???SIDE
私がいるのは女子のお風呂場。そこの着衣を入れておく籠の一つの前までやってきてタオルを取り出す。
そこには……私が仕掛けたカメラが鎮座していた。
まさかあんなダミーのカメラを見つけただけで安心するだなんて……まだまだですね。
カメラの内容が待ちきれずにその場で再生する。そこにはお姉様がお着替えしている場面が……ふっふっふ……余計な邪魔が入りましたが……ああ、お姉様……♪
「っと、こんな事している場合じゃありませんね、さっさと退散「……どこへ行く気だ?」っ!?」
この場所で聞こえる筈のない声が聞こえてきた。
慌てて入り口を見てみると……そこには
「土屋……康太……!」
「やはりお前だったか……清水美春……」
お姉様と一緒のクラスに在籍している土屋康太の姿があった。
SIDE OUT
康太SIDE
「……何をしていた?」
俺は慌てて両手を背中に持っていって持っていた物を隠した気でいる清水美春にそう問いかける。
「あ、貴方こそ、ここは女子風呂ですよ?なんでこんな所に来ているんですか?ああ、そうですか、覗きに来たんですね」
どうやら清水は俺が覗きにきたと思っているらしい。
「……違う」
「何が違うんですか?」
どうやらシラを切るつもりらしい。こういう時には直球で言った方がいいな。
「……俺がここに来たのは、お前がカメラを回収するのはこの時間しかないとわかっていたからだ」
「か、カメラって何の事ですの?私は知りませんよ?」
「……ならば、その両手に持っていたカメラは何だ?」
「ええ、いいですよ。私は何も持っていないので」
そう言って清水は両手を見せる。そこにはカメラはなかった。
しかし、俺の目は誤魔化せない。今、清水は後ろ手で籠の中にカメラを入れた。
「……調べさせてもらう」
「あ、ちょちょっと!?何するんですの!?ここは女子風呂!男子は禁制!」
そこまで言ってくる事も想定済みだ。
「……西村先生に許可はもらっている」
「なっ……」
西村先生が許可したという事に驚きを隠せないのだろう、呆けた顔になっている。
そして清水の後ろにあった籠を調べてみると……そこには、カメラが入っていた。
「……決定的な証拠が出たな」
「わ、私カメラなんて知りませんわ。それに何も関係ない筈の貴方がなぜここまでするんですの!?」
……こいつは失言だな、清水らしくもない。
「……何も関係がないとはどういう事だ?俺が関係しているのはこのカメラだけ……だが、今のお前の言い方だとお前は他にも何かしていてそれは俺には関係ないと言っているように聞こえたが?」
「っ!?し、しまった、不覚を……!?こうなれば貴方を黙らせるだけ!」
そう言って俺に飛びかかってくる清水。
はぁ、やれやれ……そこまで
俺は飛びかかってきた清水の腕を逆に左手で掴んで右手を肩の部分に置いて地面に叩きつけ関節を極める。
「いっっっ!!!!????」
清水は何で自分が組み伏せられているのかわかっていないのかそれとも痛みでか、うめき声を挙げている。
「……ダメだな……相手を先に襲う際には必ず少しの隙だけしか見せない動きで攻撃を仕掛けるべきだった……隙だらけの動きをするからこうなる……」
「あ、貴方……何なんですの……?」
清水は痛みながらも俺にそう聞いてくる。
「……名前は土屋康太。職業は学生だ」
「土屋。来たぞ……やはり清水だったか」
俺がそう言うと西村先生がやってきた。
「……西村先生、後は頼みます」
「了解した、済まないな土屋」
「……別にいい。これが平凡な学生の生活」
痛みで気絶したのかぐたっとしている清水を抱える西村先生。
「本当に済まなかったな、もう現役は引退しているというのに」
「……少しは刺激がないと面白みがない。そういう点ではこの学園は大正解」
「そうか、それならよかった……じゃあ、今度こそ今のお前とはお別れだな、
「……はい、それでは」
西村先生に少し前まで呼ばれ続けていたコードネームで呼ばれて俺は女子風呂を出る。
もう、その名前で呼ばれるとは思っていなかったんだがな……。
俺はそんな事を思いながら廊下を歩いた……。
SIDE OUT
「ふぅ~……やっと一息つけるなぁ~……」
僕が今いるのは大浴場。今日は最終日という事もあって僕は最後にお風呂を堪能させてもらっていた。
「それに……脅迫状を送ってきた犯人も捕まったし……ホント、康太には感謝してもし足りないよ……」
何でも女子風呂で盗撮をしていたのは……同じ女子だったらしい。
名前は清水美春。百合っ子らしい。そんな彼女が本気で愛しているのが……島田さん、という事だったらしい。
そしてあの脅迫状も島田さんと一緒にいた僕を妬み、そんな経緯で送りつけてきたらしい。
とにかく彼女の持っていたデータは全部消去したけどね。
あんなのをむざむざ残しておくなんて僕はしない。
ガラッ
ん?
「今、何か扉が開いた音が聞こえたような……」
「おぉ~ほとんど貸切だね!」
え……今の声って……?
そして湯煙の中に姿を現したのは……さやかちゃんだった。
「さ、さやかちゃんっ!?」
「えっ!?ああああ、明久ぁ!?」
僕はさやかちゃんだと認識するとすぐに反対向きになる。
すぐに反対向きにはなったけど……でも、一瞬だけだけど見えてしまった……さやかちゃんのタオルを巻いただけの姿……!
