仮面ライダーディブレイカー~紅の破壊者~   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

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シオン「さて、前回言い忘れてたけど、今回でこの章は最後です」
翔「救いのない一言だな、それ」
カリナ「そもそも本編を見る限り、救いなんて何処にもないぞ……特に冒頭」


誰がこの悲劇の責任者なのか

サザンクロスの中央部………大首領の間ではボロボロになって戻ってきた草加と大首領がいた。

その近くには、何かの巨大な骨が所々に転がっており、草加はそれを横目で見つつ、大首領の方を見る。

……仮面のせいで分からないが、恐らくは怒っているのだろう……そんな威圧を発していた。

 

 

「……浅倉のやつ、油断したな………」

「…まさかあの男がやられたのか……?」

「あぁ……これだったら、貴様に星野零を任せた方がよかったかもしれないな……」

 

大首領はそう呟きながら、指をパチン、と鳴らす。

するとその辺に転がっていた何かの骨が、この空間の床に飲み込まれていってしまう……

 

「…まぁいい…草加、今回はご苦労だったな。貴様が連れてきたカルミーナの魔王……奴の持つ力はそれなりだった。それに貴様に持ってきてもらった『魔循環のネックレス』、それも無事に済ませるとは思ってみなかった……今回のオルフェノクを何体も無駄死ににさせた罰は取り消そう」

「…そうかよ……」

「…さて、俺はそろそろ、"アイツ"の元へ行くとするか……そろそろ時間だろうしな」

 

大首領は立ち上がると、そのまま部屋を退出する。

その場で一人残された草加は、少し経ってから部屋を出て行った。

 

 

一方の大首領は、ゆっくりと下に通ずる階段を降りていた。

暫く降りていくと、最深部に辿り着いたのか、地面が見えてくる……そして地面に足をつき、その場で立ち止ると、前方の方をじっと見つめる。

 

彼が見つめる方向………そこには"赤黒い泉"があった。

その大きさは異常なもので、周りには何かの機具のようなものが、大量に置かれている……

大首領は再び歩き始めると、赤黒い泉の前に立つ。

そして草加がカリナから手に入れたネックレスを、その泉に投げ入れていた。

同時に大首領は右手を突き出し、何かを呟くと……泉が突然輝きだす。

が、その光はすぐに消えてしまっていた。

 

「…さて、これでこの泉に『エネルギー循環能力』を与えることができた……これで後は、大量の魔力や霊力を蓄えさせれば……、…そろそろか…」

―――ザプン!ザプンザプン!!

 

 

 

大首領が呟き、泉を見た瞬間だった。

突然泉から、幾つもの腕が突き出されて、そこからもう片方の腕や顔が、泉から現れていた。

その殆どが怪人………しかもその怪人総てが【翔と草加が倒したオルフェノク】だった。

更に暫くすると、バラバラになって倒されたはずのベノスネーカーまでもが泉から飛び出し、泉から出てきた【死んだはずの怪人たち】は、ゆっくりと陸に上がってきていた。

そして………

 

 

 

―――ザブン!

「…ここは確か……」

「…目覚めたか……【浅倉】」

 

 

 

……一番最後に、泉から顔を出したのは……翔に殺されたはずの、浅倉だった。

浅倉は顔を腕で軽く拭いつつ、辺りを見回すと、大首領の声を聞いてその方角を見る。

 

「…ここにいるということは……俺は死んだのか……」

「…どうだった。また死んだ気分は」

「…最悪だな……星野零は弱かったし、本気も出さなかった……そして登竜翔は戦いが好きだと聞いて期待したが……一瞬でけりをつけやがった……イライラするぜ……」

 

浅倉は泉から抜け出すと、頭を掻き毟りながら答える。

それを聞いた大首領は軽く鼻で笑いながら、彼に告げていた。

 

「貴様、今回はえらく甘かったな……今まで戦えなかったからって、すぐ殺せる相手をいたぶって。最終的に星野零は、登竜翔に助けられた。そして貴様は、逆に殺された。極悪犯罪者などと言われているらしいが、笑わせてくれるな」

「…別に俺はそんな事、気にしてなんかいない……どうとでも言え……それにテメェがすぐ殺せると言えるなら、テメェが殺しに行きやぁよかっただろ…あれは今のテメェでも、充分に殺せるはずだ」

