真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

40 / 63
独り……つ? え?

 

side 公孫賛

 

「それじゃあまたねっ、白蓮ちゃん!」

 

 ぶんぶんと手を振りながら離れていく桃香に向けて、私も軽く手を振り返す。一回首へし折られてんのに、元気だよなぁ……へし折ったのは私だけどさ。

 ……なんでこんな風に桃香が元気にして、しかも何事もなかったかのようにしているのかと言うと……私の特技で桃香の死を地味にして世界から隠し、死が無いと言うことは生きているんだと誤認した世界が桃香を生き返らせたからだ。

 当然ながら殺した時の記憶の大半は地味にして思い出せなくしてやって、桃香の認識では『私に凄く怒られて一夏を連れていくのは諦めた』と言う状態にしてあったりする。

 

「……いいのか? 賛嬢ちゃん」

「いいさ。ここで殺したら面倒だし……本当に世界を平和にしてくれるんだったらそっちの方が得だしな」

 

 ……等と言ってはいるものの、実は一度殺した時点で桃香の生殺与奪は私の物になっていたりする。

 一度殺して、殺した傷と事実を地味にすることによって復活し、今も生きている桃香の傷を地味にするのを辞めれば、桃香はすぐさまそこで死ぬ。それは私が離れていようがどこに居ようができるので、結局桃香は助かっているかどうかと聞かれれば首をかしげざるをえないような状態にあるわけだ。

 

 …………私カラ一夏ヲ奪オウトスルカラダ……身ノ程ヲ知レ…………。

 

「賛嬢ちゃん、なんか黒いの出てるぞ」

「ああ、そうだな、出てるな」

 

 それは私の感情(主に憎悪と憤怒と嫌悪)だろうな。気付いたのは結構前なんだが、あまりにも感情が昂るとそんなのが出てくるようになってしまったんだよな。理由は知らんけど。

 

 ……ちなみに、こうしてみるとできないことなどほとんど無いように思えなくもない私の特技だが、当然のことながらできないことも存在する。

 例えばさっきの死者蘇生モドキも、何千人の目の前で明らかに殺したとわかる方法で殺したものを蘇らせることは難しい。世界の認識だけでなく、数千人の認識まで同時に誤魔化さなければならないからだ。

 その他にも不可能はあるが……まあ、一番大きな物はそれだろう。

 

 逆にできることはそれなりに多い。洗脳に隠蔽に怪我の治療に限定的な死者蘇生、距離を地味にして無視することによる縮地と「またつまらぬものを斬ってしまった……」ごっことか、存在を地味にして諜報仕事をしたり、目立たないことを利用して敵を作らないこと。酷い技としては『相手の優れた部分を普通程度にしてしまう』こともできたりする。

 つまり、私は天才を凡人に変えることができるんだ。

 

 ……できるってだけで、やったこともやろうとしたことも無いんだけどさ。

 そんな私を一夏は『優しい』って言ってくれるけど、実は私は優しい訳じゃない。単に面倒事が嫌いな一夏のために、一夏がずっと好きなだけ眠っていられるように、その為だけに行動してるんだから。

 

 民を慈しむのは、反乱を起こさせないようにしながら衣食住が保証されているこの職を守るため。兵を鍛えるのは、反乱を起こされた時にそれをすぐに鎮圧するため。私が実力を隠しているのは、この世界の全てから自分と一夏だけは何があっても守り抜くため。

 ……そのためだったら、私は何だってしてみせる。例えこの世の全てが敵になっても、世界がそのように運命を定めていても、私と一夏が共に過ごすと言う未来だけは守り抜く。

 

「その時は俺も出るから安心しなよ」

「そうか。正直に言ってありがたい上に心強いことこの上ないな」

 

 私がそう言うと、一夏はいつも通りの緩い笑顔を浮かべて私の背中にもたれ掛かって来た。かっこいい一夏もいいけど、いつも通りの何もかもを受け入れてくれそうな柔らかい空気の一夏の方が私の好みだ。

 

「……それじゃあ、戻って寝るとしようか。なあ、一夏?」

 

 小さくなった一夏を背負い、私は桃香達の消えていった方向に背を向けて歩き出す。桃香達の軍には細作もつけてあるし、これから桃香達がどんな風に道を歩んでいくのかが楽しみだ。

 ……が、先に私は私でやるべき事を終わらせなければな。

 

 今月の分の取引のために北まで軍を向かわせなければならないし、黄巾賊がまた国境を越えて現れないとも限らないからその対策を立てて、それから洛陽でまたなんだかきな臭いことが起きているようだしそれの予想と対策を立てて、それから普段の決裁に色々な所に放ってある隠密からの報告にも目を通さなくちゃならないし、報告の内容によってはすぐに軍を動かせるようにしておく必要もある。

 まったく、領主の仕事と言うのは面倒だな。できることが多くなればなるほどにやらなければならないことも増えていく。権力とはまったく面倒なものだ。

 

 ……まあ、そんな面倒事を引き受けているからこそ、私と一夏が普通以上の水準で暮らしていけるだけの給料が入ってきているのだから文句は言えないんだけどさ。

 

「伯珪様。白金様の就眠の準備が整ってございます」

「ああ、流石隠密隊筆頭だな。仕事が早い」

「ありがたき幸せでございます」

 

 ぺこりと頭を下げるのは隠密隊筆頭……と言うか、一番隠密らしい忍組の頭領。実際の戦闘だったら最後の砦でもある侍女組の組員の方が平均的には強かったりするんだけど、忍組の本領は戦闘じゃなくて諜報と暗躍……つまりは隠れて何かをすることだからそっち系統の能力が高ければ高いほどよかったりするんだよな。

 ……私の方が隠れるのは上手いけど。

 

 私は一夏をいつもの通り、私の執務室(仮眠用に寝台が設置されている)に連れていく。侍女組に周囲の警戒は任せて……私も久し振りにゆっくり眠るとしよう。桃華が居た時にはゆっくり眠ることもできなかったからな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。