翌日、僕らはそれぞれの教室で奮闘していた。
「暗幕はこの辺でいいか?」
「ちょっと待て……もうちょっと左……そうそう、その辺だ」
「これ、どこの!?」
「それはこっちで必要な部品。それより、暗幕足りないんだけど」
「暗幕だったら体育館の方にまだあったから、そっちに行って!」
僕が今現在いる場所はBクラス。
何とBクラスの代表である根元君が了承した。
『はぁ?肝試し?何で俺がそんな事』
『面白そうじゃん!やるよ!』
『おい!まずは代表である俺が了承を』
『『『『『『『了承、してくれるよね?』』』』』』』
『はい、了承します……』
……………………うん、了承してくれたよ?
いや、だってあの時の女子達の顔見たら誰でも言う事聞かせられると思うんだよね。
なんだろう、笑顔なんだけど笑顔の時のような朗らかな感じがしないって感じかな?
聞き入れてくれないと……わかってるよね?的な?
「あ、Aクラスの代表さん。ここは大丈夫ですよ?きちんと働かせるんで」
「あ、そう……」
「はい♪」
何か、凄い朗らかな笑顔だね!?
ま、まあいいか。大丈夫なら。
僕は苦笑いを浮かべながらAクラスへと戻る。
Aクラスでも皆きちんと準備をしてくれていた。
「なんか、いいよね。こういうの」
「まどかちゃん」
他のクラスを見に行っていたまどかちゃんが僕の後ろから声をかけてきた。
「皆で何か一つの目標に突っ走るって感じ……共感出来るんだ」
「そっか……まあ、僕もかな」
「ああ!二人とも、帰ってきたのなら手伝ってよ!?こちとら、てんてこ舞いなんだからね!」
ドアの前でまどかちゃんと話をしていたらさやかちゃんがやってきた。
どうやら結構辛そうだ。でも、その顔に苦しいといった感情は見えず代わりに笑顔があった。
「うん、行こうかまどかちゃん」
「うんっ」
そして、僕らも準備に取り掛かる。
「ふぅ……開催っていつだったっけ?」
「えっと……」
「肝試しをするのは三日後よ。ちなみに終業式が近いから終わったその日に片づけをしないといけないんだけど」
「あ、そうなんだ」
「ほむらちゃん、休まないようにね?」
「だ、大丈夫よ。きちんと来るわ」
ほむらちゃん、やせ我慢しないで怖いからあんまり参加したくないって言えばいいのに。
トンカントンカントンカンッ
「にしても、結構音が響くね、教室内だから仕方ないかもしれないけど」
「それで他のクラスに迷惑がかかる筈がないから気にしなくてもいいんじゃねぇか?」
そう、僕らはいるAクラスは完全防音だ。と言ってもこのAクラスだけではなく、新校舎自体に防音対策がされているためだ。
しかし、だからと言ってFクラスとかがある旧校舎に防音対策がないというわけではない。
あちらもきちんとされているが、いかんせん旧な為あまり意味がないのだ。
と言っても向こうで騒いでこちらに音に関する被害があるとは言えないが。
と、その時
「「お前ら、うるせぇんだよっ!」」
と、扉を強引に開け放ちそう叫ぶ声が聞こえてきた。
扉をの方を見てみると……そこにいたのは常夏先輩だった。
「お前ら、うるせぇんだよ!俺達に対する当て付けか!?」
「夏期講習に集中出来ねぇだろうが!」
何かほざいてるんだけど。
「あ、あの先輩ですよね……?今私達準備中なんで静かにしていただけると」
「だから、その準備の音がうるせぇっつってんだろうが!」
「きゃっ!?」
優子さんが注意しに行ったら逆に突き飛ばされた。
あいつら、あそこまでしなくても!
「ちょっと常夏先輩!」
「誰が常夏先輩じゃ!」
「お前、面倒だからって省略しやがったな!?」
おっと、つい心の声と同じ呼び方で呼んでしまった。
「おぉい、明久。ちと話が……なんで常夏先輩がこんな所にいるんだ?」
と、雄二がやってきて、何で常夏先輩がいるのかと聞いてくる。
「てめぇまでか、坂本!?」
「どうやらいつでもつるんでる吉井と坂本は脳の容量が足りてねぇようだな」
「いや、ただ単に覚えるのが面倒ってだけだが……なぁ、明久」
「うん、別に覚えても覚えなくてもどっちでも構わないし」
「「おめぇら失礼過ぎるだろ!」」
いや、確実にそちらが失礼だと思うんですが。だって、僕らは真実を言ってるだけだ。
それに対してあちらは勝手な主観が入ってるからねぇ。
というか、何か殺気立ってない?受験でピリピリしてるのかな?
「大体な、こんな俺達三年にとって大事な時期にこんな事してんじゃねぇよ!」
「これで受験落ちたらてめぇらのせいだからな!音がうるさくて集中出来ねぇんだよ!」
どうやら、まだ居座るつもりらしい。
というか、おかしくない?
「おいおい先輩方。そいつはちょいとおかしいんじゃねぇか?」
「あぁ?何が言いてぇ、坂本?」
「ここはAクラス。Aクラスがあるのは新校舎だ。そして新校舎は防音がしっかりとしている。試召戦争の為に建てられたような建物だからな。音に関しては厳しい筈だ」
「そうよね。確かに音は教室内で響く事はあるにしても外の、しかも三年のクラスにまで響く事なんてありえないと思うんだけど?」
さやかちゃんも参戦し始めたし。
「「うっ……」」
諦めるの早っ!
