仮面ライダーディブレイカー~紅の破壊者~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
翔「……今回は遅すぎないか?」
シオン「仕方ねーだろ。俺つい最近社会人になって仕事行き出したし。それに前後編に分けて書いてたのもあるから」
翔「あん?だったら最初に前編だけでも投稿すればよかったんじゃねぇのか?つーかその言い方だと、まさかの1日2連続投稿する気か?」
シオン「そっ。というわけで、これの後にこの話の続きを連続投稿しようと思いますので、よろしくお願いします」
ヤクザ少女からのお説教
私がその時目を開いて、その目で見た光景……そこは辺り一帯が、血と炎で包まれていた……
私はその時、何が起きたのか……分からずにいた…
けれど私はその時、誰かに抱えられているのに気付いた……
私は、私を抱えている人物を見た…
その人物は、かつて私がこの目で見た、ディケイドと呼ばれる仮面ライダー……それに非常に酷似した、血と同じ色をした仮面ライダーだった……
そしてそのライダーに変身していた人物は、私を近くの岩場に置くように座らせ、毛布のようなものを私に着させながら、私にたった一言だけ告げた……
『―――待ってろ…すぐに、終わらせる…』
その声は、非常に聞き覚えのある声だった……
どうして『彼』の声が、そのライダーから聞こえたのか……
私はそのライダーに、話しかけようとして………意識が落ちた……
次に目覚めたのは、何処かの部屋……そこに一つだけ置かれていた、ベッドの上だった……
何があったのか…私はそう思いながら、何も衣服を纏ってない身体を起こし……その時、思い出した。
……私のせいで起きた、私にとっての【悲劇】を……
「―――ああぁぁぁあぁああっ!!」
とあるマンションの一室…そこで一人の女性が、悲鳴をあげながら、ベッドから勢いよく起き上がる。
その女性……星野零は、ベッドの上で荒々しい息をしながら、頭を抑える。
「はぁっ、はぁっ……また…【あの時】のが……っ…」
彼女の表情はとても苦しそうで、唇を強く噛み締めるほど……
しかし数分後、ようやく落ち着いてきたのか、頭を抑えていた手をゆっくりと下ろす。
そして隣で軽くいびきを掻きながら寝ている翔を、じっと見つめていた。
~~~
次の日の朝、零は朝早くから外に出掛けると翔に告げ、マンションから出ていく。
そしてそこから歩いて数分でたどり着く公園で一人、静かにベンチに座っていた。
最近はこういった毎日を送っており、彼女は日に日にあることを考えていた。
(……私…なんで生きてるんだろう………)
彼女は顔を上に向け、静かに考える。
…何故彼女がこの様な事を悩んでいるのか……それはつい最近起きた、彼女自身による失態が招いた【悲劇】……その事をずっと、引き摺っていたのだ。
過去にも似たようなことは3度ほどあった…が、今回の件は一番最初にあった【悲劇】と同等のものであり、その出来事が頭の中をずっと覆っているのだ……
(…今回もまた、私のせいで……人が死んだ………私が弱いせいで…)
(………あの時、この命が終わってくれれば……どれほど良かったんだろう……)
零はその場で俯くと、唇を噛み締める。
―――この様な行為を、今日に至るまで何度しただろうか……こんな無意味な行為を…
零がそのままの状態でその様なことを考えていると、右横から何か音が聞こえる。
彼女はゆっくりと音が聞こえた方を向くと……白いニット帽を被った中学生らしき少女が、何かを抱えていた……
そして抱えているのは………零が持ってきたバッグ……
「…」
「…あっ……」
「…」
「…」
「…」
「………し…」
「…し?」
「―――失礼しましたぁぁぁぁぁぁ!!」
「!?」
暫しの沈黙が続いたと思った瞬間、少女は謝罪しながら、その場から逃走する。
