Assault Lily with GODZILLA 〜Kings of the earth〜 作:俺っちは勝者の味方ー!
難しい文章を書くのが本当に苦手なんだと再認識した。言葉の意味とか使い方が間違っていたら教えて下さい。
そして、リリィの出番が少な過ぎる……
世界各地を大地震が見舞ったその日、世界中の至る所で『怪獣が出現した』という衝撃的なニュースが世間を騒がせた。
当初は超巨大な特型ヒュージなのではないかと懸念されたが、既存のヒュージと合致する生物学的な特徴は見られない。
故に、怪物が出現した地域に点在する各ガーデンは能力が未知数の敵に対して、出撃するか否か…適正な判断を下すことは出来なかった…。
その一報は民間人に知れ渡るよりも早くに、世界中の全てのガーデンに通達された。
世界規模の異常事態に発展する危険性を考慮した政府の働きによるものだそうだが、少々判断を急ぎ過ぎたようにも見える。
某研究機関を差し置いて政府が行動している時点でお察しであるが…。
これには現役のリリィだけにあらず、ガーデンを管轄する責任者やリリィを育成する立場にある教導官でさえも困惑せざるを得なかった。
しかし、通達と共に公開された…怪物の姿を捉えた映像を見て、皆一様に言葉を失う。
それは、まるで山そのもののような生物が大陸を横断する様を映した映像だった。これには、『怪物は実在する』と誰も彼もが信じざるを得なかった。
これをやらせとするならタチが悪過ぎるし、何より政府がこれほどまで盛大な誤報を流す訳が無い。
それを見ても尚完全に受け入れ切れていないリリィも僅かに存在したが、言葉に出来ない程の衝撃を確かに彼女達に与えていた。
政府やガーデンを混乱が渦巻いて止まる気配を見せなかったその時、アメリカ政府のとある特務機関が発言権の許可を求めた。
そう…その機関こそが、『
主に『グラン・ギニョル』や『ユグドラシル』といったCHARMメイカーズに、資金や軍事兵器等の物資を支給している…その実態が謎めいた機関。
……というのが各国政府のモナークに対する印象であった。実際、特務機関であるが故か、本拠地であるアメリカの政府にすら煙たがられている始末だったので、周囲の反応が嫌に冷たいのは致し方ないことだろう。
しかし、モナークが各国の重鎮たる政府役員に提示した
『世界各地で現れた怪獣の対処についての検討』…という、まさに棚から牡丹餅の内容だったのだ。
これにはどの国も目を引かない訳にはいかなかった。
無論、政府役員の皆は二つ返事でその会議の開会を承諾。
……はしたものの、実態の知れない組織を完全に信用しているのかと聞かれれば嘘になる。各国の反応は半信半疑といったところだろうか。
会議を行う場は芹沢猪四郎を筆頭とするモナークの有識者達が整えるとのことで、準備は着々と進んでいった。
………そして、ついに時は満ちた。新たな時代の幕開けを迎えた人類による討論が、今始まる。
◼️
……翌日
「さて、早速本題に入りたいところだが…芹沢博士、例え君達モナークがこれを機密事項だと主張しても、国家の存続に関わる重大な問題であることには変わりない。モナークが例の怪物達について黙秘することで、他国との信頼関係に亀裂を生じさせるとは思わなかったのかね?」
会議の本題に入る直前に、モナークの非を咎めるかのような口振りをする男性。
彼は、タイタンの存在を知っていて尚他国の首脳や政府を欺いていたことに腹を立てているようだ。
一部の他の参加者も、表に出さずとも同じ思惑を抱いていた。
「ええ、もちろん……彼等の存在を貴方
そんな
「そ、それは……」
男性は言葉を詰まらせる。
……恐らくどの国もタイタンの存在を信じることはなかっただろう。
ヒュージという脅威に怯えながら過ごす中で、そんな御伽噺めいた情報が対ヒュージの役に立つ可能性は無いからだ。
芹沢のその口調こそは丁寧だが、それ以上の不毛な言及は許さないとばかりに話を続ける。
「ですが…彼等のことを知っていなくとも、遅かれ早かれ彼等は眠りから目覚めていたでしょう。
そうなれば知識の有無など最早関係ありません。世界が彼等の出現に困惑するのは避けられぬことなのです」
「! ふむ…続けてくれ、芹沢博士」
