真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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そのじゅう

 

 

 

 

side 公孫賛

 

翌朝早く。汜水関に入城を果たした連合軍の首脳達に、私は説明を求められている。

何の説明かと言えば、それはもちろん『どうやってこれほど早く汜水関を落としたのか』だが、これに関しては素晴らしいほど簡単な理由を用意してあったりする。

つまり。

 

「さあ白蓮さん!どのようにして汜水関を落として見せたか言ってごらんなさい!」

「落としてない」

「…………は?」

「だから、私は落としてない。物見を出しておいたら勝手にあちらさんが退いていったから、迅速かつ静かに占拠しただけだ」

 

とまあ、こんなもんだ。

 

……嘘は言っていないぞ? 物見の役割をやろうとしていた私が同時に月を連れて華雄と張遼を私の領に降らせるように仕向けて、そして華雄達の説得は月に任せてるからこれはあくまで内輪の話。私は関わってない。その上で月達は私の領まであいつら自身の意思で退いていったんだから、ひとっつも嘘は言ってない。

 

「なんで逃げたのかはわからないが、もしかしたら麗羽に恐れをなしたんじゃないか?」

「おーっほっほっほ!それは仕方のないことですわ!なぜなら私は袁本初、三国で最も美しく、最も気高く、最も高貴で、最も優秀な存在なのですから!」

「麗羽。最も気高く最も高貴ってことは……皇帝よりも上だと?」

「…………二番目ですわ!」

 

……まったく、締まらないな。

だが、この馬鹿さと真っ正直さは好ましいものがある。私は麗羽が嫌いではないよ。

嫌いでなくとも攻められたりすることがあると言うのが戦乱の世の悲しい所だが、攻められたら私も反撃するだろうからお互い様と言うことだろうな。

 

……昨日の敵が今日の友……といかない世の中だ。いつか桃香や趙雲達と戦うことがあるかもしれないと思うと、普通の私は悲しみにくれてしまいそうだ。

悲しみにくれても反撃すると思うが、できることならそんなことは未来永劫来てほしくはないな。

 

戦争は面倒だ。人殺しなんてしたくないし、できるだけやらせたくもない。

争い事は鬱陶しい。争うくらいなら酒を飲み、わいわいと馬鹿騒ぎしていた方がよっぽど有意義だ。

人を殺すために剣を握るくらいなら、田畑を耕すために農具を握る方がいい。

敵を滅ぼすことに知識を使うくらいなら、作物の成長をよくするために頭を使う方がいい。

だと言うのに、人間はなぜこうして同じ人間同士とあれほどまでに争うことができるのか、不思議で仕方がない。

自分がけして譲れないものを守る時以外に、わざわざ戦争なんてことをしたいとは思えない私からすると、現状はもう滑稽でしかない。

 

……なんて事はどうでもいいから適当なそこら辺に放り出しておくとして、適当にこれからのことを決めていかなくちゃならないよな。

始まりの理由はでっち上げで、終わりまでの道程も最も盛り上がるべき場面も嘘ばかりの張りぼての舞台だが、それでも一度参加したからにはできる限りいい終わり方で終わらせたい。

月とも約束したし、私自身もそうしたい。一夏と私と私の領に住む民が無事ならある程度はどうなっても構わないのだが、それでもやはり助かる人間は多い方がいいからな。

 

「まあ、正直私は麗羽が羨ましいよ。頭がよくて、優秀で、華があってさ」

「そうでしょうそうでしょう!おーっほっほっほ!」

高らかに笑う麗羽に、私はいつも通りの普通の笑顔を向ける。麗羽を持ち上げるのにももう慣れた。いつでも同じことを言っている訳じゃないが、大体どんな誉め言葉でも喜ぶからな。

だが、皮肉とかそういうのには割と鋭い方だから気を付けないといけない。麗羽は拗ねると長いし、そうでなくとも浪費家なのに更にそれが酷くなるようだからな。

 

「……それで、これからどうするつもり?」

 

私と麗羽がのんびりと掛け合いを続けている所に、突然曹操が口を挟んできた。私としては別に構わないが、曹操の事が好きではない麗羽はあからさまに嫌そうな表情を浮かべている。

