料理を作り終えた俺は、とりあえず食卓に作ったばかりの料理を並べる。家主の娘さんには座っててもらって、その目の前に料理を山のように積み上げる。
なお、これらの料理はアンダーグラウンドサーチライトの中を改装してオーブンのようにしてある所に保存していたため、作りたてとは言えないが暖かい。
同じように冷蔵庫のようにしてあるところにデザートの杏仁豆腐とかプリンとかゼリーとかアイス(これは冷凍室。種類はバニラとチョコと抹茶の三種)の用意も万端整っている。
「…………」
家主の娘さんがじーーーーっと俺のことを見ている。どうやら食べてもいいかと聞いているようだが……まあ、別にいいか。
「どうぞ、召し上がれ」
次の瞬間、山の二割が消失した。残っているのは皿ばかり。
……足りなさそうだと思ったので、とりあえず追加を作りに仮設厨房に戻る。鈴が得意な酢豚やら肉まんやらラーメンやらも作ってみるか。ラーメンのスープは…………まあ、他の料理の時に出た出汁とかあるし、再利用して作ろうか。
……こういう創作料理は楽しいよな。よっぽど無茶なことをしない限りは不味くはならないし。欠点として、同じ料理は二度と作れないことが多いけど。
まあ、それでも食材の使えるところは全部使わないと勿体無いし、無駄にするよりはずっといいよな。
大根や人参の皮とかはきんぴらにすれば美味しく食べられるし、肉を焼いて出た汁やら魚の茹で汁なんかもシチューやら何やらに再利用できる。
……ちなみに、俺は生きている魚は出せないが、冷凍されている魚ならししゃもだろうが鯖だろうが鱒だろうが鮭だろうが冷凍本マグロだろうが出すことができる。
……先に言っておくが、最後のは別に大剣ではないが大剣としても扱えないことはない。結構簡単に折れるけど。
「はむはむはむはむ……」
「おぉぅ……数分であの量無くなるか……はい追加」
「……ありがと……はむはむ…………」
数分で追加を作って戻ってみると、山の八割強が消失していた。明らかに腹部の体積より大きいと思うんだが、それが入っている腹の外見は全く変わっているようには見えない。
俺も小規模なら同じような真似はできるが、流石にあそこまでの量を食べて外見変えないってのは……無理だな。うん。
……よくこれだけ食って太らないよなぁ……。どんな代謝効率してんだろうか?
不思議に思いはするが、確かどこぞに同じようにかなりの量を食べる奴(人型だけど人じゃない)が居たはずだし、あまり気にはならない。……その相手の名前? 忘れた。と言うか聞いてない。俺は確か腹ペコさんって呼んでたはずだけど。
くいくい、と後ろから服を引っ張られたので振り向いてみると、家主の娘さんが俺のことをじーーーーっと見つめていた。
その前には山積みになった空の皿と丼があり、どうやらちょっと考え事をしている間に食べ尽くしてしまったようだ。
…………で、これだけ食べといてまだ足りない、と。体に見合わずよく食うなぁ……。
まあ、心底美味しそうに食べてくれるんだからまだいいけど、これで無表情で食べられてたら若干キレていたかもしれない。
とりあえず完成品をいくつか渡して、ご飯を出してシチューを作る。当然だが、鍋は五十人分は楽に作れるだろうってくらいに大きなものを用意する。
材料を切ってとりあえず煮込む。色々とそれ以外にも隠し包丁入れて火を通りやすくしたりとかしているが、それでも出来上がるのには時間がかかる。絶対量が多いから仕方ないんだけどさ。
それで、ガスコンロだけじゃなく内側からも火を通すために、焼き石を出して放り込む。そうすることによって鍋の中に熱源があるようになるから、凄く簡単に火が通るようになる……はずなんだが。正直あんまり変わらないよなぁ……。
まあ、それでもやらないよりはずっといいし、一応やっておくけど。
それに、こういうのって結構美味いしな。遠赤外線で中までしっかり火が通る。
蓋と本体を密閉して中の圧力を上げてやれば圧力鍋の原理で更に早く出来るから、実行。マテリアルマーチはマジで便利だ。
……お、いい匂いがしてきた。後ろの気配があからさまに『早く早くっ!』と急かしているような気がするが、ここはあまり気にしないようにしよう。
なんと言うか、家主の娘さんがまるで人懐っこい犬が尻尾をブンブンと振りながら『待て』されてるような……そんな感じがある。
……とても微笑ましいが、どこかで似たような気配を感じたことがあるような……気のせいだろうか?
……気のせいと言うことにしておこう。面倒だし。
ご飯を皿に盛り付けて、出来上がったばかりのシチューを上からかける。真ん中に盛り上がったご飯と、その周囲を満たす白いシチュー。野菜をたっぷり使っているため、体にもいい。
ちなみに使っている肉は鶏肉だ。個人的にカレーに合うのは豚肉、ハヤシライスに合うのは牛肉、そしてシチューに合うのは鶏肉だと勝手に思っているからでもあるんだが……。
勿論この件に関しての異論は認める。だが、誰になんと言われようと俺の中でシチューに一番合うのは鶏肉だ。それは間違いない。
……とまあ、食べる側にとっては結構どうでもいい主張はどこか適当な所にポイ捨てとくとして、家主の娘さんにシチューを出す。
ここに来て窓を開けた時に大体の時代は把握したので、とりあえずスプーンは木製だ。スプーンって言うより匙って言った方がいいような気がする程度のできだが、口の中に刺さるような棘とか食感が悪くなるような毛羽立ちとかは無いから安心して
「おかわり……」
……気にする必要は無かったようだ。
俺は家主の娘さんから皿を受け取って、二杯目を用意しに仮設厨房に歩を進めた。