「言っただろう。奴の持つベルトは唯一『俺の能力の対象外』だと。ベルトごと持ってきてしまえば、能力の対象に入れられるがな……だがやつのライダーは、使用機会が少ないどころか、たったの数回ほどしか変身していないフォームだってある……いくら確定している情報があったとして、わざわざ俺がリスクを犯すと思うか?」

「…ああそうかよ……」

 

浅倉はそれだけを言うと、そのまま階段の方へ歩いていく。

彼を横目で見つつ、泉の方を眺める。

 

 

「これで残り二人が例のものを持ち帰れば、計画の第一段階を終える……問題は登竜翔たちを何故か庇っている超絶極神という存在だが……奴に唯一対抗できるのは、やはり"アイツ"だけだが……果たして引き受けてくれるかどうか、だな」

 

 

 

~~~

 

 

 

翔が浅倉を倒し、アジトの外に零とリンを連れ出していた。

一応リンの方は応急処置として、これ以上血が流れないよう、包帯代わりのカーテンなどで止血していた。

零の方に至ってはなんとか毒を解毒できたが、ダメージが大きすぎるためか、意識を失っている状態になっている。

 

そして数分後……スラムに戻ってきた反乱軍が、左腕がなくなっているリンを見て驚愕していた。

特にエルティナは信じられないといった顔をし、どういう事だと翔に詰め寄る。

 

「…登竜……貴様、これはどういう事だ!?」

「…」

「おい、返事をしろ!おい!!」

「……やはりクサカと来てたあの男が、何かしたのか…」

 

何も返事をしない翔に向かってエルティナが叫んでいると、背後から声が聞こえる。

エルティナが振り向くと、そこには何故かカリナがやって来ていた。

 

「…貴様が城を急いで出ていったとき、嫌な予感がしたから、できるだけ手短に話を済ませ、反乱軍の後をついて行ってみれば……」

「…おい登竜、本当に何があった……言え!何でリンが左腕を失っているのだ!そしてなんであいつはあんな力もない笑い声を出してるんだ!いや、それ以前に……他の子供たち、それに残りの村人はどこだ!ここに戻ってきたときから、気配が少なく感じたぞ!!」

「…ここに残ってた村人はどれほどまで被害を受けたか知らねぇが……そこのガキ以外は……全員死んだ。確実にな」

「なっ……!?」

 

翔の一言に、エルティナは絶句する。

それもそうだ……今そこで、精神が壊れた少女以外の子供は、確実に死んでると言われたのだ……

エルティナは嘘だと叫ぶが、アジトのなかに入って調べた反乱軍の一人が、暗い顔をしながら、二人の子供の遺体を運んできていた。

 

「…隊長……たぶんそいつの言ってること、本当ですぜ……残りの子供たちは、遺体すら見つかりやせんでした……っ!」

「そ、んな……」

「……俺が駆け付けた頃には、そこのガキと零、後は他のガキどもを殺した犯人だけだった…」

「…犯人?他に誰かいたのか?」

「…!まさか…」

 

先程子供たちの遺体を抱えてきた反乱軍の男の言葉を聞き、翔は急いでアジトの中に入る。

そして浅倉の遺体がある場所を見たが……そこには彼の遺体はなく、代わりに彼が死ぬ間際に流していた、彼自身の血の後だけが、残っていた。

それを見た翔はその辺をダン、と力強く叩き、エルティナに至っては、遂には何も言わなくなってしまう。

 

「…クソッ、あいつの仲間が遺体を回収したのか……!」

「…」

「…う、ぅ……」

「!零…!」

 

すると今まで意識を失っていた零が、声をあげながら目を開く。

翔はそれに気付くと、彼女の下まで駆け寄る。

 

「…零、目、覚めたか……」

「…あ、れ……リー…ダー……?…なん、で…ここ、に……それに、たし…か……わた、しは……!リンちゃ……!」

「あ、おい、無理するな」

 

彼女はうっすらとした意識の中、リンの事を思い出し、無理矢理体を起こす。

翔は無理するなと告げるが、零はそれを無視し、リンを探す。

そしてリンの姿を見かけると、彼女が生きていることに零は喜ぶ。

 

 

「リンちゃ……生き、てる………よかっ」

―――ガスッ

「………ぇ…………?」

 

 

 

突然、彼女の頬に、衝撃が走り、その衝撃が、痛みに変わる。

一瞬、何が起きたのか……零はそう思い、ゆっくりと痛みを感じる頬に、手を触れる。

そして振り返ると………握り拳を作り、怒りを露にしたエルティナがいた。

エルティナは右手の拳を震わせながら、左で彼女の胸ぐらをつかむ。

そして彼女は右手の握り拳で、零の顔を何発も殴り始めた。

 

「…貴様、今『よかった』と言おうとしただろう……何がよかっただ!村のものたちが襲われてることに気付かず!子供たちを殺され!!その上リンがああなったのに『よかった』だと?ふざけるなっ!!!」

「ぐ、っ…!」