「はい。我々モナークは畏怖と敬意の念を込め、彼等巨大生物を総じて『タイタン』と呼称しています。
現在、生死を問わずその存在が確認されているタイタンの数は19体。その内の7体が既に休眠から目覚め、活動を開始しています」
続いて芹沢が合図すると会場が暗転し、モニターに映像が映し出される。
そこには、ニュースで取り上げられた…文字通りの山の如き怪獣が闊歩する姿が映っていた。
「おお、これは…」
「皆さんは既にこのタイタンのことはご存知でしょう。彼はドイツのミュンヘン郊外にて発見されたタイタンであり、我々はメトシェラと呼んでいます」
「ほう、メトシェラ…か。しかし、君の言うように私達もこの生物については、覚醒した姿を把握している。
まさか…その名を披露する為だけに映した訳では無いだろう?」
「勿論…これはメトシェラを監視していた第67前哨基地にて捉えられた映像です。注目してほしいのは彼の足元にある」
大山そのものである巨体にばかり向きがちであった視線の…その捉え方を改める政府役員。すると彼等はその光景を見て、我が目を疑う。
メトシェラの巨大な体躯が対比になっているせいで大変判別し難いものの、彼の四肢に潰されている…あるいは潰されかけている“何か”の姿があったのだ。
その“何か”というのが人類の怨敵たる“ヒュージ”であったために、誰しもが驚きを隠せなかった。
「! なんと…あのヒュージが…!」
「この映像に映っているのは、ミュンヘンより東へ90km離れた位置にある陥落指定区域です。メトシェラが意図してヒュージと敵対していたかどうかは計りかねますが、他にもタイタンとヒュージに関した報告が上げられていますのでそちらも纏めて公開しましょう」
続けて、モニターに画像と映像が一つずつ映し出される。
一方は、海中で完全に
そしてもう一方は、ヒュージ侵攻により砂漠化してしまったアマゾンの熱帯雨林(の一部)をのし歩くマンモスに近い形容のタイタンを捉えた映像である。
「このように…彼等はヒュージを生み出す元凶を実質的な機能停止に追いやり、破壊された自然を元に戻すべく活動を起こし始めているのです」
「…いや待て。ネストが凍結されているのは怪獣の仕業であると分からんでもないが、映像の方の怪獣はただ熱帯雨林を彷徨っているだけではないのか」
「彼が出現した地域では急速に緑化が進んでいると報告が上がっています。恐らく、彼の糞便が堆肥としての絶大な効果を持っているのでしょう。
失われつつあった自然のあるべき姿を、彼等は取り戻そうとしていると…そうは思いませんか?」
「…………何が言いたいのかね。“怪物は実在する”と証明できた…
「…いいえ、まだ終われませんよ。これらだけでは、“証拠”としては弱い。今回の議題の肝に触れていきましょう」
爪を隠すような口振りの芹沢に、怪訝な表情を浮かべる議員達。
急ぎ結論を出してしまいたい政府にとって、タイタンを擁護しているかのようなモナークは忌々しいことこの上ない。
勿体ぶった態度から一変し、目の色を変えた芹沢はこう続ける。
「これを見れば…貴方方がタイタンに抱く概念は、嫌でも変わるはずです」
『!』
次いで映し出された映像は、熾烈極まりない…
息を呑む政府の重鎮達…。ラドンがヒュージに明確な敵意を向けているのが画面越しにも理解出来てしまう。
「私はこの映像を、タイタンが明確にヒュージという種を敵視している何よりの証拠であると考えます。…でなければ、彼等からすれば有象無象に過ぎないヒュージの群れをむざむざ全滅させることはないでしょう」
「………なるほど、理解したよ芹沢博士。君の主張したい結論とやらが」
「恐縮です。であれば、私達が互いに掲げる理念は余程大きく異なっているのでしょう。
…人という生き物は、他人との間に生じる溝に酷く敏感なものですから」
皮肉を言ったつもりがそれ以上の皮肉を以て返され、ただただ黙るしかなくなってしまう男性。
この場の流れと会話の主導権を見事に掴んでいるのは果たして誰か…それは一目瞭然であった。
「さて、今公表した一連の報告を踏まえて、私が導き出した結論を申しましょう。
………
「! 何故だ!あんな危険な怪物共も、ヒュージ諸共抹殺すべきだろう!」
「いいえ、ヒュージはただ壊すだけの存在でしかありませんが…彼等は違います。この星の生態系を守護し、秩序を正す役目を果たしてくれるのがタイタンなのです。
