僕は走っていってしまったさやかちゃんを追っている。
残っていた島田さんや姫路さんの方は杏子ちゃん達が何とか止めてくれているだろう。
それよりも、今の問題はさやかちゃんだ。
さやかちゃんにとってあの時の事は禁句中の禁句だ。
それを寄りにもよってこんな時に……!
「にしても……どこに行ったんだ……?」
あれから結構走ってるけど……全然影も形もない……。
「いやいや、待て待て吉井明久……よく考えろ……」
こういう時……さやかちゃんならどこに向かう……?
さやかちゃんはひどく傷ついている。そんな時はさやかちゃんは一人で何もかも抱えて泣く筈だ。
つまりは……誰も来ないような場所……。
「……もしかして……?」
僕は走るのを一旦止めて窓から中庭を見てみる。
そこには、探していたさやかちゃんの姿があった。
中庭の噴水の縁……そこにさやかちゃんは腰かけていた。
「ひぐっ……ひっ……ふっ……」
ほらね。やっぱり泣いてた。
「はぁ、はぁ、はぁ……探したよ、さやかちゃん」
「っ!?あ、明久……」
僕の姿を見た途端、さやかちゃんは少しだけ後退した。
僕から遠ざかるように。いや、多分自分から遠ざかったんだと思う。
「さやかちゃん」
僕は一歩進む。
それに合わせるようにさやかちゃんも下がる。
「僕はさやかちゃんを責めないよ」
「そんなの信じられない!!」
さやかちゃんはそう叫んだ。
「明久は優しいからそう言ってくれる!でも、世間はそうは見てくれない……島田さん達の反応がいい例よ!あたしなんか……明久の近くにいちゃ、いけない」
僕はその先を聞きたくなくて……早足でさやかちゃんに近づき、さやかちゃんを抱きしめた。
「世間がどう言おうが関係ない」
「っ!?」
「僕は……さやかちゃんだから、傍にいてほしい……ううん、まどかちゃんも杏子ちゃんもほむらちゃんもマミさんも……僕の隣にいてほしい」
僕はさやかちゃんを抱きしめながらそう呟き続ける。
「僕の支えになって欲しいって思ってる……それに」
僕は一度離れてさやかちゃんの顔を見る。
その目元には涙があり、目は赤くなっている。多分、あの後ずっと泣き続けていたんだろう。
「さやかちゃんには……涙は似合わない」
僕はそう言って右手でさやかちゃんの涙を掬う。
「あ、明久……」
「僕は絶対に離れない。たとえさやかちゃんが離れても、絶対にその手を掴んでみせる」
「明久……明久ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
さやかちゃんは大声で泣き叫びながら僕に抱きつく。
「あの時の事……思い出して……私がやったんだって……私が……明久を殺しちゃったんだって……」
「大丈夫だよ」
僕はただそう言ってさやかちゃんの背中をポンポンと叩く。
「大丈夫。さやかちゃんが僕を助けてくれたから、僕は今ここにいる。だから、大丈夫」
「明久……」
僕は、さやかちゃんが泣き止むまでその小さな体を抱きしめ続けた。
「ごめん……明久……」
「いいよ。僕は別に気にしてないしね」
「でも……」
さやかちゃんはまだ気にしているみたいだった。
「じゃあ、今日は僕の泊まる部屋に泊まろう」
「え?」
「僕はさやかちゃんは何も悪くないって知ってる。悪いのはあの白ゴキブリの方だ」
「ぷっ、白ゴキブリって……」
よかった。笑ってくれた。
「ほら、行こう」
「うんっ!」
そう言って僕等は自分達の泊まる部屋へと向かった。
「そういえば、泊まる部屋聞いてなかったな……」
「明久って肝心な所で締まらないよねぇ……」
う、うるさいな!聞く前に飛び出していったんだから仕方ないだろ!?
と、とにかく霧島さんに聞いてからいかないとな。
さやかSIDE
「すぅ~……すぅ~……」
「ふふ……」
あたしは明久のいる部屋で明久が寝ているベッドの縁に座って明久の顔を眺めている。
明久はいつだって優しい。その優しさにあたしはいつも救われた。
他の皆もそうだ。
「ホント、明久は罪作りな人だよねぇ……」
あたしからも、魔法少女である他の皆からも好意を抱かれて……いや、まあ、あたしの場合は最初は恭介の事が好きだったんだけど……。
「でも……いつの間にか、明久の事が好きになってたんだよね」
本当にいつかはわからない。気づいたら好きになってた。
「お休み、明久」
あたしは眠っている明久の頬にキスをする。
そして自分のベッドに入って、今あたしがした行為を反復する。
あ、あれ……あたし今、ごく自然にキスしなかった……?
「………………////」
ダメだ、顔が赤くなるのがよくわかる。
だ、ダメだ。早く寝ちゃおう。
それに……今日はなんだか、いい夢が見られそうだし……。
あたしはそんなことを思いながら意識を手放した。
その時見た夢は覚えてないけど……見滝原での戦いの記憶、だったと思えた。
SIDE OUT
まあ、結構色々な人が予想していたと思いますが、次回はさやか視点の過去の話。