人間の中で「目」と言う器官は非常に重要な役割を果たしていると思う。
目から得た情報を脳が識別し、判断する。そして、それを各器官や組織に伝達する。それによって人は物を掴んだり、危険から回避するための運動を行う。
もし、その目に何かしらの異常がある場合、日常生活への支障はもちろん。その後の人生に大きく変わって行くであろう。
彼もその1人であり、この物語の主人公でもある。
彼の名は
祐樹が6歳の時である。父である慎吾は幼い祐樹と妻である和子の3人を連れてイギリスのある地方を旅行中だった。そんな3人は車窓から流れる風景に見入っていた。
「わ~綺麗だねお父さん!」
「ああ、無理して旅行して来た甲斐があったな。和子」
「ええ、あなた。祐樹も楽しんでいますからね」
祐樹はもっと見たいと思い先頭車両へと向かうのであった。そんな時偶然にも前から走ってくる女の子とぶつかりそうになったが、寸前の所で受け止める事が出来た。
『きゃ!』
「あ、大丈夫!?」
『えっと…』
如何やら言葉が通じない様だった。それを見かねた、彼女の両親が祐樹にカタコトの日本語で話しかけてきた。
「アーダイジョウブカイ?」
「ケガハナイカシラ?」
「はい、僕は大丈夫ですけどこの子は?」
『お父様、お母様。どうしたのですか?なぜ、日本語を?』
『セシリア、私達は色々な人達と話すために日本語も勉強しているんだよ』
『ええ、いつか貴女にもわかる日が来るわ』
そんな会話をしていると慎吾と和子が、こちらにやって来ようとした時……事件は起こった。
突然慎吾達が乗っている車両と祐樹が乗っている車両を繋いでいる連結部が爆破され、3人は離れ離れになってしまったのである。
ドゴーーーーン
『うわぁ!』
『きゃ!』
『セシリア!』
「父さん!母さん!」
『祐樹―!』
車両はどんどん離れて行く。そんな中祐樹は飛び移ろうとしたが、セシリアの父ロベルト・オルコットに止められてしまう。
「父さん!」
『いかん!やめるんだ!』
「離して!離してよ!」
『ダメだ。君は…行かせない!』
「祐樹……達者でな」
「どうか…祐樹をお願いします…」
『…ああ』
「父さん、母さん…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だー!」
無惨にも祐樹の願いは打ち破られてしまった。両親が乗っている車両は祐樹の目の前で爆破し木端微塵に吹き飛んでしまったのだった。
その破片が祐樹の目を直撃し、祐樹は倒れてしまったのだ。
ドゴーーーーン!!
「父さんー!母さんー!…ぐぁ!」
『オイ!大丈夫か!』
『大変よアナタ。目から血が出ているわ!』
『いかん!直ぐに病院に行かなければ…』
『お父様、お母様。私も一緒に行きます』
『ダメだセシリア。君には見せられない』
『いいえ。私達の事を守ってくれた人に感謝をしたいのです。どうかお願い致します。お父様』
『セシリア…わかった。但し、私達が見せてはいけないと判断したらやめるんだよ。いいね?』
『はい』
『それよりもアナタ、早く病院へ』
『そうだったな』
その後、イギリスで起こった列車事故で亡くなった邦人は慎吾と和子の2名だけとなり、祐樹は重症をおってしまった。
スコットランドにあるとある大学病院。そこに、祐樹は運び込まれた。幸い命に別状はなかったが、事故の衝撃により飛び散った残骸が両目の角膜、水晶体を損傷し失明してしまった。
『気分はどうかね?』
「えっと…」
『おっと、そうだったね。今通訳を呼ぶよ』
そう言って、ロベルトは通訳を呼んでこれまでの状況を説明した。その状況を祐樹は全てを理解するまでに苦労していたが、やがて全てを受け入れるのであった。
『…と言うことなんだ』
「そうですか…僕の目や両親はもう…」
『残念だが…けど、あの人達は言っていたよ。『祐樹の事を…頼みます』ってね』
「…すみません。少しだけ1人にしてもらえますか…」
『…いいだろう』
そう言って、ロベルトと通訳が部屋を出た途端部屋の中から祐樹の泣き声が響き渡るのであった。
「父さん…母さん…う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」
『…辛いものだな。目の前で大事な家族を無くし、あまつさえその光景が最後の光景だとは…』
『旦那様…』
『…すまない。メアリーとセシリアを呼んで来てくれ』
