あの後……まどかちゃんは真っ赤になりながら僕に謝罪してきた。
どうやら僕に迷惑が掛かったと思ったらしい。
別にいいんだけどね。これくらいなら。
そしてその後は比較的楽しげなアトラクションを回った。
そんな楽しい時間はすぐに過ぎていくもので……もう既にお昼を回っていた。
「もう昼なんだ……お昼はどうする?」
「そ、それなんだけど……」
そう言うとまどかちゃんはバックの中から布に包まれた箱を二つ取り出す。
「お弁当作ってきたんだけど……食べる?」
どうやらそれはまどかちゃんが作ってきたお弁当らしい。
確かまどかちゃんは自分の父親から料理を教わっていたらしいのだ。
らしいというのは……まどかちゃんの母親が働いているかららしい。
そしてまどかちゃんのお父さんの料理は結構美味い。僕も結構お世話になったしね。
そんな人を師匠にもっているまどかちゃんの料理スキルは結構高いと思っている。
だからこそ、僕はここでこういうべきだろう。
「うん、それじゃ……あっちの広場で食べようか」
もちろん、承諾した。
ここの広場は草原が広がっておりここだけ違う場所のようにも思えてくる場所だ。
そんな中の一角で僕はまどかちゃんが敷いてくれたシートの上で弁当箱を開ける。
「うわっ……美味しそう……」
僕は思わずそう呟く。
弁当としては定番とも言える玉子焼きとウィンナー。そしてコロッケにキャベツと玉ねぎ、ほうれん草の炒め物。
コロッケの形は結構あやふやみたいだから全部手作りなんだろうというのがわかる。
「ご、ごめんね。歪な形してて……」
「いや、手作り感が出てて僕は好きだよ」
僕はそう言って玉子焼きを口にする。
「んぐんぐ……うん、美味しい!」
「ホント?よかったぁ……」
まどかちゃんは安心したのか胸を撫で下ろしていた。
「ほら、早く食べようよ」
「うんっ」
そう言って二人で何気ない会話をしながら昼食を食べていった。
そして弁当をあっという間に食べ終わってしまう。
「ふぅ……美味しかった……」
「そうだね……」
そうしているとまどかちゃんの口元にご飯粒がついているのが見えた。
「あ、まどかちゃん。口元にご飯粒ついてるよ」
「えっ?どこ?」
まどかちゃんは手でご飯粒を取ろうとしているが見当違いの所を探っている。
「ああ、違うよ。ここだよここ」
僕はそう言って右手で彼女の口元にあったご飯粒を取って口に含む。
「あああ、明久くん!?いいい、今の……関節…キス……」
「ん?どうしたの、まどかちゃん?」
「いいいいいいや、何でもない……!」
?おかしなまどかちゃん。
そしてその後はまどかちゃんは終始恥ずかしそうに僕の手を握りながらアトラクションを回っていたのだが……
「………………!」
突如僕達の前を見知った顔が走っていった。
しかしその服装はいつもとは違う服装になっていた。
何て言うんだろうか……花嫁衣装的な?
「今の……」
「霧島さん、だよね?」
どうやらまどかちゃんも同じ事を思ったらしい。
でも、何で……
「なんで霧島さん……泣いてたんだろう?」
雄二が何かした?いや、あの雄二がそんな事する筈ないし……。
「とりあえず雄二を探さないとな……ごめんねまどかちゃん。折角の遊園地なのに……」
「うぅん。別にいいよ。遊園地だったらいつでもいけるしね」
まどかちゃんの同意を得て僕は雄二を探す事にした。
といってもこの広い園内を探すのには苦労する筈なのだが……
「翔子ぉ~!どこにいった、翔子ぉ~!?」
と、大声で探しているため、早く見つかった。
「雄二!」
「お、明久か!?翔子は!?翔子を見なかったか!?」
雄二は僕の肩をがしっと掴んで縋ってくる。
「お、落ち着いて雄二!痛い!痛いから!」
「あ、ああ。すまん……でも、翔子は!?」
「き、霧島さんだったら……さっき、あっちの方に行ってたよ……」
僕はそう言って指を……出口の方に向ける。
「出口だな!?すまん明久!!」
そう言って出口の方へと飛び出していく。
「く、苦しかった……」
「だ、大丈夫なのかな、坂本くん……」
まどかちゃんは心配してるみたいだけど……。
「大丈夫だよ、雄二なら」
雄二……男なら男らしく決めてよね。
雄二SIDE
出口から出て翔子を探す。
しかし、見つからない。
「くそっ……翔子の奴、どこにいきやがったんだ……」
あいつの行きそうな場所に心当たりさえあればいいんだが……。
…………待てよ。確か、前にもこんな事があったような……。
「ああ、そうだ。あれは確か……」
俺と翔子は幼なじみだった。それこそ幼稚園の頃からだ。
俺も翔子も勉強が出来るというだけでいつもイジメられていた。