彼等を殺すべきではありません…!」
これまで会議の内容を静聴していた人物が芹沢に変わって反論の意を述べる。
彼女の名をヴィヴィアン・グレアム。芹沢の助手を務めるモナークの研究員である。
普段は穏健かつ冷静な彼女が鬼気迫る勢いで主張するその姿に、役人達だけでなく彼女の同僚でさえも凄んでいる。
「彼等はただ、自分達の
仮にタイタン、ヒュージ、人類による三つ巴の戦争が起こればどうなるでしょう。ヒュージ殲滅の最前線に立つリリィは、民間人の死守という大義名分の名の下に多くの犠牲を払うことになりかねません…。
……それだけは、それだけは絶対に許せません…!」
グレアム博士の切実な言葉が、芹沢の耳に余韻を強く残す。
人類やタイタンの未来を真摯に思慮しているグレアム博士だが、
「グレアム博士」
「! 申し訳ありません。出過ぎた真似を…」
「とんでもない。君の本心を改めて知ることが出来たんだ。とても嬉しいよ」
君のような素晴らしい助手に巡り会えて大変誇らしいよ…と心の中で胸を張る芹沢は一つ咳払いをして、グレアム博士から襷を繋ぐ。
「元より
「ふむ……一つ、問いていいかな。今しがた君が
老齢の議員が芹沢に問いかける。グレアム博士同様に会議に口を挟むことなく、ただ静かに…その内容を吟味していた彼は固く閉ざした口をゆっくりと開いた。
「ええ、その通りです。彼は、いえ…彼こそが、怪獣達を覚醒させた鍵にして、この星の生態系の頂点に君臨するタイタンの王……ゴジラ。
……1954年、ビキニ環礁で行われたアメリカによる水爆実験を覚えているでしょうか。あれは単なる実験などではなく、ゴジラを抹殺するために行われた計画…それが真実です」
モニターの画面が切り替わり、古めかしさを感じる巨大な写真が議員達の目に飛び込んでくる。
それは海面から大量に連なった背鰭だけを露わにし、晴れ渡る青空と大海原にその真っ黒な体で迫力を携えたコントラストを生み出していた。
無人島に植生している樹木も共に映っていたが、それと対比してもやはり大きい。
恐らくは先のメトシェラに匹敵するほどか、あるいはそれ以上だろう。
「…ですが、結果としてゴジラを殺すことは出来ず、むしろ彼の持つ力をより強靭に進化させ、永い休眠状態からの覚醒を促しました。
そして今、98年の時を経て彼が再び動き出したのは何故か?答えはただ一つ。地球に蔓延る
彼が住処としているバミューダ海域からその姿を消した直後に怪獣達も活動を開始した…。ゴジラがヒュージを敵と見做しているのなら、ラドンやメトシェラがヒュージを攻撃していたのにも説明がつきます。
全てのタイタンを脅威と断定するのは浅はかです。中には友好的なタイタンも存在し得る、つまりは彼等と共に生きる道を探すことだって出来るはずです…!議員の皆さん、どうかここは賢明な判断を…お願いします」
直後、会議場を沈黙が支配する。
それは芹沢の語気に圧倒されてか、あるいは怪獣の肩を持つ彼に対して静かに怒りを感じているためか…役員達の内包する感情は十人十色であった。
「………なるほど、了解した。タイタン達の対処は、君達モナークに一任するとしよう。世界的に見ても、彼等の理解者たり得るのは君達しかいない筈だ。必要に応じて、防衛軍やガーデンへの協力の要請も許可する。
しかし、三分余りの長い沈黙を破ったのは、ゴジラについて問うた…あの寡黙な議員であった。
実はこの老人…本会議の議長を務めており、モナークの職員を除いて誰よりもタイタンについて熟考していた。そのことは当人以外は知る由もないが、そんな彼の言い放った結論は、タイタンに対し否定的な意見を持っていた議員達に衝撃を与える。
「碇議長、私は反対です。怪獣共もヒュージと同様に殲滅対象とすべきです。あんな化け物を野放しにしておくなど言語道断…情報を隠蔽したモナークにも厳正な処罰を下すべきかと」
「私も右に同じくだ。仮に怪獣が脅威でなかったとして、奴等について有識なモナークが怪獣を操り人類の敵となる…なんて可能性も否定し切れない」
彼等が
「…確かに我々は、怪獣の存在を認知していました。されど、彼等を操る術を持ち合わせてなどいません。
