女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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11.動き出す影

 数日後、修練場で素振りをしていると、トーシャから連絡が入った。急ぎ来て欲しいという内容のメッセージだった。クリストは急いで地下牢に向かった。

 

「何、どうしたの?」

「これを見て欲しい……」

 

 トーシャはタブレットの画面を見せた。そこには、一つの反応と、「8」という数字が映されていた。

 

「これは?」

「アンチクリスタルの反応。で、その数値は濃度。わかりやすいように、ゲイムギョウ界全体での割合を表示するようにしてある」

「……って事は!?」

「そう。たった一個のアンチクリスタルに、このゲイムギョウ界中のほとんどのアンチクリスタルの力が詰まっている事になる。八割だ……ありえない濃度だよ」

「これ……使ってくるって事?」

「恐らくね……」

 

 クリストは頭を抱えた。そんな力を使われれば、いよいよ勝ち目は無い。自分にとっても、女神達にとっても……。

 

「何とか阻止しないとね。それについては後日話し合おう」

「わかった。ありがとう」

「いいんだよ」

 

 クリストは地下牢を後にした。

 

「クリスト……何をしていたの」

「……!」

 

 地下牢を出たところにブランが立っていた。

 

「別に……大した事じゃないですよ」

「…………何を企んでいるのかはわからないけど、あまり勝手な行動はしないように。でないと……あなたを拘束しなければならなくなる」

「そこまでして私を守るメリットは何なんですか」

 

 クリストの問いを聞き、ブランはため息をついた。

 

「何それ」

「はい?」

「あなたを守る事にメリットが無きゃダメなの? ただ守りたいから守るじゃダメなの?」

「ブラン様、私は……」

「側近だから命を捨てる覚悟はある……」

「……!」

「図星ね。それなら前に聞いたわ」

 

 ブランは少し廊下を歩く。クリストも何となく続いて歩いた。

 

「クリスト、私は自分が生きるためのシェアを得たいからこの国を守ってる訳じゃないのよ」

 

 ブランは窓の外を見ながら話し始めた。窓からは雪に染ったルウィーの街並みが見える。

 

「この国が好きだから守ってるのよ。そう、ただそれだけの事。守る事に大それた理由なんて必要無いわ。だからあなたの事も……ね?」

「……」

(あぁ、なんで納得出来ないかな。私って……こんな頑固だったんだ)

 

 ブランへの申し訳無さから、視線を下に下ろしてしまう。でも、謝るなら今かもしれない。あれから全く口を聞いていなかったブランとちゃんと会話するチャンスだ。

 

「あの、ブラン様……」

 

 直後、竜の咆哮が辺りに響いた。

 

「なんだ!?」

 

 ブランは窓の外を見た。そこに居たのは、黒い体色のワイバーンのような存在。

 

「なんだあれ……」

「ブラン様!」

 

 フィナンシェが息を切らしながら走ってきた。

 

「フィナンシェ、あれは……」

「わかりません……突然現れたので。ですが、住人の避難誘導は始めています。あれに関しても、シーシャさんが先頭に立って応戦しています」

「そう……。なら私も早く……」

「い、いえお待ちください。先程あるメールが教会宛に届きまして」

「何?」

「ゲイムギョウ界の果てで待つと……地図付きで」

 

 フィナンシェはタブレットで届いたメールを見せた。

 

「エクストか」

「おそらく」

「果たし状って訳ね。わかった。私達はそっちに向かうわ。フィナンシェは避難誘導を手伝って」

「わかりました!」

 

 フィナンシェは走ってその場を後にした。

 

「ブラン様……」

「……クリスト、話は後ね。今から奴を、エクストを潰してくる」

「……」

「……何もするな、とは言わないわ」

「え……」

 

 それだけ言い残すと、ブランは走ってその場を後にした。

 

「……良いんですね」

 

 クリストも行動を開始した。

 まず向かったのは、トーシャの居る地下牢だ。

 

「かなり騒がしいけど、何事?」

「エクストが動き出した」

「え? 本当に?」

「ゲイムギョウ界の果てで待つって果たし状まで送り付けたらしいけど……」

「ちょっと、本当? エクストの反応は研究所周囲から動いてないよ?」

「え?」

 

 トーシャはタブレットを見せた。確かに、エクストの反応はゲイムギョウ界の大陸内にある。

 

「果てって言うなら大陸内に反応があるのはおかしいでしょ。多分罠だよ」

「だとしたら!」

「いや絶対間に合わない。もしかしたらもう向かってるかもだし」

「ぐ……」

「……あなたがやるしかないんじゃないの?」

「……だよね。わかってる」

 

 クリストは一つ深呼吸をした。

 

