Assault Lily with GODZILLA 〜Kings of the earth〜   作:俺っちは勝者の味方ー!

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pixivとtwitterに出てるゴジモスのイラストがアサリリの百合並みにてぇてぇ…。ゴジラ狂信者ことドハティ監督が巡回済みなのホント笑った。
今作の千香瑠様の精神はちょっと強めです。
キャラの口調とか性格ブレてないかな?



希望(リリィ)を喰らいし終焉

天野天葉は夢を見る。

しかし、それは穏やかな夢とは程遠い悪夢そのものであった。

脳裏に焼き付いた恐怖が過去の記憶を呼び覚まし、それが夢の中にまで侵蝕していたのだ。

切り取られた断片的な場面がビデオテープのように絶え間無く切り替わってゆく…。

 

天葉の前に聳える巨大で真っ黒な塊は、身の毛もよだつ咆哮を放ち、少女の脳を震わせる。

次の瞬間には、そいつの長くて鋭利な爪の引っ掻きが家々を薙ぎ払い、人々の心の拠り所を容易く破壊してしまう。

戦慄のあまり棒立ちとなる天葉。(まばた)きをした瞬間、さっきまで遠くにあった筈の怪物の顔が目と鼻の先まで迫っていた。生暖かい吐息が直に感じられる程に近い。…近過ぎる。

メタン臭に近しい悪臭漂うそいつの口が獲物(自分)に喰らい付かんと開かれたその時…

 

「っっ!!」

 

息苦しさに苛まれながらも、最悪な未来予想図から解き放たれる。

乱れる呼吸を整えようとしていると、着用している病院着が汗でぐっしょり濡れていることに気付く。

何とも気持ち悪い感触を覚えるが、次に聞こえてきた鈴の音のような優しい声に不快感が吹き飛んだ。

 

「天葉姉様!」

「! 樟美っ…」

 

天葉は、自分の胸に飛び込む愛しいシルトを咄嗟に、柔らかく受け止め返してやる。汗に塗れているから、樟美に不快な思いをさせてしまわないかと不安に思うが、天葉の意志に抗うように樟美は力強く…しかし優しく彼女の体を抱き締めてくる。

よく気を付けてみると、樟美の体が僅かに震えている。抱き締め返すとさらに、小さな子供を安心させてやるような自然な所作で、彼女の頭をやんわりと撫でてやる。

 

「天葉姉様…本当に、無事で良かった…!」

「うん…うん。心配かけてごめんね、樟美。私はもう大丈夫だから、ね?」

 

感極まる余りコク…コクと頷き、言葉に出来ない様子の樟美を見て、天葉は居た堪れない気持ちで一杯になる。

彼女にだけでなくグレアムにも無茶はしないように、と釘を刺されていたのにこの(ざま)だ。良心の塊のような天葉が、申し訳なく思わない訳が……

 

「! 私が倒れた後どうなったの?依奈や隊長さん達はっ、全員無事?」

 

と、あの怪獣にやられたところまでの記憶が鮮明に蘇る。レギオンの要にして怪獣の注意を集中させていた自分が動けなくなったことで、誰かが負傷してしまったのではないか、と焦燥に駆られる天葉。樟美に問いかける時の語気も、心なしか普段よりも強い。だが、

 

「大丈夫ですよ、天葉姉様。依奈様もいっちゃんも、ミルズさん達も全員帰還しました。亜羅椰ちゃんとモナークの研究員の人が軽傷を負ってしまいましたが、何れも後遺症も残らずに完治するみたいですよ」

「そ、そっかぁ…良かった」

 

しかし樟美は、平然かつ穏やかに…そして柔和な笑みを伴って、荒ぶる天葉の心を沈めてゆく。彼女のおかげで平静を取り戻せた天葉は、肩の荷が下りたように錯覚し心底安心する。

 

樟美はその後、かなり噛み砕いた説明を補足するように話を続けてくれた。

天葉が気絶して既に一日が経っていること…

天葉を含め…怪獣の謎の妨害で著しく動きが鈍くなってしまったアールヴヘイムを、ウィリアム率いる調査隊が死守してくれたこと…

満身創痍だった自分達を、無事に合流出来たアルゴで芹沢の意向により百合ヶ丘まで輸送してくれたことも全部…、起こった通りの順番に樟美は丁寧に教えていった。

なるほど、道理でこの医務室に見覚えがある訳だ、と天葉は納得する。樟美も標準制服を身に纏っているし、やはりここは第二の家である百合ヶ丘なのだと再認識出来た。

 

さらに、天葉が目覚める4時間前には芹沢とグレアムが防衛軍に連れ添われながら、見舞いに来てくれていたらしい。今は緊急の所用の為、既に過ぎ去った後ではあるが、何でも…一歩間違えればアールヴヘイムが壊滅しかねなかった事態に対して責任を感じており、再び百合ヶ丘に訪れたのだという。樟美曰く、当人らは不測の事態への配慮と警戒が不全だったことを悔やみ、アールヴヘイムのメンバー全員に対する謝罪を望んでいた。しかし、天葉が目覚めていなかったのでこれは叶わず…、後ろ髪を引かれる思いで退室していったそうだ。

