自分を我と言う者も登場、我(オレ)ではなくそのまま我(われ)です
オリヴィエがゆりかごの聖王に選ばれ暫く経ったある日
「なんなんだコレは……明らかにおかしい、異常だぞ」
紙の山の前で頭を抱えて唸っているゼブル
「ゼブル、どうしたんだ?」
焦燥し思い詰めた感じのクラウスが尋ねる
「最近になって出現がより頻繁になっている合成魔獣を討伐してきた者達に特徴を纏めてもらったんだが……」
そこで一旦言葉を濁らせ
「俺の世界の神話や伝説、更に想像上の……物語の中にしか存在しない魔物に非常に似た魔獣が多数発見されてる、同じ様な姿の魔獣も多数にだ……同じのを量産できるものなのか?、世界は違えど人の発想は似通って居るのか…………それともまた別の何かが原因か」
再び頭を抱えて唸りだすゼブル
「…………それは確かにおかしいな」
ゼブルから聞いた事を頭の中で纏め……クラウスもおかしいと言う結論に達した
「クラウス…………困ったお姫様が1日だけ帰って来るのは明日なんだ、何を言うかしっかり纏めておけ、俺は魔獣の軍勢の討伐に部隊を率いてそろそろ出るから……数日出る事になるから俺はオリヴィエと入れ違いになって会えないだろうからな、そんな顔だと一日中常に心配させるだけだぞ……少しは眠れ」
必要な物を纏めて出る準備の最終確認をしながらクラウスにそう告げて部屋から出ていく
クラウスからの返事はなかった
シュトゥラの城を出て1日が経ち、目標地点の一つの周辺に居る魔獣を殲滅し終えて暫し休み、次の目標地点に移動する準備をしていた頃
「オリヴィエ様は今頃クラウス殿下と話をしているのだろうか」
兵の一人がそう呟いた
「オリヴィエ様は帰って来てくださるだろうか?」
「帰ってきてほしいよな」
「オリヴィエ様、何時までもシュトゥラに居てほしいよ」
別の兵達も呟く
そんな淡い期待……それを
「無理だな、今頃は言葉で止める事も出来ず、全力で倒してでも止めようとクラウスがオリヴィエと闘い始めているだろうな…………今のクラウスじゃあ今のオリヴィエと百回戦っても百回負けるだろうけどな」
城の方を見ながらバッサリ切り捨てる
「ゼブル様、貴方はオリヴィエ様がシュトゥラに居なくても良いと?」
兵の一人が詰め寄る
「今更言葉で止まるような奴なら……最初から聖王にならないさ、彼女は国と民を守るために自分の幸せを切り捨てた………………自分の全てを捨てて、国と民を護る事を選んだんだよ」
王としては正しくても人の在り方としては間違ってるけどな
そう付け加えて馬に近寄る
「それに最近のクラウスはまともに寝ていない、そんな状態で勝てる程……彼女は弱くない、それに覚悟を決めた人間は強いんだ……今の彼女は俺達が知っているよりも更に強い、だからこそ……絶対にクラウスは勝てない」
言いながら馬に乗り
「今となっては帰ってくる可能性が有るとしたら、ゆりかごを起動させている必要がない状態にする事だけだ、ゆりかごが必要なければ聖王女を続ける必要もない、1日でも早く戦乱が終わればゆりかごを降りられる」
その為に行動しろと言外に告げていた
兵達は皆が黙って装備を整え馬に乗り始めた
「それに魔獣を放っておいたら、オリヴィエが自分を犠牲にしてまで守ろうとした彼女の愛した民が殺される、それを防ぐ為の魔獣殲滅でもあるんだ、行くぞ!」
魔獣を殲滅する理由も告げ、次の目標地点に向かう合図を出し馬を走らせる
「「「「「了解!」」」」」
兵達は一斉に応え後を追う
それなりの距離を走らせた後合図を出し部隊を止める
「どうしたので?」
部隊を止めた事を疑問に思った兵の一人が尋ねる
「青の魔導書の索敵に反応が有ったんだが……市街地の方に8体向かっていて、今の進行方向上に36体の反応が有った、俺は市街地の方に行く、部隊を頼めるか副隊長」
掴んだ情報を告げ尋ねる
「部隊はお任せください、隊長は市街地に向かっている魔獣を殲滅してください」
力強く返事をする副隊長
「任せた」
ただそれだけを告げ馬の向きを変えて走らせ離れていく
それを見送った兵の一人が不安げに呟く
「何故だか……隊長とはこれっきり会えない気がするんだけど……気のせいだよな?」
全員が何となく感じていたのか否定する声はなく
「総員急ぐぞ」
不安を抱えたまま魔獣の群れが居る方角に向かう