「なななな、何で明久がここにいんのよっ!?」
「そ、それはこっちの台詞だよ!ここは男子風呂だよ!?」
「えっ!?で、でも私は確かに女子風呂に入った筈よ!?」
「何だってっ!?」
だ、誰かが僕が入った後に男子風呂と女子風呂の暖簾を入れ替えたのか!?
「ごごご、ごめん!?すぐに上がるから!」
僕はそう言って急いで上がろうとする。が
「ま、待って!」
と、さやかちゃんに呼び止められてしまった。
「あ、あのね……もうちょっとだけ、いてくれない?」
「で、でも……」
「明久にしか、出来ない相談なの……」
僕にしか出来ない、相談……。
「うん、わかった……」
僕は観念して湯船に浸かる。
さやかちゃんも僕の後ろにピタッとくっつくように浸かる。
「……っ!?」
驚きを声に出さないように唇を噛み締める。
普段はさやかちゃんは結構フレンドリーに接してくるから女子として意識はあんまりしないんだけど……でも、こういう時には「あ、女の子なんだな」って思ってしまう……。
「それでね……相談なんだけど……」
「うん……」
いったいどんな事を相談されるんだろう……?勉強関連かな……?
「明久はさ……恋するってどんな事だと思う……?」
「え……?」
いきなりの質問に僕は思わず変な声を出す。
「恋するって事はさ……失恋する事と隣り合わせだと思うんだよね……」
失恋、か……多分、自分の事を重ねているんだろう。
さやかちゃんは、恭介……本名は上条恭介に恋をしていた。
でも、さやかちゃんは……失恋した。
そしてその時の絶望によって……ついの感情のタガが外れて……魔女になってしまった。
でも、何で今になってそんな事を……?
「それでさ……明久は、自分が恋する相手が、自分じゃなくて他の男子を見ているとしたら……明久はどうする……?」
それが、さやかちゃんの相談事か……。
「うぅん……」
これは結構難しい相談だな……恋、なんて人それぞれだと思うし。
「とりあえずは、相手の事をもっと知る事から始めるかな?」
「もっと知る……?」
「そう。その男子の事を知って……それで、勝てないって思ったら素直に身を引く」
「勝てるって思ったら……?」
それはもちろん、決まっている。
「いつも通りの日常を過ごしながらその女子と一緒の時間を過ごすかな……?僕はそれだけで満足だと思うんだけど……」
これが僕の考え。無理に相手に自分を選んでほしいとも思わない。相手に強制する事も良くないと思うしね。
「そうか、そうなんだ……」
「さやかちゃん?」
でも、いったいどうしてこんな事を聞いてくるんだろう……?
「明久に脅迫状を送ってきた女子も……形は違うけど恋に生きてたからさ……ちょっと、親近感っていうのかな……?それをちょっと感じちゃって……」
さやかちゃん……。
と、背中からさやかちゃんの感触がなくなり、どうしたんだろう?と思っていると
ピト
「っっっっっ!!!!???ささささ、さやかちゃん!?」
何と、さやかちゃんが僕の首に手を回してきた。
「私ってさ……自分で言うのもなんだけど面倒くさい女じゃない?明久は迷惑がってないかなって思ってさ……こっちが本当の相談……」
面倒くさいって……。
「大丈夫だよ。さやかちゃんは確かに面倒くさい女の子みたいに見えるけど」
「やっぱりなんだね……」
ああ、ちゃんと誤解は解いとかないと。
「でも、さやかちゃんはムードメーカーなんだよ。その場にいるだけで場を和ませてくれる……さやかちゃんがいなかったらマミさんや杏子ちゃん、ほむらちゃんまで魔女になってたかもしれない……皆の笑顔の中にいつもさやかちゃんがいたから、ここまで来れたんだよ……」
「明久……」
「だから……さやかちゃんはもっと自分に自信を持っていいんだよ」
「明久……ありがとう……」
さやかちゃんがどんな顔をしているのかは分からない。でも、最後にはきっと笑顔になってくれる筈だから。
僕はそう思いながら背中に抱きついているさやかちゃんの頭を撫でつづけた。
「よしっ!元気が出た!ありがとう、明久!」
と、勢いよく立ち上がるさやかちゃん。
「それはよかったよ、さやか……ちゃ…………ん……………」
元気が出てよかったなって思いながら後ろを振り向く。
そして、失念していた。
ここはお風呂場。浴室内である。
湯船に入る際にはタオルを外さないといけないのはマナーだ。
つまり……さやかちゃんは今、タオルを着けていない。
そこから導き出される答えはただ一つ……さやかちゃんは裸で立ち上がり、僕はそれを間近で見てしまった。
「あ…………きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!??????」
さやかちゃんの強靭な蹴りを喰らって湯船に沈められる僕。
確かに、今回に至っては……僕が、悪かったよ……。
そんなこんなで、僕等の強化合宿は幕を閉じた。
いやぁ……最後の最後でラッキースケベを発動しましたね、明久!
「僕からしたら散々な目にしか合ってないようにしか、思えないんだけど……」
大丈夫ですよ!皆さんは喜んでくれるから!
「僕が喜べないんだよ!」
こんな作品ですが、よろしくお願いします。