仮面ライダーディブレイカー~紅の破壊者~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
翔「なんかだんだんとタイトル詐欺になってきてねぇか…?」
シオン「仕方ないじゃん……出すタイミングなかったし……あ、次回で超絶極神編は終わる予定です」
とある空間……そこは光もなく、上や下、右左という区別もなく、酸素などといった元素もない……あるとすれば、色でいう【黒】…と呼ぶべきものだけ……それだけが、この空間全体を包んでいる……
―――グォォォォォォォォ……
―――ギィィィィン!ギィィィィン!
……そのほぼ何もない空間で轟、という、まるで風を切るような音が、響き渡る……風もないのに、だ…
それどころか、至るところから金属音が鳴り響き、無に等しい静寂の空間に【音】という概念を、与えていた。
やがてこの空間に響き渡る音たちは大きくなり、連なるように響き始める……
そして………
―――ギィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
これまで以上の音が響いたと同時に、全体から風圧のようなものが巻き起こる……
そしてこの空間で、今まさに"彼ら"にとって真ん中と言うべき場所に、静寂な空間を崩した張本人たちが、互いの武器(エモノ)で鍔迫り合いしていた。
「…なかなかやるじゃねぇか、ホムル……!」
「はっ……互いに能力を使ってなくても、アンタの攻撃はちと、重すぎるんだけどねぇ……!」
この空間で戦う男女……レイズとホムルは互いにいがみ合いながら、自身の思ってる事を相手に告げる。
互いにそれを聞いた後、両方ともに素早く後ろへ身を下げる。
そして互いに何かを唱え始めると、それぞれを中心として、周りに魔方陣のようなものが浮かび上がる。
「『太陽、大地、精霊よ…眠れぬ星に生ある鼓動を鳴らせ…!』」
「『すべてに流れし理よ…その理に反する者に大いなる代償を知らしめろ…!』」
「グランド・フルブリンガー!!」
「ジャッジメント・トレートル!!」
互いに詠唱を終え、同じタイミングで叫ぶと、今度は互いの正面に魔方陣が現れる。
その2つの魔方陣の内、ホムルの魔方陣からは先が鋭く尖った岩を音速で飛び出し、レイズの魔方陣からは水の塊のようなものが無数に飛び出す。
そして互いに放った攻撃はその中心で激突し、その場で煙を起こす化のように爆発する。
しかし、弾数的に上手だったレイズの攻撃が爆発の中を掻い潜り、ホムルに目掛けて飛来してくる。
彼女はそれを見て舌打ちしながらも、咄嗟にハンマーのような武器を構え、それを手首だけでプロペラ状に回し始める。
やがて彼女の武器は回転数を増していき、レイズの放った攻撃すべてを弾き飛ばしていた。
「…弾数(たまかず)で押してきやがって……」
「はっ…残ったやつを全部弾き飛ばす時点で、テメェも大概なもんだろ……つか、テメェの錬々神(れんれんじん)、また改良したのかよ。反魔法が前より練り込まれてるのが丸わかりだ」
「あ、なんか文句でもあるんか?だったらそのツァイトハルバート、ただで錬成してやろうか?」
ホムルはハンマーのような武器―――"錬々神"を肩に乗せながら、左手でレイズを挑発する。
が、レイズは余計なお世話だ、とだけ告げ、ハルバードのような武器―――"ツァイトハルバード"を構えると、再度彼女に切りかかる。
彼女はそれを見て血の気の多いやつ、と小言を呟きながら、錬々神を肩から離す。
すると同時に錬々神から軽く電流が迸り、ハンマーのような姿から大剣のような姿に変わっていた。
ホムルは大剣に変わった錬々神を軽々と振り回しながら、レイズのツァイトハルバードと激突させる。
瞬間、再び互いの武器がぶつかり合ったことにより、再びこの無空間に音が鳴り響き、衝撃波が吹き荒れていた。
「ハンマーから剣に変えたか…けどそれだけで俺に勝てるとでも思ってんのか」
「思ってないさ……だからこうするっ!!」
「!?」
すると剣の姿になった錬々神の刀身が液状のようなものになり、更にそのままツァイトハルバードを包み込んでしまう……
レイズはそれに驚き、急いでツァイトハルバードを引き抜こうとするが、その前にホムルが左手をかざし、掌の中心にエネルギーを終息していく。
「痛いのぶっぱなすぜぇぇぇぇ!!」
「んのっ、舐めんじゃねぇぞクソアマァ!!」
「げっ!アンタもそれぶつけるんじゃあヤバすぎるだろ!?」
しかし大人しく攻撃を食らうはずもなく、レイズも空いてる腕の掌にエネルギーを収束し始める。
流石に至近距離でのエネルギーのぶつけ合いは危険すぎるとホムルは思い、再び錬々神を液状化にするとツァイトハルバードを離し、そのまま上に飛んでいく。
レイズはそれを見て「逃がすかよ!」と叫ぶと同時に、収束されたエネルギー弾を放つ。
「うおっ!?やっば!これ相殺じゃ無理なやつか!?だったらまた弾くしか」
「させねぇよそんなこと!!」
「げっ!?分散させてきやがった!」
レイズの放ったエネルギー弾を防ごうとホムルは錬々神を構える。
が、彼の放ったエネルギー弾が途中で幾つにも分離し、更に彼女を囲うようにエネルギー弾が飛び交う。
(うっわぁ……あいつどんだけ力練り込んでるんだよ……一発一発が余裕で星2つは砕けるレベルじゃねぇか……!しかもご丁寧に逃げ道を塞いでいくし!!)