それを聞いて気の毒に感じる天葉。きっとあの人達は、天葉(じぶん)と話す機会が設けられるその時まで、自分自身を叱咤し続けてしまう。今すぐにでも無事を報告したいが、東奔西走している彼等の手を煩わせてしまうのはそれはそれで申し訳ない気がする。

 

……そういえば、とあることを天葉は想起した。それは、今まで樟美の口からは語られなかった…触れられてこなかった話題だ。

まるで事実を告げることを躊躇っているかのように思わせる彼女の話し方には、少々違和感があった。天葉は今、その核心につく覚悟を決める。朗らかな笑みを引っ込めて、口調と目の色を真剣なものに切り替える。

 

「ねえ、樟美。私達が仕留め損ねた()()()は…どうなったの?」

「っ……」

「お願い、私に教えて」

 

彼女の息を呑む音が、小さくて消え入りそうでも、確かに聞こえた。

天葉は言葉に圧を掛けて問いかける。シルトを追い詰めているようで心が痛むが、あの敵と相対(あいたい)した自分にはあいつの行方を知る権利と責任がある筈だ。…天葉は樟美から決して目を離さない。

 

そして、無言の圧と眼差しにとうとう根負けした樟美は、リモコンで医務室に設置されたテレビの電源を点ける。

 

「? 何を…」

 

直後、天葉は言葉を失った。画面に映っている映像とニュースのテロップと、アナウンサーの報道が彼女の思考を停止させたのだ。

 

巨大生物 中国地方から近畿へ侵攻

 

『怪獣が私立アンブロシア女学苑高等學校を襲撃』

 

『怪獣はガーデンとネストを襲撃しながら、未だ東へと進行中です。中部地方及び関東地方へ到達する危険性があるとして、政府は非常事態宣言を発令しました。大阪府、京都、三重県に住む住人の皆さんは、防衛軍の指示に従って直ちに避難して下さい。繰り返します--』

 

ハワイに怪獣現る

 

『ホノルルのガーデン 壊滅』

 

…………

 

瞬間、鈍器で頭を殴られたような衝撃に見舞われる。正体の掴めない嫌な感情がごっちゃになって胸に停滞し、動悸が早くなってゆく。

樟美の顔が見れかった。見る余裕が持てなかった…。

これまで出没のパターンの読めないヒュージに対抗してきた天葉だが、明確に認知できる脅威がゆっくりと…だが着実に迫り来る恐怖に心を支配される。深く根付いたその感情は、向こう2時間、彼女の再起を拒むこととなった。

 

◼️

 

 

所変わって東京湾。海原に浮かぶ防衛軍所属の空母の会議室にて、錚々たる面子が集結していた。

その筆頭となるのは、この艦船の(提督)にして東京圏防衛軍第七艦隊の司令長官…

モナーク所属の生物学者、芹沢猪四郎…

そして、百合ヶ丘女学院の天才アーセナル、真島百由である。年齢も肩書きも異なる彼等がこの場に集まったのは他でもない、日本とアメリカで目覚めたムートーを如何にして対処するか…その算段を定める為だ。

 

「遡ること十五年前、フィリピンの鉱山で発見された化石に寄生していた繭が二つ確認されたが、一つは既に破られた後であった上に、もう一つの繭はアメリカの防衛軍に没収されてしまっていた。

 そして三日前、日本時刻午後4時30分ちょうどにネバダの放射性廃棄物処分場で繭の状態で冬眠していた()のムートーが目覚め、陥落指定都市であるベガスに巣食うヒュージ群を襲撃。奴は夜の暗闇に紛れ行方をくらましていた為に、これらの情報の会得に遅れを生じさせていた…。

 その後、ロサンゼルスのテレビ局が外部から発せられる異常な周波数をキャッチしたとアメリカの防衛軍から通達があり、同様の周波数を兵庫でも検知。そして、雄のムートーの覚醒に続くように、昨日(さくじつ)の午後1時41分、広島県広島市にて()のムートーまでもが活動を開始。

 そして、軌道計算の結果…今なお二体は()()を目指して進行中…と、この解釈で差異はありませんか、芹沢博士」

「ああ、間違いない」

 

提督は、防衛軍とモナークがそれぞれ保有する…ムートーの軌跡にまつわる情報を極力簡略化してまとめてみせる。

簡略化したと言えど情報量は多い。だが、要点が正確に抽出されていることは確認できたので、芹沢は神妙な面持ちで首を縦に振る。

 

「それとさらに補足です。昨日広島で採取された土壌のサンプルを解析した結果…その土に含まれるガンマ線レベルは、何と東京の土壌の5倍以上。芹沢博士の研究に基づいた私の推測ですが、放射性物質を餌にするムートーが原爆投下の爆心地にて放射線を吸収したことが原因で、その放出量が相乗したと考えられます」

「ふむ…“ 奴等自体を放射性物質として捉える ”ならば、確かにそう結論付けるのが妥当だろう」

 

ムートーを『生きる放射能源』と仮定する百由の結論は、言い得て妙であった。如何せん、相手にしているのは神秘と謎のベールに包まれた古代生物故、広島で発生した現象がムートーとの関連性を示唆していると考えるのは自然なことだ。

 

