ようこそ二度目の教室へ   作:石門 希望

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2話書いて気付く入学式と茶柱先生の説明のタイミングのミス
修正すると話のまとまりなくなっちゃうので、このままでいかせてください


第1話 自己紹介

 この学校でのルールを語り終えた茶柱先生が退室していく。

 みんなは、毎月10万ポイントが支給される説明がされた時の熱が冷めない様子で、興奮したように周囲の人とポイントの使い道などを話題に盛り上がっている

 

「皆、ちょっといいかな?」

 

 すると、やや大きめな声で熱に浮かされたクラスに一石を投じる声がかかった。

 声主の思惑通り、注目を集めるには十分だったようで、その人物――平田くんにみんなの視線が集まった。

 

「僕らは今日から三年間共に過ごすことになる。だから、自発的に自己紹介を行って、一日も早く友達になれたらと思うんだ。どうかな?」

 

 「さんせい~!」「いいとおもう!」など軽井沢さんたちを筆頭にクラス内で自己紹介を行うムードが形成される。前の私は自己紹介なんかと必要性を感じず、それを提案した彼にも正直面倒だという思いを感じていたはずだったと思う。けれど、これは私にはない能力だ。いまの私は彼のこの行為を素直に感心することができる分、成長できたと思ってもいいだろう。

 発案者である平田くんが「じゃあ、まずは僕から」と

 

「僕の名前は平田洋介。中学のころには皆から洋介って呼ばれることが多かったから、皆も気軽に洋介って呼んで欲しい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをしていくつもりなんだ。

 皆、よろしく。」

 

 平田くんはスラスラと自己紹介を終えると、順番は席の端からとスムーズに決めて、皆にそれを促していく。やはり、彼との協力関係もこのクラスをまとめるには不可欠だろう。

 いまのところは、平田くんの次に自己紹介を行った井の頭さんが緊張で詰まったくらいで、おおむね順調にみんな自己紹介を終えている。

 

「じゃあ次は私だねっ」

 

 私にとって、因縁の相手ともいえる人物の声が聞こえた。

 

「私は櫛田桔梗と言います、中学からの友達は1人もこの学校には来ていないのでぼっちです。だから早くみんなの顔と名前を憶えて、友達になりたいと思ってます。

 私の最初の目標として、ここにいる全員と仲良くなりたいです。

 皆の自己紹介が終わったら、是非私と連絡先を好感してくいださい」

 

彼女の本当の姿を知っている私としては、笑ってしまいたくなる光景ね……。

 

―――櫛田桔梗

 彼女の存在はこのクラスをAクラスへと導くには必要なものだという考えは、彼女の存在があったとしてもAクラスに届かなかった記憶がある今も変えるつもりはない。

 ただし、必要な存在であると同時に、いまの彼女は非常に危険な存在でもある。碌に気に留めてもいなかった彼女の過去を、唯一知りうる私が暴露してしまうかと馬鹿みたいに過剰に恐れてクラスすらも裏切る。一度目と同じような接し方、あるいは放置するような真似をすれば彼女はクラスに結局最後まで完全に癒えることのなかった大きな傷跡を残す事件を起こす。あのことを切欠に、私と彼女との関係性を変えることはできたけれど、それを十分な収穫とするにはあまりにも傷跡が大きく、あまりにも遅すぎた結果となってしまった。

 

 私と彼女の関係性の変化は何よりの急務だ。

 

 そのために、早急に私と彼女だけで話をつける場を設けなければならない。そのための算段をどのようにつけるか考えていると、「そこの君、お願いできるかな?」と声がかかった。思考を中断すると、どうやら自己紹介の順番がいつの間にか私まで回ってきていたらしい。

 前はくだらない必要性のないものと断じてすることがなかったけれど、いまの私はそうではない。私1人の力だけじゃAクラスには上がれないことはもう知っている。

 このクラスをAクラスに導くために、みんなの協力を得るためにも、ここは拒否するなんてせず、友好的に接する必要がある。

 

 スッと席を立ちあがって、自己紹介を始めることにする。

 

「堀北鈴音よ」

 

 

 

 

 

 

―――――side綾小路清隆

 

 え、それだけ………? みたいな空気が広がり教室内の時間が停止したみたいな雰囲気になる。

 これを作り出した隣の席の少女、堀北鈴音は立ち上がった時と同様、スッと席に座り、やるべきことは終えたみたいな満足げな表情をしている。

 何とかフォローをしようとしているのか、自己紹介を提案し、仕切っていた平田や先ほど元気にみんなと友達になると宣言していた櫛田という少女がなんとか次の言葉を探している様子だが、堀北の「どうだ! ちゃんと自己紹介終えただろ」みたいなドヤ顔と態度を見て、結局パチパチと気づかいの拍手をならすことしかできなかったようだ。