その度に俺があいつを守ってやっていたんだが……一度だけ、俺が守れなかった時があった。
あれは俺が風邪を引いてしまい学校に行けなかった時。
俺が部屋で寝込んでいたら電話が鳴った。
お袋と父さんは買い物で出かけてたから俺は這って電話の場所まで行って受話器を取った。
「はい、坂本ですけど……」
『ああ、雄二君かい!?親御さんは!?』
「父と母なら今買い物ですけど……ゴホッゴホッ」
『そうか……人員は多い方がいいんだが……』
「?どうか、したんですか……?」
『あ、ああ……言いたくはないんだが……翔子が学校から出て行ったという電話があってね』
「しょ、翔子が……!?ゴホッゴホッ!」
『雄二君は無理をしちゃいけない!坂本さんにも応援を頼みたかったんだけど……仕方ない』
そう言って電話は切れた。
「翔子が……」
そこまで聞いて俺にはわかった。
俺たちをイジメていた奴等が俺がいないのをいい事に翔子をイジメたんだと……。
「くっそ!」
その時の俺は無我夢中でコートを着込んでから家を飛び出した。
季節は冬だったからだろうか……外には雪が降っていたが……俺には関係なかった。
「翔子ぉ!どこにいるんだ、翔子ぉ!?」
俺は走っては咽せて走っては咽せてを繰り返しながら探しつづけた。
しかしどこにもおらず最後の希望として二人で一緒に遊んだ公園に向かった。
そして公園についてもどこにも翔子はいなかった。
「くそっ……ここもか……」
俺は帰ろうとした時
「……っぐ…………ぐす……‥…」
あいつの…………泣いている翔子の声が聞こえた。
それは公園の中のドーム型の遊具で中身は空洞になっているタイプの物だった。
その中に入って縮こまって……翔子は泣いていた。
泣いて……いたんだ。
「見つけた……」
「っ!ゆ、ゆうじ……」
「ったく、何してんだよ……皆探してるんだぞ。ゴホッゴホッ」
「で、でも雄二……風邪が……」
「あ?ああ、大丈夫だよ。それよりも……」
その時の翔子の様子はひどかった。体中に傷がありそして……その手には俺がプレゼンとしたハンカチが握られていた。
「そのハンカチ……まだ持ってくれてるんだな……」
「……うん、私の宝物……」
「っうし!それじゃ約束する!俺は絶対に翔子を守る!約束だ!」
「……脈絡がないよ、雄二」
「うっせ!ほら、小指だせ」
俺はそう言って小指を出すと翔子もおずおずと小指を出してくる。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます♪指切った♪」
俺はそう歌って指を降ろす。
「俺は絶対に守ってやっから……」
「だったら……私は雄二のお嫁さんになる!」
「ぶふぉ!?」
「?どうしたの……?」
「い、いや……そうだな、守るって約束したもんな!」
「うんっ!!」
その時の笑顔は……忘れられない。
「もしかしたら……!」
俺は急いであの公園の所に向かった。
そして……見つけた。
「ぐっす……ひっぐ…………」
あの時と同じように……縮こまって泣いている翔子を……。
「バァカ。何泣いてるんだよ」
「ぐすっ…………ゆう、じ?」
「ああ、そうだよ」
俺は中に入ってから翔子の隣に座る。
「……ぐすっ……雄二、私の夢って……変なのかな?」
翔子はそういった。
翔子の夢は……『俺のお嫁さんになる事』……それを他の客にバカにされてこいつはここまで来た。
「確かに変なのかもしれない……」
「……やっぱり……そうだy「だけどな」…え?」
そうだ、ここで決めねぇなら男じゃねぇだろ……な、明久?
「俺はお前の夢を笑わねぇし……それに何より……お前のその夢を叶えたいって思ってる」
「…っ!ゆ、う……じ……」
滅多に驚かないこいつが驚いている。まあ、そうだろうな。
翔子からはこういうのは結構あったけど……俺からというのは初めてだもんな。
「だから翔子……頼む、夢を諦めないでくれ。お前の為にも……俺の為にも……」
「ゆ……う……じ…………」
「翔子……お前が…………
好きだ。俺と付き合ってほしい」
その言葉に翔子は……
「うっ……ぐす……」
また、泣き出した。
「って、えぇ!?ななな、何で泣く!?俺、何かしたか!?」
俺は慌ててしまう。
「…ち、違うの……」
と、翔子は目元を拭いながら
「……ただ、嬉しくて…………………
はい。私、霧島翔子は坂本雄二の事が好き。大好きです。だから……ぜひ、お付き合いさせてください」
っ……!やった……やっと……気持ちを伝えられた。
「翔子……」
「雄二……」
そして俺たちは公園の遊具の中で……あの時交わした約束を守り抜き……唇を合わせた。
いやぁ……いい話ですな……。