突然の出来事に零は驚くが、そうしてる間にも少女は既に公園を出ていこうとしており、慌てて追いかける。
少女の方は然程足が速い方ではないのか、すぐに少女に追いつき、その手を捕らえる。
「ま、待って!バッグ返して!」
「い、いやよ…!離してっ…!!」
零は無理矢理少女の腕からバックを奪い返そうとするが、少女は必死に抵抗する。
が、突然少女が零のバッグを握る手を離し、慌てた様子で逃げ出していた。
いったいどうしたのだろうかと零が思っていると、後ろから野太い声が聞こえる。
零がその方向を振り向くと、やけに高そうなスーツと真っ黒なサングラスを掛けた、如何にもヤクザらしき人物たちが走ってくるのが見えた。
「いたぞ!こっちだ!」
「くっ…待ってくだせぇ!!」
「お前たちはあっちから回れ!」
ヤクザらしき人物たちは互いに連携を取り合いながら、先程の少女たちが逃げた方向へ向かって走っていく。
それを見た零はもしかしてと考えると、彼女も少女が逃げた方向へ向かって走り出していた。
~~~
「はぁっ、はぁっ……さ、流石にここまで逃げ切れば十分っしょ………あー……折角カモを見つけたと思ったのに…」
先程の公園から少し離れた場所にある路地裏……少女はそこで息を切らしながら、地面にへたり込んでいた。
少女は地面に座ると同時に、ため息をつきながら呟く。
「はぁー…にしてもお金、盗めなかったからなぁ……前に盗んだ奴も底が尽きたし……どうしよっか…」
「―――ならば屋敷に戻りやしょうぜ、お嬢」
「げっ…!?」
すると路地裏に先程彼女を追いかけてきたヤクザが入ってくる。
それを見た少女は慌てて立ち上がり、後ろから逃げようと振り返る。
が、既に裏手にもヤクザがおり、退路を完全に断たれていた。
「うっそ、逃げ道ないじゃん!?」
「路地裏はヤクザのホームグラウンドみたいなもんです……さぁ、逃げるのは止めて、屋敷に帰りやしょう」
「いやよ!今帰ったらアイツに殺されるじゃない!!」
「そこはあっしらも説得しやすから!だから一緒に…!」
「嫌って言ってるでしょ!離してよ!!」
ヤクザの一人に腕を捕まれ、少女は必死に抵抗する。
が、ヤクザは溜め息をつくと、懐から何かを取り出す…
取り出したもの……それはドラマなどでよく見かけるようなタイプの拳銃であり、ヤクザは容赦なく拳銃を少女の頭につき付ける。
「…え?ちょっと、何して……」
「…ワリィですがお嬢、頭(かしら)が抵抗したら、その時は殺してでも連れてこいって言われてんです……」
「しかもワイらも、お嬢を連れて帰れなければ、即座に首が飛びかねない…血を見るのが嫌いなお嬢なら、分かりやすよね…?」
「い、嫌よ…!死んでもアイツの元なんか…」
「…仕方ねぇ……」
少女の言葉に再度溜め息をついたヤクザは、撃鉄と呼ばれるものを親指で立てる。
その際カチリと弾丸を発射できる音が鳴り、それを聞いた少女は小さく悲鳴を上げる。
そして拳銃を持ったヤクザが一度頭から拳銃を離し、そのまま足元へと向ける。
恐らく足を撃ち抜いて、自力で動かせないようにするつもりなのだろうが、拳銃を向けられている恐怖の方が勝っているのか、少女にとってはそんなことどうでもよかった。
それ以前に恐怖で足が震えており、声すらまともに出せなくなっていた…
「…少し痛いでしょうが、我慢してくだせぇ…」
「い、いや…」
怯える少女に対し、ヤクザは多少躊躇いながら、引き金を引こうとする。
それを見た少女は、その光景を見たくないと思ったのか、目を瞑ってしまう。
そして……
…目を瞑って1分後……銃声は響かず、その上静寂がずっと続いているのに気付いた少女は、恐る恐る、目を開くと、目の前で拳銃を突きつけていたヤクザが地面に倒れ伏せていた。
更には背後にいたヤクザも倒れており、少女は唖然とした表情で辺りを見回す。
「ど、どうなってるの…」