こうして分かりやすく感情を外に出す所も麗羽の魅力の一つでもあるんだろうが、それは同時に欠点でもある。

 

「まあ、正直に言って逃げてくれるんなら私は追う気はあまり無いな。虎牢関の方も兵がいなくなってるらしいから、もしかしたら私達が軍義を開いてるうちに董卓は逃げちまったのかもしれないぞ?」

「し、失礼しましゅ白蓮さん!いったいどのようにしてその情報を手に入れたのでしょうかっ!」

 

私の言葉に手を上げて質問してきたのは、桃香のところの諸葛孔明。まあ、ちびっこ軍師の片割れだな。

それに曹操の所の荀文若も同じように不可解な表情を浮かべているが、こちらとしてはなんでそんなことを聞かれるのかが理解できない。

 

「そんなもの、普通に諜報のための早馬を使ったに決まってるだろ? 何でそんなことを聞くんだ?」

 

私がそう問いかけてみると、今度は別のところから声が上がった。

 

「西凉の馬超だ。悪いが、早馬を使った所でわかるはずがないと思う」

「? なんでだ?」

「ここから虎牢関まで、馬を潰すくらいの勢いで走らせても二日三日かけないと到着しない。まして諜報のために往復させたなら一週間はかかるだろ」

「かかるわけないだろそんな時間。洛陽まで半日もかからないのに、なんで虎牢関まで行って帰ってくるのに一週間以上かかるんだよ?」

「ここから洛陽まで半日!? 馬鹿を言うなよ公孫賛。あたしらの騎馬隊が全速力で駆けても───」

「ああ、わかった言い方を間違えた。お前のところの騎馬隊と違ってうちの騎馬隊だったら後先考えなければそのくらいできるんだよ。なんならこの後汜水関から虎牢関まで競走してみるか? 勝てたら汜水関一番乗りの手柄を譲ってやるぞ? 負けたら馬軍のこの戦の恩賞は私が勝手に決めさせてもらうけど」

「くっ……西凉の騎馬隊を馬鹿にするか!良いだろう!乗ってやる!」

 

乗ったよこの娘。真っ直ぐすぎて可哀想になってきた。

まあ、負ける気は無いから諦めてくれ。勝っても負けても私には大して損は無い。

 

「とりあえず、虎牢関に着くまで各自適宜行動しておいてくれ。ただし、先に洛陽まで行って牙城旗を立てようとしても無駄だってことは言っておくからな」

 

……そう言えば、詠も私の馬の速度が非常識だとか言ってたな。ちゃんとついてきた癖に。

夜道を駆け抜け一刻程度で洛陽から虎牢関まで到着した時には頭を抱えてぶつぶつと『いやいやありえないでしょ!? なんで洛陽から虎牢関までの道を一刻足らずで走破してるのよ!? なによこの馬実は馬じゃなくて馬の形をしているだけの幻獣かなにかなんじゃないのいいえ絶対そうよそうに決まってるじゃなくちゃあんな速度で走って潰れないどころか息一つ乱さない馬なんてこの世に居るわけがないじゃないそもそも私はなんでこうして洛陽から虎牢関まで走ってきてるのよきっと夢ねそうよ夢よじゃないとこんな都合のいい非常識が次々起こるとは思えないわなんだ夢なのねそれじゃあ早く起きて月を助ける策を練らなきゃああ忙しい忙しい本当にあの腐れ宦官は迷惑なことばっかり……』とぶつぶつ呟いてもいたが、その辺りは黙っておく。

 

「それと、皆わかっているとは思うがこの連合軍は董卓から陛下を奪還するために組まれたものだ。略奪行為など明らかにそれに相応しくない行為を取った者は将だろうが兵だろうが全力をもって止めるつもりだ。……構わないな?」

 

ぐるりと周囲を見渡して反対意見がでないのを確認し、私は席を立つ。

これから馬超の選んだやつと競争しなければならないので、とりあえず私も誰か選んでやろうと思う。

 

……論功行賞が楽しみだ。

 

 

 

 

 

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