頃の生前では、月の表面に残された足跡の線の数まで数えられる程度には目がよかったが、今では更に強化されているらしい。
……俺の周りでは物理法則は仕事を放棄している節があるが、便利だから気にしないことにする。
そんな話は置いといて、さっきから恋ちゃんのキルマークを数えていたんだが……すでに数が8000を越えた。火計に巻き込まれて死んでいる兵もかなり居るはずなのに、そんな中でも8000以上の人数を……9000行った。早いなオイ。
恋ちゃんにも兵も居るはずなんだが、どうやら恋ちゃんに着いていけていない様子。ぶっちゃけ人外臭いもんなあの動きと力。俺はモロに人外だけど。
戦場を飛び回り、敵の首をはねながら戟を振るう。
刃で切り捨てるだけでなく、石突で打ち払い、貫き、砕き、柄で防ぎ、凪ぎ払いながらの戦いによって、恋ちゃんのキルマークは次々に増えていく。
……とりあえず、帰ってきたらお腹を空かせているだろうし、料理をたくさん用意しておこう。見ているだけで他人が胸焼けを起こしそうなほどの量を作ってやろう。
勿論、この軍の全員に簡単で量もあってそれなりに美味しいものを振る舞うつもりだし、そうしておけばあまり文句は出ないだろう。
出たら? 知らん。俺はなにもしないし何かをする気も無い。
……おや、どうやら戦闘はほとんど終わり、後は残敵掃討を残すのみといったところか。それじゃあ恋ちゃんももうすぐ帰ってくるだろうな。カロリー高めの食事を用意して待っていよう。
side 呂布
……体が、軽い。
ひゅん!と軽く武器を振るだけで、敵がバラバラになる。
脚を地面に打ち付けると、恋の体はあっという間に長い距離を詰めていて、その間に居た敵は武器に凪ぎ払われている。
……恋が跳べば、簡単に城の壁を越えられた。武器を振れば、次々に敵は敵じゃなくなる。
……きっと、銀が美味しいご飯を作ってくれたから。……恋は、銀のご飯があれば……みんなのために戦える。
目の前にたくさん居る敵の前に、銀から貰った武器を叩きつける。
……それだけで地面に大きな皹が入って、そのすぐ近くに居た敵がバラバラになる。離れていた敵も、脚から血を噴き出して倒れている。
……それだけ強く叩き付けても、恋の体は痛くないし……方天画戟も痛んでいない。
……恋は、強くなってる。きっと、これからも強くなる。
……そして、恋がみんなを守る。
逃げようとしている敵に追い付いて、首を刈る。叩き潰されるように斬られた首は、砕けながら宙でくるくると回転し、そしてべしゃりと落ちて潰れた。
くぅ……と、恋のお腹が鳴いた。
……お腹空いた……。
side 織斑 一夏
こうして大陸全土を騒がせた黄巾賊との大規模な戦闘は終わりを見せ、俺を含めた董卓軍は元居た地に戻ることとなった。
できればこれからも何事もなく平和な時間が過ぎていってくれれば幸いなんだが、やっぱり早々上手くはいかないだろうな。
面倒なことに、恋ちゃんの主である董卓が出世して洛陽と言う都市を任されるようになったらしい。つまり、恋ちゃんもそれについて移動すると言うことだ。
そこでなぜか俺も一緒に移動することになり、恋ちゃんの乗る馬の上でゆらゆらと揺られているのだった。
……確か、三國志だとこの後に反董卓連合ってのが立ち上げられて洛陽まで襲ってくるんだっけ? なんとかいう関を抜けて。
数とかは覚えてないが……ここで皆殺しにできれば平和になるよな?
ついでにそんな命令を出してくれやがりました漢の王朝も一緒に滅ぼして、できれば周囲の異民族(襲ってくる奴限定)も潰せば、とりあえず大陸(正確には俺の周り)は平和になるだろう。
……わざわざそれだけのために殺しに行ったりとかはしないけどな。面倒だし。
俺が特別な行動をしていないのに向こうから来た場合にはやると思うが……できれば何もないといい。
……望み薄だが。
「……銀。もうすぐ」
「……そう」
……まあ、移動中は寝るに限るがね。馬の乗り心地はお世辞にもいいとは言えないが、ある意味馬車よりはずっとましだし。
それに、恋ちゃんの馬の扱いが上手なお陰か、他の馬よりずっといいし。
欲を言えばさっさと場所だけ教えてもらって転移したいんだが、それをやったら確実にあの腹黒陰険眼鏡が五月蝿いだろうからやらない。
まったくもう、面倒臭いったらありゃしねえ。なんか適当に面白そうなものでも転がってないのかね?
例えば皇帝の証である玉璽とか、宝貝と言えばこれと言う相当に有名な太極図とか、読んだものの願いを叶えるための方法が書かれていると言われる太平妖術の書とか。
………………ああ、そうか。無いなら作ればいいのか。
そして本物を壊してしまえば、俺が作ったものが本物として扱われるようになる訳だ。
……狙った相手の手に渡った瞬間爆破すれば、まずバレない暗殺になるよな? 多分やらないけど。
あと、相手の武器に触れてランブルデトネイターで爆破を繰り返せば、相手にとってはいじめ以外の何でもない武器キラーになるだろうと予想。基本的に攻撃効かないしな。
俺に傷をつけたいんだったら、恋ちゃんが今の十倍くらい強くなれば可能性の目が出てこなくもない程度にはなるから協力してやりな。
……もしも本当にそうされたら、シルバースキンのリバースを何千枚か重ね着させて逃げるけどな。