女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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狩りしてて書き貯めの更新すら忘れてました。


9.衝突と覚悟

「エクストがこの次元に帰ってきた……」

「そうなのよ」

 

 四女神間での情報共有を終えたブランはクリストと話をしていた。

 

「アレの狙いは変わらず私達のはず。やる事は変わらないわ」

「……迎撃って事ですか」

「そうね。あっちから来てくれるなら好都合でしょ。それに、今の状態なら……勝機は十分にあるわ」

 

 クリストも、エクストが前よりも攻めの手を甘くしていた事は聞いていた。

 

「その油断が命取りになるのでは?」

「油断してるつもりは無いわ」

「そうですか……。ところでブラン様」

「何?」

「今の戦力に私は含まれていますか?」

「…………含んでないわ」

 

 クリストはブランを睨んだ。

 

「何故?」

「逆に聞くけど、あなたはまだエクストと戦えるの?」

「勿論です。覚悟は決めています」

「……。そうであっても、あなたを前に送り出せない」

「ですから、何故」

「……もうこれ以上傷付いてほしくないからよ」

 

 クリストは視線を逸らし、小さなため息をついた。

 

「要らない心配ですよ」

「は?」

「そもそも私はブラン様の従者。主の為に傷付く覚悟だって出来てます」

「クリスト……」

「だから良いんです。私の事は気にせず……」

「いや、ダメよ」

 

 クリストの話を遮るように、ブランが話した。

 

「……!?」

「あなたは人間。私達と比べれば弱く儚い存在なのよ。そんな存在をあの化け物と戦わせるなんてできない」

「……私はエクストとの戦闘経験はありますよ?」

「でもダメなの」

「ブラン様が知らないだけで、私だって必死に特訓してきました。エクストに対抗できる策だってあります!」

「クリスト、いい加減に……」

「そもそもアンチクリスタルの力の前じゃ、女神も人も変わらないでしょう? だったら私だって……」

「黙れ!」

 

 部屋の中に静寂が訪れた。

 

「あなたにはわからないでしょ……。私の気持ちなんて」

「……はい?」

「大切な側近がボロボロになって帰ってきて……その気持ちがお前に分かるかよ!」

「……だったら……従者でありながら何日も何週間もずっと休まされて、その上女神が狙われようと前に立たせてもらえなかった、その気持ちがブラン様に分かりますか!?」

「お前を思っての事だっつってんだろ!」

「うるさい! こっちの意見も聞かずに何がお前を思って、だ!」

「はい、そこまで!」

 

 二人の間に割って入ってきたのはシーシャだった。後ろにはフィナンシェの姿もある。

 

「こんな状況で喧嘩しないの。ブランちゃんもクリストちゃんも落ち着いて」

「む……」

「……」

 

 それでも、二人の間には険悪な空気が漂っている。一触即発、まさにそんな様子だ。

 

「……よし、ブランちゃんはアタシと話をしようか」

 

 そう言いながらブランの手首を掴んで引っ張る。

 

「えっ?」

「作戦会議をしようじゃないか。今回はアタシ達にも協力してもらいたいんでしょ?」

「そうだけど……ちょっと! 無理矢理引っ張るな!」

 

 シーシャに引っ張られる形で、ブランは部屋から出ていった。部屋にはクリストとフィナンシェ、二人だけになった。

 

「……私、そんなに役に立ちませんかね……?」

 

 小さくため息をついてから、クリストは話した。その目は、どこか悲しそうだった。

 

「そんな事は無いと思いますよ。ただ……」

「ただ?」

「女神様と私達(人間)では、色々と基準が違うので……。それに、国民を守護するのが守護女神の役目でもありますから」

「にしても……」

「いくら立場が近くても、クリストさんも人間である事に変わりはないんです。ブラン様だって、クリストさんの事を思ってこうしてるんです。近しい存在、だからこそ余計に気にかけてしまうんだと思います」

「……」

 

 クリストは少し複雑そうな表情をした。

 

「少し……一人にしてくれませんか?」

「え?」

「お願いします……」

「……わかりました」

 

 フィナンシェは部屋を出ていった。

 

「……わかってるよ。気にかけてもらってるのなんて」

(でももうじっとしてることなんて出来ない。私だって、ブラン様達に傷付いて欲しくないんだ。悪いけど、少し勝手に動かせてもらうよ……)

 

 

 一方、ルウィーの教会の地下牢。

 

(退屈……だな)

 

 トーシャはベッドに寝転がりながら暇を持て余していた。基本的にここではやることが無い。毎日が暇で仕方なかったが、それももう限界だ。

 

(タブレットとノートパソコン……あれさえあればなぁ……情報収集も暇つぶしも、エクストの動向も探れるのに)

 

 思い切って、牢の前に居る職員に聞いてみることにした。

 

「……ねー、ちょっと」

「ん? なんだ?」

「私の研究所から押収した物の中にさ、タブレットとノートパソコン……ついでに、携帯充電器無かった?」

「あったはず……だが」

「じゃあそれ頂戴」

「え?」

 

 職員は目を丸くした。まさかこんな事お願いされるとは思ってなかったのだろう。

 

「いや、ダメだろ」

「なんで」

「何をするかわからないからな」

「はぁ? じゃあ聞くけど、あなたは私がタブレットやノートパソコンだけで脱獄出来ると思ってるの?」

「それは……」

「出来ないよ。する気も無いし。だから良いでしょ? 研究者から情報を取り上げないでくれよ」

「うむ……わかった。少し待ってろ。上と話をしてくる」

 

 そう言って職員は牢の前を離れた。

 数分後……。

 

「これか?」

「おぉ、これこれ!」

 

 職員は格子の間から、タブレットとノートパソコン、そして携帯充電器を手渡した。

 

「妙な真似したらすぐに取り上げるからな」

「わかったわかった」

 

 トーシャは機材を抱えてベッドに腰掛けると、さっそくタブレットを立ち上げた。

 

「うん……アプリもそのまま、中身は弄られてないね。さて……」

 

 画面をタッチしてあるアプリを立ち上げた。アンチクリスタルの大まかな位置を探る、自作のアプリだ。元いた研究所の周辺の地図と、アンチクリスタルの位置を示すマーカーが表示される。

 

(こういうのも習っておいて正解だったな。……あれ?)

 

 マーカーの位置を見てあることに気付いた。

 

(数が……減ってる気がする)

 

 すぐに別のアプリを立ち上げる。念の為にと作っておいた、アンチクリスタルを埋め込んだ複製体に関するレポートだ。一日の記録とアプリのスクリーンショットが貼られている。最後に書いたレポートのスクリーンショットと、アプリの地図でのマーカーを見比べてみた。

 

(間違いない。北と西はノータッチだったはず。なのに西側の反応が消えてる……)

 

 トーシャが考えた可能性は三つ。野良のモンスターにより破壊されたか、女神を含むどこかの国の誰かが破壊、回収したか、あるいは……

 

(エクストが……何かを企んでいるか……)

 

 トーシャはすぐさまノートパソコンを立ち上げた。

 

(回収されていたりしたら……大問題になりかねない。ノートパソコンだけでどこまでアップデート出来るかわからないけど……とにかく、このアプリで探れるとこまで探らないと)

 

 パソコンが立ち上がると、すぐに作業を開始した。




トーシャさん、複製一筋な方ではないんです
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