真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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地味さんから、地味様へ

 

賛嬢ちゃんと出会ったあの日から一月ほど。賛嬢ちゃんは時々俺の居るこの場所に来ては昼寝をしたり、学友の愚痴を言ったり、日頃から溜まっていたらしい文句などを俺に言ってくるようになった。

これも初めに出会った時の帰りに『なんとなくまたここに来たくなる』ように暗示をかけたせいだろうな。

だが、だからと言って理由もなくここに来るほど賛嬢ちゃんも暇じゃない。つまり、賛嬢ちゃんもそれなりにここに来るだけの理由を持っているわけだ。

……主に愚痴だが。

 

その内容は主に自分の才能の無さとか同級の一人(劉備らしい)の才能と言うか人垂らし過ぎるとかそう言うものだが、一応愚痴を言うたびに吹っ切れたような顔をして去っていくのでそれなりに役には立っているらしい。

まあ、それでも数日後にはまた来て愚痴を言ったり助言を求めたりしてくるので、俺なりの解答を返していく。

 

自分が未熟で力の無い存在だとはわかっているか、それでも早く力をつけたい。そう言われれば俺は賛嬢ちゃんをアンダーグラウンドサーチライトに誘い込んで時の回廊を使った高密度の鍛練をさせてみたり、大量の本を出して覚え込ませてみたり……まあ、人間だったら泣いて諦める所だが、賛嬢ちゃんは泣きながら苦しみながら必死に頑張ってついてきた。

……どうも勘違いしているようだから一応言っておくと、賛嬢ちゃんは普通と言うわけではない。ただ地味なだけだ。

自分の優れたところが埋没して見え、そしてその上で悪いところは本人の自覚によって矯正されて目立たなくなる。

こうして賛嬢ちゃんが目立つところの無い有能でも無能でもない地味な奴だと言う間違った印象が広がっていくわけだな。

 

……実際その認識は大間違いだしな。正直賛嬢ちゃんは能力と言うか特性的に考えればただ地味だから目立たないと言うだけだし。本人はその地味さも悩んでいるらしいが、正直なところ地味だからできることってのもあるわけだ。

……例えば、暗殺とか暗躍とか謀略を巡らせるとか敵を作らないとか。

特に最後のは重要だ。敵さえいなければ大体のことはできるからな。内政で平和を築いたりとか。

 

……まあ、この時点でなんとなく鍛えた先が見えてきた気がするが、本人次第でいくらでも未来は変わるから確定と言うわけではない。

ただ、一番向いている進化の方向がそれだと言うことは変わらないはずだ。

持ってないものを新しく所有してから鍛えるよりも、元々持っている才を伸ばす方が楽だし。

 

そんなわけで賛嬢ちゃんに地獄の獄卒すら泣いて裸足で逃げ出してなのちゃんに撃ち落とされてもう一度初めからさせられるような苛烈な修行を受けてもらった結果。賛嬢ちゃんは常識の壁をぶち抜いた。

本人にはその自覚はなく、自分は当然普通であると言う意識を持っているが……そんなわけがない。ただ、自分が地味であると言う自覚は持っていて、それを受け入れることができるようになっていた。

 

……ちなみに、賛嬢ちゃんの特化点は凄まじく特異。内容は『地味』だ。

今のところはまだまだ鍛え方が足りないからだろうが発現が不安定だが、慣れれば自由にオンオフハイロウがつけられるだろう。

うまく使えばこの大陸を裏から一極支配することもできるだろうが、恐らく賛嬢ちゃんはそんなことはしないと思われる。賛嬢ちゃんだし、まるで憑き物が落ちたかのようにほんわりするようになったしな。ツリ目も下がったし。

それでも俺の所に来る事は辞めないし、来た時には愚痴を言う代わりに茶を飲んだりぼんやりしたり昼寝をしたり勉強したりするようになった。

俺も時々賛嬢ちゃんに茶菓子を出したりしてのんびりしているが、なんでか賛嬢ちゃんの回りに居ると地味効果のせいか凄まじく落ち着く。異常でありながら地味であるからこそだろうな、この落ち着く空気は。

俺も似たようなことを言われたことがあるが、賛嬢ちゃんは一段上かもしれない。

 

なんと言うべきか、『賛嬢ちゃんはそこにいて当然』だと思わせる。そしてそう考えることになんの不思議も感じないその辺りがかなり異常だと思わせてくれるんだが、やっぱり本人にはあまり自覚がない。

本人は『最近人から話しかけられたりすることが減った』と言っていたが、それも当然。地味になると言うことは気配が薄くなるということで、そして気配が薄くなれば当然話しかけられることも少なくなっていく。

それでも話題に上れば思い出せるし、賛嬢ちゃんの方から話しかければ普通に会話が成立する。発言すれば注目されるし、実績を残せば評価される。

その代わりに、いなくなっても気付かれないし、切っ掛けがなければ思い出されもしない。友人付き合いのある相手との会話でも一瞬誰だかわからないと言う顔をされることもある。

地味を進化させていくとどこまで行くのか気になるが、本人の欲に任せてみよう。その方が面白そうだし。

 

……さて、それじゃあ賛嬢ちゃんを送っていこうか。もう日も暮れるし、危ないからな。

賛嬢ちゃんなら地味に相手の意識をすり抜けるスニーキングができそうだけど、それでも一応な。

俺自身もシルバーカーテンで姿を隠せば狙われる理由がなくなるし、そもそもそんなことをしなくても賛嬢ちゃんは自力で周囲の環境に溶け込めるようになってるから必要か必要じゃないかで言うと必要ではないんだけど。

 

「必要じゃなくても嬉しいよ。私のことを私として見てくれるしな」

「そうかい」

 

まあ、俺はなんでも構いやしないがね。

 

 

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