真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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地味だと、こんなことができる

 

賛嬢ちゃんに連れられて幽州の城まで行ってみれば、なんと言うかまあ酷いことになっていた。

町の住人は全体的に生気が無いし、大通りにすら痩せた人間が倒れている。そしてそれを見ていないかのような表情で仕事のために歩き回る住人は、まるでゆっくりと死に向かって歩いている亡者のようにも見える。

 

「……とりあえず、改革するか。悪いが、悪徳徴税官やら何やらをどうにかするまで忙しくなるぞ」

「どうする予定?」

「片端から殺す。証拠を掴んで晒して広場に晒して殺したければ殺させる。一週間晒して生きていたらその罪を半減し、私財の七割を没収して薄給で働かせる。三度目までは同じことを繰り返し、四度目は問答無用で首をはねる。逃げたら追って殺す」

 

どうやら賛嬢ちゃんは暗黒面に入っているらしい。自分自身もそうして締め付けるんだろうが、そんなに厳しいとついてこないんじゃないか?

 

「官職に就くということは、国に仕えると言うこと。仕える国の頂点は皇帝であり、皇帝は天が決定している。そんな官職に就いていて汚職をすると言うのはつまり天を蔑ろにし、皇帝の権威に泥を塗る行為に他ならない。国を悪くし、皇帝を敬う心を忘れ、自らの懐を肥やすことにしか興味のない害虫は全て殺す。わざわざ三度も改心の機会を与え、その機会を棒に降るのだから、その程度の覚悟はできているだろうさ」

「本音は?」

「皇帝云々は建前だが、他はみんな本音だよ」

 

どうやら賛嬢ちゃんは俺との付き合いの間に甘さと残酷さを使い分けられるようになったらしい。

まあ、悪いことじゃないよな。俺なら一罰百戒で初回からぎちぎちに締め付けるけど。

 

……まずはそう言う膿を絞り出して、私財没収の上追放。没収した私財を州の運営費に回して、それから不正に取り立てられていた税率を元に戻す。実際こっちに入る分は変わらないから困らないが、民は喜んで賛嬢ちゃんを褒め称えるだろう。

 

それから税の取り立てのための基準となる農地面積を求めて、兵を鍛えて、北から来る異民族に対抗する軍を作って……まあ、俺がやる訳じゃないけどさ。

 

「……異民族戦には参加してくれないか? 流石に軍の調練が間に合わないんだ」

「……殺さず、全員捕らえて交渉でもする? いい馬とか欲しいだろ?」

「白けりゃなおいいな。白馬だけの騎馬隊を率いるのが昔からの夢だったんだよ」

 

そう言うわけで、一応対異民族の主力として扱われるようになった。馬はこの時代じゃ重宝されるものだから、賛嬢ちゃんがそう言うのもわからないでもない。

近代兵器を知っている身としては、そんなのの代わりに戦車の十や二十を用意した方がいいような気もする。

 

……できるが、やらない。操縦方法を教えるのが面倒だし。

 

「それじゃあ、私は暫く本気で暗躍する。外から来るのは任せた」

「はいよ」

 

……それじゃ、ちょっと気にしながら眠ろうか。

 

……すか~…………。

 

 

 

 

 

side 公孫賛

 

幽州の現状を見て、精神だけは普通の人間であると自負している私はこの州の徹底的な掃除をすることを決めた。

普通である私の神経は、私が見ている地獄のような光景を気分の良いものではないとして排除しようとしている。

勿論それは本人達を排除するのではなく、汚職まみれの私の部下候補の中でも特に酷いものを排除して風通しをよくする。そのために必要なものは……情報だ。

 

そんなわけで私は表の仕事をやりながら、私のことを迎え入れた幽州を調べる。

運のいいことに普通である私にも特技と言うものがあり、その特技はこう言った活動でとても役に立つ物だった。

私の特技は……同時に気にしていることでもあるが、影が薄いこと。あまりの影の薄さに、隠れる気持ちで堂々と先生の目の前で手を振っても気付かれなかったし、他のみんなも私のことを当然のように忘れてしまっていた。

私が隠れるのをやめて気付かれようとすると私に気付くが、もしかしたらでこぴんをしても気付かれないかもしれない。

 

……無いと信じたいけど、あり得そうだから困る。

 

そんなわけで色々調べてみたら……これまた出るわ出るわ汚職の嵐。ここまで来たら嵐と言うより海と言った方がいいんじゃないかと言うほどの汚職が当然のように横行していた。

……つまり、こいつらが私と一夏の生活を混乱させる元凶だ。

 

それを理解した私は、まず情報操作を行う。地味な格好をして、街の井戸端会議に参加して色々と話をするだけで、ある程度私の思い通りに会話は動く。

それからそう言う噂が広がった頃に来た行商人にも同じような話をして、色々なところでその情報を広げてもらうことに。これで大義名分は整った。

 

後は一夏に言ったように、民の不満をぶつけさせてやればこの場はかなり良くなるだろう。

後の恨みが怖いが、それもなんとかなる。なぜなら私は影が薄い。故に、何をしてもそれが私に繋がらないのだ。

 

……幽州に来るまでに、賊に何度か出会って確認した。全力で私と私の馬を隠しながら、真正面から賊の首を切り捨てた。

しかし、そいつらは私が見えていないかのように騒ぎ始め、突然そいつの首が飛んだように怯えていた。

それで確信した。私は、自分に関する何かを隠すことに才がある。目の前で首を跳ねられてもそれに気付かずあたふたする賊を見ていれば、だれでもわかるだろう。

 

……さて、暗躍は既に最高潮だ。税収は今まで通りの高さ(国で決められている高さ)にさせたし、私は民から慕われている。

このまま税を勝手に上げたものを合法的に殺せるようにと広場に引きずり出せば……どうなるかは子供でも理解できるはずだ。

 

……一夏。もうすぐ厄介な仕事に一区切りを入れることができる。その時は一日休みをとって、私とお前でゆっくり眠ろう。

 

徹夜続きで若干鈍くなった思考を巡らせながら、私はすぐ近くの未来を夢想した。

 

……そして。一月後に広場にいくつもの屍が転がることになったが……わざわざ言う必要も無いことだよな?

 

 

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