「私は貴様に子供たちを見守ってくれと頼んだ…それなのに!何故子供たちは殺された!?何故リンはああなってしまった!!?……貴様が守ってやらなかったからだろ!!」

「ぐ、ぅぅ……!」

「貴様が守ってやれなかったから!子供たちは死んだ!リンもああなってしまった!!それも全部………"全部貴様のせい"だ!!!」

 

 

 

全部自分のせい。

それを聞いた零の顔色が、一気に青ざめていく。

それを見た翔は「まずい…!」と呟き、カリナや反乱軍のものたちに、エルティナを止めるように叫び、彼らもやりすぎだと考え、彼女を止めに入る。

そして無理矢理彼女からエルティナを引き剥がしたと同時に、翔は零の首もとに手刀を打ち込む。

それにより零はその場で気絶し、倒れそうになったところを翔が支えていた。

しかしエルティナはいまだ暴れ続け、彼女を押さえてる者たちは必死に説得していた。

 

「ぐっ…離せお前ら!!登竜!!そいつを殴らせろ!いや……私に殺させろ!!」

「落ち着いてくだせぇ隊長!!確かにあの嬢ちゃんにも非はあるが、何も嬢ちゃんすべてに責任がある訳じゃねぇでしょ!?」

「そうだ!あの女の傷を見てみろ!どれだけ一方的だったか分かるだろうが!!」

「いいから離せ!!そいつを殺させ」

「―――いい加減にしろ!!!」

 

 

 

翔の一喝により、エルティナは動きを止める。

そして零をおんぶするように背負った翔は、エルティナの方を睨みながら、告げていた。

 

「……確かにこいつは、最初から本気で戦わなかったせいで、そこのガキ以外を死なせてしまった……それはこいつが招いた『甘さ』が原因だ。…だがよ……それで総ての責任を、こいつに押し付けるのか?それこそふざけんじゃねぇぞ!!」

「なっ…」

「…例えどんなに実力があるやつでも、例え存在が神でも、守れないものだってある…不可能だってあるんだよ……俺が来るまでの間、どんな戦いをしたのか知らねぇけどよ……こいつはガキどもが殺されてなお、犠牲を最小限に留めようとした。俺が駆け付けたときは、他のガキは死んでいた……それでもなお、こいつは戦っていた……唯一残された『命』を、守るためにだ」

 

翔はあの時、あの場所に来るまでの間、走りながら自身の聴力で、どういう状況かを確かめていた。

僅かに聞こえる少女の乾いた笑い声……何かを切りつける音……そして彼女が気力を振り絞り、敵と交戦していた声……

そして現場に到着したと同時に倒れている、ボロボロの彼女を見て、彼は理解していた。

 

 

「…だからなんだと言うんだ……結局そいつは!!子供たちを見殺しにした!!それは事実だろ!!!」

「だからだよ!……こいつも自分自身、理解しているはずだ……自分のせいで、ガキどもを死なせてしまった。ただ、ガキどもが死んでいくのを、見てるだけしかできなかった……一番苦しんでいるのは、こいつなんだよ……!」

 

翔はそう言って、後ろで気絶してる彼女を、ちらりと見つめる。

しかしエルティナの方は一向に怒りが収まる気配がなく、カリナは無理矢理彼女を気絶させようと首もとを強く叩く。

位置的にもちょうどよかったのか、彼女は首を下に倒し、そのまま気絶していた。

 

「…カリナ、だったか?町の何処に宿屋があるか分かるか?……暫く安静にできる場所がほしい」

「それなら、俺が手配しよう。こうなってしまったのも、俺の責任だからな……だが、何故その女まで気絶させた?」

「…」

「……そこで沈黙するとなると、彼女の精神も限界に近づいているようだな……一応街には、医療施設を備えた建物もある。そこの少女もそこで預かるが……彼女もそっちにした方が」

「いや、できれば俺が近くにいられるようにしたい。じゃないと……こいつが目を覚ました時、何をするか分からないからな…」

「…了解した。ならば急いで医療施設と宿屋の手配をするとしよう」

 

カリナは翔の言葉を、なんとなく察し、急いで町のほうへ向かう。

彼が離れたのを見終えると、翔は反乱軍の男たちの方へ顔を向ける。

そして……翔は突然、彼らに向かって頭を下げていた。

 

「…すまねぇ……今のこいつは多分、起きてもまともに会話できるかわからねぇから、代わりに俺が謝る……村の奴らや、ガキどもの事、本当にすまねぇ……」

「い、いや…兄ちゃんが謝るこたぁねぇよ……俺らも大王の話を聞いた時、事前に命を救われたって知ったんだし……」

「それに…俺らもアンタたちの実力を、過信しすぎたんだ……こうなるのが分かっていれば…っ!」

「…いや、お前たちに非はないさ…」

「……とりあえず、その嬢ちゃんとリンちゃんを運ぼう……」

 

反乱軍の男の一人が、静かにそう告げる。

それに翔は同意し、そのまま街へ向かっていった……

 

 

 

