怪奇美術館⁉ プリキュアを探せ
西暦2004年___
静かな暗闇の中、周囲に浮かぶ惑星。太陽系と言う宇宙空間の中に亀裂が入り、暖かな光を放つ隙間が生まれる。そこから現れる白銀の鎧を身に纏う赤と銀の巨人。
白銀の鎧は光の粒子となり右腕にブレスとして装着される。胸の八角形のクリスタル【カラータイマー】が赤く点滅し、肩を上下に揺らす。乳白色に輝く瞳の先、そこに浮かぶのは青く輝く星【地球】。両腕を地球に向けて伸ばした巨人は光の速度で飛行する。
その背中を宇宙の星々が歓迎するかのように輝くのだった………
人波が広がる交差点。ありふれた都会の様子だが元々、田舎暮らしが長いのと色鮮やかな生命の鼓動を感じる事が無かったために、どこか新鮮で真新しさすら感じる。それとも【2004年】は僕自身が生まれる前の年だからなのだろうか?
ふとビルのガラスに映る自身の姿が目に入る。そこに映るのは男にしては細身な体系、身長は140cmちょっとと、同年代と比べても明らかに小柄だ。顔立ちも男か女か分からない中性的な顔立ちをしており、女子小学生と言われても仕方のない容姿。
服装はオレンジ色炎とも翼とも見れる特徴的なデザインがプリントされたTシャツの上に胸元までチャックがある水色とも緑色とも言えない絶妙な色合いのパーカー、下はデニムのズボンにガンホルスターが右腰に。ホルスターには一見すると玩具の様に見える変わった見た目の銃がはめられておりその外見はまるで、おもちゃを手放さないごっこ遊びに夢中の子供に見える。
右腕には青系の光を淡く放つクリスタルが埋め込まれた白銀のブレスレットが装着されており、右手の掌の中にはカジノチップを想起させるメダルが日光の光を反射して輝く。3枚のうち一枚は汚れを知らない白色から鉛色へと変色。その様はまるで、役目を終えた【マケット怪獣】の様だ。
風が頬をなで、男子の中では長めの黒い髪を靡かせる中、【プリキュア】と呼ばれる力を持つ少女たちを探すため再び足を進める。彼女らについて事前知識はほとんどない。知っているのは光の力を使う事と中学生ぐらいの少女たちだという事。手に持つメダルが放つ特殊な波長、人間には感知する事すら出来ないこの波長を頼りに彼女たちを探し出すしかない。
【ジーっとしてても、ドーにもならねぇ】という訳で、鉛色へと変化したのと白色1枚、計2枚の【ゲッティンメダル】を左手に持ち変えブレスへと近づける。するとメダルはブレスのクリスタルへと引き寄せられ、ブレス内部に収納された。
手元に残したゲッティンメダルを懐にしまい、メダルが示す方向へ道なりに進む。
メダルに導かれるままにやって来たのは美術館。駐車場にバスが止まっており、行事などに使われているのが一目で分かった。ただメダルの力で判断できるのは大まかな場所まで。人が多い美術館でプリキュアに変身する個人を特定するのは至難の業。
そもそも、2004年以前に発行されたお金って持ってたっけ? いや有るには有るけど、足りるかな?? 【女神様】に渡されたお金で足りると良いんだけど………………………… 普通に足りたわ。それにしても美術館か… 最後に来たのはいつだっけ?
入館時に渡されたパンフレットを片手に、視線を展示された絵に向ける。少なくとも高校生になる前なのは確かだ。高校に入ってからは一人暮らしを始めた事も有って、バイトに明け暮れていたからね。あ、この絵は知ってる!