「―――私が…助けたんですよ……」
「!?あ、アンタはさっきの…!」
すると背後から声が聞こえ、振り向くとそこには、先程少女がバッグを盗もうとした女性……零がいた。
いつの間にここにと少女は思うが、それ以前に少女は目の前の女性がヤクザたちを薙ぎ倒して自分を助けたと告げているのに驚く。
「え、これアンタが?嘘でしょ??」
「いや、本当なんですけど…ね……」
「?」
「っ…てぇ……!」
「げっ、もう起きはじめた!?」
「!と、とりあえずこっちに!!」
「あっ、ちょ…私のバッグが……!!」
すると気絶していたヤクザたちが起きはじめ、それを見た零は思わず少女の腕を掴み、その場から逃げ出してしまう。
少女は呆気に取られるが、零の走りが速過ぎるためか、動きに付いていくのが精一杯で、そのまま彼女に連れ去られてしまっていた。
~~~
数分後、先程の公園に戻ってきた零と少女は、息を切らしながら公園のベンチに座っていた。
特に少女の方は既に虫の息の状態で、それを見た零は少女に謝罪する。
「はぁ、はぁ…こ、ここまで来れば……」
「…あ…あー……死ぬ…」
「あ、えっと……ごめんね……無茶なことしちゃって……」
「い、いいよ…なんでか知らないけど…助けてくれたし……」
「あ、う、うん……」
少女の言葉に対し、零は少し戸惑ってしまう。
彼女の反応について少女は疑問を持つが、その前に聞きたいことを尋ねる。
「…ねぇ、アンタ、なんで私を助けたの……?」
「え…そりゃあ……君を追いかけてるヤクザっぽい人を追っかけてみたら、なんか色々と危なさそうな会話が聞こえたからで……君って何処かのお偉いさんの子供?」
「あぁ、そういうことね……私は赤道 亜里沙(せきどう ありさ)って名前で、あのヤクザたちは私のクソ親父が率いる『血雨(ちさめ)組』っていう組の連中なの」
「…君のお父さんが率いてる……ってことは君は……」
「そ、その組のお嬢様っていうわけ」
少女―――亜里沙の言葉を聞き、零は軽く驚く。
しかし零は初めてヤクザのグループがいたのに多少困惑しており、それに関して亜里沙がフォローする。
「ヤクザのトップの娘か……この町にヤクザがいる方が少し驚きだけど…」
「あー、言っとくけど、組の連中は別にここでは問題を起こしているわけじゃないから、そこら辺は安心してよ」
「は、はぁ……でもそうなると、なんで逃げていたんですか…?」
零は亜里沙が何故追われているのかが気になり、尋ねてみる。
亜里沙はそれに対しため息をつきながら、理由を述べていた。
「…いやね……ひっじょーーーーーにくだらない理由なんだけどね……数日前に突然クソ親父が私に今からヤクザの頭になれーって言い出してね……」
「…もしかしてそれを断ったから…」
「違う違う!確かに嫌だから断ったんだけど……何度も何度もなれなれってクソ親父がしつこかったからね……頭に来て思わず、クソ親父が趣味で集めてた骨董品、片っ端から壊してやったのよ」
「…うわぁ……」
理由を得意げに語る亜里沙だが、それを聞いた零は思わず引いてしまう。
が、亜里沙はすぐにしゅんとしょげた顔をする。
「…でもやった後、あのクソ親父、メッチャ怒ってね……部屋に飾ってあった日本刀取り出して斬りかかってきて……それで慌てて逃げて……確かに私も壊しすぎたと思ったよ……でもあれは流石にやりすぎでしょ…それから数日間は、スリとかしてなんとか今日までこうやって逃げ延びてたってわけ」
「…お父さんの所に戻って、謝らないの?」
「馬鹿言わないでよ!?今戻ったら絶対殺されるよ!…それに、仮に殺されなかったとしても、どうせ私の話に聞く耳を持たないだろうし……」
亜里沙は暗い顔をしながら、静かに呟く。
それを見た零は、何か彼女の父親に言いたいことがあるのではと思い、尋ねようとする。
…が、尋ねようとして、やめてしまう。
