ほんとはこうなるはずだった、真・恋姫†無双董卓編~反董卓連合虐殺戦・後~
side out
諸侯の将兵が完全に沈黙している中。爆散し、炎を吹き上げる戦車の前に立った孫策は、自らの持つ南海覇王を掲げて戦場の将兵に叫ぶ。
「董卓軍の鋼鉄の魔獣は、この孫伯符が討ち取った!」
するとざわざわと言う声が広がり、視線が孫策とその背後の戦車の残骸に移る。
そして戦車が動かないことを確認した兵の一人が拳を突き上げて声をあげた次の瞬間、戦場は大歓声に包まれた。
ある者は生き延びることができたことを純粋に喜び、ある者は仲間の死に憤る余裕を持ち始め、怒りを瞳に宿らせて武器をとる。
そして大半の者は、自分より遥かに強く、そして自分ではけして勝てそうになかった化物を打倒した孫策を英雄として見ていた。
いずれもこの戦において最も高い壁を乗り越えたと感じた反董卓連合の諸侯軍は、非常に高い士気を持って汜水関に向かっていった。
しかし、彼らはここで間違いを犯した。一万を五千近く越えるほどの屍を作り上げた時点で、すぐさま諦めて帰還するべきであった。そうしていれば、あのようなことにはならなかっただろう。
だが、彼等はもう進んでしまった。自らの足で、滅びの谷へと進み……そして翼も無く、空を飛ぶこともできない人間達は、まっ逆さまに落ちていく。
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孫策が声を張り上げているのが聞こえる。戦車を倒したのが孫策である以上、今回の戦で最も名声を得るのは孫策でほぼ確定していると言うこともあるだろうが、南海覇王を手にした孫策が全軍を率いているようにも見えるような状態だ。
初めに先頭に居た劉備軍は孫策率いる軍の後方に下がり、恐らく酷い傷を負った張飛の治療をしているのだろう。
「……あーあ、なんや見てて可哀想になってきたなぁ……あんなにはしゃいどるのに、ほんまに可哀想や」
一万五千もの兵が減ったと言っても、元々が十三万という大軍団である諸侯軍の意気は高い。それこそ今ならば倍近くいる敵にも勝てるかもしれないと思ってしまえるほどに。
そんな軍団を目にしながらも、張遼の表情に引き締まった物も敵を見るような意思も欠片も存在していない。
逆に、憐れみすら籠っている視線を諸侯軍に向けている。
「こっちに銀さえいなけりゃもうちょっと戦えたんやろうけど……残念やなぁ。うちはいっぺん関羽と戦ってみたかったんやけど……無理っぽいわな」
それだけ呟いて、張遼は汜水関の奥へと引いていった。これから行われるだろう見るに堪えない虐殺を想い、自棄酒でもするつもりなのだろう。その手には戦の時には自室に置いてあるはずの酒瓶がぶら下がっていた。
「……頑張って逃げられる奴は逃げといてな。うちにはもう何もできんよ」
ぽつりと呟いた張遼は、その手に持った酒瓶から直接酒を飲みながら姿を消した。
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意気揚々と進軍する反董卓連合の目の前で、汜水関の門が再び開かれる。
しかしあの戦車を破壊した兵達は、今さら自分達よりも少ない人間の兵などに恐れを抱くはずもなく、現れるはずの董卓軍を待ち構えた。
鈍い音と共に開いていく関の門を前に、彼等は武器を握り締める。
しかし彼等の前に現れたのは彼等の思い描いた勝利への道などではなく、彼等に滅びを与える化物であった。
完全に開いた門から覗くのは、エンジンの唸りを止めた戦車が一台きり。それに一瞬怯んだ兵だったが、直前に戦車を打倒した孫策や黄蓋の存在が支えとなり、辛うじて逃げ出そうとする者はいなかった。
遥かに離れてはいるが、弓の名手であれば矢を届かせることができる距離。そして相手もあの筒から出る何かならば届く距離。
だが、戦車はなぜか動かない。砲塔も、履帯も、動く気配が無い。まるで死んでいるかのように。
「……なんの真似だ?」
周瑜はこうしてただそこにあるだけの戦車を警戒しながらも、訳のわからない事象に首をかしげている。
自分ならばこの状況であれを動かさないことなど考えられない。直ぐ様戦車を壊した立役者である孫策と黄蓋を狙い、あの筒を使うだろう。
連合で戦車を壊すことができるのは孫策と黄蓋の二人のみ。相手もその事が理解できているだろうし、二人を殺せば連合に戦車をどうこうする方法はなくなるのもわかっているはずだ。
「……冥琳、退くわよ」
「……何を言っているんだ? この状況で退いたら……」
「いいから早く!」
切羽詰まったような孫策の表情にただごとでは無いと理解した周瑜だったが、それを行動に移すまでが絶望的に遅すぎた。
しかし、今回の場合では例え孫策が直接兵に指示し、兵が即座にそれに従っていたとしても遅かっただろう。孫策の鋭すぎる勘が伝えてきたその情報も、今回ばかりは相手が悪く、遅すぎた。
何しろ相手はとある世界で【破壊神】と呼ばれ、世界最強と言われた化物。さらに孫策すら越える異常な直感を誇る友人を持ち、その友人の裏をかくことすらできた【理不尽の結晶体】のような男なのだから。
突然、連合軍のを取り囲むように炎の壁が現れる。それは汜水関の壁に迫るほどの高さを持ち、とても飛び越えることができるような高さではない。
そして同時に停止していた戦車が動き始め、キュラキュラと耳障りな摩擦音を立てながら近付いてくる。
半ばやけくそになりながらも武器を構える連合軍。背後は灼熱の炎の壁で、前方からは万夫不当の戦車。逃げ道を失った連合軍が助かるためには、目の前の戦車を妥当しなければならない。
キュラキュラ、キュラキュラと一定の音を立てながら進む戦車の音に、何か別の音が混ざる。
キュラキュラ、キュラキュラと言う音が、なぜかいくつも重なり…………そして、汜水関の門から二台目の戦車が現れた。
あまりのことに衝撃を受けて固まる連合軍を嘲笑うように、戦車は次々と姿を表して連合軍へと向かっていく。
それは数えられる程度の数から次々に数を増やして行き、ついには五千に届かんばかりの戦車の群となる。
キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラ、キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラと、戦車の履帯が奏でる不協和音に連合軍の兵士の一人が握っていた剣を取り落として膝をつくのを皮切りに、圧倒的と言う言葉すら生温い程の戦力差に戦意を失っていく連合軍。
そんな連合軍に向けて、五千の戦車の主砲が火を吹く。
虐殺劇の幕が、再び開いたのだった。