元居た可能性宇宙でも聞いた事や教科書に載ってたような絵、影も形も無かったけどこっちの地球では有名な人。僕自身が芸術に詳しくないのもあって具体的にかつ確かな情報ではないけど、微妙な文化の違いが面白いや。
でも本来の目的は文化の違いを感じるのではなく、プリキュアを探す事。僕に力を授けてくれた女神様によると、2004年に誕生した最初の二人を皮切りに年々新しい戦士が誕生していくらしい。つまりこの時代のプリキュアが初代となる。
まぁ、本人達は自分達の後続が誕生するとは思っても見てないだろ。なんなら僕が同じ立場だとしても思わないし。話題も目的もそれてきてるが気持ちだけはしっかりと持って美術館の中を進んでいく。それにしても彫刻も展示してあるんだ……
腰にぶら下げているガンホルスターを揺らしながら【
「……………ッ!」
かなりの距離が離れている為、周囲の人々は気がつかなかったが常人を超える聴覚を持つ蓮の耳にはしっかりと聞こえていた。咄嗟に振り返った蓮は走りたい気落ちを抑え、気持ちはやめの速度で逆行。やがて何かから逃げるように走る人々とすれ違う中、器用に人を避けながら来た道を戻る。
「ここなら…」
人波を通り抜けた蓮は監視カメラに映らない物陰へと身を潜める。周囲に人がいないのを確認した後、左手を右腕のブレスレットの元へと持っていく。するとクリスタルが輝き一段と増し、そこから溢れた出た光の粒が一つの物体へ変化。
グレーに近い黒色の持ち手に3つのくぼみがある水色のパーツ、手持ちの少し上にはZ型のクリスタルが埋め込まれており、先端には鉱石が埋め込まれている。変わった形をしたアイテム【ゼットライザー】を左手に持ち、親指でトリガーを押す。
ゼットライザーから機械音が鳴り響き、蓮の正面がX字型に切り裂かれ、長方形上に切り裂かれる。切り裂かれた空間の先には異空間が広がっており、何の躊躇もせずに蓮は異空間との境目【ヒーローズゲート】を潜り、異空間【インナースペース】の中へと入りこむ。
黒が広る空間の中、金色の光が風のように走る。その中で蓮が手にする光から生成された1枚のカード。上下のふちには地球上に存在しない言語で文字が書かれ、白の背景に蓮の正面、その上部分に少女の横顔が描かれてる。そのカードをゼットライザー上部に差し込む。
『Ren! Access Granted.』
ネイティブな英語音声が空間内に響き渡る中、黒色だった空間が白色に染まる。依然として金色の風が吹く中、水色のパーツを横へとスライドさせ展開。扇状になったゼットライザーのトリガーを再び押す。
『Hoffnung Mut.』
その音声を耳に蓮の肉体は眩い光に包まれていく____
蓮が光に包まれてからほんの少しの時間が経過した。悲鳴の発生源でもある大きな絵が飾られた部屋では歌舞伎の様なメイクをした青年と2人の女子中学生がにらみ合っていった。少女達は互いの手を取り、もう片方の手を天へと伸ばしある言葉を紡ぐ。
「「デュアルオーロラウェーブ!」」
その直後、二人の身体を虹色の光が包みその姿を戦士へと変えていく。それぞれ黒と白を基調にしたドレスに身を包んだ少女達、光の使者【プリキュア】と呼ばれる姿へと変身した彼女達は鋭い視線を歌舞伎調のメイクをした青年に向ける。対する青年は闇の魔物を使役し、少女達にけしかける。今、美術館を舞台に光と闇の戦いが始まろうとしていた。
プリキュアに流れる光の力と男自身と使役する怪物が纏う闇の力を感知する自分つが一人。時間は少し巻き戻り、彫刻の様に固まっている人々のうち一つに優しく触れてどうにか元に戻せないか試行錯誤していた小柄な人物。
「これは…… 石化の類か?」
白を基調とし赤いラインが入ったノースリブの服とズボンを身に着け、胸部に拳より一回り小さい八角形の鉱石が埋め込まれた銀色のリボン。黒と銀が交互に流れるストレートな髪をロングヘアーにし、シンプルなヘアピンで前髪を止めた黄色の瞳の持ち主が顎に手を当て思考する。
紡がれる声色は蓮の中性的な声を少し高くし女性に近づけたようなもの。この姿の名は【ホッフヌングムート:スタンダード】。蓮が偶発的に手にしたもう一つの変身で、光の巨人の力を人の姿で行使する為の物。その様は偶然か必然か、彼が探しているプリキュアに似ている。
インナースペースで変身を完了させた蓮は光に近い速度で悲鳴が聞こえた部屋に向かう途中、彫刻になってしまった人々を視界にとどめる。脳裏に浮かんだとある光景から自然と彫刻へ赴き調査を始めたのだった。
「………ッ! 今はそれより」
肌で感じた闇のエネルギー。尾を引かれる気持ちを持ちながらも事態の解決のために移動を再開。その速度は先程と違い、彫刻に当たらぬよう合間を縫いうように駆け足で美術館の中をかける。
「これは……ッ!」
少女達がプリキュアに変身したその時、彼女達が秘める光に呼応し右腕のブレスに収納されたゲッティンメダルがこれまで以上の輝きを放つ。その光はブレスのクリスタル部から漏れ出しムートにしか視認することができない光の波長で道しるべとなる。
その光の線に導かれ移動を速めるムート。しかしそれをあざ笑うかのように正面から暗い水の波が押し寄せてくる。
「おっと!」
ヤバいと思ったその瞬間、条件反射で宙へと舞い上がるムート。波よりも高い高度にたどり着くとその場にとどまり視線を後方へと向ける。強化されたその瞳には医師にされた人達の姿が!