例えそれを聞いたところで、自分のような人間が、何の力になれるわけでもない……むしろまたこの間のようなことを、招いてしまうのでは……そう思ってしまったからだ。
(……私、何やってるんだろう…聞いたところで、力になれるわけじゃないのに……)
「…どしたの?」
「あ、いや……なんでもない…」
「…ふーん……あ、アンタ、私これからどっかショッピング行きたいんだけど……」
すると突然少女がベンチから立ち上がり、零にショッピングに行きたいと告げる。
それを聞いた零は軽く嫌な予感がし、恐る恐る尋ねる。
「…え、っと……私に何か、買わせようと…?」
「当たり前じゃない。アンタあの時私のバッグ放置したまま逃げ出したんだし…財布もあの中に入ってたし」
「…助けたのでチャラ、というのは」
「なし。確かに助かったけど、それはそれ、これはこれ」
「うっ…」
亜里沙は零の申し出を否定し、零は思わず声を漏らす。
しかしここまできて、このまま放置して置くのも危険だと感じ、一応亜里沙の申し出に応じることにした。
~~~
とある町の一角に聳え立つ、和風の屋敷……そこで一つの泣き叫ぶ声が聞こえていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!亜里沙のやつはまだ見つからんのかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「か、頭!落ち着いてくだせぇ!!」
「落ち着いてられっか!撃ち殺すぞワレェ!!」
その屋敷の一室……そこで泣き叫んでいる一人の老人にヤクザの一人がうろたえながら落ち着かせようと近づくが、老人はすぐにぶち切れて懐から拳銃を取り出す。
それを見たヤクザは悲鳴をあげながら老人から離れる。
老人―――赤道 藤二郎(せきどう とうじろう)はため息をつきながら、静かにその場に座る。
「…それで、亜里沙のやつは、今何処におるんじゃ……」
「そ、それが……見つけたのは見つけたんですが…何者かの邪魔が入った様で…捜索してたやつらが気絶してるうちに、逃げられたようなんすよ……」
「?邪魔者じゃと?」
「へい。ただ…お嬢には付き添いがいたわけではなく、発見したやつらが言うには、見つけた時はお嬢一人だったと……」
「…得体の知らない奴に亜里沙を……えぇい、とにかく探せ!!探し出して見つけ次第、ここに連れてこい!!」
「「「へ、へい!ただいま!!」」」
一通りの話を聞いた藤二郎はヤクザたちに早く探し出すよう叫ぶ。
その威圧的な叫びに怯えながら、ヤクザたちはその場を後にする……そして部屋にたった一人残った藤二郎は………再び泣き叫んでいた。
「……………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!亜里沙よ帰ってきてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
(((お頭………泣く位自分の娘を溺愛してるのに、なんで追い出すような真似をするんでやんすか……)))
藤二郎の泣き叫ぶ声を聞き、屋敷にいるヤクザたちは心の中でそう思う。
…藤二郎はああは言ってはいたが、実は娘の亜里沙に関しては、かなり溺愛している……
なので今回の事件に関しては、早急に彼女を探し出さないと、自分たちの命が落ちるほど危険なのだ。
「お頭、威張って『場合によっては見つけ次第撃ち殺せ!!』とか言ってるけど……少しでも傷つけたら、俺らが血の道になっちまうぜ…」
「だな……早く探し出そうぜ」
「おぅ…おいコラァ!何テレビばっか見てやがんだそこぉ!!」
「あっ、わりぃわりぃ……いやな、この町もまた物騒になったなーって思いながら見てて……」
するとヤクザの一人がテレビを見てボーっとしており、他のヤクザがそれを見て怒鳴る。
