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十二月初頭のある日の早朝、ヘルが翻訳した魔導書や錬金術の書を翻訳前と翻訳後の両方を並べ、少し物が散乱した部屋で黙々と読んでいるゼブル
〈ゼブルよ、それらの魔導書に関しては我が知識を転写すれば読む必要がないのだが……〉
そう尋ねる白い本なライフメイカー
「未知を探求し自力で知るのが楽しいんだよ、急を要するならともかく……急いでないからな、遺産の中に有った年齢詐称薬はプレシアさんが大喜びで使ってるけど……娘がまだ5歳なのに50歳近いからな、まぁ…………それでも外見は30代半ば位にしか見えないけど」
知識の転写を断る理由を告げつつ年齢詐称薬の存在を知り効果を実感したプレシア・テスタロッサの踊り出す程に喜んでいた姿を思い出し……若返り薬を作ろうかなと、かなり本気で考えている
「プレシアさんが青の魔導書・ブレイブルーを調べたいと借りていって、リニスと二人で徹夜して今も時の庭園で解析してるみたいだな、アリシアとフェイトを家に預けてたし、探求心を忘れたら死んでるも当然なんだよ……ライフメイカー」
今は無人のテスタロッサ家の方を見ながら告げるゼブル
〈成る程な、確かに探求心を無くしたら死人の在り方だな、あの者達もそなたも生きるのを楽しんでいる訳だな〉
納得したように言葉を発するライフメイカー
それを聞きながら右手の人指し指に着けた指輪を触りつつ言葉を紡ぐ
「火よ灯れ……っと、この程度の初心者用なら無詠唱でも余裕だな、さて……次は使う機会が有るかは別にして、この魔方陣を魔力で作成っと」
無詠唱で指先に火を灯した後、魔力で魔方陣を描くゼブル
〈それは仮契約(パクティオー)の魔方陣か、しかしそれだとそなたが従者になる形の魔方陣だぞ〉
軽く見て何の魔方陣かを理解したライフメイカーは少し指摘する
「えっ……マジで、あっ……………本当だ、翻訳前の方から間違えてるなコレ、写本を作るなら書き間違えるなよな」
足元に作成した魔方陣を指摘されて解析し、自分が主になるパターンの魔方陣の筈が逆転してる事に気付いて悪態をつく
「ゼブル、おっはよー♪」
「おはようございます」
勢いよくドアを開けてアリシアが入ってくる、その少し後ろにフェイトも居る
「うわー、本とか色々散乱してるねー」
言いながら近寄るアリシア
「アリシアにフェイトおはよう、アリシア……足元を見ないと危ないぞ」
魔方陣の上で胡座を組んで座って床に手を付いた状態で見上げながら言うゼブル
「大丈夫大丈夫ってえぇぇ」
足元の本を避け……その先に転がっていた鉛筆を踏んで足を滑らせ倒れこむアリシア
ゼブルに向かって
「って、ちょっ………」
座り方の問題で避ける事も出来ず、急だったので支える事も出来ずにアリシアに押し倒されるゼブル
「あっ……………、だ……大丈夫?、お姉ちゃん、ゼブル」
何か衝撃的なものを見ているのか少し固まった後に真っ赤な顔で呼び掛けるフェイト
「………………………うん、大丈夫」
無言で起き上がり長い沈黙の後、そう返すアリシアだが顔が真っ赤だ
「………………怪我は無いようで何よりだ」
暫しの沈黙の後、起き上がりながらアリシアに怪我が無い事を安心するゼブル、顔が何故か赤い
そして魔方陣が光り、縦横比が16:9の長方形、タロットカードの様な物が出現した
〈事故とはいえ先程の口付けで契約が成されたようだな〉
一切空気を読まずに事実を喋るライフメイカー
それを聞きアリシアは耳まで真っ赤になる
「ライフメイカー、お前少しは空気を読んでくれ」
そう言うゼブルも顔が真っ赤だ
〈口付けではなく今風にキスと言えば良かったか?〉
完全に的外れな発言をするライフメイカー、アリシアとフェイトの二人は顔から火が出そうな程に赤くなっている、湯気が出ている様にも見える
「………………う」
俯いたまま小さな声で呟くアリシア
「う?」
それを聞き真っ赤な顔のまま首を傾げるゼブル
「うにゃぁぁぁぁーーー!!」
猫のような声を上げながら勢いよく立ち上がり、物凄い勢いでフェイトの横を通り抜け走り去るアリシア
「………………まぁ気持ちはわかる、フェイト……俺は良いからアリシアの方を見ていて」
口元を押さえながらフェイトにそう頼むゼブル
「えっ……うん、わかった、お姉ちゃんは私が見てるけど…………ゼブルは?」
それを了承し、気になった事を尋ねるフェイト
「いや…………今顔を会わせたらまた叫びながら逃げそうだから、落ち着くのを待つよ…………俺も錯乱するかもしれないしな」
言いながら先程唇に感じた感触を思い出したのか、耳まで真っ赤になるゼブル
