盲目の男は空を飛ぶ   作:とあるP

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とあるPです。

2022年最後の投稿になります。思えば今年は色々ありました。読者の皆様には暖かい目で見て頂き感謝しております。

来年度も変わらぬ投稿ペースとなりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

それでは本編どうぞ!



IS 005中国代表候補生と会いまみえる

一夏、セシリア、祐樹の三つ巴で行われたクラス代表決定戦から翌日。部屋で起床した祐樹は同室にいる簪を起こさないように注意しつつ、IS学園のジャージ姿に着替えて白杖を手に取りグランドを歩いていた。目下の課題である体力を付けるためである。

 

そんな事をしていると目の前に現れた人物の気配を察知した祐樹は挨拶をするのであった。

 

『おはようございます。織斑先生』

 

「うむ、おはよう高柳。よく私だとわかったな」

 

『何となくですよ。それよりも、織斑先生はどうしてここに?』

 

「なに、私は日課のトレーニングをしていたところだ。どうだ、高柳も付き合わないか?」

 

『…魅力的な誘いですけどやめときます。これ(白杖)無しでいるのはつらいので…』

 

「そうか…なら、手を貸してやる。それならどうだ?」

 

『それなら大丈夫だと思います』

 

「わかった。それじゃあ、握るぞ」

 

『はい』

 

そう言って、千冬は祐樹の手をそっと握った。そして、白杖を離し一歩ずつゆっくりであるが、歩き出した。

 

「どうだ?大丈夫か?」

 

『はい。これなら大丈夫です。それで僕はどうすればいいんですか?』

 

「なに、大したことではない。これからストレッチをするから、私の背中を押してほしいだけだ」

 

『わかりました』

 

そう言って、千冬は祐樹に背中を見せ、押すように指示すると祐樹は背中をゆっくりと押すのであった。

 

「準備出来たぞ。それじゃあ頼む」

 

『わかりました。それじゃあ押していきますね』

 

祐樹も力加減を考えながら背中を押す。それが気持ち良かったのか千冬は安心しきった声を出すのであった。

 

「ん…良い力加減だ。高柳はこういった経験があるのか?」

 

『小さい頃に育った施設で、よくマザーの背中をさすったり肩たたきをしていたので、その時感覚を覚えたのかもしれませんね』

 

「そうだったのか…」

 

『ええ…はい。終わりました』

 

「ありがとう。何だか身体が軽くなった気分だ。定期的に頼もうかな」

 

『冗談はやめてくださいよ。ただでさえ人気の高い織斑先生の傍にいるだけで、陰口を叩かれそうなんですから』

 

「なに?そんな奴がいるのか?」

 

『例え話をしたまでですよ。それじゃあ、僕は食堂に行きますね』

 

「ああ、わかった。場所はわかるのか?」

 

『ええ、ある程度施設の場所は、同室の子から教えて貰いましたかね』

 

そう言って、祐樹は白杖を持って自室へと向かうのであった。一旦ジャージ姿から制服に着替える必要がある。そして、自室に戻ると既に簪は起きており、制服に着替え終わっているであった。

 

「おはよう…高柳君」

 

『おはようございます、簪さん。まさか待っていたんですか?』

 

「うん。もしかしたら食堂の場所とか知らなさそうだし…」

 

『ありがとうございます。それじゃあ、僕も着替えて来ますね』

 

そう言って、祐樹は汗を流すべく部屋にあったシャワーを使い、汗を流すのであった。そして、IS学園の制服に袖を通して簪の後を追うのであった。

 

『お待たせしました。行きましょうか』

 

「うん」

 

食堂に向かって行く途中簪が突然止まった。そこに現れたのは、IS学園の生徒会長で『最強』の称号を持ち、ロシア国家代表、更には簪の姉である楯無の姿がいた。

 

「…!」

 

『おっと!どうしましたか簪さん?』

 

「簪…ちゃん?」

 

「ッ!」

 