「こんな感じじゃないですか?先輩方は勉強に飽きてフラフラしているところで僕達が何かやってるのに気がついて、八つ当たりをしにきたってところですね」
僕が笑って言うと常夏の夏の方である夏川先輩はバツが悪そうに目を逸らした。
「それじゃあ言わせてもらうがよ、坂本よぉ!お前らは迷惑極まりないんだよ! 学年全体での覗き騒ぎに、挙句の果てには二年生男子が全員停学だぞ!?この学校の評判が落ちて俺たち三年までバカだと思われたらどうしてくれんだ!内申に響くじゃねぇか!」
「先輩、学年全体といいましたけど……全員ではないですよ?」
「確かに文月学園のイメージが落ちたのは事実だが。だけど、それが直接的に内申に響くわけじゃないだろ?内申とは先生方がその人の学習活動や学校生活についてを書く文書のことなんだからな。だから、お前等三年生がしっかりしてれば内申には響かないことになる。それに文月学園のイメージはこの肝試しが成功すればあがる」
確かに雄二の言うとおりだ。
「それに、内申が微妙ならこんな所で油売ってないで勉強したらどうですか?」
「っ、言ってくれるじゃねぇか……!」
何か、退きそうにないな。
「まったく……西村先生から言われたから来てみれば……三年生はどうしてこうも厄介事を持ってくるかね……」
「学園長!?」
呆れ果てた様子で学園長がやってきた。
「そうまでしてストレスを発散したいなら、させてやろうじゃないか。あんたらも肝試しに参加すればいい」
「はぁ!?何で俺達がこんな低俗な奴らなんかと!」
「同じ学園に通っていてしかもあんたらは上級生なんだよ?もうちょっと言葉遣いを考えて喋りな……!」
「「……っ!?」」
学園長が反対してきた常夏の常の方を注意する。
する、けど……なんだろう、今の。殺気が混じってた。
「ちなみにあんたらに拒否権はないよ。そうさね、明日の夏期講習・補習の最終日は全員参加の肝試しにしようか」
「「なっ!?」」
「ただし、これはあくまでも補習と夏期講習の仕上げだからね。補習と講習の参加者は余すことなく全員参加すること。いいね」
学園長はそれだけ言うと出て行く。
「やれやれ……ま、そういうワケだセンパイ。楽しくやろうぜ?今までのことは水に流して……よ」
「お、お前らなんざと仲良くやるつもりはねぇ……」
「だろうな。俺もアンタらは気にくわないし……ってことで、こういうのはどうだ?」
「あぁ?」
「驚かす側と脅かされる側にわかれて勝負をする」
「二年と三年でわかれて、ってことか」
「あぁ。それなら仲良くやる必要は全くないだろ?」
「確かにな。これなら公平な勝負みたいになるし」
「悪かねぇな。当然俺たち三年が驚かす側だよな? 俺たちはお前らにお灸を据えてやる必要があるんだからな」
「ああ。別にそれで構わない」
驚かす側に回って笑ってやろうとか考えてるんだろうな。
だったら、その鼻っ柱へし折ってやりたい。
「決まりだな。それでルールなんだが……」
そう言って雄二が取り出したのはA4サイズのプリント。
多分だけど、これが出来上がったからうちのクラスに来たんだろうね。
肝心のルールがこれ。
・二人一組での行動が必須。 一人だけになった場合のチェックポイント通過は認めない。
※一人になっても失格ではない。
・二人のうちのどちらかが悲鳴をあげてしまったら、両者とも失格とする。
・チェックポイントはA~Fの各クラスに一つずつ。 合計四ヶ所とする。
・チェックポイントでは各ポイントを守る代表者二名(クラス代表でなくても可)と召喚獣で勝負する。 撃破でチェックポイント通過扱いとなる。
・一組でもチェックポイントを全て通過できれば驚かされる側、通過者を一組も出さなければ驚かす側の勝利とする。
・驚かす側の一般生徒は召喚獣でのバトルは認めない。 あくまでも驚かすだけとする。
・召喚時に必要となる教師は各クラスに一名ずつ配置する。
・通過の確認用として驚かされる側はカメラを携帯する。
・設備への手出しを禁止する。
・ペア相手を亡きものにしてペアを変わることを固く禁じる。
「あとはこれに設備を壊した時の代償とペア相手を消そうとした時の代償を追加する予定だ。学園長が煩そうだからな」
ペアのほうはFFF団対策でもある。
まあ、正直意味はあるかな?とは思うがペナルティがある以上、そこまでするとは思えないしね。
こうして、三年も巻き込んだ大規模な物になってしまった。
「はぁ……」
はぁ、憂鬱だ……。
「だ、大丈夫?明久くん?」
「大丈夫、明久……って、大丈夫じゃないよね」
「仕方ねぇよ。明久の意思とは関係なく罰ゲームの対象にされたんだからな」
杏子ちゃんの言うとおり、僕は罰ゲームの対象にされた。
しかも、巻き込まれる形で。いや、まあね?
僕もあんな風に言ってたから対象にされるかなとは思ってたけど……。
「雄二も雄二だよ。勝手に決めてさ……」
「まあ、これで負けられない理由が増えたからよかったんじゃない?」
「ほむらちゃん、そんな問題じゃない……!」
ちなみに今回の罰ゲームというのは、個人的な物だ。
勝手に決める事なんて出来ないしね。
それでだけど、多分常夏先輩はチェックポイントにいるんだろう。
戦わないといけない、よなぁ……。
「はぁ……」
最近、ため息が多くなったと思うんだけど……気のせいだよね?
ちなみに常夏を怒った時の学園長の心の声
「あぁん?てめぇら、何グレンの意志を継いだ奴を罵倒してんだ?ぶっ殺すぞ?」
怖いですね、女性を怒らせるとwww