真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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この恋愛は、普通じゃない

 

とりあえず初めに一言。俺が嫌いな奴と一緒に居るわけがないよな?

つまり、賛嬢ちゃんが嫌いならわざわざ移動してまで賛嬢ちゃんについて来たりはしないってことだ。

 

賛嬢ちゃんの告白にそう返した日の夕食は、それはそれは豪華なものだった。普通はこんな豪華な宴を開いたら色々ときつい筈なんだが、俺がいると言うこともあって余裕綽々だ。

一番苦労してるのは料理人だろうが、料理人の方には賛嬢ちゃんから十分な給料が支払われているので問題ない。

一番の問題は、賛嬢ちゃんの絡み酒と『まにゃでよべよぉ~、かんらんらろ~』事件だろうか。とりあえず努力する方向でと解答したが、『かわりにちゅーしろ』事件に発展し、俺を自室に連れ込んで寝台で俺に抱き付き。そこで電池切れになって眠ってしまった。

とりあえず次の日にかなりからかってみたら、顔を真っ赤にして慌てると言う可愛らしい姿を見せてもらった。うにゃうにゃうにゃと悶えている。

 

……外で聞き耳をたてている隠密護衛隊侍女組と、同じく忍組に気付いたらどんな反応をするのか興味がなくもないが……色々面白大変なことになりそうだったからさっさと逃げることにした。

その少し後に、賛嬢ちゃんの部屋から外の侍女組に気付いたらしい賛嬢ちゃんの悲鳴が聞こえてきたが、さらりと流すことにした。

 

……それから暫くして、三人の客将志望が現れた。正確にはうち二人は軍師志望だそうだが、とりあえず三人が三人ともにそれなりに優秀な人材だったことをここに記しておく。

 

「……私はここに来て自信を無くしましたがな」

「伯珪様の処理能力は凄まじいですね~……風と禀ちゃんでは追い付けないのですよ~」

「……なぜこれほど優秀な方が無名のままなのか……理解不能です」

「そうか? 普通だろ? 私も、私の部下もさ」

 

そう言いながら纏め終わった書類を決裁待ちの箱に重要度別に放り込み、それから同じ机で重要な物から決裁印を押していく。

 

ちなみに、さっきの台詞は趙雲、程立、戯志才の三人だ。

趙雲は賛嬢ちゃんの隠密機動隊百人長と一騎打ちをして引き分け、千人長に戦わずして敗北。あまり強くないように見えたらしいが、残念ながら賛嬢ちゃんの普通化によって雰囲気が一般人程度にしか感じ取れないだけなんだよな。

程立と戯志才は挑みかかったりはしなかったが、それでも賛嬢ちゃんの圧倒的な処理速度と正確さに舌を巻いているようだった。

 

そんな反応を賛嬢ちゃんは大袈裟だと感じ取っているようだが……実際には賛嬢ちゃんの普通が異常人にとっての普通であり、一般人にとっての普通とは別物であるため、どちらかと言えばその三人の言葉が正しい。

しかし、賛嬢ちゃんの言葉もけして間違ってはいない……んだが、それは色々と人間として越えちゃいけない物を越えてしまった異常人達の常識であり『普通』であるため、今の状況では説得力はあまり無い。

証拠に、目の前の三人からはジト目を向けられているし、本人以外はこの状況を『普通』だと思っているものがいない辺りからもどちらの言い分が通ることになるのかはわかりきっているだろう。

 

「……もしかして、普通じゃ無いのか?」

「当人にとっての普通が大衆にとっての普通とは違うと言う話だよ。例えば賛嬢ちゃんは普通に生身で光学迷彩をかけて無色透明の状態で行軍できるけど、趙雲には無理だろうし」

「よくわかりませんが無理でしょうな」

「で、俺は空気を蹴って空を走れるけど賛嬢ちゃんには難しいだろうし」

「ああ、難しいな」

「俺の知り合いの一人は四方千里を巻き込む大爆発を起こして無傷でいられるけど、それくらいなら俺もできるし」

「流石は一夏、交遊関係には異常人ばかりだな」

「今の話を聞いて、言うことはそれだけですか~?」

「なに言ってんだ? 一夏ならそのくらい普通だろ」

「どんな普通ですかそれ……」

 

……これまでのやり取りを見ていてわかってくれたと思うが、趙雲達は全員突っ込み側だ。特に戯志才は諦め系ツッコミで、苦労性ながらも全力投球なシャルとはある意味で真逆の存在と言える。

だが、趙雲は時々(主に恋愛関係で)賛嬢ちゃんをからかう側に回り、賛嬢ちゃんも恥ずかしがりながらもまんざらでもない空気でそれを受け入れている。

 

基本的に賛嬢ちゃんの納めている幽州の民の空気は緩い。他の地域と比べて治安は段違いどころか次元違いにいいし、長年頭を痛める原因の一つであった異民族……烏丸族とも交易を結び、友好的に付き合っているという事からも、民は安心して暮らすことができている。

そして日々の食料や税だが、賛嬢ちゃんが来る前に比べて極端に安くなり、また自分達で食べられる量も増えた。

それもまた自分達が死なないで済むという心の安定に繋がり、民は賛嬢ちゃんのことを慕うようになる。

 

……だが、だからと言って平和惚けしている訳ではない。いくら幽州が全体的に平和であるからと言って、他の州はそれまでと同じかそれ以上に荒れている。つまり、幽州から賊が出なくなったと言うだけであり、他の州から賊が来ないと言うわけではないからだ。

 

それを十分に理解している民は、できるだけ時間を稼いで賛嬢ちゃんによる討伐軍を待つことを覚えた。

その他にも屯田兵や『知識だけはある農民』が力を合わせて罠を張ったり、一方的に殲滅したりすることもある。

 

……なお、幽州の一般的な農民は木製の鍬の一振りで二十平方メートルの畑を耕し、指弾による種蒔きは200メートル離れていても狙った位置から一センチ以上外さない上、遥かに離れた黄河から個人で水を引くのに一月程度で済ますほどの体力を持つ。

当然ながら常備軍や屯田兵等はそれ以上の戦力を持ち合わせており、配備されてからと言うもの賊の横暴を許した事が無い。

 

……ちなみに、幽州に住む全ての民がその事を普通だと考えているため、畑を荒らされないようにという希望を込めて、日々農作業と訓練を続けていたりする。

その上ご近所付き合いによるチームワークにより、五人居れば趙雲にも勝てる程度の実力を持っていたりもするが……趙雲のプライドを些か以上に傷つけるため割愛させてもらう。

 

「…………(ずーん)」

「おや星ちゃんが落ち込んでしまいました。そんなに自分が三人目で脱落した一般兵を易々と百人抜きしてしまった百人長との力の差は絶望するようなものだったのでしょうか?」

「ああ、あいつらは身体能力的にはそんなに変わらないのを技術で差を付けてる奴らだからな。力押しの相手ならいいカモなんだよ」

「……………………(ず────ん)」

 

カモ扱いされてしまった趙雲はさらに落ち込み、戯志才が必死にそれを宥めている。

 

……まあ、平和だな。うん。

 

 




 
星ファンのみなさんゴメン!
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