突然姉と出会ってしまった簪は逃げる様に、食堂とは逆方向に向かって走っていくのであった。その為祐樹は呆然と立ち尽くしてしまった。

 

『簪さん!』

 

「簪ちゃん!?」

 

『楯無さん…どういうことですか?』

 

「えっと…その…」

 

何か訳があると思った祐樹は理由を聞いてみることにした。だが、楯無は頑なに拒否した。

 

『楯無さん。何か理由があるんじゃないんですか?』

 

「…祐樹君には関係ない話しよ。それより食堂に向かう途中だったんでしょ…案内するわ」

 

『楯無さん…』

 

「……」

 

それ以降楯無は喋ろうとしなかった。だが、このままにしてはダメだと祐樹はひそかに思っていたのであった。

 

食堂に着くと楯無は「今日は食べたくない」と言い残し食堂を後にした。困ってしまった祐樹はとりあえず昨日と同じボタンの位置を押した。

 

そして、出て来た食券を食堂のおばちゃんに渡すと、意外な答えが返ってきた。

 

『すみません。これをお願いします』

 

「はいよ!あれ?今日は1人なのかい?」

 

『ええ、まぁそんな感じです』

 

「そうなのかい…何かあったかは知らないけど、早めに仲良くするんだよ?」

 

『あははは…はぁ』

 

そう言って、食券で頼んだサンドイッチを食べて教室へと急ぐのであった。

 

祐樹が教室に入ると、クラスの話題は再来週に行われる「クラス対抗戦」の話しで盛り上がっていた。

 

「織斑君再来週のクラス対抗戦頑張ってね!」

 

「おう!任せておけ!」

 

「期待しているからね」

 

「ああ、頑張るよ!」

 

再来週のクラス対抗戦に優勝したクラスには『半年間有効のスイーツ食べ放題』が付いてくる。みんな躍起になっている中ある情報が飛び出してくるのであった。

 

「今のところ専用機持ちは1組と4組だけだから勝てるよ!」

 

現在1年生の専用機持ちは1組と4組だけである。だが、4組の子はある事情により、機体の完成が出来ていない。なので現在専用機持ちである一夏が1歩リードしている状態なのである。

 

しかし、その情報に「待った!」をかける人物が現れたのであった。

 

その子は、ドアに背中を預けて決めポーズまでしている。ツインテールに八重歯、小柄な子はツカツカと一夏の前までやって来ると高らかに宣言してきた。

 

「その情報古いわよ」

 

「2組も専用機持ちになったからね!そう安々と勝ちを譲る気はないわよ!」

 

「鈴?お前、鈴なのか!」

 

「そう、凰 鈴音!勝利宣言をして来たってわけよ!」

 

「久しぶりだな!元気だったか?」

 

「そっちこそ!偶には風邪ひきなさいよね」

 

何やら楽しげに話している2人だが、それは第三者の介入によって終わるのであった。

 

『あの…ちょっといいですか?』

 

「何よ!」

 

『後ろを見た方いいと思いますよ』

 

「後ろて?…っは!?」

 

そこには1年1組の主任教師で世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を持つ人物。真っ黒なタイトスカートに鷹の様なツリ目。10人が10人美人と答えるスタイルの持ち主。織斑先生こと織斑千冬が、出席簿(こん棒)を持って鬼の形相で立っていた。

 

「そこで何をしているんだ。凰」

 

「げ!ち、千冬さん…」パン!

 

「織斑先生だ。早く教室に戻れ」

 

「は、はい!じゃあね一夏!逃げるんじゃあないわよ!」

 

急いで教室に戻る鈴を尻目に、一夏は何処か懐かしさを覚えていた。

 

「アイツもIS学園に来たんだな」

 

この発言に箒とセシリア、それに他の女子生徒達は訳アリだと思うのであった。昼休み。祐樹は楯無に食堂に来るように連絡をしてみたが、電話は通じなかった。

 

仕方なく食堂に向かって今日の昼飯をどうするかなどの雑談をしていると、入口のところに、ラーメンのお盆を持って立っていた鈴の姿があった。

 