がしかし、どんなに聡明な百由でさえも、とても受け入れ難い非情な現実に直面していた。

…それは、ムートーが無差別にリリィとヒュージを襲撃し、尚且つ捕食対象と見做していることだ。後者は兎も角として…その影響(せい)で、岡山や兵庫を東西に跨がるガーデン、並びにハワイのホノルルに点在するガーデンは壊滅状態。

多くのリリィに重軽傷を負わせただけでなく、帰らぬ人となってしまった者もいると聞く…。他人事ではないと痛感している百由の胃は、再びきりきりと痛んだ。

大移動の道すがら…ガーデン同様にネスト諸共そこに巣食うヒュージ群を全滅させてもいるらしいが、到底許せる訳がない。

 

「…この由々しき事態の発端は、恐らく雄のムートーだ。ヒュージの捕食をきっかけに、奴はマギを持つ者は等しく捕食対象であると認識しているのかもしれない。そして、その認識をエコーで雌と共有していた…」

「なら、それの一体何処が“ リリィの捕食 ”という惨事に繋がると?」

「……分からない。奴等にとっても、マギとは未知なるエネルギーの筈だ。それを新たな動力源として開拓した、という可能性も否定し切れない。元来、放射線という危険物質を餌としてきたムートーだ。例えヒュージ由来のマギを取り込んだとして、ヒュージ化するどころか簡単に順応出来てもおかしくはない」

「! その説が正しければ、広島で放ったあの()()()()()が、『マギ干渉』に類似した特性を兼ね備えていたことも説明がつくかも…」

 

『マギ干渉』とは、タイタン出現に世間が騒めく最中、房総半島で討伐された特型ギガント級ヒュージ…メイルストロムが保有していた特性である。

周囲のマギをヒュージ側の『負のマギ』に固定することで、そのマギの影響を強く受けるリリィに強力な精神負荷を掛けるという厄介極まりない性質を持っている。果てには、精神負荷を受けやすいルナティックトランサー使いのリリィや強化リリィだけに(とど)まらず、一般のリリィでさえもマギの消費が早まるという悪影響をもたらしていた。

広島で雌のムートーと会敵したアールヴヘイムも電磁パルスを放たれた直後、前述した『マギ干渉』と同様に著しくマギが消耗していったと証言を得ている。

唯一相違点を挙げるとすれば、ルナティックトランサーの保有者にして強化リリィ出身である森辰姫がその時極端な精神負荷を(きた)さなかったことだ。

本人がそう語っていたのだから間違い無い。『マギ干渉』とは僅かに性質が異なっていると見て良いだろう。だが…

 

「問題は奴等が()()()()()()()()()()のか…だ。それが分からなければ、我々は住民を避難させること以外に為せることは無い」

 

ムートー二体が直に東京へと到達することも、ムートーが覚醒するまでの経緯と因果も判明した。しかし、奴等の行動原理はいまだに謎に包まれたまま。

このままでは、対処の目処もつけられずにただ指を咥えて見ていることしか出来なくなる。

 

芹沢の顔は、怒りで顔を歪めているのでは無いのかと疑ってしまう程に、次第に険しくなってゆく。彼は募る焦燥を宥めんと、懐に忍ばせている古びた懐中時計に手を伸ばす。しかし、その時計は8時15分の時刻を指したまま決して針が進むことは無く、芹沢の手の中で転がされるばかりだった。

 

…芹沢は考える。ムートー達が何故、()()時期に目覚め、()()場所を目指しているのかを。

 

 

 

 

 

「…!そうかっ」

「芹沢博士?」

「ムートーが目覚めた訳が分かったんだ。あくまで仮説だが…、多少のズレが生じつつも奴等がほぼ同時期に休眠から覚醒した理由は、 …()()の為」

「!」

「ムートー二体はそれぞれ性別が異なっている。雄のムートーが発していたエコーが求愛を意味する会話であり、それに雌が応えたならば…」

「っ、二体は東京(同じ場所)で落ち合う為に移動を行う」

「そう。そして、今この地球上では、50年前より核兵器の開発は盛んに行われなくなり、ヒュージ侵攻による原発事故の発生を抑制すべく原子力発電所のほとんどが機能を停止した。

 本来の餌が枯渇してしまった現状に対して、ムートーは放射線の代替となる新たなエネルギー源、“ マギ ”を見出し繁殖に備えている」

「それがあの胸糞悪い怪獣による無差別な暴虐の全貌という訳ですか。……厄介なモノに厄介な性質が加わって、ホント嫌になりそうですねえ」

 

そう告げる百由の表情こそ笑ってはいたが、その目は一切の笑みを湛えていなかった。

要は、ムートー達は目覚めてすぐにありつけるご飯が少なかったから…という理由で、その代わりに自分達(リリィとヒュージ)を喰らおうとしているのだ。

迷惑なことこの上ないし、そんなトンデモな奴等がいずれ東京へと訪れる事実も相乗して、彼女の心身はすっかり参っていた。

 

「…であれば尚更、これ以上犠牲を増やす訳には行かないな。怪物の手によってヒュージが激減するのは本望だが、その怪物のせいでリリィ諸共日本が滅ぼされれば本末転倒だ。……っ、しかし如何にして討てばよいものか」

 