その比喩は紛れもない真実を表していたのだが、反対論者からすれば皮肉めいた発言を返されたようにしか思えなかった。
新たな口論が発展しそうになったその時、碇…という名の議長が割って入って静止を促す。
「静粛に…タイタンの存在を善しと思わない諸君らの意見は理解した。だが、彼等と敵対する以上に、共存という選択に込められた意味は大きい。そうだろう、芹沢君」
「……ええ」
それから碇は、怪獣との共存にどのような意味があるのか、芹沢に取って代わって説き始める。
ヒュージ絶滅の前進、ヒュージが絶滅した暁に起こる…動植物を排他的に扱う必要性の消滅、破壊された自然環境の回復など…。
碇は『恐ろしい怪物』という固定概念に囚われず、彼等の有益な側面を的確に見出していた。
それを聞く内に、ヒートアップしていた反対論者達の熱意は徐々に冷めていき、同時に彼等は冷静さを取り戻してゆく。
「………怪獣達はただの危険な存在ではない筈だ。潜在能力が未知数だからこそ警戒を怠る訳にもいかぬのだが、幸いにもこの場には彼等に詳しいスペシャリストがいる。
私は、タイタン達と歩むべき道の模索を彼等に委ねても良いと思う」
これほどまでの熱演を聞いておきながら、今更反論の意を述べる者は現れなかった。
皆、碇に同意して深く頷いてみせ、否定的な者も渋々といった様子で口をつぐんでいる。首を横に振っている訳ではないようだ。
「それと…完全な私事ではあるのだがね、手段や因果を問わず命を散らすリリィがいなくなればと…そう望んでいるのだよ、私は。だからこそ、芹沢君の言う友好的なタイタン達と共存の道を歩みたい。
………これでは動機が不純かね、芹沢君?」
「奇遇ですね、碇議長。私も、随分と大層なことを述べましたが…新たに芽吹いた新芽を
何より、私にもリリィとして戦っている身内がいるのです。だからこそ、彼女達にはヒュージと戦う必要の無い平穏な世界を生きて欲しい、私もそう願っています」
「なるほど…君とは気が合いそうだ。今度は会議なんてしがらみに囚われず、プライベートで話してみたいよ」
「勿体なきお言葉です」
表にも出さなかったが、芹沢は言葉にならぬ程の感激を噛み締める。しかし、これはまだ序章に過ぎない。
この世界を生きることとなった人類の第一歩は、とりあえず良い方向へと進み出せた。ただそれだけ…指針が決まっただけなのだ。
ここからがモナークにとっての佳境となるだろう。
そう覚悟した芹沢は、それと同時に…ある友人との再会を望む。
◼️
……翌日
タイタンとの『共存』を目指すという指針が定まり締結した会議の内容は、今一度全世界の全ガーデンに発信された。
件の怪物の正体がヒュージではなく、大昔から生きていた古代生物だと判明し、それに安堵したリリィも少なくはない。
万が一彼等がヒュージだったなら、歴戦を潜り抜けたリリィであっても…対峙したその瞬間に絶望と死を予感していたことだろう。
されど、タイタンとの共存を図るということはそれ即ち、リリィは彼等に
だが、一種の不可侵条約のようなこれは、破った際にはガーデンから厳しい処罰を下されるのだという。
怪物…否、『タイタン』という通称を持つ怪獣が自分達リリィにどんな影響を及ぼすか分かったものではない。さらには、そんな彼等を攻撃するのも許されないときた。
その為…やはりリリィの皆が、タイタンに対して一抹の不安を抱くのは当然のことであった。
百合ヶ丘女学院が誇る『戦うアーセナル』こと真島百由も、この突発的な約束事に対して辟易しているリリィの一人であった。
日夜、CHARMの開発・改良に勤しみ、リリィやマギに秘められし可能性を追求している彼女だが、一昨日は謎の巨大生物の出現を受けててんやわんやな目に遭っていた。
その日の夜から昨日の早朝にかけて彼女の工房は業務用端末のけたたましい着信音が延々と鳴り響いており、いずれの電話も誰も彼もが『巨大生物の正体について質問したい』と懇願してくるものばかり…というかそんな類の電話しかかかってこなかったのだ。
三徹以上仕事に没頭しても日常生活は問題無く過ごせる百由ではあるが、やはり同じ質問に繰り返し応答し続けるのは精神的に大分堪える。
『知りません。他を当たってください』などとずっと言い放っていた時は、まるで機械人形にでもなったような気分だった。