怒鳴られたヤクザは謝りながら理由を説明し、その言葉が気になったのか、他のヤクザたちもテレビを見る。
今テレビで放送されているのは、数日ほど前に殺人事件を犯し、未だなお逃走しているという内容で、それを見た他のヤクザの一人がつまらなそうに呟く。
「…まぁこの町が物騒になったのは変わりねぇが、俺たちが言える口じゃねぇだろ。俺たちヤクザだぞ」
「…それもそうか……」
「しかし…お嬢の事も考えると、流石にこう野放しにしてると、大変なことになりそうだよな…」
「やめてくれや、そんな冗談……」
~~~
正午12時を回った頃……零と亜里沙は、町でそれなりに大きいデパート店の食堂の一つ(亜里沙がうどん食べたいと言ったのでうどん屋に)で、昼食をとっていた。
零はごぼう天うどん、亜里沙は肉うどんを頼み、それらが来るまでの間、暇つぶしに何か話そうと亜里沙が持ちかけてくる。
が、零はそれに対して軽く動揺し、その意見を断っていた。
それに対し亜里沙はつまらなそうにぶーたれるが、同時に何を思ったのか、零に尋ねる。
「…ねぇアンタ。何をそんな真剣に思いつめているの?」
「…え?」
「アンタ、私と話すときは無理矢理にでも会話してるけど、なーんか何処か思いつめた表情してるのよね…それも長い間、何かに悩ませているような雰囲気が感じられるっていうか」
「っ…」
亜里沙の言葉に、零は図星を突かれたような錯覚に襲われる。
…いや、実際に図星なのだ……それを14歳前後の少女に、こうも簡単に見抜かれ、零は思わず唇を噛み締める。
「…子供に見抜かれるなんて、やっぱり随分気が抜けてきてるな…私……」
「あ、図星なんだやっぱり。……で、何をうじうじ悩んでるの?大人の癖に」
「…血生臭い話になるから、これ以上は聞かない方がいいよ…」
「血生臭い、ねぇ……クソ親父とかのせいで慣れてるから、別にいいわよ。それで?何か人が死ぬようなことでもあったの?」
(…きっぱりと聞いてくるな……多分はぶらかそうとしても、無理かもしれない……)
ずぶずぶと私情に入り込む目の前の少女に、零は軽く冷や汗をかく。
しかも見る限りでは亜里沙は興味心身で、はぶらかそうにも難しいと直感で感じる。
そう思った零は観念し、多少事実を枉げながらも、この間彼女のせいで起きたことを話した。
亜里沙はその話を黙ったまま聞き、じっと零を見つめる……
そして零の話が終わると「…成程ねぇ」と呟く。
「…どうしてそんな事態になったかまではいまいち分からなかったけど……それは辛いよねぇ…子守を頼まれておきながら、その子供たちを偶然やってきた殺人鬼とか名乗るやつに殺されて、自分はその場でずっと見てるだけ、って。しかもその後自分のせいで守れなかったという事実から逃げ出した、って」
「ちょ、声が大きい…!」
「そりゃあ女子は普通に力ないし?アンタも強いみたいだけど、色々その子供たち殺した奴が上手だったみたいだし……仕方ないじゃん」
「仕方なくなんてない!!」
亜里沙の言動に怒りを感じたのか、零が怒鳴り声をあげながら立ち上がり、テーブルを強く叩きつける。
それに亜里沙は驚き、周りにいた客人やスタッフは何事かとこちらを見てきており、彼女は我に返ると、周りの人々に謝罪しながら、ゆっくりと席に座る。
(…私、何やってるんだろう……)
「…見た感じ、アンタ、メンタル弱いね。それって2週間ぐらい前の話なんでしょ?確かにそれだけの月日じゃあ立ち直れないのもあるだろうけど……アンタ、それはそれでいつまで引き摺るつもりなの?」
「っ…」
「聞けばアンタ、同棲してるやついるみたいだけど…そいつや他の関係者に、いつまで迷惑を掛けるつもりなの?」
「めい、わく…」
「そっ。その時他の人たちもこうなるなんて思ってなかっただろうし、そりゃあ普通起こるなんて思わないもん。それだったら、アンタだけを残して出掛けてたやつらも、十分後悔する……そして肝心のアンタが、そうやってうじうじしていれば、他の人もずっとその事を気にすることだってある……十分迷惑よ」