もう一度言うが、相手はギガント級ヒュージよりも遥かに巨大な古代生物達だ。ヒュージと違って通常兵器が効くことは確かだが、あのアールヴヘイムでさえもいとも簡単に敗ってしまう化け物を前に、10分も地に足を着けて立っていられるだろうか。…否、物の10秒で天国へと旅立ってしまうだろう。その時お迎えに上がる天使の名は、怪獣の脚か爪か…あるいは胃袋のどれかは確実だ。

先の暗い戦いに打ち勝つビジョンが定まらなかったその時、誰かがぽつりと呟いた。

 

「……ゴジラ」

「! よしてくれ、グレアム博士。いくら勝算の低い戦いと言えど、怪獣に怪獣をぶつけるのはリスクが高過ぎる。それに、件のゴジラがリリィを襲わないという保証も無い。却って、危険が増すだけです」

「いや〜、それがですね提督さん。そのゴジラも雄のムートーを追って、今現在北太平洋を横断中なんです。恐らく…ゴジラとムートー、両者の激突を避けるのは不可能でしょう。はい」

「何?」

 

しれっと百由がこぼした重大な事実に目を光らせる司令長官。彼は防衛軍の誇りにかけて、リリィを除き他の勢力に縋ることは邪道だと信奉している。

その理念を貫き通し真の平和を取り戻さんと力を尽くしてきたからこそ、今の言葉は聞き捨てならなかった。しかし、一人静かに当惑している彼を差し置いて作戦会議は進んでゆく。

 

「…確かにゴジラなら、この絶望的な状況を打破する鍵となるかもしれない。彼としても、自身の宿敵を野放しにしておくのは惜しい筈だ」

「? つまりは、ゴジラとムートーが闘っている戦場に私達リリィもゴジラ側に加勢する…と」

「端的に言ってしまえばその通りだ。言葉に表すのは簡単かもしれないが、作戦の遂行難易度は恐ろしく高い。最悪巻き込まれて命を落としかねないが、現状で最も現実的な作戦はきっとこれしかない」

「…………うぅ〜ん、分かりました。では、作戦だけでも聞きましょう!ほらほら、提督さんもご一緒に」

 

終始判断に迷っていたが、百由は意を決して危険な海へとダイブする。ついでに、飛び込みを躊躇しているかのような提督の手も引いて。

 

 

 

三十分後

 

「---と、このような算段なのだが、どの道闘いの行方はゴジラに委ねられることになる。真島君は、これをどう思うかね」

「……正直に言うと、こんな穴だらけの作戦を決行するのには賛同しかねますね。いついかなる時でも失敗のリスクが付き纏う…正に五分五分な賭けですし」

「…」

「それでも、可能性はゼロではない。私は作戦の成功率が1%でさえも、それに賭ける価値は十分にあると思います。リリィだけで挑んでも勝てないというのなら、ゴジラの威を存分に借りてしまう方が合理的でしょう」

「! ならば…」

「ええ。この真島百由にお任せを。当作戦を遂行するに相応しいメンバー達に招集を掛けておきますよ。ああ…あと、一応モナークの名前は伏せさせて貰うので悪しからず」

 

頭脳明晰故に、戦場を駆け回る時の真島百由の的確な状況判断能力は目を見張るものだと定評がある。その観察眼を以ってして、作戦の善し悪しすらもすぐに判断できる筈の彼女は負け戦はしないものとばかり思っていた。

そんな彼女の口から、『賭ける』という博打めいた表現を聞くのは意外だったが、本人がやる気ならそれに便乗しない手はない。

 

「提督、貴方はどう考えますか?」

「私は…」

 

正直気乗りはしない。確かに目には目を、という言葉があるがその解釈を捻じ曲げたい気分だった。

しかし、日本の未来が窮地に立たされている今、背に腹は変えられない。プライドと反対意思を抑制した男は、不服な感情に呑まれながらも静かに首を縦に振った。

 

「私は、怪獣なんぞ信用しない。…だが、リリィの皆が闘うというのなら、おめおめ敵に背を向けるような愚かな真似はしたくない。我等防衛軍の存在意義を今一度証明して見せましょう、芹沢博士」

「感謝する。…頼もしい限りだ」

 

◼️

 

 

翌日、ルドビコ女学院、ラウンジにて…

 

いつか関東各地のガーデンから選りすぐりのレギオンが集結し、開催された『東京圏防衛構想会議』。その会場となったルドビコ女学院では、会議に参加した多くのスターリリィ達が再び招かれており、誰しもがこれから行われる予定の『緊急会議』の開会を落ち着かない様子で待っている。

 

一柳隊のリーダーである梨璃とて例外ではなかった。怪獣という目に見える脅威が猛威を振るう最中(さなか)、今度は()()百由から唐突に招集が掛けられ、かつての防衛構想会議を彷彿とさせる空間に再度放り込まれているものだから、緊張と不安で胸が張り裂けそうになる。

状況が状況故、前回の会議では感じ得なかった…負の感情が胸を刺すような痛みが治まらない。

あの時のような胸騒ぎとでもいうのだろうか。嫌なことに、当たってしまいそうな気がしてならなかった。

すると…

 

「やあやあ皆さん、この度はお集まり頂いて誠にありがとう!初めましての方もいるでしょうし、まずは自己紹介から。私は、百合ヶ丘女学院工廠科二年の真島百由です。どうぞよろしく」

