ガンダムビルドダイバーズ Fallen Divers   作:杉鋸

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#05 リアル

 腹ぺこチッキンはストーリーミッションが佳境っぽい雰囲気になってきた事もあってか――ビルドダイバーズにならってだろうか?――ストーリーミッションの生配信をする様になっていた。

 ストーリーミッション探しは動画の影響もあって更に加速したらしく元の数字からすれば飛躍的にチャンネル登録者数を伸ばした腹ぺこチッキンだったけれども、もっと有名なGチューバーもストーリーミッションの動画を投稿・配信する様になった事で結局その手の配信者達の中でも中堅どころに食い込めたかどうか程度に留まっている様だった。

 

「今日も助けてくれてありがとう、腹ぺこチッキンのおふたりさん!」

「な、なーに、俺達は大したことはしてないさ」

「義を見てしなかったらチキンになっちまう。そんなのは嫌ってだけだぜ」

 

 細かい言い回しは毎回違えど、何度も似た様なお礼を言われては照れるのを繰り返す太っちょのホンマカ・ジャマカに、自分はチキンじゃないだけと言い張る鳥のケイ=ラン・クエー。他の配信者は自分に付いてる猫耳族からもっと話を引き出して見どころを作ろうとするシーンで同じ様な光景を繰り返すだけのつまらなく、それでも腹ぺこチッキンの二人が善良であろう事の伝わってくるいつもの光景だ。……人格が善良であったとしても、動画としてつまらない事は覆しがたいが。

 ――猫耳族は話して話せる相手なのだ。NPDの類とは思い難い柔軟な会話能力を持ち、ミッション目標の選定にも影響を与えうる存在。そしてプレイヤー・あるいはパーティ毎に別の猫耳族が付き、時に担当の猫耳族が来られない事もあるという人間臭さを持つ固有性のあるNPD群。ストーリーミッションのストーリーはともかく、その技術には何度となく驚かされる。

 今は腹ぺこチッキンに付いてる猫耳少女が過去には他のダイバーとも接触している辺りある程度は使い回されてるのか、人気が出て来たからNPDを増やす事にでもしたのか。色々と裏事情も気になって来る所だ。

 

 俺のフォースネスト船、エピゴーネンの推進器のテストは一応とはいえ終わって、今は大量の核爆弾を収める格納庫を作る日々を送っている。……今やGBNでアインハンダーを使ってした作業の大半はエピゴーネンの建造作業になっていると思う。

 そして格納庫を作る作業の合間にシークレットミッションの呼び出しを受けては格納庫に収める核爆弾を買う為のビルドコインを稼ぎ、格納庫の材料を使い切って配送を待つ合間の時間にGチューブでストーリーミッションの様子を眺める。独特の充実感のある毎日だ。

 

「っ! 腹ぺこチッキンのおふたりさん! 続けてになっちゃいますけど、お願いがあります!」

 

 ストーリーミッションでミッションの終わり際に次のミッションが発生するというのは初めて見たと思う。ストーリーも大詰めなのだろうか? ……そんな時にシークレットミッションの呼び出しが入った。

 まあ生配信とはいえ配信終了後にはいつも通り動画として投稿されるだろうから、シークレットミッションでまた一稼ぎしてくる事にしようか。そう思って俺はシークレットミッションに参加した。

 

 

 

 

 

 

 メールに書いてあった情報からして厳しい事は分かっていたとはいえ、今回のシークレットミッションは本当に尋常では無く困難なミッションだった。

 無数の敵戦闘機を掻い潜りながら敵基地内部に侵入し、重要な設備と有力なMS部隊を撃破する……単機で出来るミッションではないし、当然単機ではない。

 無数の僚機が存在し、また撃墜されても文字通りの残機――機体の仕様に合わせてマークを変えつつ表示されている――を選んで再出撃する事ができる。そして今回は帰還がミッション目標には含まれず、メールの文面でも「手段を選ばず、全戦力を磨り潰してでも敵基地を沈黙させろ」と明確に損害を度外視している事が伝わってくる依頼文が用意されていた。

 

 大砲付きの機体で何体ものMSの胴体をぶち抜き、戦闘機にビームバルカンを浴びせ、スクリーミングニンバスで切り裂きエドならぬ首狩りキョウカになった。

 爆弾付きの機体でいい感じに集まってたMSに1発落として纏めて撃破し、大型火砲横の弾薬庫に1発落として誘爆させ、残る1発を抱えたまま翼が半分吹っ飛んで墜落間近、適当なMSに近づいて爆弾をそのまま起爆。