「余所見してんじゃねぇよ!!」
「うおっとぉ!?」
飛び交うエネルギー弾を気にしていた瞬間、レイズがホムルに斬りかかる。
彼女は慌てて防御するが、同時に彼女の背後からレイズの放ったエネルギー弾の弾幕が襲いかかる。
流石にそれはヤバイと思い、ホムルは面倒臭いと思いながら、彼女自身の【力】を発動する。
すると彼女に迫っていた弾幕が総て、彼女に当たりそうになった瞬間、"砂"に変わってしまう……
そして砂がハラリと彼女たちの周りを漂い始めていた。
「ふー……危ない危ない……砂に錬金してよかった……」
「ちっ………やっぱ『錬金』の超絶極神の名は伊達じゃねぇ、ってか……!」
「それを言うんだったら、これを受けてからにしな」
ホムルが呟いた瞬間、彼女たちの周りに漂っていた砂が1粒ずつ、姿を変えていく……
そして先程まで砂だったものは重火器に代わり、彼女たちを取り囲むように銃口を向けていた。
「はっ……砂1粒だけでこんなものを、しかも大量に造るとはなぁ……!」
「それだけじゃあないさ……アンタ用に時間干渉能力も付属させてる……つまりアンタは銃弾の時を操る事は出来ない寸法さ」
「へぇ……だが別に止めなくても、瞬間移動で抜け出せば意味はねぇだろ!!」
レイズはホムルから離れると同時に、瞬時にその場から姿を消す。
しかしホムルはニヤリと笑うと、周りの重火器の銃口を反対に向け、そのまま一斉射撃を行い出した。
同時に姿を表したレイズは目を見開きながら、念力のようなものでそれを受け止める。
が、次々発砲され、襲いかかってくる弾幕を見て舌打ちすると、ツァイトハルバードを力強く振りかざす。
するとツァイトハルバードを振りかざしたことにより風圧が発生し、向かってくる弾幕すべてを消し飛ばしていた。
それどころか周りの重火器すら派手に壊れてしまい、ホムルは風圧に耐えながらあちゃー、と頭を押さえる。
「せっかくの自信作を派手にぶっ壊しやがった……頑丈にしてたのによぉ……」
「フルタイムイレイザー!!」
「!」
しかしレイズの猛攻は止まらず、今度は巨大な極太レーザーのようなものを放ってくる。
それを見たホムルは「やべぇ!」と騒ぎながら錬々神をしまい、両手でそのレーザーを受け止める。
(っ…んにゃろう……"自分の時を早めて"魔法の詠唱をさっさと済ませやがったな……!?)