様々な種族の魔獣の亡骸が転がっている場所で
5体目の魔獣を斬り伏せたあと呟く
「ミノタウロス、ワイバーン、オーク、ゴブリン、ケンタウロスは倒した、あとは目の前のハーピィ、ウェアウルフ、そして少し離れた場所で暴れてるキマイラで全部か、やっぱりおかしい…………何でこんなにも地球の伝承の魔物が居る、っと危ない」
心臓に抉り込むように爪を突き刺そうとしたウェアウルフの攻撃を避けその伸ばされた腕を剣を振り上げて斬り飛ばし───
「ハアッ」
降り下ろした剣で脳天から真っ二つに両断し──
「次」
独特の歩方で即座に間合いを詰めハーピィの腹部を切り裂いた
キマイラに近寄りながら呟く
「ライオンの頭、山羊の胴体……頭も付いてるな、尻尾は毒蛇、キメラ……或いはキマイラ、どっちでも良いけどそのまま過ぎる」
キマイラが自分に気付き近寄り始めたのを見て立ち止まり、敵を観察し呆れながらも剣を思いっきり振り上げ───
「魔界剣技、一文字……スラッシュ!!」
足元に集めた魔力を爆発させた勢いを利用し瞬時に爆発的な加速をし────
キマイラの後ろで剣を降り下ろした体勢で足で地面を抉りながら停止して剣に付いた血を振り払う
後ろに獲物が居ると気づいたキマイラが振り向こうと動いた時、血を噴き出しながら真っ二つに体が別れた
「コレで此方は片付いたな、けどどうしてこいつらだけが別に行動していたんだ、部隊に任せた群れとはまた別なのか?」
バイザーを外して辺りを見回しながら呟き考えていると
不意に半歩横に移動し────
先程まで頭が有った場所を一本の槍が高速で通りすぎて、そのまま飛翔し────
大岩を粉砕してようやく止まった
ゼブルは槍が飛んできた方角を横目で見るとそこには
趣味が悪いとしか言いようがない黄金の鎧を身に纏った金髪で紅玉のごとき紅い瞳の男が立っていた
「先行させていたこの我のペットの反応が消えたから予定を少し変え、足を運んでみたが………あの様な幼子に駆逐されていたとは、役に立たぬ玩具よ」
尊大で傲慢すぎる言葉と態度で魔獣の亡骸を見て笑う男
「絶対王者たるこの我の御前だ……顔ぐらい見せよ雑種」
あまりにも勝手で傲慢な事を口走る
「存在をまともに知られていない様な奴が絶対王者を自称するって……何様?」
呆れながら睨み付けるゼブル
「ほうっ……同類か?、だが女か………よいぞ、この我のペットを葬った無礼を許そう、目算で148㎝と言った所か……少しばかり成長しているが塔城小猫の色違いを望むとは、それに騎士甲冑のモデルはセイバー・オルタか」
勝手に納得し、勝手に許し、意味の分からない事を呟いている
「えっ……なに?、塔城小猫とセイバー・オルタって……誰?」
あまりの事に呆けて混乱するゼブル
「女で有る限り我には逆らえぬ、速やかに武装を解除し我に従え」
一瞬眼が怪しく光る男
(本当に何を考えてるんだコイツ、取り合えず青の魔導書を使えばすぐに換装出来るし……情報を引き出す為に乗ってみるか、魔獣をペットと呼んだ事も気になるしな)
そこまで考えて騎士甲冑を消し私服に戻る
「シュトゥラに居ると言う事はオリヴィエとも知古の可能性が高いな、この小娘でも楽しめるが我の目的はオリヴィエを捕縛し我の玩具にする事、そしてオリヴィエを使いエレミアとクロゼルグも我が手に納める、女を絶対服従させる我の魔眼からは如何な聖王とて女で有る限りは逃れられぬ」
手に入れたらどう楽しもうか算段を立てる男を前にゼブルはキレた
「青の魔導書・ブレイブルー起動、騎士甲冑展開、装備選択、エクスカリバー、魔王のマント、プロビデンス、アルカディアに換装」
青い本が出現し直後、金色のバイザーが装着され目元を隠し、赤いラインが入った漆黒の騎士鎧が構築され、黒いマントがその上に装着され、黄金の杯が腰から下げられ、その手には黄金の柄が握られ刀身の中心部が赤く輝く両刃の剣が出現する
「貴様は俺が駆逐するぞ……このクズヤロウ」
身に付けた秘宝の力も有って跳ね上がった魔力が解放され、純白の魔力が爆風のごとく吹き荒れる
「なんだ……この我の支配を拒絶したと言うのか、そのような事が起こる筈がない、絶対服従の魔眼の力は完全だ……抗える筈がない」
想定外の事態に慌てる男
「始末する前に致命的な間違いを指摘してやる、俺はコレでも男だ!」
剣を向け半ば叫びながら、そう指摘する