~~~

 

 

 

その日の夜、翔は街の医療施設のある建物に入る。

そしてある一室……リンがいる部屋へと入っていく。

部屋には反乱軍の男が何人かと、ここを手配したカリナがおり、肝心のリンはベッドの上で、ゆっくりと眠っていた。

 

「…どうやら無事に寝かせつけられたようだな…」

「トウリュウ…だったか。あぁ…俺が来る数分前に、突然暴れだして発狂したらしいが……なんとか寝かせることができた。そっちはどうだ」

「結構強く打ち込んだからな…まだ当分は目が覚めねぇよ」

「そうか…エルティナという隊長各もまだ目が覚めてないらしいが……むしろ都合がよかっただろうな」

「ですな……隊長がこの場にいたら、止めるのが面倒ですから」

 

カリナの言葉を肯定するように、反乱軍の男の一人が呟く。

…確かに、彼女がここにいたら、また面倒ごとになっただろう……彼女がこの場にいなくて正解だったかもしれない。

翔はそう思いながら、彼らに再び謝罪する。

 

「…本当に悪かったな…」

「だからそれは兄ちゃんが謝ることじゃねぇですって!」

「そうだ…むしろ責任は、俺の方にある。俺がやつらの言いなりにならなければ、こんな事には……」

「…結局、総ては俺たちの責任、って事ですよね……大王はやつらにいいように利用され、俺たちはやつらの策略に嵌って城に攻め込み、あの嬢ちゃんも子供たちを守れなかった……すべては奴らの手のひらに踊らされていた、俺たちのせいって事だ…」

 

反乱軍の男の一人の言葉に、周囲は一気に静まり返る。

…結局、自分たちの『甘さ』が招いた結果なのだ………

翔や反乱軍の者たちは相手の仕組んだ反乱にまんまと嵌り……

カリナは彼らのいいように扱われ……

そして零は………最初から全力で戦わなかったから、今回の悲劇を、招いてしまった………

結局、自分たちの行動が、悲劇を起こす『キッカケ』になったのだ……誰も誰かを責める事は、出来ないのだ……

 

「…随分と勝手だが、もし明日までに零が目覚めたら、すぐにこの世界から出て行こうと思う」

「そういえば貴様も、異世界から来たのだったか」

「「「え、異世界?」」」

「だが…何故すぐに出て行こうというのだ?」

「…本当は零も今回の出来事に関して、今すぐにでも謝りたいだろうが……あいつは恐らく、誰よりも責任を感じてる。だからその責任を感じて、何かをやらかしかねないと思うんだよ……特にこの世界にいる間は、ずっとな」

 

翔は顔が俯いたまま、理由を告げる。

 

「だが、このままでいいのか…?あの女が責任を感じてるなら、謝罪も出来ないままこの世界を立ち去ったときの方が、余計に責任を負うのではないのか?」

「…そうかもしれねぇ……だが、前にも何回か、こうなったことはあるんだ。それにあいつは引き摺りやすい性格だから、何日……いや、下手したら何ヶ月か間を置かせた方が、落ち着いてくれる。…実際に今まで、そうだったからな……あいつの心が落ち着き次第、またこの世界に来て、謝らせるつもりさ。絶対にな」

「…そうか……なら、お前の好きにさせる。だが……絶対にこの世界に戻ってくる。いいな?」

「…あぁ。出来るだけ早く立ち直らせるさ…」

 

 