「隙だらけだ!!」
「!ぐはあっ!?」
ホムルがレーザーを受け止めている間に回り込んだのか、レイズが横からエネルギー弾を放ってくる。
それにぶつかる直前にしかホムルは気付かず、その場で直撃……更にそのままレーザーに呑み込まれてしまう。
が、10秒もたたないうちに彼女がレーザーから飛び出すと、レイズに向けて錬々神を振るおうとする。
しかしレイズはそれを寸前で交わし、空いてる手で錬々神を掴むと、そのまま彼女の腹部に蹴りを入れていた。
諸に攻撃を受けてしまったホムルはその場で吐血するが、すぐさま錬々神を手放し、そのままレイズの顔面を殴りにかかる。
流石にそれは避けれなかったのか、彼女の拳はレイズの頬に入り込み、そのまま殴り飛ばしていた。
「ぐ、おぉぉぉぉ……っ!」
「ハァッ、ハァッ……あー…思いきり腹蹴りやがって……今のは本気で痛かった…」
「っ…だが、今のでテメェは丸腰……錬々神も今俺の腕から反錬金の魔法を送り込んでる……これでテメェは俺がこれを持ってる間、自分の武器への錬成ができねぇ……」
「ちっ…女性に体術と魔法、後エネルギーの塊飛ばしてぶつけるというのだけで戦わせようなんて、卑怯だと思わねぇのかよ…つか、少しは加減しやがれってんだ…」
ホムルは口の中に溜まった血を吐き捨てながら呟く。
……これでも先程のレーザー攻撃とエネルギー弾、そして腹部を蹴られたダメージが予想以上に大きく、彼女にとってはかなり追い詰められている方……
しかも錬々神を奪われてるのもあり、武器による戦いができないのは、かなり辛いものとなっている…
仕方なくホムルは、先程自身が吐き捨てた血を錬成しようと考えるが、それを読んでいたのかレイズは彼女へ向かって急接近していく。
「させるかよぉ!」
「!っとぉ!!」
いきなり迫ってきたこともあり、ホムルは自身の血を先に盾に錬金し、攻撃を防ごうとする。
が、レイズのツァイトハルバードが盾にぶつかった瞬間、盾は粉々に壊れてしまい、更にその隙に剣の姿をしている錬々神が彼女の腹部に突き刺さってしまう。
相当深く突き刺さったのか、ホムルは先程よりも強く吐血し、レイズは勝負がついたと思ったのか、錬々神から手を離す。
「がっ、はぁ……!」
「…勝負ありだな……死なないように不死付属魔法は付けておいたが、同時に回復魔法も封じさせてもらった。暫くは腹の痛みでまともに動けないぜ」
「んのっ、やろぉ…誰が…終わり、だって……!」
「はっ、勝手にそうほざいてろ……さて、とりあえず出口を作ると…!」
レイズは彼女に背を向けると、そのまま無空間からの出口を作ろうとする。
……が、突如強い殺気が彼に襲い掛かると同時に、その場から離れる。
そして彼が再びホムルのいる方を見ると、彼は目を見開いてしまう……
「―――悪いが、お前にはあと少し、ここにいてもらうぞ、レイズ…」
「!……やっぱ来やがったな…コウマ……!!」
彼らの間に割って入ってきたのは一人の男―――コウマ・ディ・レイジアだ……
しかし彼は既にボロボロで、所々血が流れている…
それを見たレイズは唾を吐き捨てながら、彼に尋ねていた。
「……ここに来たってことは、ティアナのやつを倒してきたってところか……けれどお前にしちゃあ、随分とボロボロだな…?」
「あいつを抑えるのに手間取ってな……ホムルさん、登竜翔は」
「へっ…あんしん、しなよ……リナちゃんと…いっしょさ……」
「…そうか……」
「おいコウマ…テメェ……なんであんな危険人物扱いされるやつを野放しにしておく…やつはお前が思ってるほど、素直言うことを聞くような人物じゃあないだろ……」
ホムルの言葉を聞いた彼は安堵したような声を出すと同時にレイズが再び彼に翔の事を尋ねる。
彼の口から放たれた言葉を聞いた後、コウマは呼吸を整えると、彼に向かって静かに告げる。
「…先程の議会でも話しただろ……やつは今までの経歴を見れば、確かに危険な存在……だが、俺はむしろ、やつの危険性が"利用できる"と思っている」
「…何……?」
「やつは空間移動もできるのを含め、実力は確かだ…下手したらいずれやつは全銀河……否、総ての次元の脅威になりかねない……そしてそれは当然、様々な世界を支配しようなどと、不可能なことを企むやつらにもだ。今はさほど脅威を持たないだろうが、登竜翔……あいつはまだ"伸びる"可能性がある。そうなれば当然、やつらの思惑を邪魔されないよう、先手を打ちに来る可能性だってある」
「…つまりテメェは登竜翔を【囮】にして、下らねぇ事を企んでるやつらを潰させる魂胆か……だがそんなに上手くいくとでも」
