真・恋姫†無双~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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そのじゅうよん

 

 

 

side 公孫賛

 

ゆるりゆるりと私の能力の効果範囲を広げて行き、漸く大陸全土が私の力の効果範囲内になった。

細かい説明は昔(公孫賛編最終話辺り)したはずだから省かせてもらうが、私は一夏達とこの幽州でのんびり暮らしている。

 

私の領の民は新しく入った民を受け入れ、月を筆頭とする新参者は徐々に幽州へと慣れていった。

中でも呂布……恋の適応は人一倍早く、早く馴染もうと努力している月より若干ながら早く馴染んで行った。

武力はおよそ千人長が二人分程度、忍頭に戦い方によっては勝つこともできる程度だが、そこから少しずつ伸びてきている。

 

陳宮も私の文官に混じって仕事をしているうちに少しずつ私達の普通に染まり始め、様々な点で以前より大きく成長している。

……胸や身長は殆ど成長していないがな。

 

華雄は兵に混じって戦いを繰り返しながらみるみる力をつけていっている。

まあ、強くなっているとは言え勝率はまだまだ高くはないが、私の兵にあの手この手で煽られ挑発され、本の少し耐性をつけている。これならよっぽど罵倒されなければ我を忘れて怒り狂い、自分に従う兵を連れて死地へと特攻していくような馬鹿なことは……しないと願いたい。

 

月は侍女隊見習いとして、みるみる腕を上げていっている。元々の性格が合っていたのか、それともあくまで努力の賜物か……まあその辺りは別に構わない。何だろうがそういった結果が出ていると言うだけだしな。

とは言え武力は大したことは無い。陽戦隊の一人くらいの実力はあるが、流石に一月の間に侍女長に追い付くことはできなかったようだ。

 

張遼は一時的に落ち込んだり喜んだり酒をかっくらって騒いだりしていたが、白馬義従の訓練を真似て自力で強くなり始めている。

元々かなり精強な騎馬隊だったが、今ではもしかしたら地の能力だけなら大陸最強の一角に入っているかもしれない。

……これでもう少し酒を抑えてくれたればなぁ……。確かに幽州の酒は一夏の知識のそれを真似た美味い酒だが、作っている量はあまり多くないから結構いい値段だったりするから、今月分の給料のかなりの部分が吹っ飛ぶぞ?

あいつが今月何を食って生きるのか、正直心配だ。

 

あと賈駆だが……いまだに幽州の普通に慣れないでいる。

幽州の普通と幽州以外の普通は全く違うってのに、外の常識と普通をいまだに大陸共通の普通だと言ってしがみついている。

…………だが、口ではそんなことを言っていても、体は口に反して正直だ。じわじわと幽州の普通に慣れ、少しずつだが賈駆の言う『異常』の領域へと足を踏み入れている。身体は精神に深く関連しているし、それから少しずつ慣れていってしまうだろう。

月も普通に慣れてきているし、孤独な状況では人間は生きてはいけない。いつまで持つか楽しみではあるが、できることなら早めに慣れて欲しい物だな。他人が苦しんでいるところを見るのは好きじゃないんでね。

 

「……賛嬢ちゃん?」

「ああ、起こしてしまったか? すまんな」

 

私の膝に頭を乗せていた一夏が、ふとその目蓋を開いた。一夏が好きな時に好きなだけ眠っていられる地を作ったのだが、肝心の一夏はたまにこうして起きてしまう。

まあ、起きている時がなければ眠っている時との違いを理解することはできないし、私も一夏と話をすることができなくて少し寂しかったりもするし……一夏が起きていたいと言うならそれでいいよな。私にも役得があるし。

 

私は一夏の柔らかな髪を撫でる。まるで鴉の濡れ羽のような美しい黒糸が、私の指にするりと絡み付いては抜けていく。

一夏はそれに合わせてふぅっと目を閉じて行き、やがてもう一度緩やかに胸を上下させるようになった。

 

侍女長の手によって一夏に薄い布団が掛け直され、一夏はその布団に頬を擦り付ける。

昔は私が一夏に甘えるばかりだったのだが、今では殆ど逆になってしまっている事に、ふと笑いが漏れてしまった。

 

……やれやれ、私も大きくなったものだ。昔の私が今の私を見たら、いったいどんな顔をすることやら。見てみたいような、見たくもないような……。

 

「……伯珪様。お楽しみのところ申し訳ありませんが、追加の書類でございます。限界まで減らしてありますが、できるだけお急ぎください」

「ああ、わかった十五秒で終わらせる」

 

そしてその後は一夏と一緒に恒例の昼寝の時間だな。

私の領の外ではまだまだ戦は続いているようだが、正直に言って私には関係の無いことだし、どうでもいいな。

桃香や麗羽のこともあるから多少は気を向けてはいるが、どうなろうと私自身はそれをただ受け入れるのみ。

そして受け入れられない事が私の身に降りかかってきたのなら、一夏よろしく排除に動く。

 

……まあ、そんなことにはならないと思うがな。

 

「終わったぞ」

 

私は積み上げられた竹簡の山を指して、同時に湿気を地味にして墨を乾かしておく。これを怠ると書き直さなくちゃならないから手は抜けないが、このくらいだったら寝ていてもできる。

竹簡に手をつけてからの所要時間はきっかり十五秒。流石に小数点以下八桁より下は切り捨てているが、恐らく四捨五入でも十五秒だろう。

 

「……はい、確認いたしました。それではこちらへどうぞ、お休みの準備が整っています」

「ああ、ありがとう」

「感謝の極みにございます」

 

ぺこり、と頭を下げた侍女長は、そのままゆらりと気配を消して部屋の外へと出ていった。

私はそれを見届けてから、股を枕にしている一夏を抱え上げて寝室へと運ぶ。大きい時の一夏は男前で抱き上げられたいと思う男で一番だが、小さい時の一夏はむしろ抱きたい男で一番なんだよな。

とは言え、私の中で抱かれたい男も抱きたい男も一夏一人だけだから意味の無い位付けなんだがな。

 

そっと一夏を寝台に横たわらせ、わたしはその隣に入る。

すると一夏は私にきゅっと抱きついてきて、腕を枕にすやすやと安らかな寝息をたてる。

そんな一夏の髪を撫でながら、少しずつ迫ってくる眠気に抗うことなくゆっくりと目蓋を閉じていく。

最後に一夏の頬に唇を落とし、この距離ですら聞こえるか聞こえないかと言う程度の音量で囁く。

 

「お休み、一夏。……愛しているよ」

 

今までも、これからも……死が二人を別つまで。ずっと、ずっと…………。

 

最後の言葉は口には出さず、心の中で呟いてから私は意識を手放した。

 

 

 

 

 




 
恋姫編おーわりっ。呉? またいつか♪
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