 

~~~

 

 

 

カルミーナの宿屋の一室……そこで今まで寝かされていた零が、ゆっくり目を開く。

―――あれ、ここは……私……いつのまに……こんな所に寝て……

彼女はそう思いながら体を起こすが、同時に強い痛みが、体中を駆け巡る。

零は痛みを堪えるような顔をしつつ、痛みが走った場所を見ると、体の至る所に包帯が巻かれていた。

―――そっか……私……ボロボロにやられて……そしてあそこで一度目覚めて、リンちゃんの容態を確かめて……そして……

 

 

 

"全部貴様のせいだ!!!"

「っ……!!」

 

 

 

そこまで思い出した直後、零はエルティナの言葉を思い出す。

―――そっか……そうだよね……例えリンちゃんが無事だったとしても…他の子供たちは……

―――それなのに私……リンちゃんだけでも無事だったことが"よかった"なんて言おうとしてた……何も守れてないくせに………

 

 

全部自分のせい

何も守れてない

ただ命が消えるのを、見ているだけだった

総て自分のせいで……

 

 

 

ゼ  ン  ブ  ジ  ブ  ン  ノ  セ  イ  デ

 

 

 

「…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 

 

 

零は頭を強く抑え、悲鳴をあげる。

そのまま悲鳴をあげ続けて数分後………彼女は叫ぶのをやめる。

そしてゆっくりと……近くに置かれている自分の衣服と共に置かれていた、一本のナイフを手に取ると、切先を首元に向けていた。

 

同時に翔が部屋に戻ってきたのか、強く扉が開かれる。

そして戻ってきた翔は零のいる方を見ると、ナイフを首に突き刺そうとする零の姿を見て、慌てて彼女からナイフを取り上げていた。

 

「!馬鹿、やめろ零!!」

「リー…ダー……止めないでください!!私はっ!私はっ…!!これ以上生きてはいけないんです!!!」

「だからって"またそうやって"自殺しようとすんじゃねぇよ!!!」

 

翔は零からナイフを取り上げると、全力で彼女を殴る。

彼女は頬を押さえながら、震えた声で、静かに告げる。

 

「…でですか……何で死なせてくれないんですか!!私のせいで!子供たちは殺された!!私が何も出来なかったせいで!!"あの時"も……"あの時"も"あの時"も"あの時"も!!!……全部、私がそこにいたからでしょ……」

「…」

「何も守れてないくせに……結局…私が悪いんですよ……全部……私が……生きてるから……」

 

 

そう告げる彼女の瞳には、何の光も感じない……生気を失ったような目をしており、彼女はそのままうずくまってしまう…

―――やっぱこうなったか……しかも今回は、かなり重症だな……

翔はそう思いながら、彼女が自殺に使いそうなものを総て回収する。

そしてそのまま部屋を退出すると、深くため息をつきながら、自身の右手を見つめる。

…彼の右手は、何故か軽く痙攣しており、ギリリと歯を食いしばる音が聞こえていた。

 

 

「……いつになったら、俺が"終わりを迎える"までに、あいつを"巣立ち"させることが出来るんだろうな……」

 

 

 

~~~

 

 

 

次の日の朝……まだ日が昇ってまもない時間帯に、翔と零は宿屋を出ていた。

しかし零は未だに生気を発しておらず、虚ろな表情ばかりをしていた。

 

「…行くぞ、零……」

「…」

(返事もしない、か……)

「…もう行くのか…?」

 

すると前方から声が聞こえ、翔はその方向を向くと、カリナがこちらに向かって歩いてきていた。

近くには付き添いのような者たちはおらず、恐らく一人でここまで来たのだろう……

 

「カリナ…わざわざ見送りに来たのかよ…随分とアクティブな大王だな、お前……」

「貴様には世話になったしな……」

「いや、こっちが世話になったんだ…ありがとな……」

「礼などいらぬ。それよりも……その女、やはりまだ……」

 

零を見たカリナの言葉に、翔は静かに頷く。

…零は未だに微動だにせず、ただポツリと立っているだけだった。

 

「…その様子だと、かなり時間が掛かるようだな……」

「あぁ…だけど出来るだけ早く、謝らせに戻ってくるつもりだ。それまで待っててくれ」

「分かっている……その間に俺も、自分の罪を償いながら、スラムの現状を改善しないとな……もちろんこの街も、よりよくしていくつもりだ」

「そうか…とりあえず、頑張れよ」

 

翔はそれだけを言うと、オーロラを横に呼び出す。

そしてオーロラを潜ろうとした瞬間、突然カリナが呼び止めていた。

 