「思ってない。やつは気紛れだ……やつ自身が気に入らないと思ったものは容赦なく潰す。一番の不安要素はそれだ。が、やつは星の支配などには興味ないし、やつの因縁に少なからず関わることもある。星の支配などと下らない考えをしてるやつらも、やつにとっては【壊すべき対象】にしか過ぎん」
コウマの口から放たれた言葉を聞き、レイズは納得できない顔をする。
…確かに翔の強さは、下級とはいえ神相手に互角で渡り合えたほど……全次元にいるものたちにとって敵になれば、相応の脅威になりうる可能性だってある。
特に放し飼いに等しい状態となると、行動範囲の広さも含め、時空警察などといった治安維持局すらも、彼を捕まえようとしても困難だろう……
何より彼は、女子供すら躊躇いなく殺すことができる……それが意味することは、彼自身にとって【邪魔】と判断されたものたちには、容赦なく殺しにかかるということ。
そうなれば彼を押さえようとした側への犠牲も大きい……
「…だったらなおさら俺たちがやつを始末するべきだろうが」
「今始末せずとも、やつ自身、門矢士という男と決着をつけた後には"死ぬ気"でいる……恐らくは"必ず"負けるだろうがな」
「…テメェ、さっきから矛盾した事ばっか言って、時間を稼ごうとしてるだろ…そんなのお見通しだ…!」
「矛盾に思ってようが、これは俺の思ったことすべてを話しただけだ。やつは【ほぼ総ての次元の敵】だ。それには変わりない」
「あぁもう!めんどくせぇ!!テメェと話してると噛み合わなすぎてイライラするぜ……この際先に引導を渡してやる!!」
やはり話し合っても無駄だと考えたのか、レイズはツァイトハルバードを構え、コウマに襲い掛かる。
一方のコウマも、こうなると分かっていたためか舌打ちをし、目の前に黒い大剣―――"総無剣"を呼び出す。
そしてレイズがツァイトハルバードを振るったと同時に総無剣を振るい、攻撃を受け止める。
―――ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
「っ…私たちの時より音がでかくてうるせぇ…!」
互いの武器がぶつかり合った瞬間、ホムルとレイズがやりあった時よりも凄まじい金属音が鳴り響く。
あまりにもの煩さにホムルは耳を塞ぐが、そうしてる間に二人は姿を消す。
そして……至る所で轟音と金属音が鳴り響き、周囲に暴風が吹き荒れ始める。
その姿はホムルですら認識が難しく、ただ唖然とした表情で、微かに見える姿を捉えるのが精一杯だ。
「…っ!」
「どうした……いつもより力がねぇな……ティアナとの戦いで消耗したか…」
「…そういう訳ではない…少しダメージを、受けすぎただけだ…」
「!」
途中、武器による鍔競り合いが起こり、いつもより動きが鈍いコウマに違和感を感じたのか、レイズは彼に尋ねる。
が、彼は簡潔に理由を述べた後、素早く身を引く。
その結果、鍔競り合いをしていたために力んでいたレイズが前方に体勢を崩してしまう。
その間にコウマは彼の後ろに回り込み、総無剣を叩き込む。
「…ふんっ!」
「が、っ…はぁ…!!っ…なめんじゃねぇぞぉぉぉぉ!!」
背中から攻撃が直撃したレイズはそのまま急降下していくが、直後に振り向き、瞬時に溜めたエネルギー弾を投げ飛ばす。
が、コウマはそれを左手で受け止めると、そのままレイズが放ったエネルギー弾を握りつぶしていた。
そのままコウマはレイズに向かってエネルギー弾を何発も放つが、途中で体勢を立て直したレイズがツァイトハルバードを振り回し、総て別の方角へ弾き飛ばす。
…しかし先程の攻撃が響いたためか、レイズはその場で膝を付くように身体を縮めていた。
「くっ……!」
「…お前が本気を出せば、どんな相手も寄せ付けることすらできない…あるとすれば、俺と同じ絶対的概念すら破壊できる破壊の力を持つものだけだ……」
「それが…どうしたぁ!!」
レイズが叫ぶと同時に、コウマの周りに幾つもの魔方陣が現れる。
魔方陣からは大量の光が溢れており、それを見たコウマは驚く。
「…!」
「…テメェが来るのはなんとなく予想していた…ホムルのやつと戦ってた時に、気付かれないよう、攻撃を"予約"しておいた……テメェが破壊の力を常時発動できる訳ねぇからな…!―――やれ」
レイズの合図と同時に、総ての魔方陣から極太のレーザーがコウマに向かって放たれる。
その距離は1㎞にも満たないほどで、全方位から襲い掛かる攻撃に……コウマは静かに告げていた。
「―――至近距離で攻撃して、俺に『封印』を解かせないまま倒そうという魂胆か…だが、残念だったな……」