 

ぴりついた空間でもお構いなしに、いつもの無駄に高いテンションを伴って百由が入場してくる。会議に参加している者達の心情を知ってか知らずかは不明だが、端から見れば楽観的とも捉えられる百由の飄々とした態度は、船田純の気に見事に触れた。

 

「そんな前置きはいりませんわ。市民の避難誘導をそっちのけて、この場にわたくし達を集めた理由は何ですの?早急にお答え下さりません?」

 

ヒュージという脅威から人々を守るのがリリィの務めにして本懐であるものの、人々の安全を確保することもまたリリィの存在する意義に他ならない。その使命を立派に果たしていた中、今更素性の知れない会議への参加を促されて不満を抱かない者などいなかった。

純は高圧的な態度で百由に迫る。しかし、百由はこれに怯みはしない。むしろこの食い付きっぷりは僥倖だった。

 

「うんうん、確かに時間も惜しいから早速始めましょうか。この『MUTO(ムートー)対策会議』を」

「…はぁ〜?」

 

一拍間を置いて、百由の謎の宣言に反応する純。色んな意味で奇抜な彼女が、何を言っているのか理解出来なかったのだ。

純と同じく状況を飲み込み切れていない様子の者がほとんどだったので、百由はラウンジに集まる全員と目を合わせられるように視線をぐるりと動かした。皆んなの背筋はしゃんと伸びている。

 

「会議と言っても、作戦の内容はこちらで既に策定してしまっているの。肝となるのは、貴女達にこれから実行する予定の作戦への参画の是非を問うことよ」

「それは、最早会議ではなく交渉では?」

「…うおっほん!まあその通りなのだけれど、私達に残された猶予はあと僅か。もし…明後日に綺麗な朝日を拝みたいと言うのならば、これ以外に選択の余地は残されていないわ。心して聞いて頂戴」

 

百由の言葉には、もう後戻りは出来ないと言わんばかりの緊迫感が含まれていた。その感情は瞬く間に伝播し、それを聞いている者でさえも手に汗を滲ませる。

 

「と、その前に…これから話す情報の提供元にして、既に本作戦の協力体制を整えて下さっている組織の方々をお招きしているので、紹介しましょうか。さあ、どうぞ」

 

その一声に応じてラウンジに現れたのは、芹沢猪四郎とヴィヴィアン・グレアムだった。

ニュースで注目を集めたが故に、今やリリィで知らぬ者はいないであろう特務機関…モナークに所属する研究者達の登場に会場が騒めく。

 

「あ……」

「? 千香瑠、どうしたの?」

「……え…ううん、何でもないわよ、瑤さん」

「そう?ならいいんだけど」

 

喧騒がラウンジを包む中、ただ一人だけ…驚く観点が異なる者がいた。

確かに予想外ではあったが、彼女の中ではその人物の登場に対する驚きよりも嬉しさの方が大きく(まさ)る。今この時、話しかけるチャンスが無いことがとても惜しく思えた…。

 

「どうも。私は、特務研究機関『MONARCH(モナーク)』所属の芹沢猪四郎だ」

「同じくヴィヴィアン・グレアムです」

「まずは、君達にお詫びを。この場に匿名で呼び出したこと…本当に申し訳なかった。こちらの真島さんには、彼女の同意の元…我々と共にタイタンの生態の研究に協力して貰っている。昨日(さくじつ)行った彼女との議論の末、ムートーの侵攻を食い止める為には諸君らの助力が不可欠だという結論に至り、この場を設けたのだ」

「…す、すみません。その“ むーとー ”って何ですか?」

「こいつらのことよ、梨璃」

 

聞き慣れぬ名に困惑する梨璃の為に、巨大なプロジェクターに例の映像を投影する百由。

その映像は、二体の怪獣のガーデン襲撃の一部始終を物語っていた。それを見て思わず目を背けてしまう者、非情な現実をしかと受け止めようとする者、怪獣に対する怒りの念に駆られる者と、会場内の反応は多岐に分かれた。

 

「これこそがタイタヌス・ムートー、私達が討たねばならない敵よ。奴等は繁殖の為にリリィとヒュージを喰らいながら、この東京を目指しているわ。元々は放射線を餌としていたようだけど、地表の放射能濃度の低下に伴い、新たな代替エネルギー源となるマギを見つけてしまったようなのよ…。傍迷惑な話だけどね」

「ちょっと待ってください!今言った“ 繁殖 ”って…、それはどう言う意味です?」

 

百由の話に相澤一葉が待ったを掛ける。

 

「どう言う意味も何も、その言葉の通りよ。二体はそれぞれ性別が異なっていて、自分達の子孫を残そうとしているわ。日本を横断している図体の大きい方が雌で、腕の一対が翼に進化しているのが雄よ」

「この進行速度のままでは、二体は確実に東京で合流し、子を産み落とす為の巣とするだろう。奴等を殺さなければ、東京がヒュージの手に堕ちるよりもさらに酷い惨事になる…」

「ならば、そのムートーとやらが落ち合うよりも先に、わたくし達の手で葬って差し上げますわ。先に雌を倒して、続いて雄も。出撃の許可さえ有れば、いくら相手が怪獣だとしても無問題でしょう」