「待っていたわ一夏!」

 

「悪いな、そこ入口だから通るのに邪魔になっているぞ」

 

「わ、分かっているわよ!」

 

 

鈴が入口から退くと、祐樹は今日の昼飯を選ぶのであった。朝はサンドイッチだったので昼飯も軽めにして、大人数が座れるテーブルに陣取っている鈴を見つけると一緒に食べ始めるのであった。

 

「それにしても驚いたわよ。アンタがISを使えるなんてね」

 

「まぁな。それよりも、叔母さん元気にしているか?」

 

「え、ええ…まぁね…」

 

何だか訳ありの様な言い方だった。それよりも箒とセシリアは一夏に鈴がどんな存在なのか聞きたかった。

 

「一夏、そろそろ教えて欲しいのだが?」

 

「妙に親しい感じがしますが、一夏さんの彼女さんでしょうか?」

 

「か、彼女!///」

 

「あ~違う、違う。鈴とは幼馴染なんだよ」

 

「幼馴染?てっきり、私だけだと思っていたが」

 

「箒は小4まで一緒だっただろう?その後に鈴が来て、小5から中学まで一緒だったんだよ。だから、箒はファースト幼馴染、鈴はセカンド幼馴染ってわけだ」

 

一夏は丁寧に説明したつもりだったが、鈴は納得いかない様な表情をしていた。

 

「フン!」

 

「うん?どうした?」

 

「別に…」

 

鈴は怒ってそっぽを向いてしまった。その後は、各々自己紹介をしていた。

 

「じゃあ、改めて。中国代表候補生、凰 鈴音って言うわ!気軽に鈴って言ってね」

 

「篠ノ之箒だ」

 

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットっと申しますわ。以後お見知りおきお」

 

皆が自己紹介を終わった時、鈴は祐樹をジッと見ていいた。いや、睨んでいた。

 

『僕は高柳祐樹と言います。しがない一般人です』

 

「そうなんだ。てか、アンタそれだけでご飯足りているの?」

 

そこにあったのは、パンが2枚とヨーグルト。それにサラダと少な目の食事であった。しかも箸を使わない(・・・・・・)料理ばかりであった。なぜこれだけの食事なのか祐樹は鈴に説明するのであった。

 

『ええ、実は僕目が見えないんですよ』

 

「え?」

 

『幼少期にイギリスで事故にあって、その時から両目が失明したんですよ。だから、余り箸を使うのが得意じゃないので…』

 

「そうだったのね…ごめん。変な事聞いて」

 

『大丈夫ですよ。それに、いい事もあったんですよ。気配を察知するのが得意になったので、だから悪いことだらけじゃないんですよ』

 

「そうなのね」

 

祐樹が説明を終わると、何故かセシリアがドヤ顔である事を言い出すのであった。それは、先週のクラス代表決定戦で言った、祐樹からの告白についてだった。

 

「それに!祐樹は私の恋人なのですよ!いい事ずくめなのですわ!」

 

「え、そうなの?」

 

『まぁ…そんな感じかな』

 

「祐樹へ情熱的なアプローチをして、告白した結果無事に恋人関係になれたのですわ!」

 

「へぇ~いいところあるじゃん」

 

『まぁ僕的には正直言って迷っていたんです。こんなこと(目が見えない)っていうのがあったので…』

 

「そこを含めて私は祐樹の事を愛おしいと思っておりましたから///」

 

『セシリア…ありがとう』

 

突然の甘い空気に耐え切れなくなった鈴は受け流していったが、一夏はスゲーと褒めていた。

 

「あ~はいはい。ごちそうさまでした。」

 

「うん?どうしたんだ鈴。まだ、ラーメン残っているだろ?」

 

このセリフに鈴は頭を抱えるしかなった。同じ苦労をしている箒もまた同様の気持ちだった。これには、一夏は何をしているのかさっぱりわからなかった。

 

「…もしかして一夏ってこんな感じだったの?」

 