「…な…!?」
次の瞬間、先程までコウマに向かっていた無数のレーザーが、いつの間にか"総て"消えていた。
しかし彼はその場から、全く動いてすらいない…ただその場で、口を動かしただけだ。
いったい何が起きたのか…レイズはそう思ったが、すぐに気付いたと同時に、コウマの口から答えが出てくる。
「…ティアナと戦ったとき、既に1%だけ破壊の力を開放していた。その後そのままここに来たのだが……どうやら運河よかったようだな」
「…ちょっと待てコウマ…お前、そのまま来たって……まさか封印解除したの…忘れてた……とかじゃないよな…?」
「…急いでここに来る時に創造宮を経由しているし、力はほぼ抑えていたから大丈夫だ……何の影響もない」
「じゃあなんでそっぽを向くんだよ!?っ…ゲフッ!」
十時の方向を向くコウマに対しホムルはツッコミをいれるが、先程まで腹部に剣が刺さってたのもあり、勢いよく吐血する。
―――こいつ、本気になったり考え事あると、軽くなにか忘れるってのはあったけど……アカンやつ忘れてどうすんのさ…
彼の力を十分に知ってるホムルは、心の中で静かにそう思う。
一方のレイズはというと……コウマに対し、異常なほどまでぶちギレていた。
「て……テメェコウマァァァァァァ!!テメェ自分の力は危険だからっていう理由でいつも封印してるくせになんでそんなこと忘れんだよ!?あれか、急いでたからか!?わざわざ俺を止めるのに急いでたからか!?それともあれか、創造宮から経由してくれば完全封印しなくても大丈夫だと判断したってのか!?」
「…両方だな…」
「両方!?んだよそれふざけてんのか!?えぇ!!?よくテメェの事お人好しのアホだと思ってたがこれはアホってレベルじゃねぇぞゴルァ!!」
「うわー……こればかりはレイズに賛成だわ……あの攻撃消せた理由が最初から破壊の力使ってる状態だった、って……全次元から見て笑い事じゃすまないことしてるよ、アンタ……」
レイズだけでなくホムルにすら散々言われてしまい、コウマは軽く罪悪感を抱いてしまう。
しかしそれで問題が解決するという訳ではなく、気を取り直したレイズがツァイトハルバードを軽く振るう。
「ちっ……1%でも今の俺の全力攻撃を消せる辺り、やっぱりテメェの力は危険だな……気ィ抜いてたら俺が消されるぜ…!」
「少なくとも人を消さないよう調整はしている。…しかしお前の力も、かなり落ちてきてるな……今の状態での攻撃が全力だったら、1%では消しきれてないだろうからな」
「へっ……よく言うぜ…!」
レイズは口から血を吐き捨てながら、コウマを睨み付ける。
対するコウマも気を取り直し、総無剣をゆっくりと構えなおす…
「―――そこまでじゃ」
「「!」」
「この声…グランの爺さんか…」
と、同時だった。突然二人の間に裂け目のようなものが入り込み、そこから声が聞こえる。
二人はそれに軽く驚き、ホムルはその声の人物の名前を呟く。
声の人物…グランは裂け目の中から、三人に向けて話しかける。
「つい先程、初神様から決断が下った……登竜翔、あの者はまだ生かしておくようにとのことじゃ」
「!」
「…初神の決定ならば、やつを俺たちの手で始末することは暫くの間不可能だな…」
「ふぃー……やっぱそっちになったか…」
グランの言葉にコウマとホムルは安堵するが、その言葉に対し、レイズだけが納得できないといった顔をする。
しかしグランはそれを気にせず、彼らに自分たちの次元に戻るようにとだけ告げる。
その言葉に対しホムルはよたよたと浮かびながら先に裂け目の中に入っていき、コウマもその裂け目を潜ろうとする……が、レイズが何やら別の場所に裂け目を作っており、それを見た彼は尋ねる。
「…何をしている。まさか初神に逆らうつもりか」
「してーのは山々だ…が、登竜翔を殺りに行ったとしても、初神に邪魔されるに決まってる」
「ならお前はどこに行くつもりだ」
「…テメェには関係ねぇよ」
レイズはそれだけを告げると、彼自身が作った裂け目を潜っていく。
それに対しコウマは不安を感じるが、あえて追いかけるような真似をせず、最初に作られた裂け目を潜っていった。
~~~
「……あれ…アデス兄ちゃんは…?あの旅人もいない…」
レイズがこの世界を離れたことにより、時間が動き出して数秒後……シーンはアデスと翔が目の前からいなくなったのに気付く。
あれほどまで強い力を持った攻撃をぶつけようとしていたのにも関わらず、いつの間にかどこかへ消えてしまった二人に疑問を抱く。
(…どういうことなの…二人とも、いつの間に姿が見えなくなったんだ……?)
