真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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普通の恋と、葛藤と

 

賛嬢ちゃんが異民族と和解(ただし方法は洗脳)して、異民族とのかなり公平な取引が始まってから暫くの時が過ぎた。

異民族が攻めてこなくなったのは良いことだが、代わりに大陸中で黄色い布をトレードマークにした野盗が現れたらしい。

幽州はそれなりに経済や食料難が回避されていたおかげか、その黄巾党とか言う野盗の集団が生まれることは無かったが、他の場所で出てきた黄巾党が幽州の中で略奪を繰り返すことがざらにあった。

その度に賛嬢ちゃんは軍を率いて黄巾党を殲滅したり、時々降ってきた元農民を罰と言う名目で開墾地に送り込み、そこで新しく拓いた農地から取れた作物には三年の間税をかけないがそれ以降はしっかり取り立てをするようにするなど新しいことをどんどん試して、着々と地力を蓄えていった。

 

そしていくつもの戦場を経験し、元々精強だったが更に強くなった賛嬢ちゃんの軍は、いつの間にか賛嬢ちゃんの特化点の影響を受けて常時光学迷彩に気配の隠蔽、その状態での騎馬隊並の機動力を誇るかなり酷い軍になってしまっていた。

さらに、賛嬢ちゃんによる魔改革は続く。なんと、少しずつではあるがこの『幽州』と言う場所そのものの存在を隠そうとして居るようで、結果として少しずつ遠方から賊がやって来ることは無くなってきた。

まあ、短期間のことだから偶然と言う可能性もあるが、何にしろ賛嬢ちゃんの評判は幽州内に限っては鰻登りとなっている。

 

幽州の外での評判は今まで通り、大きな成功は無いが失敗もない、普通の領主と言うものだ。

……だが、よく考えてみると、この評判も賛嬢ちゃんの特化点による大幅な補正が入ったものになっていることは少し考えればわかることだろう。

何しろ異民族とのいざこざに一応の決着をつけて見せた上に、物々交換とは言え交易することにまで成功している。そんな巨大な功績が語られることもないと言うのは、賛嬢ちゃんの普通能力によって噂が広がる度に普通程度に収まるレベルにまで噂が小規模化していっているせいだろう。

 

……通常、噂は流れれば流れるほど規模が大きくなっていく筈なんだが、それを強制で逆向きにすると言うのは……この時代の情報戦じゃあまず無理だろう。

酔っぱらう度に俺に引っ付いてきたりキスをねだってきたりする娘さんと同一人物とは思えないよな。

 

「それは言わないでくれぇぇぇぇ…………」

 

賛嬢ちゃんは酔っても記憶が残るタイプだったらしく、こうして少しからかってやるといい反応が返ってくる。

ちなみに、酔っていない時に俺を誘惑してきたりとかそう言うことはない。どうやら賛嬢ちゃんはかなり恥ずかしがり屋であるようだ。

 

……自室で悶々と悶えていると言う話をお付きの女官からよく聞くが、俺からは何かをする予定は無い。賛嬢ちゃんには悪いが、面倒だからな。

それに、俺としてはどうして好きな相手に好きだと言えないのかがわからない。好きな相手には好きだと言わないと自分の思いは届かないし、口にすることで固まる想いって言うものもあるだろうと思うんだがね?

 

……まあ、なにをするのもしないのも、言うも言わぬも賛嬢ちゃんの自由だけどさ。強制はしないさね。

 

……ふぁ……ねみぃ。寝るかぁ…………。

 

 

 

 

 

side 公孫賛

 

幽州の中で、私腹を肥やす悪徳官吏を殲滅したら。

幽州を治めて、餓えて死ぬ民が居なくなったら。

幽州に攻め入る異民族との対立をなくしたら。

 

……そんな風に時間稼ぎをして来たけれど、このままじゃあ何にも変わらないのはわかってる。そう、わかってるんだ。

私は一夏に惚れている。一夏のためなら皇帝を排する事も辞さないほど、私は一夏と言う男に首ったけだ。

けれど、その想いを伝えようとする度に、一夏ほどの才を持つ奴が私なんかの事を好きになってくれる筈が無いと、そんな言葉が頭をよぎる。

 

私は地味だし、どこまで頑張っても普通にしかなれない。顔にはそれなりに自信はあるけど、私以上に可愛い奴なんてそこら中に要る。

そんな中で一夏に選んでもらえると言う自信なんて、私には無い。

 

……何よりも怖いのは、私が一夏に想いを伝えたとして、笑われたり拒否されたりすること……ではなく、一夏が私の元から離れていってしまうこと。ただ断られるだけなら私が気にしなければそれまで通りに過ごすことだってできるだろう。

だけど、一夏が私から離れていってしまったら……私はきっとこの世界に価値を見出だせなくなるだろう。

きっと、仕事だけは今まで通りにこなすけれど、ただそれだけの……人形のような状態になってしまうのではないか。

民が危ないと聞けば軍を差し向け、侵略されれば交戦し、汚職を裁き……しかし一度も心を熱くするようなことにはならずに生涯を終える。そんな惨めな姿が脳裏によぎるだけで、私の体は恐怖ですくんでしまう。

 

「……怖いよ……一夏ぁ…………」

 

「……話は全て聞かせていただきました!」

「ぶふぉっ!? ちょ、おま、領主の部屋の前で聞き耳立てるとかなに考えてっ!?」

「そんなことはどうでもいいのです!」

 

突然そんなことを言いながら私の部屋に入ってきた女官に『いや良くねえよ』と言おうとしたが、ついついその剣幕に押されてしまう。

 

「公孫賛様は、白金様のことが好きでいらっしゃるのですね?」

「だからいつから聞いてたんだよ!? と言うか私声に出してたか? 出してたのか!?」

「ええ。壁の向こう側と扉の外と天井裏と床下と、ついでに窓の外にもいる隠密護衛隊女官組の一同、全て聞かせていただきました!」

「ああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

ヤバイヤバイこいつらの口から一夏に漏れたら本当にヤバイどうするどうする口封じか!?

 

「ご安心ください。明日には公孫賛様の意識改革は終了しますから、すぐにでも告白していただけると期待して……信じております」

 

なんだか聞き流しちゃいけないことを言ってたような気もするがそれどころじゃない!? ああぁぁぁぁあぁぁぁっ!!

 

 

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