「甘いわねぇ、純さん。ガーデンのリリィが総力戦でかかっていれば、今頃ムートーは少しでも傷を負っているはずよ。しかし、奴等にはその形跡が無い。それが何を意味する分かる?」

「っ…まさか」

「そう。襲撃されたガーデンのリリィは()()()()()()()()()()()()()の。ムートーは、電磁パルスと『マギ汚濁』を利用して私達リリィの戦力を削いでくる。そんな状態で真っ向から立ち向かったとしても、バクリと丸呑みにされるのがオチね」

「質問です。ガーデンからの通達で、電磁パルスによる電波障害を引き起こしているという情報は既に把握済みですが…後者の『マギ汚濁』というのは何でしょう?」

 

御台場女学校の生徒会長、月岡椛が問う。何処となく聞き覚えのある現象の名に、その端正かつ可憐(けれん)な顔を陰らせている。

 

「先日、ロネスネス、ヘオロットセインツ、グラン・エプレが討伐した特型ギガント級ヒュージ、メイルストロムの特性『マギ干渉』を覚えてる?…その性質と酷似した特性が、どういう因果かムートーにも備わっているの。

 リリィのマギの消耗を促進させる、という効果のみだから、『マギ干渉』と差別化する意味合いを込めて『マギ汚濁』と命名したわ。会敵したアールヴヘイムの証言で、恐らくは電磁パルスの放出と共に発動していると考えるのが妥当ね。

 加えて、電磁パルスはCHARMに施されている電子部品の回路もショートさせてしまうから、いざムートーと対峙したとなれば、CHARMの出力は41.65%ダウンする計算よ。

 

 ……これらが何を指し示すか、分かったでしょう。私達(リリィ)の力()()ではムートーを倒せない」

「っ」

 

部屋中が静まり返り、凍りついた。

…よもや多くの同志を殺めてきた仇敵と同じ土俵にすら立てないだろう。そんな覆しようのない現実に、純は歯噛みする。

彼女の所属するガーデンの校訓が、彼女の過去とその苦い経験が…純を他の追随を許さぬ強者たらしめてきた。それまでの血の滲むような努力が通じない相手など、一人として存在しなかった筈なのだ。

しかし、それが今無に帰したように思えて、悔しさに身を焦がす反面酷く虚しくもあった。

威勢を損ね沈黙する純に、他のリリィは誰も声を掛けられなかった。彼女の双子の姉である船田初でさえも…。

その時、

 

「…! 待って、百由さん。リリィ()()では勝てないということは…つまり、()()()()の力添えがあればあの怪物に対抗できるというの?」

 

今叶星は、百由が含みを持たせたような物言いをしていたことに気が付く。

 

「確かに、あの言い方だとまだ秘策があるって言いたげな感じだよねー」

「でも、恋花。だとしたら…一体誰があれと戦うの?私達リリィが相手にならないのなら、少なくともその協力者はリリィじゃないはずだし」

 

叶星の指摘を皮切りに、他の皆もそれに同調し始め、今度はまた違った騒めきが起こる。しかし、百由の間接的な表現を訝しむ瑤のように目の付け所が違う者も多い。

会場の視線はいずれも期待と懐疑心が詰まったちゃんぽんとなって、謎の計画を企てているであろう百由達に集まる。芹沢は聴衆達のその気迫に気圧(けお)されることなく、熱意を込めて話し出す。

 

「我々の協力者、という解釈は…些か正確な表現ではない。()は誰にも与することなく、自然の調和を保つ存在だ。これより起きるムートーとの戦闘も、()と意思を疎通して行わない…謂わば、行き当たりばったりな混戦になりうるだろう」

 

誰かが息を呑む音がした。会議に参加しているリリィ達は、極めて難解な彼の言葉に呆然となる。

その内容が、あたかも『彼』と呼ぶ者を人間や社会の枠組みから排除しているかのような表現だったからだ。

 

「芹沢博士。その… ()、というのは一体?」

 

夢結が挙手をして、恐る恐る芹沢に問いかける。

しかし、悲しいかな…聡い彼女は、ありえて欲しくはない返答が簡単に予想できてしまっていた。

 

「…彼の名は、ゴジラ。この星の生態系の頂点に君臨する『王たる種族』の末裔…正に、“ 神 ”と呼ぶに相応しき者だ。彼にとってムートーとは因縁の種族であり、仲間を殺した仇でもある。

 言うなれば、我々がゴジラの()()に助力する…と言い表す方が的確やもしれないがね」

 

彼がそこまで言い終えると、グレアムがプロジェクターの映像を切り替えて、話を受け継ぐ。

 

「これはムートーの雄と雌、それぞれが進行してきた経路とそこから導き出された軌道計算よ。雄のムートーは現在も北太平洋上を横断しているけれど、その跡をぴったりと追うように彼も移動を続けているの」

「ゴジラを含めたタイタン三体の到達予測地点が、ここ東京であることは確実だ。衝突の余波によりインフラの破壊や停止、都市の電力が損なわれる事態に陥ることは避けられない。

 だが、君達リリィの力があれば、それらを踏まえた上で…被害や損失を最小限に抑えられるように最善の行動を取ることが可能になる。それ故に、これから話す作戦には至極危険な任務が伴う。

