真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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黄巾賊を、討伐しよう

 

side 公孫賛

 

 桃香が出ていって、趙雲……星が出ていって、それからしばらくしてからのこと。ついに……と言っていいのかどうかはわからないけど、朝廷から黄巾賊の討伐令がようやく下りた。

 厄介なことに態々敗北してあっちに勢いをつけさせてからだから、こっちの仕事ばかりが増えて面倒なことこの上無い。

 一応麗羽とか曹操とか袁術とか、そう言う大手にも声をかけておいてくれたお陰で私達はあまり苦労しなくて済みそうだが……そうだな、この辺りで私達は大陸から少しずつ消えていくとしようか。

 

 ……って言っても、突然消える訳じゃないけどな。いきなり消えたら逆に目立つし、これからゆっくりゆっくり大陸中の認識から私の事を消していくようにしよう。

 そして世界の認識から私と幽州の事を消して、私が死ぬまでは私と一夏の間に邪魔が入らないようにしないとな。

 

 ……計画の完成までは何年もかかるだろうが、元々認識の薄い私の事なら普通の州牧よりは噂とかそんなのも消えるのが早いだろうし、計画が完遂すれば私は面倒な賊討伐や権力争いなんかに巻き込まれないで済むようになる。私にとってはかなり大きな利点になるだろう。

 

 …………はぁ……早く一夏と一緒にのんびり暮らせるようになりたいなぁ……適当に私の意思を理解して同調してくれる後継者を育てて楽隠居したいなぁ……。暫く無理だろうけどさぁ……。

 ……だからって私は諦めないけどな!諦めたらそこで何も望めなくなる。そんな惨めな思いなんてしたくない。 なにより、一夏と一緒に居られなくなるなんて絶対に嫌だ。

 だから私は頑張れる。一夏のためだけじゃなく、私のためにもなるんだから、頑張らない理由が無い。

 

 さあ、私は私らしく、地味にこっそりいいところだけを貰って行こう。悪いところや名声は欲しい奴にくれてやるさ。桃香とか曹操とか袁術とかにな。

 

「それはそれとして、一応出兵はするぞ。黄巾賊が居なくなることはこちらにも旨味があるからな」

「畏まりました。内訳はどういたしますか?」

「陽戦隊の騎馬組二千と軽装歩兵組を二千、隠密隊の諜報専門を二百と……陽戦隊の諜報組を三百って所だな。糧食は……余裕をもって三月分見とけ」

「了解いたしました」

 

 そう言って私の侍女達はその場から離れ、私の命令を各部署に伝えにいく。まったく、本当にいい部下だよ。そうじゃなかったら私が留守の間のこの領のことを任せたりなんかしないけどな。

 文官達もそれなりに育ってきてる(異常の領域に足の爪先を踏み入れてきた)し、どこかが賊に襲われたとしても十万くらい居ない限りは落とされない程度の兵は残してきてるし心配なことはほとんど無い。

 

 ……反逆とかもされにくいように善政を敷いてきたし、権力欲の強い奴は権力欲を普通の下位くらいに押さえて理性を普通の上位にまで上げてやったから勝手に妙な動きをしたりとかはしないはずだしな。

 私が着任早々に悪徳官吏を徹底的に排除したことからそんなことをすれば確実に殺されることもわかっているだろうし、そもそもそういった事を思い付かないようにしてやることも……まあ、できなくはないんだが……流石にそれはやりすぎだからなぁ……。

 今更なに言ってんだと言う思いもあるが、それでもどうもそう考えてしまう。

 

 ……私もまだまだ甘いなぁ……いつかこの甘さで足元を掬われたりしないか心配だ。

 

「ご安心ください伯珪様。まずありません。と言うか、あったとしても白金様が支えてくださるでしょう。その間に私共が原因を排除させていただきますゆえ」

「ほ、本当か? 一夏はちゃんと私のことを支えてくれると思うか?」

「実際になってみなければ確かなことは申し上げられませんが、私が見た限りではかなりの高確率で助けにはいられるかと。白金様は伯珪様のことを大切に思っていらっしゃるようですし」

 

 うっし!と私は手を握る。侍女達は基本的に私に嘘は言わないし、言いにくいことでも口ごもりはするけどしっかり口に出してくれる奴等だから私は結構信用している。そろそろ信用から信頼に変わりそうな程度には。

 そう思いながらも自分の武器を用意する。剣を握るのに邪魔にならないようなつや消しの鈍色の手甲と、それと同じ色の脚甲。懐にはいつもの簡素な短剣を入れて、それから腰に若干細身だが普通の域に入る程度の大きさの両刃の片手剣を装備する。

 服にも実は仕掛けがあって……一夏が【しるばぁすきん】とか言うのを目立たないように鈍色にしたそれを普段の服に纏わせている。いくら攻撃されないような地味さだからと言って、油断は禁物だからな。世の中には流れ矢と言うものも存在しているわけだし。

 

 戦仕度を終わらせた私は、執務室の寝台で眠る一夏を横抱きにして運び出す。一夏が居ないと力が出ないから、防音をしっかりした馬車に乗せて一緒に行くようにしている。

 

 ……それに、無いとは思うが一夏に参戦してもらう必要が出てくるかもしれないわけだしな。無いとは思うが。

 

「それでは、これより黄巾賊の討伐に向かう。全員、急ぎつつも焦らずできるだけ長い距離を無理せず走れる程度の速度で全身!五月蝿くしたら可愛い破壊神の全力の拳が待っているから、静かにな」

『はい!(超小声)』

 

 私達は速やかに黄巾賊討伐に向かった。隠密隊の諜報の結果、黄巾賊の本隊がどこに居るかはわかっているし、それがなんのために集まろうとしているのかもわかっている。

 ……旅芸人の三姉妹が、まさか黄巾賊の……いや、黄巾党の頭だとは思ってもみなかったがな。

 

 まあ、こっそりと皆殺しにしてやれば勝手に瓦解してしまうだろうし、そうしたら後は他の有力諸公に任せればいいだろう。面倒だし。

 私は軍を率いて黄巾賊の本隊の居る地へと走りながら、そんなことを考えていた。

 

 

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