アリシアと髪の長さ以外は瓜二つなフェイトの顔も見れないのか、ゼブルの視線は先程から窓の外の空に向いている
「そ…………それじゃあ私はお姉ちゃんを追い掛けるね」
そう言ってアリシアの後を追うために部屋を出るフェイト
〈先程の仮契約で出たパクティオーカードを見せてみろ〉
自分の調子を全く崩さずに用件を言う古本………ライフメイカー
「マイペースすぎるぞ……お前、コレだな……コレで良いか?」
軽く呆れながらカードを拾い表面が見えるように向ける
〈成る程……アーティファクト付きか、当然だが名称はゼブル・グランディア、称号は魔性を宿す騎士、色調は黒と銀、徳性は勇気、方位は中央、星辰姓は月、アーティファクトは【闇に染まりし約束された勝利の剣】(エクスカリバー・モルガン)で、肖像はバリアジャケットだったか…………今の姿でアレを着て、黒い西洋剣が地面に突き刺さっていて、その後ろにお前が立っている絵だな、剣の向きは刀身の模様がよく見える状態だな〉
パクティオーカード…………ではなくアーティファクトカードを見て内容を言葉にして聞かせるライフメイカー
今はまだゼブルはラテン語など読めないからだ
「アーティファクトって凄い魔法道具や武器の事だよな、それがエクスカリバーって…………有名すぎない?」
自分のアーティファクトが騎士王の剣の名を冠する事に驚き呆れるゼブル、その顔はまだ赤い
「しかも今の姿であの服ってコスプレ感が半端ないな、完全に服に着られてる、まぁ……騎士甲冑よりかましか」
頭を押さえ項垂れるゼブル
「騎士甲冑はアリシア達に悪役っぽいと言われたから、バリアジャケットは完全にデザインを変えて、一寸装甲が付いただけの服だからな…………黒いけど」
アレを着た姿なら作っていて良かった、鎧より遥かにましだ……と呟くゼブル
「流石に少し片付けるか、気も紛れるだろうし」
そう言いながら翻訳前と翻訳後の両方の魔導書と錬金術の書を王の財宝に仕舞おうとして、青の魔導書をプレシアさん達に貸しているのを思い出し、道具袋に放り込むゼブル
「七時前か……朝食までに落ち着いてほしいが無理だろうな、ご飯食べてる時アリシアの顔を見れるだろうか………」
アリシア程には錯乱してなかったからかゼブルはもう落ち着き始めたみたいだ
〈そなたは落ち着いているようだな、初めての様だったがキス程度では動じぬのか?〉
ライフメイカーがそう言いゼブルはピクリと反応し
「えっ………………あぅぅぅ」
先程の事を思い出し、アリシアの顔を思い浮かべただけで真っ赤になっていき
そして次第に耳まで真っ赤になり若干涙目でプルプルと震え始めた
「考えるな俺考えるな俺考えるな俺考えるな俺…………、アリシアの唇が柔らかかったとかアリシアの髪が良い臭いだったとかアリシアの体が柔らかかったとか真っ赤になったアリシア可愛いとか考えるな俺、アリシアの唇の柔らかさとかアリシアの丁度良い重みとか体の柔らかさとか今そんな事を鮮明に何度も思い出すな俺ーーー!!」
訂正、全然落ち着いていなかった、無理矢理に先程の出来事を思考の外に追いやる事で考えないようにして落ち着いているように行動していただけのようだ
「ふにゃぁぁぁぁーーーー!」
最終的に頭を抱えたまま猫の様に叫びながら床を転げ回り始めた
〈我慢して居ただけなのか、むっ…………コレは〉
その様子に事情を理解し呆れたように呟き、何かに気付く
ゼブルを中心に黒い渦が発生し近くに浮いていた白い古本なライフメイカーもその渦の中に居る
〈緊急事態だ少し落ち着け〉
そう言って斜め上から落下するように体当たりをする…………結果本の角が頭に当たり悶絶しながらも事態に気付くゼブル
《アリシアにフェイト!、俺は今から異界に跳ばされるみたいだ、確かに伝えたからな!》
慌てて二人に念話を送り、伝え終わった数秒後に渦は急速に収縮し消え去った
数ヵ月ぶりに再び異界に跳ばされたゼブルは今────
「何度か異界に跳ばされて理不尽な目に合っていて多少は慣れていた、だからと言って…………コレは無いだろーーーーーー!!」
アーティファクトカードと魔法発動体の指輪、そして携帯袋と古本なライフメイカーだけを手に、地平の彼方まで樹齢が千年近い巨大な木々が生い茂る樹海の中に有る、少し小高い丘の上で叫んでいた
ゼブルはテスタロッサ家が引っ越してきてからミッド式を習い始めていて、地力でバリアジャケットの生成と変身魔法で16歳モードに変身が出来るようになっている、デザインは騎士甲冑とはまた別、古代ベルカとミッド混合の何処かの狸娘と同じ感じになっている
ゼブルの素の魔力は実はクロノ以上フェイト未満……フェイトの二割減な量、今回は魔力量を補う為の青の魔導書・ブレイブルーは置いて来てしまったので金ぴかにしたような反則は絶対にできない