「ッ!」
空気を切り裂きながら天井のそばを飛び、波よりも早く彫刻の元……… 厳密には彫刻となった人々が並ぶエリアと廊下の境目である柱の前に止まり、掌に光の粒子を集める。それはやがてガンホルスターの中に入っていた変わった見た目の銃【トライガーショット】へ。
右手でグリップを握りしめ、中心部の【トリプルチェンバー】と呼ばれる3連シリンダーを回転させ【ブルーチェンバー】を選択。トリガーを引き、青色の光弾が柱に向けて放たれる。柱を抜けた光弾は破裂し彫刻を守るようにドーム状のバリアを展開、廊下と部屋を物理的に分断した。
「ふぅ~ ……しかし、この波はいったい何処から?」
波がバリアに押し返されているのを見下ろしホッと息を吐いたムートはトライガーショットをブレスの中にしまう。眼前の危機が去ったことで疑問を呟くムート。しかしその思考はすぐに途切れる事となる。
「ザケンナー!」
後方から叫び声をあげ迫りくる巨体。緑に輝く鱗を持つ龍のような生命体が、荒波の中を泳ぎムートへと突撃する。間一髪のところでいなしたムートだったが、龍の額がぶつかったバリアが大きな音をたて軋む。
「取り合えず、まずはこいつを倒す!」
左手は拳を握りしめ左肩辺りに、右手は指を軽く曲げ手の甲を上を上に向け肘を正面に伸ばす独特のファイティングポーズを取り、龍と睨み合う。荒波の音が周囲を支配する中、波によって流れた展示品が壁にぶつかる音を合図どちらからともなく接近。
「ザケンナー!」
「ダアァァーシャアーー!!」
龍の噛みつきを躱し、これまた独特な掛け声と共に蹴りを入れる。ムートの一撃がヒットしたその時、衝撃で水しぶきが舞い、龍の瞳が見開かれた。痛みに怯んだその隙に眼前へと回り込み力の限り拳を突き出す。
その一撃を受け、大きく後退した龍。怒りに表情を浮かべ迫りくる中、ムートは冷静に右手の指を揃え右肩に持ってゆく。掌に集まるエネルギーはやがてチャクラム状の光刃を生成、それを龍目掛けて投げる。ムートの手元を離れた光刃【シックザールギロチン】は龍の胴体を次々と切り裂き、役目を終え消えた。
『ゴメンナー』
切り裂かれた肉体は分裂し、小さな紫色の星形生物となり去って行く。星形の生物がいなくなるのと同時に床一面に広がっていた波もまた、勢いが無くなり水面が徐々に下がる。床へと降り立ったムートが後ろに振り替えり人々に被害がない事を黙視すると奥へと歩みを進めた。
奥から響くわたるは戦闘音を廊下を進んでいく中、突然と照明の明かりが遮られる。疑問に思ったムートが頭上を見上げると彫刻にされた人々が宙を浮き、廊下の奥へと吸い寄せられていた。ムートが張ったバリア【キャプチャー・キューブ】は既にバリアは消失している。
「人質を兼ねた盾として使うつもりか」
この先で起きている戦況を予測、最悪の事態を思い浮かべる。彫刻で移動が制限される中、できる限りすばやく移動。しかし後方から迫りくる彫刻も回避しながら進む為、思うように動けずにいた。やがて最後尾の彫刻がムートの横を通り過ぎる。
「しまった!」
「____!」
「パオーン? ………ッ!」
不幸か幸いか、周囲に配慮をしなくてよくなったムートが美術館の展示品をダメにするつもりで飛行しようと宙に浮かぶ。そのまま進みだそうとしたその時、背後から聞こえた象の鳴き声に感に身を任せ前方の床目掛け移動。
風を切り裂き壁を壊す音が背後から聞こえ振り替える。そこには象と言えば象、マンモスと言えばマンモスに見える生物がムートを睨みつけていた。その影に思わず苦笑いをこぼす中、再び鞭の様に振るわれた鼻を背中を飛び越えることで回避。
「今度は馬!」
着地したその瞬間、軽快な足音が聞こえ視線を向けると馬に乗り両刃剣を構えるナイト兵の姿。振るわれた刃の下を前転で潜り抜けた。すぐさま立ち上がったムートはひとまずある程度の広さがある部屋の中へと身をひそめる。
「………っく!」
しかしその部屋にも馬にこそまたがっていないがナイト兵が待ち構えており、ムートに向けて刃を振り下ろす。刃が届く寸前にバックステップで回避し構え、眼前のナイト兵に警戒しながら後方にも視線を向ける。既にマンモスと馬乗りナイト兵が部屋の出入り口をふさいでおり囲まれていた。