「なん……だと、男……その外見で?」
呆然としながら呟く黄金の男
「不意打ちしてきたんだ、卑怯だとは言うなよ」
その隙に間合いを詰め剣を振り抜くゼブル
「なっ……ギィィ」
寸前で気付き右腕の装甲で咄嗟に防ごうとするも装甲ごと右腕を二の腕から斬り飛ばされ、苦痛の声を漏らす男
「よくも腕を、この我を……侮るなよ雑種」
吠えると同時、右肩の装甲で出来た影から肉塊が出現して即座に右腕を構成しゼブルを殴り飛ばす
「我が他の転生者より簒奪した神器、魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の応用だ、腕型の魔獣を作らせてもらった」
そう自慢げに笑う男
「この我、ギルバート・アルファードには英雄王の力と女に限定した絶対順守の魔眼、更に魔獣創造が加わっているのだ、貴様がどんな特典能力を貰っていようが……叶う道理はない」
自信満々にそう言い放つ男……ギルバート
「魔獣創造……魔獣被害が増大した元凶か、言ってる事はいまいち理解できないが、それだけでも消すには十分過ぎる」
自慢気に自分の力を説明してる間に体制を立て直し、呟きながら武器を構える
「王者の力を見せてやろう、『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』」
ギルバートの背後の空間が揺らぎ、無数の武器が揺らぎから出てくる
「回復能力に異常な力を感じる武器の群れ…………短期決戦で行かないとヤバイな」
冷や汗を流しながら呟き
高速で射出された武器の軍勢を時に弾き、時に反らし、時に避けながら間合いを詰めるゼブル
「邪魔だぁ!」
剣から剣圧に魔力を混ぜた巨大な魔力刃を飛ばして武器の軍勢を凪ぎ払い
魔力刃を目眩ましにしてその下を這うように身を屈めて移動し、瞬時に懐に入り込み心臓に刃を突き刺そうとして────
「驚いたが………甘いわ」
足元──ギルバートの影の中から突如、異形な一角獣が出現しゼブルに角を突き刺そうとし、ゼブルは咄嗟に反応して剣で角を防ぐも、一角獣はそのまま上空に突き上げた
(魔獣創造……名前の通り魔獣を生み出すのか、基点は自分の影……だけど生成速度が速い、だけど魔力が減った……魔獣だけなら持久戦でどうにでもなるが……)
上空に打ち上げられながらも考察するも──
「反応したか、称賛してやろう、だが……」
剣、槍、斧、ハンマーの四つの武器が射出され
剣と斧を右手に持った剣で弾き、左手で槍の先端を叩いて軌道を逸らし、ハンマーを足場にし離れた地面目掛けて飛び退く
(この武器の軍勢が厄介だ、一つ一つが強力すぎる…………って、この魔力は)
ギルバートを油断なく見据えながら思考するも、感じ取った魔力に慌てる
(なんでこんな所に…………そうか、この近くで戦ったのか、なら………少しばかり無茶をするか)
自分に向け新たに展開され、射出された十六の武器の軍勢を見据え
剣に魔力を収束させながら振り上げ───
「エクスカリバーーー!!」
剣を降り下ろして純白の極光を撃ち放ち、十六の武器の軍勢全てを吹き飛ばし、極光は勢いを緩めることなくギルバートに向かい────
純白の極光を巨大な黄金の盾が弾き飛ばした
「中々やるではないか、この我に神々の盾を出させるとは、だが我を倒すにはまだ足りぬ」
黄金の盾の背後で笑い嘲るギルバート
ゼブルは極光を放った直後に走り出して跳び上がり
「武器換装、魔王拳」
左手にナックルが出現する
ギルバートの言葉を気にする事なく、ナックルを装備した左拳を振り抜き黄金の盾に莫大な魔力と共に叩き付けて技名を叫ぶ────
「魔界拳技、魔拳ビッグバン!!」
黄金の盾に叩き付けられた魔力は膨張したのち急激に収縮し
天地を揺るがす程の大規模な魔力爆発を引き起こした
長くなりすぎたので続きは古代ベルカ終編に
ゼブルが出した装備は全て一回目の転移で手に入れた物で、大半がラハール達のお下がりです
ちなみに全てLV100でレア度はレジェンド、自分で雇った凡庸キャラ達と城でのんびりしてるクリチェフスコイを王と崇めてる者達に暇潰しをかねて協力してもらい上げていた
少しネタバレすると居たのはディスガイア1の本編終了後の少し後迄です
エクスカリバーの外見はディスガイア2の物ですが…………1は途中で断念