ある日、敵である深海棲艦の子どもを拾ってしまった電。
匿うことに決めた彼女に降りかかる禍とその結末。

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艦これ二次創作/読み切り超短編(SS)

〜某日 某鎮守府 港〜

 控えめな太陽、涼しい風が吹き抜ける晩夏の鎮守府。訓練終わりに岸壁を散歩していた電は、とある招かれざる客と遭遇していた。

 

ザザーン…

 

電「………。」

 

イ級「………。」

 

イ級「キュイ」

 

電(はわわわわわわわわ)

 

イ級「キュイ」

 

電(はわわわわわわわわ)

 

電(く、駆逐イ級なのです!?見たところ

  幼体のようなのですが…。)

 

電「困ったのです…ここにいるのが見つかれば、討伐されちゃうかもしれないのです…。」キョロキョロ

 

 この時、大規模作戦に向けて準備の真っ只中である鎮守府。ただでさえ緊迫した空気の中、敵が自陣で見つかったとなれば、幼体であれど殺されてしまう可能性は十分にあった。

 

電「とっ、とりあえず人のいない所に…!」ハワワ

 

イ級「キュイ?」

 

〜鎮守府 第四倉庫〜

電「ここなら少しの間は心配ないのです」

 

イ級「キュイ…」グ〜

 

電「お腹が減っちゃったのです…?」

 

ガサゴソ…

 

電「これくらいなら…バレないよね…?」

 

 そう呟くと、電は傍らに積まれていた資材の中からエサになりそうなものを拝借して、イ級の前に差し出した。

 

イ級「キュイッ♪」ガツガツ

 

電「深海棲艦って、燃料とか鋼材も食べるのですね…。」

 

 少しだけ鎮守府の仲間に罪悪感を感じつつも、電はこのイ級を当面のあいだ保護することにした。

 

〜鎮守府 食堂〜

 イ級の隠匿を始めてから数日…結論から言えば、皆にその存在を知られる事はなかった。

 

暁「レディーは辛口のカレーくらいどうってことないんだから!」パクー\ボォォォ/

 

雷「ほら言わんこっちゃないわ!この水を飲みなさい!」

 

暁「ち、ちょうど喉が乾いていた頃なのよ!ありがとう雷!」ゴクゴク

 

雷「いつでも私に頼っていいのよ!」

 

響「ハラショー」中辛パクー

 

電「…。」

 

雷「あら電、またご飯残してるじゃない。

どうかしたの?」

 

電「なっ(裏声) なんでもないのです!

もう食べられないのでタッパーに入れて持って帰るのです!」ピュー!

 

雷「大丈夫かしら…?」

 

暁「思春期なんじゃない?」甘口モグモグ

 

〜鎮守府 第四倉庫〜

電「今日はカレーなのです!美味しいですか?」

 

イ級「キュウ!♪」ガツガツ

 

電「それは良かったのです!(数日でここまで成長するなんて…)」

 

 拾った時より一回りも二回りも成長し、もはや倉庫に隠しておくには不相応な巨躯へと変貌してしまったイ級。その光景に電は驚きを隠せなかった。

 

電(それにしても…今のところ隠し通せているけれど、ずっとここに匿っておくにも限界があるのです…。)

 

イ級「キュ?」

 

電「ん、大丈夫なのです」ナデナデ

 

ウゥ〜〜 ウゥ〜〜

 

 サイレンの音とスピーカーから聞こえる大淀と長門の声。

 

大淀「緊急連絡!緊急連絡!

今回の大規模作戦で交戦する予定だった敵主力艦隊が、鎮守府沖10㌔地点にまで急接近!奇襲を仕掛けられています!」

 

長門「聞いての通りだ。現時刻をもって作戦を遂行する!第一艦隊は即座に出撃、敵主力艦隊の足止めを行え!また、交戦可能な艦娘は早急に作戦本部まで出頭するように。以上!」ザザッ

 

電「はわわわわわわわわ」

 

電(…とりあえず、この子を逃がさなきゃ!)

 

ザッザッ

 

電「いいですか?この水路を通っていけば、島の裏側に出られるはずなのです。ここら一帯の海は間も無く戦場になります。あなたは沖まで逃げて、生き延びてください。」

 

  願わくば、二度と…。

 

 そう…例え海の上で再会してしまっても

その時、彼女は戦うことを厭わないだろう。

 優しさと甘さの違いを知ったあの日、この海を守ると誓ったから。

 

  ───だとしたら、この行いに意味はあったのか。無垢な命に、却って残酷な運命を強いたのではないか。

 

 そういった自責の念も、今の彼女はきっと、どこまでも青い海に溶かしてしまうのだ。

 

 

 その後、イ級は水路の闇へと消えた。それを見届けると、彼女は直ぐに作戦本部へと駆けた。

 