「行くよ、私」

「わかった。地図はあなたの端末に送っておいた。位置情報を頼りに向かって」

「わかった。ありがとう!」

 

 クリストは走って地下牢から出ていった。

 

「あ、待って! これ開けてってー……って、あぁ……」

 

 トーシャは鉄格子の間から伸ばした手を引っ込めた。

 

「どーしよっかなぁ……力ずく? しかないか」

 

 トーシャはタブレット内のあるアプリを起動した。すると、目の前に銀色の膜が現れる。

 

「増幅フィルター……倍率は二でいいや」

 

 そして、右手に電の弾を作り出す。

 

「魔法は苦手だけど、これで増幅させれば何とかなる……はず!」

 

 そしてフィルター越しに放つ。フィルターを通過し、二つに増えた雷の弾は、鉄格子に確かにダメージを与えていた。

 

 

「救援は!?」

「ダメです! 他国も同じ状況のようです!」

「そっかぁ」

 

 ルウィーの街中、

 

「仕方ない。アタシ達でやるしかないね」

 

 そう言ってシーシャはゴールドモードに変身した。そして右腕のアームガンでワイバーンを撃った。ワイバーンの視線がシーシャに向く。

 

「キミの相手はアタシだよ」

 

 ワイバーンもシーシャを敵として認めたのか、威嚇するように咆哮をあげる。

 

「さーて、ひと狩りいこうか!」

 

 シーシャも拳を握って構えた。

 時を同じくして、クリストも教会から抜け出し、ルウィーの街中を走っていた。職員達に見つかって何か言われるのも時間の無駄になる為、なるべく人気の無い道を走っている。

 

(大丈夫かな……あれ、結構デカいけど)

 

 いつまでもつか分からない。だから早くエクスト本体を叩いて大人しくさせる必要がある。

 

(急ごう。きっと時間は無い)

 

 クリストは再び走り出した。

 

 

 一方、ゲイムギョウ界の果てにある孤島には各国の女神と女神候補生が集まっていた。彼女達の視線の先に、今回の事件の主犯、エクストが居た。

 

「来たね、女神」

「……あれはあなたの仕業なの?」

 

 パープルハートが訊ねた。

 

「そうだよ。私が作り出したんだ。だから私を倒せばあれも止まるよ」

「なら話は早いな」

 

 ホワイトハートが武器を構えながら言った。

 

「さっさとテメーを潰して、この事件にケリをつけてやる!」

「……出来るかな? 私は負けないよ?」

「九対一なんだよ? うずめ達の方が有利じゃん」

「数的には有利でも、あっちはアンチクリスタルそのもの。油断してたら死ぬわよ」

 

 ブラックハートの忠告に、オレンジハートは少し気まずそうな顔をした。

 

「さ、始めようか……覚醒!」

「来るわよ!」

 

 エクストは宵闇のマントを羽織り、反晶覚醒になった。そして武器を太刀と銃剣に変化させる。女神達も一斉に武器を構える。

 

「最終決戦だ。ここで皆まとめて潰してやる!」

 

 ゲイムギョウ界の果てで、最終決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

「……よし、これならしばらく時間は稼げるね。少なくとも、これが安定した出力を出せるようになるまではね……」

 

 魔導書に映し出された情景を見ながらエクストは静かに笑った。

 

「さて、最後の大仕事の前に何をしようか。ケーキでも食べる? お風呂入る? なんにせよ、このまま待つのは暇だなぁ」

 

 少し浮かれた様子で部屋の中を歩く。エクストにとってこの計画は既に成功したようなものだった。邪魔さえ入らなければ、の話だが。

 

「エクスト!!」

 

 突然、扉が勢いよく開いた。そこに立っていたのは、和服姿の少女だ。左眼に黒い眼帯を付けている。

 

「……なんだと」

 

 エクストは魔導書をダガーに戻し、クリストに向けた。

 

「なんでここに居るって分かった」

「……君の管理者のおかげだよ」

「ちっ、トーシャか……」

 

 クリストも刀を抜いてエクストに向けた。

 

「エクスト、君は私が止めるよ」

「へぇ。勝てると思ってるの?」

「じゃなきゃここに来ない」

「……覚悟は決めてきた、か」

 

 エクストはダガーを下ろし、構えをとった。クリストももう一本抜刀し、構える。

 

「その勇気は認める。でも、今回は手加減しないよ。本気で殺すからね」

「随分と上からだね。その油断が命取りになるよ」

「別に。油断なんてしない。本気には本気で応えなきゃ失礼でしょ?」

 

 二人の間に緊迫した空気が流れる。お互い、いつでも戦える状態だ。

 

「いくぞ」

 

 エクストが呟くと同時に、お互いが動いた。刃がぶつかる音が、部屋の中に響く。




女神達の話し方わかんないよー
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