張飛のちみっこい姿で本人と戦い、そしてかなり一方的にボッコボコにしてしまった。
丈八蛇矛は普通の長柄物とそんなに変わらず扱えるが、それでもやっぱり俺は長柄物と言ったら投げて炸裂させるって使い方の方が慣れてるから違和感がある。
実際のところ、わざわざ長柄物に氣を込めて投げてランブルデトネイターで起爆させるよりも、ジェノサイドサーカス連発した方が単発の威力は出ないがコストパフォーマンス的には有効なんだよな。疲れないし。
……それはそれとして、あの二人は百人抜きこそ失敗したが十分な実力……と言うか戦闘力があると言うことはわかったので、取り敢えず次の段階として兵を率いるのに適正があるかどうかを見極めるためにちょっとした訓練をしている。
兵を率いての模擬戦で、自分も駒の一つとして考えての兵の運用戦。兵を率いるにも様々なタイプがあるわけで……。
大雑把に言うと、攻撃型と防御型。ついでに特殊型なんかもあるが、まあ、特殊型は罠を張るのに長けていたり兵糧運ぶのが得意だったりするので直接的な戦闘にはあまり関わりがないからノーカン。そう言う重要なところを客将に任せるとか馬鹿のやることだし。
……で、やってみた結果、どっちもかなり攻撃寄りの切り込み型だった。
今まで少人数で賊を倒してきたんだからある意味では当然なのかもしれないが、少なくとも今までは護るよりは攻め込んで討ち滅ぼすと言うシチュエーションが多かったのでは無いだろうかと勝手に想像を膨らませてみる。
……まあ、戦乱の中では領を持つには向かない性格だな。誰かの部下として働いてるんだったらともかく、、こんなんが領主になったら隣国との戦が絶えなさそうだ。
……俺が寝たいときに静かにしてくれるんだったら好きにしてくれてかまわないけど。
そして軍師のちみっこ二人だが、賛嬢ちゃんに仕える文官達に混ざってお仕事を片付けている。
二人ともしっかり勉強はしてきたようだが、周囲の早さに追い付けていない。
これが外ならあのちみっこ二人の仕事の速度はかなり速かったんだろうが、残念なことにここは異常こそが普通であると広まってしまった賛嬢ちゃんの城。そこらの優秀な奴程度じゃあ追い付く事など不可能だ。
本人達も努力しているようだが、まあ、そう簡単には追い付けることはないだろう。
……賛嬢ちゃんが手を貸したりしなければの話だけど。
「貸さないよ。それじゃあ昔の私の夢と同じように、桃香の目指す未来とは変わってくるだろうし」
「まあ、変わるだろうね。嫌だろうがなんだろうが」
そりゃあ賛嬢ちゃんに限らず人間なら普通から異常になれば考え方やら何から何まで色々様変わりすることだろうよ。
だが、正直に言って賛嬢ちゃんがあの夢見がちな脳味噌花畑に期待してるとは思わなかった。ちょっとだけびっくりだ。
「……なに。私も昔はこの大陸から争いを無くしたい何て言う身の程知らずな夢を抱いたものさ。今だって、それができればどれだけいいかって思ってる。…………はは、未練だなぁ……」
「別にいいんじゃないか? そう言う葛藤やら出来ないとわかってても自分にできる精一杯をやる行為も、全部纏めて賛嬢ちゃんなんだからさ」
「ありがとよ。そう言ってもらえると自信が出る」
賛嬢ちゃんはニコッと花開くように笑い、それから自分の目の前にある書類を片付け始めた。
……賛嬢ちゃんって、人間が普通にできることの錬度が妙に高いよな。できないこと(洗脳とかステルスとか)でも練習から実力に反映されるまでのサイクルがかなり短いし。
まるで、それが普通だと世界を誤魔化しているかのようだ。
……ってか、多分だけど実際やってるんだろうな。じゃなかったらいくらなんでもこんな無茶苦茶な成長は……できないとは言い切らないけど、難しいのは間違いないだろうし。
まあ、やってようがやってなかろうがなんでもいいけどな。俺は眠い。
side 公孫賛
一夏がうとうとし始めたので、私はすぐさま仕事の手を早めて終わらせる。
流石に筆と墨がおっつかないから倍率はそんなに高くないけど、それでも他人から見たら結構変わるだろうと思ってみたり。
山になっていた書簡を三秒で片付けて、それから椅子を立って一夏の隣に座る。ゆらゆらと不規則に揺れていた一夏の頭を抱き寄せて、そのまま膝に。
寝心地がいい場所を探しているらしい一夏は暫く私の膝の上でモゾモゾと動き、そしてちょうどいい場所を探り当てたらしい一夏はそのままゆっくりと寝息を立て始めた。
……ああ、一夏は本当に可愛いな。
私はそう思いながら、一夏の柔らかな髪の毛を何度か撫でる。私は昔から撫でられるとほっとする手を持っているらしいので、一夏にも効くかどうか試してみたのだが……どうやら効果はてきめんらしく、一夏はくすぐったそうに首をすくめはしたものの、嫌がるような素振りはついぞ見せなかった。
……全くもう。私は本当に一夏に首ったけなんだなぁ……。
バンッ!と突然扉が開かれて、陽戦隊諜報組の一人が駆け込んできた。その表情はそれなりに切羽詰まっていて、その報告の内容が重要なものだと言うことを予想させるものだった。
「伯珪様っ!」
「叫ばなくとも聞こえているさ。何があった?」
私がそう問いかけると、陽戦隊の一人が慌てながらも正確に情報を提示する。
「例の……黄色い布の賊の大軍が現れたようです!数はおよそ一万、今は屯田兵と常備兵の援軍が協力して抑えていますが、流石に多勢に無勢で……援軍を派遣して欲しいとのことです!」
……一万か。流石に500・500の千人じゃ危ないか。
……友人に箔をつけさせてやるとしようか。
「わかった。関羽と張飛、それと趙雲に700ずつ兵を与えて出撃させろ。そんだけ居れば十分だろ? ……ついでに諸葛孔明と鳳士元も行かせてやれ」
「はい!関羽将軍、張飛将軍、趙雲将軍に兵を700ずつ!諸葛孔明軍師と鳳士元軍師も同行!」
「宜しい。駆け足!」
私の命令を受けて、陽戦隊諜報組の男が走り去る。白馬義従は私の直属だから出ないとしても、ほぼ全員が騎兵と歩兵のどちらの役割もこなせる私の兵なら足手まといにはならない筈だ。
……まあ、頑張ってくれよ? 私の可愛い兵達と、私の友の将達よ?