―――おい、ガキ、聞こえるか
(!?頭の中に誰かの声が……!?)
―――聞こえてるようだな……テメェに話がある。お前から見て東の森…そこまで走ってこい
(…俺に……?)
突然彼の頭の中に誰かの声が聞こえ戸惑うが、その声の言葉に首をかしげる。
が、呼ばれたからには何かあると考え、シーンはその声の指示に従うことにし、東にある森の方角へ走っていく。
森事態には3分ほどで入ったが、同時に再び謎の声が「このまままっすぐ進め」と彼の頭に話し掛ける。
そうして走り続けること数分……彼は広々とした空間に出ていた。
しかし正面は絶壁に覆われており、ここからまた何処かへ向かって走るのかとシーンは考える。
「…今度はどっちに行かせるんだ……」
「―――いいや、ここでいい」
「!?いつの間に!?」
「わざわざワリィな……俺の名はレイズだ」
突然背後から声が聞こえ、シーンは後ろを振り向く。
そこにいたのはレイズで、彼はゆっくりとシーンに歩み寄る。
「あ、アンタが俺を呼んだのか…?」
「そうだ。んで、呼んだ理由だが……単刀直入に言う。お前、あの村の"次の神"にならねぇか」
「!?」
いきなり彼の口から放たれた言葉を聞き、シーンは再度驚く。
「ちょ、ちょっと待てよ!なんでいきなり俺が神様似なるかって話になるんだ!?というか今の村の神様はアデス兄ちゃん」
「そいつが言ったんだよ。お前に村を託す、ってな」
「…え?」
「あいつは自分自身が神になるとは思ってもいなかった。が、神の力の凄さは知ってた。その力であいつは死んだ姉を生き返らそうとした…が、いくら神でも、命を簡単に生き返らせるのは禁忌の行為だった」
彼の口から次々と放たれる言葉に対し、シーンは理解が追い付かない……
それもそうだ……いきなりそんなことを言われても理解できないし、本当に目の前の人物の言葉が真(まこと)なのかと思えるのだ。
だがレイズは構わず、そのままシーンに語り続ける……
「当然あいつの姉は生き返らなかった。その悲しみが更にあいつを村への復讐心へと変えていった。が、あいつは何時からかこう思ってた……テメェになら、村を託していい、と」
「そんな……そんな話信じられるかよ!」
「別に信じなくてもいいぜ……けどテメェには、本気で任せようと考えてたみたいだがな……さて、どうする?別にあの村は神がいなくても200年ぐらいは自然災害も起きる要素がないが……テメェが村を守り続けたいなら、神になって守り神になるってのも可能だ。好きな方を選べ」
突然の選択……それを聞いたシーンは少しの間黙り混む……
そして2分後……彼はレイズの方を向くと、その問いかけに対する返答をしていた。
「……俺は神様にならない。例えアデス兄ちゃんが、本気でそう思ってたとしても……俺は神様になりたくない…神様になっても、アデス兄ちゃんはずっと苦しんでた。当然神様の力は、憎かったはず……それが今でも存在し続けるぐらいなら、この場で終わらせる方がいいと思う……それが俺の答えだ」
「……そうか…いい選択だ…」
「…なぁ…アンタはアデス兄ちゃんとどんな関係なんだ……?そもそもアデス兄ちゃんは何処に…」
「…さぁな……」
「あ、おい!……消えた…」
シーンの返答を聞いたレイズは、何故か静かに笑みを浮かべるが、アデスがどうなったのかは告げず、そのままこの場から立ち去っていく。
シーンはそれを止めようとするが、レイズはまるで最初からそこにいなかったかのように消えてしまう。
それに対しシーンはただ、静かに立ち尽くしていた。