 そんな感じで大活躍した戦い以外にもあっさり落ちたり、「残機」の置き場を狙ってくる敵とやり合ったり、いい戦いをしてた敵機の翼の上に降着脚を叩き込んで撃墜したりで何十回も撃墜されながらも多数のMSを撃破したし、結構な数の重要設備も破壊した。

 残機も敵の勢力ゲージ(?)もほとんど尽きて戦いも終盤、といった頃には当然ヘトヘトだ。まあ元から長期戦になる事も分かっていれば、報酬もその分かそれ以上に多く出るとされているんだから文句は言うまい。

 結局ヘトヘトで何がどうなってるか把握できない内に僚機が決着となる一撃を決めたらしくいつも通りの離脱ポイントへの移動が指示されてそれで終わりになった。

 ……ゲームとしては最初よりは面白いかもしれないけれど、それ以上に厳しい戦いばかりになっているからビルドコインの儲けが多くなかったらやってられたものじゃない。

 

 

 

 

 

 

 シークレットミッションから帰って来たら既にエピゴーネンの追加の材料は届いていた。……とはいえもはや集中力も体力も限界も良い所だ。

 

「そういえば腹ぺこチッキンのストーリーミッションはどうなったんだろうな」

 

 シークレットミッションの前に見ていたストーリーミッションの続きが気になり腹ぺこチッキンのチャンネルを開けば驚く事にまだストーリーミッションは続いている様だった。

 

 大量の敵MSに磨り潰されたらしい少数の味方MS、半ば叫びながら腹ぺこチッキンを応援する猫耳少女。

「や、やらせるもんか、やらせるもんかよ……!」

「立てるならファットの方のフラグにしとけよジャマカ……そのセリフはデスの方の()()()フラグだぜ…………!」

 

 コメントを見る限り俺がシークレットミッションをやってる間もずっと戦い通しだった様で心配の声すら上がっていた。……普段の動画はつまらないけど善良で、根性もある。格好いい奴らじゃないか。

 けれど、ストーリーミッションの戦闘機も今回のシークレットミッションよろしく再出撃できる様で、だからこそ延々と続く戦いに腹ぺこチッキンの2人は磨り潰されようとしていた。

 

 

 

「っぁ! お兄ちゃん!!!」

 そんな時、敵MSの放った銃弾が味方MSを撃ち抜き、沈黙させて猫耳少女が比喩でなく悲鳴を上げた。

 

「こ、この野郎っ! ぶっ殺してやる!!」

 ジャマカは本気で怒っていた。――ストーリーミッションのストーリーそのものは陳腐でも、猫耳族(NPD)はどうしようもなく生々しく魅力的な存在で、その真に迫った悲鳴には俺も心が痛んだ程だ。実際に会話し続けている腹ぺこチッキンの二人ならなおの事だろう。

 そうしてジャマカは味方MSを撃った敵MSに突撃した。真正面からではなくほぼ真横くらいの角度からで、しかしジャマカ機の飛行音にでも気づいたのかこちらを向く、そして

 

 ……画面に一瞬ノイズが走ったかと思うと、GBNの中の光景が映っていたはずの画面には実写の兵士が映っていて、ジャマカ機から発射されたであろう銃弾がその兵士の胸を撃ち抜いた。

 

「ジャ、ジャマカさん、お兄ちゃんの仇……討って…………」

 

 猫耳少女の声がした。

 ……あの猫耳少女がしそうな動きをしている、あの猫耳少女の声でしゃべる、涙を流している見知らぬ実写の外国人が通信画面に映っていた。

 ジャマカが操作したのか画面に映し出された味方MSが撃破された場所らしき場所にも実写の兵士が倒れていた。地面にはその兵士から流れ出たであろう血が広がっていた。

 

「な、な、な、なんだよ! なんだよぉ!! なんなんだよぉ! これぇ!!」

 

 ジャマカが叫んでいた。

 俺も聞きたいよ。ゲームだろ? GBN(これ)は。

 

「お、驚かせる為のハッキング! ハッキングだろ!? お、俺はチキンじゃ、チキンじゃないから!! こんなの、ちっとも怖くなんか、ないぜ!?」

 クエーも叫んでいた。コンソールに両手を何度となく叩きつけて声を張り上げていた。

 自分が操作した通りに人が死んでいたかもしれないなんて見せつけられて、それでビビったとして、お前をチキンだって言うヤツがどこに居るんだよ。

 ……プラスチックの大き目のブーメランみたいな何かに銃が付けられた飛行物体――クエーの機体の実写版だろうか?――が何の操作もされていないのか真っ直ぐふらふらと飛んで、木にぶつかって墜落した。

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