容赦なく言葉を突き立てる亜里沙に対し、零は何も言えなくなってしまう。
亜里沙は丁度やってきた肉うどんの麺を啜りながら、再度話しかけてくる。
「…負の感情はね、伝染するのは早いの。そして一度伝染すると、なかなか治すことはできないの。さしずめアンタは、伝染の大本ってこと」
「…」
「それにいつまでもそうやってたら、殺された子供たちもあの世で泣いてるよー?自分たちのせいでお兄ちゃんが泣いてるよー、って」
亜里沙の言葉に何も言えない零は、唇を噛み締めたまま俯いてしまう。
それを見た亜里沙は「少し強めに言い過ぎたかな…」と思い、突然こんな話をしてくる。
「…『血雨組の掟第8条:例え契りを交わした仲間が己のせいで死んでも、いつまでも悔やむな』」
「…?」
「…家(うち)の組での掟で、100も条あるんだけど……ヤクザって仕事は裏では色々とドンパチが多いでしょ?当然組の中で死ぬ奴もいる……そして家の組は、仲間思いのやつが多くてねぇ……クソ親父もそういうタイプで、結構自分の犯した罪引き摺るから、クソ親父がそういう仕来りを作ったのよ……『仲間が身を挺してまで永らえた命を粗末にするな』だの『己のせいで消えた命に嘆くなら、その者の分まで生きることで償え』だの……ヤクザのくせにクサイこと言うんだもの…まぁ、私はこの掟好きだけどね」
亜里沙はにっこりとしながら、零に話す。
それを聞いた零は何故この様な事をと思うが、それを遮るように話を続ける。
「これを話したのは、アンタもその子たちの分までを思って、生きていけって意味よ。悔やんでばっかじゃ、さっき言ったように天国の子供たちが泣いちゃうよ?」
「…私には……そんな資格、ないよ……」
「資格がないとか関係ない!全く、いい年した大人が腹も括れなくてどうすんのよ…」
「…私にとっては、亜里沙ちゃんがその年で大人に平気でそんなこと言えるのもどうかと…」
零は軽く苦笑いしながら、顔を下に向ける。
(…確かにいつまでも、うじうじしているわけにはいかない……でもやっぱり……)
「…まぁ、私に言えるのはそれだけ、後はアンタが自分の力でなんとかしなよ……ていうか、うどん、食べないの?」
「えっ、あ……!?」
亜里沙に言われて、零はうどんが既に来ていたことを思い出す。
流石に食べないともったいないため、零は慌ててうどんを啜りだす。
それを側で見ていた亜里沙は手で口元を押さえながら、必死に笑いを堪えていた。
~~~
昼食を食べ終えた二人は、ショッピングモールで買い物をすることにしていた。
というのも、零が翔のことを思い、そろそろ自分も迷惑かけないようにしないと考え、この場で買い物を済ませてしまおうと考えたからだ…
零は食材を手に取りながら値段や賞味期限などを見ていくが、それをじっと見ていた亜里沙がボソリと呟く。
「…さっきよりは元気になってるね…」
「…?何か言いました?」
「いや、なんでも……それよりアンタ、女と同居してるの?」
「いえ、男の人ですけど……」
突然の質問に首を傾げながら、零は答える。
それを聞いた亜里沙は………何故か顔を引きつっていた。
「…男と暮らしてるって事は……アンタ…ホモ?」
「ブッフゥ!?な、ななな、なにをいきなり!?というかやっぱり…」
「な、何をそんなに驚いてるのよ……違うの?」
「違うも何も、私、女だよ!?」
「え、うっそ、その顔で!?」
どうやら亜里沙は零の事を男だと思っていたようで、驚いた表情で零の顔を見る。
一方の零はというと、久々に男と間違われたのに大声で騒いでしまう。
が、それを見ていた他の買い物客を見て、顔を真っ赤にしながらその場で蹲ってしまう。
(やだ、私……また人前で大声で叫んじゃって……!)