『かしこまりました』
そう言って、メアリーとセシリアの前にしてロベルトは祐樹について説明した。
『…と言うことなんだ』
『そんな…余りにも酷だわ…うっうっ』
『お母様…』
余りの悲しみにメアリーは泣いてしまい、セシリアは戸惑ってしまった。そんな中祐樹を執刀した医師が3人に病状を告げたのである。
『失礼ます。彼の診断書です』
『ありがとう。…やはり、目の回復は…』
『ええ、おそらく無理でしょう』
『わかった。彼には僕から伝えておく。ありがとう』
そう言って、医師は出て行くのであった。早速ロベルトは通訳を通じて祐樹に病状を説明した。すると、祐樹はロベルト夫妻に感謝していた。
『今医者から君の容態を聞いてい来たよ…残念だが視力回復の見込みは無いそうだ』
「そうですか…ありがとうございました」
『なに?』
「ここまで、お世話して頂いて…ありがとうございました」
『なに…君のご両親からの最後の頼みだからね。無下に断る事は出来なかったのだよ。それに我々は由緒あるオルコット家だ。ノブレス・オブリージュと言う奴だよ』
「えっと…もしかしてオルコットさんってイイ所の方ですか?」
『これでも名門貴族の末裔とでも言っておこうかな』
「あはは…」
『さて、これからの事だが…君はどうしたい?』
「…正直これ以上オルコットさんの迷惑をかけたくありません」
『…』
「ここまで、面倒を見てもらったことには感謝しています。けど、僕は日本人なんです。幸いにあっちには叔父がいますから、そこで暮らすか施設に入るかどちらかだと思います」
『そうかい…なら、それまでの面倒はこちらで見よう』
そう言って、ロベルトは祐樹と握手するのであった。その日から祐樹はオルコット家でお世話になるのであった。
目が見えない祐樹には、常にメイド達が付いて世話を行った。流石にやり過ぎだと言ったが、ロベルトは『娘を助けた恩人には常に最高のおもてなしをするのさ』と言って聞かなかった。
メアリーも祐樹に英語や数学を分かりやすく教えた。そして、少しずつであるが通訳なしで話せるようになって来たのであった。
そんな中セシリアは未だ祐樹と、どう接していいのか分からなかった。そんな事をしている内に祐樹は帰国するのであった。
「今までお世話になりました。ロベルトさん。メアリーさん。それにセシリアも」
「そんなかしこまらなくてもいいよ。祐樹はもう立派なオルコット家の一員だ」
「ええそうよ。例え離れていても私達は一緒よ」
「…」
「ほら、セシリアも挨拶しなさい」
「あ、あの…」
「うん?」
「げ、元気でいてくださいまし!」
「ああ、セシリアも元気でね」
「///」
「まぁこの子ったら照れちゃって」
「おやおや…セシリアはまだ早いと思うぞ」
「お父様!お母様!」
『アハハ!』
そんな風に笑っている2人に想いを馳せつつ祐樹は日本に帰国するのであった。
祐樹が日本に帰国して10年。この10年で世界は飛躍的に革新した。と言うのも「IS」の登場である。
「IS」正式名称「インフィニット・ストラトス」。科学者
しかし、当初とは別に宇宙進出は一向に進まず、「兵器」へと転用されそうになったが、アラスカ条約が締結されスポーツへと落ち着いている飛行パワードスーツ。
但し、これには弱点があった。その弱点とは"女性以外に使用できない"という致命的欠陥を抱えていた。
しかし、第一回モンドグロッソの優勝者
そこで、政府は他の男性IS適正者がいないか全国一斉調査を開始した。
その調査は施設にいた祐樹も対象であった。そこで祐樹は第二世代IS【打鉄】を起動してしまったために適合ありと判断されIS学園へと転校してきたのである。
施設にいたマザーに手伝ってもらいながら、『必読』と書かれた電話帳並みの厚さもある参考書に点字を打ってもらい、必死に勉強した。
そして、遂にIS学園へと向かうのであった。左手に白杖を持ち施設を後にするのであった。
『それじゃあ、行って来ますねマザー』
「ええ、行ってらっしゃい。祐樹に神のご加護があらんことを」
『そんなにしなくてもいいよ。夏休みや長期休みにはちゃんと帰ってくるからさぁ』
「わかったわ。この子達も貴方が元気に生活出来る様に祈っているからね」
「じゃあね。祐樹兄ちゃん!」
「ちゃんとご飯食べるんだよ!」
『ああ、皆もマザーの言うことはちゃんと聞くんだよ』