〜鎮守府 作戦本部〜

長門「──以上が、今回の作戦に参加する艦隊だ。皆準備を整え次第、出撃を!」

 

 第三艦隊に配属となった電の役目は、主力艦隊を取り巻く敵の援軍を排除することだ。

 

那智「今回、この艦隊の旗艦を務めることになった、重巡 那智だ。今作戦において、我ら第三艦隊の役目は主力艦隊の露払いだ。とはいえ、油断は禁物だぞ。各々、最善の準備で作戦に挑め!」

 

第三艦隊「はい!」

 

雷「同じ艦隊ね、電!よろしくね」

 

電「よろしくなのです」

 

 各自が準備を終え、作戦海域に向けて抜錨する。

 

〜数日後 鎮守府沖 作戦海域〜

 まだ戦闘は続いていた。電撃戦と束の間の静穏を繰り返しながら、海には硝煙の香りが漂う。

 

金剛「デーーース!」\ドカーン/

 

戦艦ル級「オオオォ…」

 

砲弾飛び交う主力艦隊同士の戦い。そこから少し離れた海域で、今日も第三艦隊は援軍とみられる敵と交戦状態にあった。

 

電「なのです!」ドーン

 

雷「とりゃー!」ドーン

 

 敵の数・質はともに、明らかに第三艦隊の戦力を下回るものであった。しかし、あまりに手応えのない敵艦隊を、旗艦の那智は少し不審がっていた。

 

那智「明らかに我が第三艦隊に劣る戦力をなぜここに投入する…?もしや…!」

 

 那智の悪い予感は、的中する事となった。

 

戦艦レ級「アハハハハハハ!!!」

 

 島影から現れたのは、戦艦レ級だった。深海棲艦は故意に少数戦力を投入、深追いさせることで第三艦隊を分断し、戦艦レ級と交戦させることに成功したのだ。

 

那智「今の我々の戦力で太刀打ちできる敵ではない!全速力でこの海域から離脱…ぐっ!」

 

 レ級の放った一撃により、那智が中破する。そこからの離脱行動が容易に許されるはずは無く、艦隊はじわじわと損耗を重ねていく。

 

電「雷ちゃん!しっかりするのです!」

 

雷「ごめん、ね…電…。」

 

 大破した雷を曳航しながら、電は降り注ぐ砲弾を精一杯回避する。他の艦隊はもちろん、付近にいる味方主力艦隊は動けない。彼女らが鎮守府を守る最終防衛ラインであり、突破されることは作戦の失敗…もとい、鎮守府の破壊を意味するからだ。

 

電(どうしてこんな事に…今はとにかく、雷ちゃんを連れて…皆と鎮守府に帰りたいのです… でも…)

 

電「ここで…終わってしまうのです…?」

 

 吐き捨てた刹那、鉛の放物線がこちらに向かって描かれる。鈍い風切り音をたてて、確実な死を運びに。

 

────もう少しだけ、みんなと…

 

 着弾する…が、そのちいさな身体に痛みは無かった。瞬間、金色の閃光が目前を駆ける。

 

那智「イ級…フラグシップだと!?」

 

イ級「ガァァァァッ!!!」

 

 電は悟った。あの子だ。フラグシップ化しているけれど、あれは確かにあのときのイ級だと。

 

那智「イ級とレ級が交戦している…!?

よく分からんが、そう長くはもつまい…

今が離脱の好機だ!総員、速力最大!」

 

 どんどん小さく、見えなくなっていくイ級とレ級は、ついに水平線の彼方へ消えてしまった。そして、その後の作戦は優勢・劣勢を繰り返したものの、最終的には深海棲艦の撃退に成功した。

 

〜大規模作戦終了後 某日 某鎮守府〜

電「某〜」

 

暁「なにぼーっとしてんのよ、というか字間違ってるわよ、電…」

 

電「はわっ!?な、なんでもない…のです」

 

 海を、眺めていた。

 

 あの子がまだ生きているのか、それともあの時…そんな事を考えながら。

 

 

 

 とある日を境に、優しさと甘さの違いを知った電。

 

 

 

 それなのに、彼女がなぜあの時、イ級を匿うような行動をとったのか。

 

 それは彼女が駆逐艦 電であるからなのか、

 

 それとも ただの心優しい女の子の純粋な感情の表れだったのか。

 

 それは恐らく誰にも、彼女自身にも分からない。

それでも。

 

 非情の味を知ってなお、彼女は変わらない。

 

そして、それはきっと 誰にでもできる事じゃない。

 

 あの時彼女を救ったのは、底なしの優しさと少々の甘さを含んだ少女の、ちょっぴりおっちょこちょいな魅力のひとつ、 なのかもしれない。

 

fin

 




拙い文章ですがお読み頂きありがとうございました。
古いデータから不意に出てきたので投稿してみました。
電好きに届け

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