「待て、トウリュウ。ちょっと耳を貸せ」

「あん?なんだよ」

「…リンという少女だが、昨日お前が帰って1時間後に目が覚めた」

「!…それで、どうだった」

「何とか精神的に落ち着いてはいたが、やはり他の子供たちが死んだことに関して、まだ完全に受け入れられないらしい……もう少しあの病院で様子を見るつもりではいる」

「そうか…」

 

小声で話を聞いた翔はそれだけを聞くと、チラリと零を見る。

出来るだけ小声で話したため、この会話は聞こえてないだろう……零は未だに反応を示さなかった。

 

「…俺が言うのもなんだが……あのガキのこと、頼んだぞ」

「任せてくれ…」

 

翔はカリナにそれだけを告げ、カリナはそれを承諾する。

そしてそのままオーロラを潜っていき、彼らはこの世界を後にしていた。




さて、今回でヘルズ編は終わりですが……ある意味章題通り、ラストあたりが地獄のような話ばっかりでしたね…
だが、私は謝らない←


冒頭の大首領の間の骨は、草加が持ち帰ってきた魔王の骨です。
何に使われたかは本編を読んで分かったと思いますが、大首領の力の糧にされてますね……魔王ェ……


今回出てきた赤黒い血のような泉……これがヘルズの切り札のひとつですね。
既に読んでみて分かったと思いますが、怪人や人を甦らせる事ができるという、名付けるなら『黄泉の泉』ですね。
そんなの普通だろと思うでしょうけど、一筋縄ではいかないのがヘルズの大首領です。


そして前回感想で浅倉散るの早すぎね?みたいのが多かったですが……残念ですが、浅倉は生き返りました←
そもそも大首領が浅倉のような主要戦力を、みすみす捨てるわけにはいかないんですよねぇ……
因みに幹部の中で一番生き返らせる必要がないのは、志村だったりする(そもそもあいつアンデッドだし)
因みに大首領の能力を知っているのは、浅倉と戦極凌馬だけですね。


とりあえずちゃんと応急処置はしてあげる翔。
そしてかなり取り乱したエルティナ……確かに保護者として見守ってきたから、そりゃあ取り乱しますよね……
あ、因みに浅倉の死体は自動的に回収されています。前々回の草加みたいに。


零にとってはリンちゃんだけでも助かったのは『よかった事』……けれどエルティナにとっては『よくない事』であるのは間違いじゃあないんですよねぇ……結局他の子供たちは殺され、リンちゃんも左腕切断+精神崩壊状態になってしまいましたし。
結局殆どがエルティナの言うとおり、なのは否定できません。


けれど翔は、全部の責任を零に押し付けるのは間違いといいましたが、これも実際にそうなんですよね…
実際にあの状況で普通の人間が勝てるかどうかと言われたら、可能性は著しく低いし、仮に最初から変身した状態で浅倉が突入、いざ戦おうとしたときに何か既にカードを使って仕掛けていた場合、どんなに実力がある相手でも勝てるかどうかと言われたら、それも可能性が低いんですよ……どんな効果が発生しているか分かりませんし。
そういう意味では、例え神でさえ、何かを守ることは出来ませんし……
個人的に神でも抗えないのは、運命だと思うんですよね…どんなに運命を操ろうとしても、覆せない未来だってある、そんな感じに。


ここでちょっと話は飛びまして、病院的なポジションの建物での話しですが……
結局、今回の話に書いたとおり、総ての責任は全員にあるんですよね……勿論敵含め。
どんなに人をせめても、既に起こったことは、変えることが出来ない……例え過去に戻って未来を変えたとしても、結局『その出来事が起きた』という事実は変わりませんし。


そして零の方……予想以上に精神が参ってしまってました。
大抵の理由は過去編とかでも明かしていきますが、何度も似たようなことを繰り返しているんですよね……
そのせいで零の心はもう、完全に封鎖状態になってしまいました。
…多分次章が終わってもこのままだと思いますね……
そして翔の異変……そして言葉の意味とは……?


最終的にカルミーナから出て行くことになりましたが……見送りまでしてくれるカリナマジイケメン←
一応リンちゃんの方は発狂が止まりましたが……こっちもまだ精神が不安定な状態です。
多分零みたいに自殺を図ろうとすることはないでしょうが……?


さて、今回でこの章は終わりですが……ここまで後味の悪い章の終わり方って、いままであったのだろうか………?
ともかく、次回からは超絶極神編ですので、次回もお楽しみに!!
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