真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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マジで殺す、二秒前

 

ギギギギギ……という重低音を響かせながら、門が開いていく。その先には黒髪の女が堂々とした態度でこちらを睨んでいて、一瞬『しめた!』という顔をしていたが、俺一人だけがゆっくりと出てくるところを見て不思議そうな表情を浮かべた。

しかし、向こうの予想通りにならなかったからと言ってこっちがそんなことを気にしてやる必要は無いので、とりあえず平然と歩いていく。

ここで牙城旗を持っていない理由は、俺が偽者だからと言うこともあるが……何よりわざわざ持って行くのが面倒だったからだ。

 

肩に金剛爆斧と同じ形をした戦斧を担いだままてくてくと歩いていって、明らかに防御能力の低そうな服を着て青龍刀を持った女武将……確か関羽……の制空圏の一歩前で止まる。

実は俺の制空圏内に相手はとっくに入っているんだが、どうも俺は他人に実力を測られにくい体質らしく、全く気づかれた気配がない。

 

「……それで、華雄を呼んでいるようだったからわざわざ出てきてやったのだが……何の用だ? 降伏か? それとも自分の主の不甲斐なさに嫌気がさして降りに来たか?」

「貴様っ!桃香様を侮辱するか!」

 

急速に激昂した相手を鼻で笑う。正直に言ってこいつが降りに来てようが知ったことじゃないし、華雄を倒しに来てるんだろうがこっちから叩いて潰せばそれでいい。

だから俺は更に挑発を繰り返す。後に聞いてみたところ、華雄がそれを聞いたら多分今の状態でも腸が煮えくりかえると言われたが、今の俺はそんなことを知るわけもなく、一切気にせず言葉を続ける。

 

「何故私がお前の主程度の相手をわざわざ侮辱しなければならないのだ? そのような卑小で矮小で塵芥にも等しいような下等生物などを侮辱するような意味の無いようなことなどするわけが無いだろう。やれやれ、意外に常識の無い奴つだなお前は。もしくはその主人とやらは思い上がっているのか? 『自分が人間に罵倒されるような価値のある存在だ』とでも? それならば身の程を知れと伝えておいてくれ。お前などを馬鹿にする意味は無いから、罵倒するだけの価値もないから、侮辱するほどの存在でもないから、あまり気にするなとな」

 

……おーおー、あちらさんの激怒と殺意が伝わってくるようだな。主を大切にする質なんだろうな。俺の言葉が気に入らないってか。

 

「……貴様……もう言いたいことは全て言ったな…………?」

「なんだ、自分の口からは言えない本当の事が多かったから、ちょうどいいからこの際しっかり自分がどれだけ価値の無い存在なのかを聞かせるべきだと思ったわけだな? それじゃあご期待に答えて続けさせてもら」

「その口を閉じろぉぉっ!!」

 

大上段から降り下ろされた青龍刀を、金剛爆斧で弾いて逸らす。実は逸らさなくても効きはしないんだが、流石に華雄を化物にするのは不味いと思わなくもなかったので一応弾いた。

そしてそのまま空いている左手でがら空きの額にでこぴんを一発。熱くなりすぎている相手は避けられず、まるで首から上が弾け飛んだかのような勢いで宙を舞う。

 

ギリギリ気絶はしていないようで、手から青龍刀を手放してはいないようだが……それでもかなり頭が揺れているらしく、俺のことを睨み付けながらも足元が定まっていない。

 

「どうした? 形だけ止めて自分に責任がないようにする事に意味はないぞ? どうせ器の小さいお前の主には責められる」

「黙れ!桃香様はそのようなことは……っ」

 

勢いに任せて叫んだようだが、言い終わる前にぐらりとふらついた。

それでもどうやら怒りは冷めていないようで、俺を倒すという意思が透けて見えている。

とりあえず、本当に俺を殺したいんだったら、ちょっとばかり修行が足りないな。まだまだだ。

 

「…………なんだ、もしかして本当に止めようとしていたのか? 今のが本気だったと? ……それはすまないな、あまりに弱々しいから手を抜いているのだとばかり思っていたよ」

「ぐっ……」

 

ギリギリと歯軋りの音が聞こえてきそうな表情で、関羽は俺のことを睨み付ける。

 

「……これから私は連合の総大将の首を取りに行く。止めたければ止めてみるがいいさ。……当然、道を塞ぐ劉備軍も蹴散らして、行き掛けの駄賃に首を貰っていくがな」

「っ!さ……せるかっ!!」

 

もう一度、俺に向けて青龍刀を振るう関羽だったが、万全の状態には程遠い今、俺に届くわけもなし。今度も同じように金剛爆斧で弾き、鳩尾に掌を当てる。

接触状態から直接衝撃だけを内蔵に打ち込む技……発勁とか無寸勁とか言われる類いのそれを優しく打ち込む。

 

……ほら、できるだけ無力感を味あわせてから殺るべきだと思ってな。

 

「吹き飛べ」

 

ズドンッ!という肉を叩く重い音が響き、関羽の体が吹き飛んでいく。

何度も何度も地面に叩きつけられるように転がり、そして地に伏せた。

その全身には傷が幾つもの傷がついており、見るからに満身創痍。そんな状態でも武器を手放さない根性だけは認めてやってもいいが、だからといって何ができるという訳でもなし。放置しておくとしよう。

 

俺はこれから目の前にいる雑兵をできる限り殺して回らなくちゃならないんだから、こんな相手に時間をとる訳にはいかないんだよな。

 

「それではな。あ~…………名前忘れた。お前は誰だったかな?」

 

数秒、そのまま答えを待ったが、相手は答えを返さなかったので無視していくことにした。

実際には覚えているが、単なる挑発のために聞いただけだし問題は無い。

 

……さて、総大将である袁紹の本陣は向こうの最奥だ。こは最短距離を突っ切っていく事にしようかね。

 

俺は下ろしていた金剛爆斧を肩に担ぎ直して、袁紹のいる本陣へと歩き始めたのだった。

 

 

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