 

―――堀北鈴音

 彼女とは何かと縁がある。

 学校へと向かうために乗車したバスに隣り合わせたときが、彼女との初めての出会いだった。

 先ほど自己紹介を終えた高円寺とOLが立ったままでいるおばあさんに席を譲る譲らないでもめていたときも、それに櫛田という少女が加わって乗客全員に声をかけて席を譲ってくれる人を探しているときも、我関せずの態度を貫き本を読み、はじめはそんな態度にオレと同じ事なかれ主義なのかとぼんやり思いながら眺めていた。

 

 しかし、ふと、そんな彼女の様子が一変した。

 先ほどまで順調に読み進めていた本のページをめくるのが止まり、ページをめくる指だけじゃなく、全身が不自然なまでに硬直した。

 つい一瞬前までは感じていたはずの生気が初めからなかったかのように無くなった。その様はまるでというより完全に人形のようで、オレより無機質な存在をこんな形で目にするとは思わず、絶句してその姿に見入ってしまう。

 

 まさか、死んでしまったのか? いや、それにしても………

 

 この異様な変化を遂げた少女をどうするべきか悩み、周囲に助けを求めようと見まわすと、誰も彼女の変化に気づいてない様子だ。それどころかオレが見入ってしまっていた間にバスは目的の高度育成学校前の駅に着いてしまっていたようで、変化に気づいていたならば彼女を助けてくれそうな先ほど席を譲る声掛けをしていた少女は降車してしまったようだ。この変化はあまりにも静かなものだったから近くにいたオレ以外気づかなかったのも仕方がないのかもしれない。

 

 もう一度、黒髪の少女のほうへ目を向けると、先ほどの異様な人形めいた無機質さはいつの間にか消えて、真っ当に生きている人間らしい生気を感じられるようになっていた。

 だが、まだ意識ははっきりしていなさそうだ。

 

 これを見捨てるのは、事なかれ主義以前の問題だよな……

 

むしろ、見捨てるほうが事なかれ主義に反しそうだ。

そう思って、オレは彼女を軽く揺さぶって意識を覚醒させる。「ここは…?」という疑問に簡潔に答えて、オレは彼女を連れてバスを降りることを決める。

見たところ同じ学校の生徒だろうし、最悪この学校の保健室にでも連れて行けば何とかなるだろう。

 

 バスから連れ出して、とりあえず階段に彼女を腰掛けさせて容態を尋ねる。いろいろ聞いているうちに思いのほか大丈夫そうだと判断できた。

 一応、保健室にはいったほうがいいだろう。そのためにもこの少女がこの学校をどのくらい把握しているのか聞いておこう。

 手始めに彼女がオレと同じでいまから入学する新入生かを尋ねてみたところ、怪訝で少し怒ったような表情をしたかと思いきや、急に周囲を見回し始めた。彼女は一通り周囲を見回し終えると、ある一点、入学式の看板を凝視し始める。

 オレはそんな様子を怪訝に思い、彼女の様子の原因を考えるがこれといったものと特定することができない。

 

 すると、突如立ち上がった少女は先ほどまでのは夢だったのかのような勢いでオレに質問攻めを始めてきた。いまはいつだ?のここはどこだの?世情に疎いオレでもわかるような当たり前のことばかりだ。

 

 もしかして、記憶に何か異常が起こったのか?

 

 それならば尚更保健室に行くことを進めるべきなのだろうが、少女の勢いに押されて、結局そのまま入学式を迎えてしまった。

 

*********************************

 

 入学式を終えて、各自自分の教室へと向かい指定の席に着く。

 オレの隣の席で過ごすことになる人物とは友好的な関係を築きたい。そう思って到来に期待と不安を寄せていると、その席に座る人物が現れた。

 なんと、先ほどの少女である。

 とりあえず、彼女はもう大丈夫か聞いておく必要があるな。

 

「体調はもう大丈夫か?」

「ええ」

 

 とりあえずは一安心といったところだろうか。

この少女の容態がもう大丈夫だというのなら、今後隣の席で一緒に学校生活を過ごしていくことになるのだし、友好を深めていく会話に移ったほうがいいだろう。

まずは、いまさらだが名前を聞いたほうがいいだろう。結構会話は交わしたはずだが、いまだに名前すら知れていない。ちょっとだけそのことに驚きつつ、自らを名乗りつつ相手にも尋ねるとしよう。

 

「……その、そういえば、まだお互い名乗ってなかったよな。オレは綾小路清隆だ。

そっちは?」

「……堀北鈴音よ」

 

 どうやらこの少女は堀北鈴音というらしい。黒髪ロングに凛として清楚な出で立ち。顔も結構整っているし、改めて見るとかわいいな……。

 いかんいかん。さっきから会話が続いてない。相手もなんだかそわそわして気まずさを感じていそうだ。話題を! 早く話題を探さなければ!