「…アンタ、女だったの……顔立ちと言い格好と言い……男にしか見えないわよ…」
「うぅ…よくそう言われるけど……そんなに私、女らしくない…?」
「うん、全く」
容赦なくバッサリと言われ、零はその場で落ち込んでしまう。
―――何コイツすっごくめんどくせぇ…
亜里沙は先程の食堂の時のも踏まえ、心の中でひっそりと思う。
亜里沙はため息をつきながら、彼女の背中を思い切り叩いていた。
「いっ…!?」
「もうっ、うじうじしない!というかアンタ、本当にめんどくさい!」
「だ、だからって叩かなくても…というか周りの目が痛々しいんだけど…」
「はぁ…とりあえず、さっさと行こ」
「あ、ちょっと…!」
一人スタスタと先に行ってしまう亜里沙を見て、零は慌てて起き上がる。
そして素早く彼女の隣に並ぶと、そういえばと零は亜里沙に尋ねる。
「…ねぇ、亜里沙ちゃん。亜里沙ちゃんが家出してる理由って、お父さんがヤクザの長…?それになれって言って断ったからだよね?」
「正確には少し違うけど…強ち間違ってないからいいか。それで?」
「亜里沙ちゃんって、何かなりたいものでもあるの?じゃないと、お父さんの申し出をこうなるまで嫌がってたから…亜里沙ちゃん?」
そこまで言って、ふと、彼女が歩むのをやめているのに零は気付く。
亜里沙は顔を下に俯けており、そのままの状態で、静かに呟く。
「…アイツのせいで…」
「え…」
「アイツのせいで、叶えたくても……」
「…何が、あったの……?」
零は彼女の前に立つと、その場でしゃがんで下から彼女の顔を覗き見る。
亜里沙はそれに対し顔を歪めながらも、静かに話していた。
「…私はね、本当は、血とかが苦手なの…見るだけじゃなくて、そういったものを聞くのも…」
「え、でもさっき…」
「さっきは強がってただけ……アンタのメンタルの弱さもあったし」
「うっ…それは……どうも…」
「…でもね、それでも私、最初はお医者さんになりたいって思ったの……医学を学んで、家の組が怪我しても、治せるように……けどあのクソ親父は私には無理だ、って…なんでって聞いても理由を答えてくれない……それどころか、だったら家の跡継ぎをやれ、って…」
二人はゆっくりと歩きながら、亜里沙は零に話す。
それを聞いた零は「そんなのって」と言おうとしたが、そこで口が開かなくなってしまう。
(…もしかして、この子のお父さんは………)
「…アンタの言いたいことは、なんとなく分かるよ……私も考えてみたよ……そして分かった。…血を見るだけでも震えるやつは、かえって人を治すのは向いてない、って……」
そう呟く亜里沙の顔は、どこか悲しげで、それに対し零は何も言わない。
彼女自身自覚しているのもあり、どのような言葉を掛けてやればいいかが分からないのだ…
が、亜里沙は零の方を向くと、笑顔で彼女に向けて言い放つ。
「…それでも私は、お医者さんになろうって、思っているよ…どんなにあのクソ親父が駄目だって言っても、何度も何度も諦めない…絶対叶えてみせるもん」
「…亜里沙ちゃん……」
笑顔で告げる彼女を見て、零はじっと彼女を見つめる。
―――まだ私より若いのに……しっかりしている……それに比べて…私は……
零は未だに拭いきれていないものを思い浮かべてしまうが、これ以上亜里沙に悟られたくないと思い、無理矢理思いを払いのける。
「…さて、とりあえず……今日は私が借りてるアパートで泊まっていって」
「え、そこまでしてくれるの?」
「そりゃあ女の子がいつまでも一人で転々と寝泊りさせるわけにはいかないから…」
「やった!ありがとう!!」
「そ、そんなに喜ばなくても…さて、それじゃあそろそろ」
「―――動くな!!動くと殺すぞ!!」
突然デパートの中で、野太い大声が聞こえる。
しかもその言葉を聞き、零たちはおろか、周りの人々もその声が発せられた方を振り向く。
そこにいたのは、見た目が30代ほどの、黒いフードパーカーを被った男で、その手には拳銃を持っている…
それを見た人々…そして零たちは、その場で表情を凍りつかせていた。