そんな訳で巨大生物…もといタイタンの正体が明らかになった事に対しては、貴重な安息を奪った仇敵としてあまり良い印象を持てずにいた。
その最中で、百合ヶ丘女学院の理事長代行である高松咬月に呼び出され、理事長室を訪れた彼女は……
「君が真島百由さんか…初めまして、私は特務研究機関『
「へ?」
空いた口が塞がらないでいた。
◼️
「ふむふむ、なるほど。芹沢博士は理事長代行の古くからの御友人でいらっしゃる…と」
「うむ、そういうことじゃ」
初対面で呆けた態度を取ったことを同伴していた生徒会の御三方にしっかりと叱責された
その表情は、合点がいってすっきりしたと言いたげだ。
「南極戦役が起こるよりも古い付き合いでね。……それとすまない、真島さん。私が何のアポも取らずに来たばかりに…」
「あ…いえいえ、私のことはお気になさらず。叱咤されるのは慣れっこですし」
百由の観点の僅かなズレには誰も追求はしなかった。
生徒会の面々は、自分達の言葉がやはり響いていなかったことに内心で頭を抱える。
だが、今この場は理事長代行とその友人の芹沢が久しく邂逅した瞬間でもある。これ以上小言を挟んで、和んだ空気を悪くしたくはなかった。
……と、ちょうど百由も軽い自己紹介を済ませたようだ。
「君とこうして出会えたことを嬉しく思うよ。真島さんの書く論文は全て拝見させてもらっていてね…。
マギの由来や生命の生存戦略の根幹を独自の観点から考察した論文は、生物学の界隈の中でも波紋を呼んでいるんだ。もしやすると、生命の真の起源に辿り着けるのではないか…とね」
「いやぁ、芹沢博士のお眼鏡にかなうとは…私も大変嬉しい限りです」
「実際、君の自論は私の研究の前進に大いに役立っている。お礼を言いたいのはこちらの方さ」
「………では、今日訪問した理由はその
「! 百由さん…!」
話の脈絡が、核心に最も近づいた瞬間を百由は見逃さなかった。
必要な段取りをすっ飛ばした不躾とも取れる不遜な言動に対し、史房は口を鋭くする。
「いや、いいんだ…出江さん。彼女の疑念は尤もだ。……いや
芹沢は顔を顰める。
体裁が悪いのは当然だ。突然ここを訪れて、咬月の温情に甘えてしまっているのだから。しかし、いざ本題を友人とその教え子達に明かそうとすると、良心が締め付けられる。
「猪四郎よ…ここへ来た訳を、儂らに話してくれ。50年以上苦楽を共にして来た仲じゃろうて…。
全てを聞いて我関せず、と無下にも扱わん。……さあ」
「……ああ」
それを聞いて、悩みに悩んだ芹沢の口はついに開かれる。
一つ深呼吸を挟んだ芹沢は、咬月達五人の顔を真っ向から見据えた。
「咬月、君のガーデンに協力を要請したい。その項目は二つだ。
…まず一つ目。真島百由君に我々モナークと、タイタンを共同で研究して頂きたい。その目的はヒュージやマギの真髄に辿り着く為なのだろうが、彼女が今まで培ってきた…生物学に精通した知識とその独自の考察力は、今のモナークに欠損している要素だ。
彼女の力添えがあれば欠如したピースは完全に揃う…。だからこそ、真島百由君に協力を申し出たい。
…そして二つ目は、広島県広島市への現地調査の護衛だ。その調査にはモナークの特殊戦闘員も派遣する予定なのだが、現在の広島は小規模ながらも広島市と東広島市を跨ぐようにネストが点在している。そんな状況下では、調査を行おうにもヒュージとの交戦は避けられない。
しかし、生憎とモナークはミドル級以上のヒュージを仕留める
芹沢はそれ以上何も言わなかった。ただ…その依頼を受けても良いのか、とじっくり吟味する時間を与えただけで、芹沢はそれ以上を望むことはなかった。
「質問よろしいですか?芹沢博士」
「…勿論だ」
早速質問を投げかけたのは、芹沢に直接名を指された百由だった。
先の話を聞いて、彼女はようやくここへ呼び出された理由を理解した。芹沢はこの懇願を直に聞き入れて貰いたかったのだろう…。
その真意を悟った百由は、律儀な人だ、と敬服する。
「それでは遠慮なく。もし仮に…私がタイタンの研究に助力した場合及びいずれかのレギオンが合同調査に赴いた時の見返りはどのようなものを想定していらっしゃるのでしょう?」
「…ありきたりで申し訳ないが、我々からは礼金を差し出す程度の見返りしか用立てることは出来ない。