 …命が惜しいと思うのならば、今すぐにここから退室し作戦から降りてくれても構わない。この生き残りを賭けた戦争に命を()すか否かは、君達次第だ」

 

話の全てを静聴していたうら若き少女達は、芹沢の正気を疑った。人懐こくて優しい性格の梨璃でさえも、珍しく当惑した様子を露わにして。

彼がゴジラをひっくるめた怪獣(タイタン)達に何か特別な想いを寄せているのは、先ほどの話の熱量から何となく察せられる。それがある意味で彼の狂人じみた一面を曝け出し、『理性的な生物学者』という人物像にギャップを生じさせている。

…現時点では破壊の化身にしか捉えられない怪獣に対する畏怖と芹沢の言葉の信憑性の薄さから、リリィの皆の心情には靄がかかっていた。

戦場を駆け回り人々を守護するリリィと言えど、蓋を開けてみればその中身(精神)はまだ成熟を迎えられていない子供なのだ。

彼女達は、何が正しくて、何が間違いなのか…その答えを短時間で導き出せる程、沢山の人生の岐路を立って来てはいない。

いきなり横から割って入って来たインテリ博士達の提案を、果たして素直に了承しても良いものなのか…。そうやって誰もが煩悩している最中(さなか)

 

「お祖父様」

 

何処からか声が上がる。異様な静けさに包まれていた会場に、透き通るような彼女の声はよく響く。

今度は、芹沢が驚かされる番だった。百由から、過去に東京圏防衛構想会議に出席したエレンスゲのレギオンも招集した、とそう聞いていただけでレギオン名の把握までは行き届いていなかったのだ。

……だから、今ここに芹沢の血を引く家族が、ヘルヴォルの仲間と共に同席していた事実に思わず目を見張った。

芹沢だけでなく、側に居る一葉達までもが驚愕している横で、件の芹沢千香瑠は己の胸中をぽつりぽつりと語り出す。

 

「私は…私は、お祖父様の言葉を信じます。幼い頃から共に過ごしていたからとか、身内だから贔屓しようとか、そんな考えじゃありません。…私は、“ 家族 ”としての優しいお祖父様だけでなく、“ 学者 ”としての厳格で心の強いお祖父様をずっと近くから見てきたから、貴方は決して他人を欺いたり、貶めるような行為はしない人だって断言できます。お祖父様の言葉は本気なんだ、って分かるんです。

 …それに、お祖父様からは今まで沢山の勇気を貰って来たから、その恩返しがしたいんです。だから私は、お祖父様を信じます」

「ち、千香瑠様!?」

「ちょっ、千香瑠何言って…って、お祖父様?って、え…え?」

 

落ち着いた口調だが、しかし胸にすとんと収まるような千香瑠の告白。その内容はとても一葉と恋花には処理し切れず、千香瑠とあの芹沢猪四郎が血縁者であるということしか頭に入ってこなかった。

 

千香瑠は会場の皆んなに呼びかけるように話を続ける。

 

「こんな綺麗事を私が言っても無意味かもしれないけれど…、どんなに危険でも、私達リリィの背中にはいつだって護るべき人達がいるわ。平和を脅かす敵が現れたのなら、私達が戦わない訳にはいかない。そうでしょう?」

 

…千香瑠は変わった。かつては戦闘の最中でも己の恐怖心がせめぎ合い、戦うことを恐れていた。しかし、今はもう違う。

自分の居場所を見つけ、大切な仲間と巡り合い、ヘルヴォルのリーダーである一葉から…祖父のように沢山の勇気を分け与えて貰った。

心の奥底でうずうずしていたその勇気は、祖父の熱意に触れたことで一気に燃え上がる。

普段の大人しげな千香瑠からは考えられないような前のめりな姿勢に、一葉は心を打たれた。梨璃や叶星、千香瑠の知己やそうでないリリィも同様だった。彼女達の、予想外な脅威がリリィの命を奪っている事実を受けて…心に生じた深い傷が、千香瑠の言葉で癒えてゆく。また、それは意気消沈しかけていた少女達の原動力へと転化する。

 

「…確かに、千香瑠様の言う通りです。私達が諦める訳にはいきません。どんなにちっぽけでも、力を合わせればきっと光は見えてくる筈です!」

「…千香瑠様。今度は私の方が励まされてしまいましたね。大事なことを気付かせてくれて、ありがとうございます」

 

梨璃が、一葉が俯かせていた顔を上げる。迷いの無い晴れ晴れとした表情だ。

 

「そうね、私達がやるべきことはただ一つ」

「ふふ、ええ。まさか生涯で本物の怪獣と戦うことになるなんて…忘れられない記憶になりそうね、叶星」

「はいはーい☆かなはせんぱいとたかにゃんせんぱいがやるなら、ぼくも全力全快でいくよ!」

 

「っ…ここで敵に背を向けるはリリィの名折れ。同志の仇を取る為にも、恥を晒すような真似なんて致しませんわ。ええ、必ずわたくしの手でムートーを仕留めてやりましょうとも」

 

「私も戦います。もうこれ以上、誰かに悲しい思いを背負わせたくありませんから!」

 

