再び過去の夢を見る
「えっ、ラハールさんて前向きな言葉が嫌いなんですか?」
「……って事はラハールさんて」
フロンとゼブルは息を吸い込み
「「幸せな人生、世界平和、皆友達、希望の光、清らかな心、無償の愛、絶対の信頼、愛と正義は必ず勝つ、私(僕)達の武器は愛と勇気と希望…………的な素晴らしい言葉を聞くのも嫌なんですか?」」
二人は一緒に一気に言い切り、仲良く首を傾げながら倒れ付し悶えているラハールに尋ねる
「き…さ………まら、わざと言っているのか、そんなふざけた胸くそ悪い事を」
顔を青ざめさせ、息も絶え絶えになりながらも怒りの言葉を口にする
「「何処がです?、素晴らしいじゃないですか、とくに……愛と正義は必ず勝つ、とか……とても良い言葉じゃないですか」」
またも仲良くハモりながら楽しげに言うフロンとゼブル
「ぐはぁ、ハァ…ハァ……ゼブルはエトナに悪魔の常識を教えられていた筈なのに、何故フロンと同じ愛マニアに成っているのだ」
血を吐きよろめきながらも立ち上がったラハールは二人から離れた場所でふと浮かんだ疑問を呟く
「殿下、ゼブルさんはべつにエトナ様の教えが身に付いて無いって訳じゃないッスよ」
近くに居たプリニーがその呟きに反応した
「そうなのか?」
「そうッス!、オイラは昨日まで一週間ゲヘナ海にある高級菓子屋に並ばされてたッスからね~、その前はバイアス城で武器の熟練度上げだってサンドバッグにされてボコボコッス!、それでもイワシ三尾貰えたから良いッスけどね」
自分の使われ方を告げるプリニーにラハールも黙りこむ
「オレは技の熟練度上げだって技や魔法を叩き込まれまくったッス!
回復魔法の熟練度上げもされたからボコられて回復の無限地獄な一日だったッス!…………イワシ四尾だったッスけど」
そこに別のプリニーも話に加わった
「そ……そうか、奴も悪魔として相応しい振る舞いをして居るわけだな……」
そう言うラハールだが若干声が震えている
そんなラハールとプリニー二体の会話を遠くからじーーっと眺めるゼブル、その表情は笑顔であったが………目は笑っておらず、ニヤリと言うに相応しい笑みだった
「……また懐かしい夢を見たな、クククッ……またラハールさんの悶え苦しむ様を見たいものですよ」
寝ぼけ眼で軽くふらつきながらもとても邪悪な笑みを浮かべるゼブル
「あっ、ゼブルおはよー」
服を着替えてからゼブルがリビングに行くとアリシアが元気に挨拶をしてくる
「おはようアリシア、住み始めて2ヶ月、家にすっかり馴染んでるね」
笑みを浮かべながら挨拶を返すゼブル
「おじ様もおば様も優しいからね、そういえばこないだから気になってたんだけどさ、ゼブルってどんな事が出来るの?」
楽しげに返して気になった事を尋ねるアリシア
「あ~~それは……なんと言うか、取り合えずコレを見て」
困った顔をしながら袋からカードを取り出しアリシアに渡す
「?……なにコレ」
「それのこの部分を弄れば」
アリシアの持つカードを横からゼブルが弄ると空間投影型のホロウィンドウが浮かび上がる
「うわぁ……なにコレ、ステータス画面?」
画面を見て首を傾げるアリシア
「ソレは僕の能力が載った文字通りのステータス画面だよ、一回目に行った世界だとソレで自分や仲間の能力を確認できたんだよ」
ゼブルの説明を聞き興味深そうに確認するアリシア
「そうなんだ……あれ?、レベル13……低くない?」
けっこー戦ったって聞いたのに……と首を傾げるアリシア
「戻ってきたらレベルが430から10迄落ちて弱体化してるんだよ」
ため息を吐き項垂れながらそう言うゼブル
「ウェポンマスタリーは杖が90で他は全部25なんだね」
「当時四歳だからなサンドバッグをひたすら叩いて攻撃し続けて上げたんだよ、帰れるか分からないから成長した時の為にな、使い続けていたら勝手に強化される世界だったし」
そう説明するゼブル、サンドバッグ=プリニーだとは黙って
「じゃあ別の画面に載ってる技とかも使えるんだね」
そう尋ねるアリシア
「使えはするけどまだ五歳だからな、軽くて小さい武器や反動の弱い銃と魔法位しかまともに持てないし使えないんだよね」
苦笑いを浮かべながらそう説明するゼブル
「朝食の前に少し顔を洗ってくる」
そう言ってリビングを出て洗面所に向かおうとしたゼブルの体を白い光が覆い渦巻き収束した後……ゼブルの姿は消え去った
「…………こんな風に跳ぶんだ、って……そうじゃない、おば様~~ゼブルが光に包まれて消えちゃった」
暫し呆然と見て思わず呟いた事に自分でツッコミを入れキッチンに居るヘルに言いに行った
再びゼブルが異世界に跳ばされたと
世界を跳んだゼブルはと言うと何故か大木の枝に引っ掛かってぶら下がっていた
「何でこんな事に…………目の前に有るのは中世時代の北欧付近に有りそうな感じの立派な城だな、誰か見付けて助けてくれないかなぁ」
体を揺らしても枝が丈夫すぎてびくともせず、枝に引っ掛かってぶら下がった状態のまま項垂れていた