それ以外なら、防衛軍同様にモナークが有する戦闘部隊の兵力をガーデン周辺に派遣するか…、あるいはガーデンの経営が滞らぬよう月毎に資金を提供する…。今のモナークでは、これが精一杯の謝礼だ」
「なるほど、ありがとうございます」
「私からも良いでしょうか」
次いで手を上げたのは眞悠理だ。
「どうぞ、内田さん」
「はい。今回、貴方
「…ああ。実は、この二週間で広島市郊外に設置された…モナークが管理する地震計の振動数が、過去に類を見ない程に増加している。また、その数値の増加に伴い、振動が発生する間隔も日を増すごとに短くなっているんだ。
まるで
「……分かりました」
要点と疑問点を飲み込めたのか、眞悠理は再び考える素振りを見せる。
…引き出すべき情報は抜かりなく聞き出す。交渉に置いてそれは常識だ。
それを怠らない百合ヶ丘の徹底ぶりには芹沢も恐れ入る。
生徒の命が掛かっているのだから慎重になるのは至極当然。むしろ断られても責めることは出来ない。
元々タイタンの存在を秘匿していたが為に、一時はリリィの皆や彼女達の上に立つ指導者をも混乱に陥れたのだから…。
「芹沢博士……?芹沢博士!」
「! む…ああ、すまない。どうしたのかな?」
一瞬深い思考に囚われ、盲目になっていたようだ。
芹沢は、呼びかけられるまで五人の会話の一切を耳に聞き入れられず、彼等がどんな返答を返してくるのか…見当することもできない。
緋弾をも受ける覚悟で身構えていると、百由がわざとらしく一つ咳払いをする。
「こほん。さて…いきなり結論ですが、その協力の申し出を全て承諾させて頂きます」
「!」
了承の意を聞き、芹沢は目を見開いて驚きを露わにした。そんな彼の様子を一瞥した百由は、人当たりの良さそうな笑顔を浮かべながらさらにこう続ける。
「私がタイタンの研究に参画するという根拠についてですが…彼等の生態と実態を究めることはヒュージの撲滅に直結する、と私自身もそう判断したからですね。先日行われた
「そして…広島市への調査の同伴に関してですが、今回依頼なされたのは対ヒュージを想定した遠征ではなく、護衛を主とした任務…。
その為、ヒュージとの戦闘を余儀なくされたケースを除いて、同行したレギオンが請け負うリスクも低いと判断しました」
「よって、広島市への調査に当学院のレギオンを同伴させることを許可いたします。その他の細かな誓約については後ほどお伝えいたしましょう」
「……ありがとう。君達の厚意には感謝しても仕切れない…!」
年を取ると涙脆くなってしまって仕方がない。感極まるあまり涙腺から沢山の涙が分泌されそうだ。
しかし、それをぐっとこらえ、重大な決断を下してくれた少女達と目を合わせ力強く礼を述べる。
芹沢の誠心誠意の感謝が伝わり、史房や百由達の顔には柔らかな微笑が浮かぶ。
「生徒達をよろしく頼むぞ、猪四郎」
「ああ…ありがとう、咬月」
二人は固い握手を交わす。別段、互いに交わす言葉は少なくとも構わなかった。そこに確かな信頼が存在することさえ分かれば、それで十分だった。
◼️
百合ヶ丘女学院の玄関口とも呼べる応接室にて、LGアールヴヘイムの主将、天野天葉は落ち着くことが出来ずにいた。
姿勢の良い出立ちとキリッと引き締めた表情で焦燥を隠しているものの、内心では心臓がバクバクしっぱなしなのだ。だが、隣に座っている樟美に心配をかけまいと平常心を意識する。今この室内で待機している同じアールヴヘイムのメンバー達にも、出来るならば気付かれたくは無い。
………何故、来賓を迎えるはずの応接室に百合ヶ丘最高峰のレギオンのメンバーが集結しているのか。
その理由は、生徒会長である出江史房にアールヴヘイムが招集をかけられたが故である。
『ワールドリリィグラフィック』の取材の為ならば(聞こえは悪いかもしれないが…)もっとフランクに招集がかかる筈だし、
通常の外征任務の呼びかけにしても、主将である天葉だけに通達しても
…それなのにわざわざレギオンの主要メンバー全員を集めさせている。只事では無いと察しはつくが、やはり解せなかった。天葉は呼び出された経緯と所以を史房に言及しても「それはまだ言えない」と焦らされており、ことさら不信感を募らせていた。
その点で言えば、樟美や依奈達にも当てはまるだろう。