『はーい!』
『それじゃあ、いってきます』
IS学園へは専用のモノレールに乗って人工島へと向かうのであった。IS学園へ向かうまでは物見パンダみたいな存在だったが、目が見えない祐樹にとって他人の視線は気にならなかった。
『次はIS学園前~IS学園前~終点でございます~本日も…』
『おっと、ここで降りないとね』
そう言って、白杖と参考書を持ちモノレールを降りた。改札を抜けると1人の女性が声をかけてきた。
「君が高柳祐樹だな?」
『はい。貴女は?』
「私は織斑千冬。ここIS学園で教師をやっている」
『そうでしたか。初めまして、高柳祐樹です』
そう言って、声のする方向へ頭を下げた。それを見た千冬は弟と同い年なのに、ここまで礼儀作法がしっかりしていると感心していた。
「では、歩きながら話そう。おっと大丈夫か?」
『ええ、大丈夫ですよ。ただ、歩くスピードをゆっくりとして頂ければ幸いです』
「すまんな、配慮が足りなかったな…高柳が入るクラスだが1年1組だ」
『そうですか。そう言えば「着いたぞ」…』
「何か聞きたい事があったな?すまないが、聞きたい事はSHRが終わってからにしてくれ」
『わかりました』
「では、私の合図の後に入って来てくれ」
『はい』
そう言って、千冬は教室の中に入って行った。すると、教室の中から黄色い声援が飛んでくるのであった。
~~一夏side~~
「居心地が…悪い」
俺は今27人の女の子からの視線を目一杯浴びており、傍から見たら珍獣扱いである。ひょんなことからISを起動してしまい千冬姉がいるIS学園に入学した。
そして、今は自己紹介の時である。今眼鏡をかけた人が教壇に立っていた。
「皆さん初めまして!私はこの1年1組の副担任の、
「……」
「うう…では、出席番号順に自己紹介をお願いします」
どうやらこの人は教師らしい。しかし、教師というよりは、同級生或いは先輩という印象を受ける。
けど、この視線はどうにかならないのか…隣にいる幼馴染はもっぱら外を見ているし千冬姉の話しだと、もう1人の男性操縦者がいるとのことだけど今はいないな。
「…くん、お…くん!織斑君!」
「は、はい!!」
やべ、考え事していたら当てられていた。咄嗟に大声出しちゃったよ!
「ごめんね!「あ」から始まって「お」なんだけど…怒っている?」
「謝らないでください。別に怒ってないですから」
そう言って俺は自己紹介をするのであった。
「織斑一夏です!」
え?俺なんか変なこと言った?みんなが見ているんだけど?「なんかもっと言って!」風な顔だし。……なら!
「以上です!」
『ズガーーーーーーン』
そう言うと女子たちはコケた。なんかマズイことしたか?そんな風に思っていると後ろから、バシンと殴られた。
「お前はまともに挨拶もできないのか」
「げ!関羽!」
「誰が三国志の英雄だ!」
「痛いよ、千冬姉」
「織斑先生だ!」
また、叩かれた。痛い…。そう言うと千冬姉は教壇に行った。
「お疲れ様です、織斑先生。もう会議は大丈夫ですか?」
「ありがとう山田君。それにもう1人を待たせているからな」
もう1人?2人目の奴の事か?そんな風に思っていると千冬姉はクラスメイト達に自己紹介をするのであった。
「諸君!私が織斑千冬だ!君たち新人を一年で1人前になる操縦者に育てるのが仕事だ!私の言うことはよく聴き、よく理解しろ!出来ない場合は出来るまで教える!だから、私の言うことはちゃんと聞くように!返事は「はい」か「Yes」のどちらかにしろ!いいな!」
その瞬間俺は耳を塞がなかったことを後悔した。
『キャーーーーーーーー』
「うぉ!」
「本物の千冬様よ!」
「私ファンです!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「お姉様のためなら死ねます!」
「はぁ、全くこのクラスにバカだけ集められたもんだな…」
「あ~お姉様!もっと、もっと罵って!」
「そしてキツく躾けて!」
「静かにしろ!それと、もう1人紹介する奴がいる。入ってこい」
『はい』
千冬姉がそう言うと、ドアが開いた。そこには、両目が黒色のバイザーで覆われており、左手に白い棒を持った2人目の男性操縦者がいた。
~~一夏side out~~
~~祐樹side~~
『キャーーーーーーーー』
(凄い声だな…それ程織斑先生って慕われているんだ。それもそうか、第一回モンドグロッソ優勝者だもんね)