「ああ、子供頃からこんな感じだった」

 

「……お互い苦労するわね」

 

「同感だ」

 

「?2人して何してんだ?」

 

『何でもない(わよ)』

 

そんな感じで4人は昼食を済ませて、それぞれの教室へと向かうのであった。そして、放課後になり、一夏はアリーナへ行きクラス対抗戦の特訓。箒は剣道部の部活動。セシリアは射撃場と各々やる事をやっていたのだ。そんな中祐樹は…

 

『僕に専用機ですか?』

 

「ああ、いつまでの学園の【打鉄】を使う訳にはいかないからな」

 

「既に複数の企業から、高柳君の専用機について打診があるんですよ」

 

『…』

 

祐樹にとっては嬉しい気持ちと不安があった。自分の努力が認めらて専用機が与えられた嬉しいと言う気持ちと、それを上手く使えるか…最悪の場合暴走して、大切な人達を傷つける事になってしまうかもしれない…

 

そんなことを思っていると、誰かに手を握られる感覚に陥った。手を握ったのは千冬であった。

 

『!』

 

「高柳。お前が不安になっているのはよく分かる。だが、その不安は私達が取り除いてやる。だから、思いっ切りやってこい」

 

「ええ、そうですよ高柳君。私達先生達は貴方の味方です。だから、心配する事なんてないですよ」

 

『織斑先生…山田先生。ありがとうございます』

 

「うむ、それで今一度聞く。高柳。専用機を受け取る自信はあるか?」

 

『…はい!よろしくお願いします』

 

こうして、祐樹の専用機について打ち合わせが始まった。打ち合わせを行う場所はIS学園理事長室。そこに居たのは理事長夫妻と整備班のメンバー。更に整備班のエース虚と黛薫子の姿があった。

 

「初めまして。IS学園理事長の轡木十蔵と申します。高柳祐樹君で間違えありませんね?」

 

『はい。高柳祐樹です。よろしくお願いいたします』

 

「そう固くならなくても大丈夫ですよ。さて高柳君の専用機ですが、高柳君の事を考えていきたいと思います。何か要望とかありますか?」

 

『そうですね…出来たらでいいんですが、ベースは【打鉄】を使って下さい。1回使って愛着が湧いてしまったので…』

 

「わかりました。それでは、クラス代表決定戦で使用した【打鉄】をベースに進めて行きましょう。布仏さん、黛さんよろしくお願いしますね」

 

『了解です』

 

機体となるベースは【打鉄】を使用する事にして、その他の機能について話し合われた。

 

『それと、ハイパーセンサーの感度を、今より数段階上げてもらえないでしょうか?』

 

「しかし、それだと高柳君への負担が大きくなりますよ」

 

『目が見えない分、頭での処理をする方に専念したいんです。お願いします』

 

「わかりました。高柳君の意思を尊重しましょう。それでは武装についてですが…」

 

こうして、祐樹の専用機計画が始まったのであった。その日に素案をまとめたので、完成は夏休み前となった。

理事長室を後にした千冬、山田先生は祐樹を部屋まで案内する事にした。

 

『すみません。部屋まで案内してもらって…』

 

「なに、構わん。それよりも今日は済まなかったな。いきなり理事長に会わせてしまって」

 

『大丈夫ですよ。話してみると結構いい人そうでしたから。何より親身になってくださったのが嬉しかったです』

 

「高柳君…偶にでいいので私達も頼ってくださいね。何せ私は先生なんですから!」

 

そう言って、エッヘンと言うと自慢の胸がポヨンと大きく揺れるのであった。しかし、目が見えない祐樹は知らなかった。

 

『山田先生…はい。よろしくお願いします』

 

「私もだぞ高柳。遠慮なく相談するんだな」

 

『織斑先生。わかりました』

 

そう言って、祐樹の部屋に着いたので2人は別れるのであった。明日はどんな風に過ごそうかと思う祐樹は部屋の中に入って行くのであった。

 

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