一つ、また一つと戦意が集い、芹沢はラウンジ全体の士気がいや増すのを感じた。彼女達がこれから進むのは、決して踏破することが容易では無い荊の道だ。しかし、目指す目的が同じ者達による結束力が如何に強固なものかを芹沢は知っている。

仲間に恵まれ、戦いに身を投じていた45年前の自分は、まさにそうだった。もうかける言葉は無いと、千香瑠の熱演を思い返しながら、百由に視線を送る。

 

「…こほん。それじゃ、少し脱線してしまったけど、改めて聞かせてもらうわ。このMUTO(ムートー)殲滅オペレーションに参画するというレギオンのリリィは、全員で挙手を。一人でも欠けていれば、少数意見の尊重も兼ねて、そのレギオンは当作戦からの辞退を願います」

 

ついに一世一代の…大規模かつ超異端な作戦への参加の是非が問われる。百由が発言を終えて、間髪を入れずに手が挙がった。

数刻後、彼女が見渡す限り、手を下ろしている者は一人としていなかった。この場にいる全員が戦う意志を示している。ならば、もう決まりだ。

 

「オーケー、皆んなありがとう。選りすぐりのリリィである貴女達の力があれば、きっとどんな困難も打ち砕いて進める筈よ。…東京を、ムートーの侵攻から何としても死守するわよ!」

 

覚悟を決めたリリィ達の瞳は、そう高らかと声明する百由の姿を捉えていた。そして、士気がさらに上がっているだろうそんな時、

 

「失礼、もう一つ…こうして皆の意志が纏まった上で言わなくてはならないことがある。これだけは忘れないでくれ。

 ……ゴジラもまた、君達と同じ同志であることをどうか心に留めて、戦いに臨んで欲しい。私のことは、気が済むまで馬鹿にして貰って構わない。…だが、頼む」

 

芹沢は頭を下げて懇願する。その語気の強さに終始圧倒された少女達だったが、しかし何も言えなかった。モナークとの協力体制は取るには取るが、やはり怪獣に対して複雑な、あるいは強い憎悪の感情を抱く者がほとんどだったからだ。

 

だがしかし、芹沢の言葉が決して少女達の心にさざ波を立てなかった訳ではない。それは本当に小さな変化のきっかけの種となり、心と言う名の苗床に静かに蒔かれたのだった。

 

話をリードする権利は、芹沢から百由へと再び譲渡される。

 

「さあ、ここからが本題よ。作戦の手順の説明と分担する役割決めを行うから、くれぐれも振り落とされないように!」

 

…………

 

 

 

◼️

 

 

ゴジラは激怒した。

地球(故郷)を荒らす銀色の生物達の横暴と、同族を殺めた宿敵共の目覚めに。

 

彼が僅かな惰眠の一時(ひととき)から目覚めたその時点で、既に地球の至るところに、今まで感じられなかった奇妙な気配が散らばっていた。それこそが、あの銀色の生物の気配だった。

 

彼奴等は“ ニンゲン ”という種しか襲わない反面、その過程で多くの生物に寄生し、死に至らしめていた。生態系の秩序の安定を重んじるゴジラにとって、連中は到底看過できる存在ではなかった。

彼による()()は、何処かへ逃げ隠れた二体の宿敵を探す巡回がてら、同胞達の眠りを妨げぬようなるべくひっそりと…手早く行われてきた。

 

しかし、彼の殲滅スピードよりも銀色の生物達の増殖スピードの方が一枚上手であった。ゴジラは止むを得ず、仲間の覚醒を促す指示を発する。彼等には悪いが、致し方ない。

 

彼が目覚めさせたのは、大勢の『守護者』達と『破壊者』一体だ。

『守護者』だけを起こしても、地球の生態系は乱れかねない。自然界のバランスを保つ為には、増え過ぎた命を刈り取り、生命のサイクルを途絶えさせぬ『破壊者』は不可欠なのだ。

(今回目覚めさせたそいつは、他の『破壊者』よりかは従順だからお情けで起こしてやったが)

 

当然、彼等も自分達の縄張りを荒らされたことに大層怒り狂っていた。彼等の力を以ってすれば、銀色の生物達もただでは済むまい。

と、そう確信していたゴジラが再び宿敵探しに勤しみ始めたそんな矢先に、奴等は遂に動き始めたのだ。

 

驚くことに、ゴジラの皮膚と本能を刺激する彼奴等の生体反応にはあの銀色の生物と同じ気配が伴っていた。その事実に、彼は怒りを通り越して深く失望する。仮にも気高き獣の王である自分達が、得体の知れない生物と同レベルまで落ちぶれるとは思ってもみなかったからだ。

 

…だが、どうであれ彼が為さんとすることは変わらない。仲間を殺した罪深さを思い知らせるべく、ゴジラはこの広い大海原の端っこに位置する小さな島を目指してひたすら突き進む。

その瞳には、執念の炎が轟々と燃え盛っていた。

 




東京圏に潜むぴゅーじ君達はゴジラとムートーの接近を察知しているので、恐ろしくて姿を現せないようです。

既に製作確定済みの次章だけど、そのさらに次の章で活躍するレギオンはどっちが良い?

  • ヘルヴォル&グラン・エプレ
  • アールヴヘイム&ロネスネス
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