真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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忘却の、彼方へ

 ……ふぁ……眠い……。外はいい天気だし、気温はポカポカと暖かいし、静かだし……寝るにはいい日和だよなぁ……。

 賛嬢ちゃんの率いる軍は何の問題も欠員もなく目的地に向かって進行しているし、俺の出番は無いよなぁ……。

 

 ……ぁ~……眠い。おやすみ。

 

 

 

 

 

side 公孫賛

 

 黄巾賊を蹴散らしながら進み、そして黄巾賊の本拠地に到着した。

 正確には本拠地ってのはおかしいんだが、とりあえずにたようなもんだと思ってくれればいい。

 

 そこには黄巾賊の頭である張角が居て、それだけでなくその妹である張宝と張梁も居るらしい。うちの諜報員は優秀だからその情報に疑いは持たない。

 なにしろ相手が諜報を受けていることに気づかないどころではなく、むしろ相手から情報を差し出させることができるのだから。やはり認識を弄って『そこに居るのが普通』であると思い込ませると諜報は捗るな。

 

 ……とは言え、実際には私ほど細かい調整が効くわけじゃないから本人達にはそれなり以上の身体能力や話術なんかも仕込んでおかなくちゃならないんだが……それでも便利なことには変わりない。有能な分だけ他の奴よりも給料は高いんだが、その分しっかり頭の奥底、根底まできっちりかっちり洗脳して私への忠誠を刻み込んである。何も無しに他人を信用できるほど器がでかくないんでな。胸と同じように並なんだよ。

 

 ……さて、私の狭量のことは置いておくとして……ここからはどうしてやろうかね?

 できれば私は名はいらないから重要な所には行きたくないんだよな。正直に言ってこういう領外での風評は私には必要なくなるし、私の大切な領民を下手に減らしてしまうわけにはいかない。そうするくらいならば名などいらない。

 ……何度も言うが、私にはそんなものは必要ないからな。

 

「そう言うわけだから、麗羽達は好きにやっといてくれないか? 私は私で適当に討ち漏らしでも相手にしとくからさ」

 

 にっこりと笑いながらそう言った私に、いくつも視線が突き刺さる。

 麗羽や桃香、天の御使いからは『なに言ってんだこいつは』という視線。関羽や夏候惇からは臆病者を見るような視線。曹操や孫策からは…………ちょっとわからないな。腹芸は得意じゃないんだよ。

 その他にも様々な種類の視線が私に突き刺さってくるが、私はつとめて無視をする。平常心平常心……と。

 

 ……平常心ってのはつまり『普通の状態』ってことだからな。私にとっては呼吸をするのと同じくらい簡単なことだ。

 だから私はこう言う交渉事は得意じゃないにしろ苦手ではないし、いつでも平静を装うことで内心を読ませないことができるというわけだ。

 

 ……一夏みたいに表情を出して騙すやり方は苦手だけど。

 

「で、いいかい?」

「……好きになさい」

 

 麗羽はそう言ってそっぽを向いた。どうやらちょっと拗ねているようだが、理由がわからん。こいつだったら『ほーっほっほっほ!仕方がありませんわね!臆病者の白蓮さんに代わってこの私が黄巾党を成敗してみせますわ!ほーっほっほっほっほっほ!』とか言うと思ってたんだが。

 ……ほら、曹操も訝しげな表情を浮かべてるじゃないか。お前に何があったんだ?

 

 ……まあ、別になんだっていいけどさ。麗羽がなに考えてんのかわからないのなんていつものことだし。

 それに、私には害は無いしな。

 

 ……さて、それじゃあ私はあいつらに遊撃体勢をとるように命令しておくか。後はあいつらが勝手に黄巾賊の残党及び逃亡者を皆殺しにするだろう。

 ……優秀な部下がいると仕事が楽でいいな。本当に。

 

私はそんなことを考えながら軍義の行われている天幕を誰にも気付かれることなく出て、自分の軍の展開されている場所に歩を向けた。

 

 

 

 

 

side 劉備

 

 ……あれ? いつもの可愛いのは無いの?

 ……そう、無いんだ。ちょっと残念……かも。

 

 白蓮ちゃんが出ていってから、私達は自分達で作戦を決める。誰もが功績を欲しがる中で、さっさとそれを放棄しちゃった白蓮ちゃんは既にほとんどの人の意識から消えていて、私も白蓮ちゃんの言動がちょっとおかしい事に気付かなかったら…………

 

 ………………あれ? 何がおかしいんだっけ……?

 ……うん、なんにもおかしくなんて……。

 

「桃香様」

「はひゃっ!?」

 

 突然後ろから話しかけられてびっくりして変な声が出ちゃったけど、私はすぐに後ろを向いた。

 そこに居たのは愛紗ちゃんと朱里ちゃん、雛里ちゃんの三人で、どうやら黄巾党を倒すための策を考えついたみたい。

 でも、私より朱里ちゃんや雛里ちゃんの方が頭がいいし、実際に戦うのは愛紗ちゃんだから……私にできることなんて、愛紗ちゃん達を自由に動けるようにしてあげることだけ。それ以外にはなんにもできない。

 

 だから私はにっこりと笑って、兵のみんなを動かす許可を愛紗ちゃん達に与えた。

 

「……ところで、桃香様」

「どうしたの? 愛紗ちゃん」

「大したことでは無いのですが……いったい先程は何をお考えになられていらしたのですか?」

 

 ……さっ……き? ……そう言えば、何を考えてたんだっけ……?

 ……あれぇ…………?

 

 

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