 

「あなた、趣味とかはあるの?」

「いや、特にないな。」

「そう……」

 

 しまった、これでは会話が続かない!

 あそこはとりあえず、何でもいいから適当に何か挙げて、そこから会話を広げるべきだった。せっかく向こうから話題をくれたのに!

 

 しばらくオレと堀北はお互い質問しては答え返す、そんな会話ともいえない会話を続けていた。

 こうして過ごして思ったのだが、堀北はオレと同様、あまり人づきあいが得意じゃなさそうだ。なんか、慣れないことを無理してやろうとしている感じがする。

 

 若干気まずい会話をしながらも、どこかシンパシーを感じていると、教室にスーツを着た女性が入ってきた。

 見た目からの印象はしっかりとした、規律を大事にしそうな先生だ。茶柱佐枝というらしい。

 そんな茶柱先生が何やらいろいろと普通の高校とは違うらしいこの学校について説明を始めた。なんか含みの多い説明だな。教室にやたらと監視カメラも設置されているし、この学校、かなり独特なのかもな。

 

 ほとんどのみんなが10万ポイントにはしゃいでいるなか、隣人のほうへと視線を向けてみる。堀北は、何やら深く考え込んでる様子で、その理由を尋ねてみた。

 

「ええ、そうね。

 いまの説明、みんなはしゃいでいるようだけれど含むところがたくさんあったわ。

 きっと、来月は10万ポイントも支給されないでしょうね。

 それを、どうみんなに周知させたものか、考えていたの。」

 

 これには正直驚いた。

 いまの説明で、おそらくオレと同じくらいか、もしかしたらそれ以上の情報を堀北はあの説明から拾い上げたのかもしれない。

 好奇心が顔をのぞかせ、どうしてそう思い、そうしようと思ったのか聞きたくなる。

 だが、かなり深く考え込んでるようだし、もしかしたらオレが思ってもいないところまで考えていたりするかもしれない。いまは無難に返して、考えがまとまったあとで聞くとしよう。

 

 しばらく盛り上がる教室を眺めていると、一人の男子生徒が自己紹介をしようと提案し、みんなもそれに乗る流れになったようだ。

 平田というらしいあの生徒はスラスラと非の打ちどころがない自己紹介をし、自然な様子で自己紹介を進めていく。そこからも基本的にスムーズに自己紹介が進んでいく。ダンっと大きな音と悪態を吐いて教室を出て行った赤髪に、高円寺。池や山内など、どうにも一癖も二癖もある生徒がこのクラスには多そうだ。

 

 オレは―――特に癖も特徴もない自由な鳥。

 

 先のことなど考えず、自由になりたくて籠から大空へ飛び出した1羽の鳥なんだ。

「えーっと、次の人――そこの君、お願いできるかな?」

 

 一瞬、オレかと思ってびくっとしてしまうが、どうやら違ったらしい。次は堀北の番のようだ。人づきあいが不得手な堀北の自己紹介が成功するように心の中で健闘を祈る。

 そして、祈りは届かず堀北の自己紹介で無事空気は凍ったわけだ。

 せめてオレだけはと、何とか気まずい空気を破るように最初に拍手する。平田も櫛田も追随してくれた。よかったな、堀北。

 

「最後は、君の番だね」

 

 平田からオレへと自己紹介するよう振られた。

 これは、堀北のおかげで凍ってしまった空気を回復させるチャンスだ。

 

 見てろ、堀北! お前の仇は討ってやる!

 

「えー…えっと、綾小路清隆です。その、えー……得意なことはありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします」

 

 ……失敗した!

 

 思わず頭を抱え込む。

 パラパラと起こる拍手に胸が痛む。

 

「ふっ」

 

 堀北にまで笑われた!?

 




(小話)

綾小路「堀北、自己紹介の時に来月のポイントのこと話したらよかったんじゃないか?」
堀北 「! はやくいいなさい!!」
綾小路「たうわっ!?」




 初期綾小路くんは書いてて楽しいです

 堀北も綾小路君もコミュ障にしすぎた気がしますが、堀北は自分から仲良くなろうと慣れないことをして空ぶってる上に、みんなの前での自己紹介は下手すりゃ人生初かもしれないということで、納得していただければと思います
 綾小路君もたぶん本当はもうちょっと会話がうまいと思いますが、入学前の堀北の1周目インストール見たせいで、原作より遠慮がちということにしてください

 作者の頭が悪いせいで二人の思考速度が鈍い気もしますがそこもご容赦していただけると幸いです

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