……と、僅かな不安な感情を内包させながら待機すること早五分、ついに応接室の扉が開かれ、老齢の男性が入室してくる。
「遅れて申し訳ない、本部への連絡に思ったより時間が掛かってしまって…」
「! 芹沢猪四郎博士…!」
自他共に認めるリリィオタクにしてCHARMオタクである金箱弥宙が、感激と驚嘆の混じった声でその男性の名を呟いた。
「? 私のことを知っているのかい?」
「知っているも何も…博士のファンなんです!過去に博士が執筆なされた、マギの発生原理を説いた論文が一番好きでして…その界隈でマイナーに扱われているとは思えないほど素晴らしかったです!」
目を輝かせながら芹沢を褒め立てる弥宙の食い付きの何と凄まじいことか。その賞賛ぶりには天葉達だけにあらず、芹沢までもが驚いてしまう。
「おお、ありがとう。なかなか面と向かって喜ばしい感想を聞いたことはないものでね…良い励みになるよ、金箱さん」
「き、恐縮です!」
弥宙が感激の余韻に浸りそうになっているが、世間話をすることが今回の目的では無いと、天葉は思考を切り替える。
「えぇと、すみませんが芹沢…さん?いや博士…?」
「芹沢“博士”です、天葉様」
「りょ、了解…。芹沢博士は、本日私達にどのような御用件があって、いらっしゃったのでしょう?」
それはアールヴヘイムの誰しもが気にかけていた疑問だ。自分達に用がある人物こそ分かったが、如何せんその目的が読めない…。
先日、各ガーデンにモナークやタイタンの(可能な限り開示できる)情報を公表した人物故…流石に芹沢の名は天葉達にも知れている。
だからこそ、一学者にして特務機関の一員である彼がこの百合ヶ丘を訪れた理由が分からない。
当事者として聞かない手は無いとばかりに天葉は切り込んでゆく。
「……有力な外征旗艦レギオンである君達アールヴヘイムにしか頼めない依頼があるんだ。今回はそれを耳に入れて貰いたく、招集を掛けた次第だ。依頼を受けるか否かは、要点と説明を聞いた上で判断してほしい」
芹沢の答えを聞いて、レギオンメンバーの顔を見渡す天葉。
それに応え、皆一様に肯定の意を示すように頷く。
「その依頼、私達にお聞かせ願いますか?」
「……ありがとう、天野さん」
芹沢は
遠征に如何なるリスクが伴い、将来的に見て百合ヶ丘に如何なる利益がもたらされるのかも…全てを話した。
そして、全てを話し終えた
「ヒュージ殲滅を目的としない外征の要請なんて初めてだわぁ。ねぇ、壱?」
「…そうね。そもそもリリィと軍隊が共に敵地に乗り込むこと自体、異例じゃないかしら」
壱が述べた作戦の異色さについてだが…、実はこの遠征におけるデメリットの一つとなり得る。
その問題点は至って単純で、超常的な身体能力を発揮できるリリィと並の軍人とではそもそもの身体のスペックが異なる点にある。護衛に重きを置いているものの、兵士はとりわけ素早い動きを可能に出来るわけでは無い為、却ってリリィの邪魔になりかねない。
それが大きな負傷に繋がる可能性があると思慮している天葉は腕を組みながら、うんうん唸りひたすら考える。
果たして、この協力の申し出に賛同するか、それとも蹴ってしまうかを…。
余談だが、この申し出はレギンレイヴやローエングリン等…その他有力なレギオンにも持ち掛けられる予定だったそうだ。
しかし、それらのレギオンはいずれも既に遠征を控えていたり、反対に遠征を終えて帰還したばかりであったりと…諸事情も相まって示談を断念したという。
そういった経緯で、アールヴヘイムに白羽の矢が立ったのだ。
「………私は暫く席を外すから、君達全員でじっくりと考えて、答えを出してはくれないかな?」
対面している天葉の様子を目にした芹沢は、気を使って部屋を一時的に退室しようと試みた。
だがそれには、流石に御客を無下には扱えまいと、壱が必死に引き留める。
「! そんな、芹沢博士を退室させる訳には…」
「いや、いいんだ…。元々私がいきなり押し掛けてきたのが悪いのだからね。私のことなど気にせず、ゆっくり話し合うといい」
しかし、待ったを掛けても芹沢は譲らなかった。
「意見が纏まったら一声掛けてくれ」とだけ告げて、彼はまた扉の奥に姿を消してしまう。
僅かに申し訳ない気持ちが芽生えるが…、それこそ彼の気遣いを無下にしていることと同義なのではないか。