数秒が数分に感じられる静寂を崩したのはナイト兵だった。振るわれた刃を持つ腕をつかみその威力を利用し、後方の馬兵に向けて投げ飛ばす。馬から転がり落ち、前足付近に落ちた剣に怯えどこかへと走り去る馬。一方、反対に鼻息を荒くしムートへ突進をかますマンモス。
「ぐううぅぅ………!」
迫りくる牙を掴み踏ん張りその勢いを抑えるムートであったが、圧倒的な体格の差で徐々に壁際に追い込まれていく。ムートが押されるたびに床の一部にヒビが入り捲れてゆく。
「………ッ!」
壁とマンモスに押しつぶされそうになったその時、身体を宙に浮かべ壁を床に見たてて足場にする。そのまま膝を曲げ一気に伸ばす事でバネのように力をつけ一気に押しだす。苦しそうな鳴き声を上げるマンモスを横に投げ転倒させるとゆっくりと着地。
降り立ったその隙を狙い振るわれた刃をしゃがむ事で回避し、続けざまに切りかかってきた元馬兵の剣の側面を蹴ることで軌道をずらす。鉄の鎧が凝る会う独特な音を響かせ2体のナイト兵はムートを攻め立てていくが一つ一つ丁寧にさばいてゆく。
ナイト兵Aの一撃を両手で受け止め背後から迫るナイト兵Bの腹部を蹴り吹き飛ばす。ナイト兵Bが壁にひびを入れる中、ナイト兵Aを少し押し出し後ろへ倒れこみながら腕を十字に組み、白色の破壊光線【スペシウム光線】で手に持つ両刃剣を壊す。
自身の得物を破壊され表情こそないが狼狽えているナイト兵A。その動揺の隙に跳ね起き、拳にエネルギーを溜めるとナイト兵Aの鳩尾に向けて突き刺す。その一撃を受け、胸部のアーマーから火花を散らし後方へと大きく吹き飛ばさせる。
「_____!」
ムートがナイト兵を相手にしてる間に体勢を立て直したマンモスが怒涛の勢いで迫る。一歩踏み出すごとに美術館が揺れる中、ムートは宙に浮かび上がり左手を左腰で握りしめ、その上に開かれた右手を乗せる。そのまま右腕を振るうと手のひらから放たれる二つの光。その輝きは一寸の狂いもなくマンモスの瞳に直撃。
痛みに怯み動きが止まったマンモスの足を潜り抜け、下に潜り込むと腹部に手を添え持ち上げるように高度を上げていく。突然の襲い掛かる浮遊感に暴れるマンモスを無視、自身を軸として回り始めたムート。回転速度を上げ竜巻の様に風を纏いながら上昇、マンモスの抵抗が弱くなったタイミングで床目掛けて投げ落とす。
『ゴメンナー、ゴメンナー』
自重と重力の力も合わさり床に大きな穴を開けたマンモスはその身体は星へと変える。その様子を背にナイト兵Bに視線を向けるとそのまま急降下キックを放つ。その一撃をまともに受け、マンモスと同じく星へと分裂。残る最後の一体が破れかぶれに拳を振り上げムートへと迫る。
「「……………………………………」」
二つの人影が交差するその瞬間、ムートは姿勢を低くしナイト兵の横腹に向け手刀を抜く。互いに背を向け固まる両者。先頭の余波で出来たヒビから流れる隙間風が2色の髪を揺らす中、ムートは静かに歩き出す。
『ゴメンナー、ゴメンナー』
ナイト兵Aが膝から崩れ落ち、小さな星形生物へと分裂。許しを請うかのようなセリフを吐きながらどこかへ消える。それ同時刻、ステンドガラスで出来た美術館の屋根から突き出た虹色に輝く光。その光が晴れた時には先頭の爪痕は無く、彫刻になった人々も元に戻っていた。
【ベローネ学院女子中等部】の2年桜組のバスが美術館の駐車場を抜け一般道路へ走る。そのバスの歩道側の席に座るふたりの女子生徒、歌舞伎メイクをした青年と対峙していた少女達と歩道を歩く蓮がほんのわずかな時間だけ交差するのだった。互いにその事を知らずに。
彼らが縁を結ぶのはもう少し後の出来事……
まだ設定が定まっていないところもありますがグダグダ言っても仕方ないのでのんびり更新していきます。今回はプロローグ2話的な意味も込めているため主人公、蓮が持つ力の大雑把な説明を主に置いたつもりです。
今回はちょっとだけの出番でしたが次回は蓮と初代のふたりが合流し、本格的に物語が始まっていく予定なのでお楽しみに! 感想をくださるとありがたいです。
設定集的なのって必要ですか?
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いる
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いらない