どうやら織斑先生の登場に女子たちが舞いがったようだ。軽く音声兵器と言えるだろう。
『僕、この中で生活できるかな?』
「静かにしろ!それと、もう1人紹介する奴がいる。入ってこい」
織斑先生に呼ばれたので、教室の中に入るしかなかった。
『はい』
~~祐樹side out~~
~~???side~~
『キャーーーーーーーー』
流石は第一回モンドグロッソ優勝者の織斑千冬さんですわね。オーラと言うか、風格が違いますわ。あの方であればいい勉強が出来そうですわ。
それに比べて、弟の方は…期待していましたが拍子抜け致しましたわ。特にあの自己紹介。
よく、ここに来られたとおもいますわ。ISを動かせただけでろくに知識も知らない用ですわね。
いい機会ですわ。このイギリス代表候補生セシリア・オルコットが直々に教えて差し上げますわ。何せ私は貴族。下々の期待にこたえなくてはいけませんわ。
「静かにしろ!それと、もう1人紹介する奴がいる。入ってこい」
さて、もう1人の方はどんな感じの方でしょうね。
『はい』
「え?この声って…まさか!」
~~セシリアside out~~
「それじゃあ、自己紹介でもしてもらおうか」
『初めまして、高柳祐樹といいます。皆さんと同じ16歳です。特技は…特にありませんね。何せ、
「高柳は10年前のイギリスで起こった事故で失明している。だが、皆と同じ様に接したいと言って来た。だから、分け隔てなく接してくれ」
皆空いた口が塞がなかった。それもそのはずである。現れたのは両目をバイザーで覆っている男性操縦者なのだから。そんな心配をよそに、祐樹は白杖を頼りに窓側の一番奥の席に座った。
「それでは、SHRを終わりますね」
祐樹の学園生活は始まったばかりである。SHR後すぐに人だかりは、一夏のほうに集まっていった。
それもそのはず向こうは爽やかなイケメン。一方こっちはバイザーをしている謎の新入校生である。興味を持つのは当然向こうのほうだった。
そんな時人混みをかき分けて一夏が祐樹の所に来た。
「よぉ!」
『どうも。君が織斑一夏君でいいのかな?』
「ああ、お互い珍獣扱いだな」
『仕方ないですよ。ここには、2人しか男子がいないですからね』
「そうだな。俺は織斑一夏。気軽に一夏って呼んでくれ」
『ありがとう。僕は高柳祐樹。よろしく一夏』
「なら俺は祐樹って呼ばせてもらうぜ!よろしくな祐樹!」
『うん』
そう言って、一夏は祐樹と握手をしようとしたが、その手は空を切ってしまった。一夏はばつが悪そうな顔になってしまった。
「あ、そうだったな…祐樹って…」
『気にしないで。いつもの事だから』
「そんな事ないって!これからはずっと友達だ!」
今度は一夏が強引に祐樹の手を取って握手をするのであった。
???「…ちょっといいか」
そこに、ポニーテール女子が現れた。如何やら一夏に用があるらしい。
「よう!箒じゃないか!元気にしていたか?」
「べ、別に///」
「そう言えばまだ、挨拶してなかったな。箒こいつが祐樹だ」
「
『高柳祐樹です。もしかして一夏と関係者かな?』
「ああ、箒とは幼馴染なんだ。なぁ箒!」
「そ、そんなことない///!それよりも一夏ちょっと付いて来い!」
「ちょっと!箒!」
そう言うと箒は、一夏を連れて何処かに行ってしまった。それと入れ替わる様にもう1人の女子生徒が祐樹に近づいてきた。
「お久しぶりですね。祐樹さん」
『その声は…』
「そうですわ。貴女のセシリア・オルコットです」
『セシリア…久しぶりだね』
「祐樹さん…祐樹…祐樹~!」
『うわぁ!どうしたのセシリア?』
なんと、セシリアは皆がいる中嬉しさの余り祐樹に抱きついて来たのであった。この行動にクラスメイト達は騒ぎ始めたのであった。
「え?オルコットさんと高柳君ってそんな関係だったの!?」
「以外だね。オルコットさんって織斑君かと思っていたのに」
「これはスクープだよ!」
『ちょっとセシリアここじゃあマズイよ!』
「祐樹~!もう離しませんわ!」
『参ったなぁ』
その時予鈴を知らせる鐘が鳴ったので、セシリアはいそいそと離れていくのであった。
「あら、もうこんな時間でしたか。また来ますわよ祐樹!」
そんなことを言ったセシリアは、自分の席に戻っていき祐樹は懐かしく思っていた。なお、いつの間にか一夏と箒も戻っていた。