そう考えた天葉は、折角設けてくれた相談の機会を無駄にせぬよう…仲間達を纏め、依頼の返答を皆で検討し始めたのだった。
…………………
そして三分後、決めるが早いか早速結論が出たということで、再びアールヴヘイムの錚々たるメンバーと芹沢とが対面する。
「さて、それでは君達が出した答えを、私に教えて欲しい」
「はい」
「……誠悦ながら、その御依頼…私達アールヴヘイムが承りましょう。護衛や哨戒任務だろうとどんと来いです!」
検討の末、導き出されたのはモナークとの協力に肯定的な意を示す答えだった。芹沢はその返答を聞けたことを喜ばしく思う反面、たった三分でレギオンの評価に関わるやもしれない重要事項を決めてしまって本当に良いのか、と不安になる。
「理由を聞いても良いかな?」
「はい。なんというか…初めから断ろうとは思えませんでした。私達と対等の立場で話し合おうとしてくれる芹沢博士の誠意が、はっきりと伝わってきたんです。…それを『無理だ』と否定する理由なんてありませんよ」
実際、
正直、断る理由を探せという方が難しいかもしれない。
…そして、それは天葉だけが抱いていた印象に非ず、他の皆も同じであった。要は、相談を始めるより以前から、既に結論が出ていたようなものだ。
護衛任務に伴う不利益についておさらいし、それを飲み込んだ上で承諾という選択を取ったのだから、相談が短時間で済んだのも道理である。
「ありがとう…君達が共に来てくれるとなれば、とても心強い。よろしく頼む、アールヴヘイム」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします」
こうしてモナークは、芹沢の真摯な姿勢と尽力により百合ヶ丘と一時的な協力関係を築くことに成功した。
百由に提供もしくは共有するタイタンの生態データの整理や、アールヴヘイムと調査チームを輸送する為の
そう考えながら、芹沢は僅かにずれた眼鏡を掛け直す。
………決して絡むことの無かった鎖は、争いの無い
巨獣の覚醒は世界を混乱に陥れたが、結果として平和な世界を渇望する人間達の繋がりを強くしたのであった。
◼️
……アメリカ合衆国ネバダ州 ユッカマウンテン
芹沢が百合ヶ丘を訪れた時を同じくして…日本とおおよそ17時間の時差があるネバダ州の空は、夜の帳で覆い尽くされていた。
ユッカマウンテンより南東約160kmに位置する大都市ラスベガスがヒュージの手に落ちたことも相まって、一切
これは明らかに、付近のケイブから発生したヒュージの仕業によるものではない…。施設の壁はプリンをスプーンで掬ったかのようにごっそりと削られ、各部屋に収納された放射性廃棄物が
………これだけの惨事を引き起こした犯人は、ベガスとユッカマウンテンの中間に位置する砂漠地帯を横断していた。
その者の体軀は
腕の一対は
彼はベガスに近づくにつれ無数に湧いて出てくる餌を前に、歩みを止める事は無かった。
あのラドンでさえもヒュージを捕食対象として見做さなかったというのに、この怪物は一切の抵抗もせずにそれらを貪り、喰らい付く。
ヒュージを喰らい続けるごとに増幅してゆく宿敵への殺意…。さらにそこへ加わるように流れ込むのは、ある特定の種の雌に向けられた歪んだ敵意であった。
そして…
KURURU……KURURU……KURURU……!
海を越えた遥か彼方の空に向け、甲高い摩擦音を鳴動させる。その一声に、明確な殺戮の意思を添えて。
その三時間後、広島に置かれた地震計は再び異常な周波数を感知していたのだった…。
モンスターバースのメインタイタンはみんな表情豊かで可愛い。共感できる人います?
そして、ちょっとだけオリジナルタイタンの登場を考案しています。灯莉ちゃんの好きなものをヒントにして。
感想とか評価とかお気に入りとかしてくれたら、書くの頑張ります。(語彙力低下)
既に製作確定済みの次章だけど、そのさらに次の章で活躍するレギオンはどっちが良い?
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ヘルヴォル&グラン・エプレ
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アールヴヘイム&ロネスネス