アンチクリスタルの事件を解決してから丁度一週間が経っていた。
「クリストが目を覚ましたよ」
「……本当に!?」
「うん。すぐ来て!」
トーシャからの知らせを受け、ブランはクリストの居る部屋へ向かった。
「クリスト!」
「ちょっと、そこ横開きだから横に……」
「クリストォ!」
「お、落ち着いて……」
部屋の中のクリストは虚ろな目でブランを見た。
「……」
「クリスト……良かった……」
「……ぅ」
クリストは弱々しくブランに手を伸ばした。ブランはその手を優しく握った。
「……辛かったでしょ」
「……」
「……クリスト?」
「無理だよ。話せないから」
ブランの後ろからトーシャが言った。
「話せない……?」
「あなたに面会をさせる前に、少し検査をしておいたんだ。そこでわかったことだけど、あらゆる機能が衰えている。今言った通り、話すことは出来ないし……後、聴覚と多分痛覚も」
「……冗談じゃない」
ブランはクリストの手を握ったまま話しを続けた。
「やっぱり、原因はクリストの中のアンチクリスタル?」
「間違いないよ。今、この子のアンチクリスタルの濃度はかなり上がってる」
トーシャはタブレット端末を操作しながら話した。
「この端末が来たのも最近だから、データは少ないけど、確実に昨日よりは濃くなってる。このままいくと、更に機能が障害されるかも……」
「……早く手を打たないと」
「だね。今までの案は全て上手くいかなかったし……早く正解にたどり着かないと」
❅
あの日から一週間。様々な手を施したが、クリストの容態は全く良くならなかった。それどころか悪化の一方で、ブラン達の間にも焦りの色が濃くなってきた。
「やはり最終手段を使うしかない。アンチクリスタルの力をシェアクリスタルの力で相殺する……これしかないよ!」
「でも……そうしたらクリストはどうなる!? 少なくとも人間では無くなるんだろ?」
「そうだね。あの子は……女神の素質がある。だからシェアクリスタルを入れれば、女神になり、シェアの力を受け取らないと生きていけない体になる。でも、アンチクリスタルの力もある。今度アレが目覚めれば、女神の力とアンチクリスタルの力が合わさって、前とは比べ物にならないくらい厄介な存在になる」
「……クリストを女神には出来ない」
「やらなきゃこのまま死んじゃうんだよ!?」
「だから他の手を考えてるんだろうが!」
「じゃああるの!? 他の手段が!!」
ブランからの返事は無い。
「迷ってる時間は無いんだよ。延命でもいい。とにかく今はあの子を死なせないのが一番なの」
「でも……だからってクリストの人生を壊したくはない」
「……そうしないとクリストは助からない」
沈黙が部屋に満ちる。ブランも、こうする他手は無いことは分かっていた。でも、それに踏み切る勇気が、クリストの人生を変えてまで助ける勇気は無かった。
二人の間に重い空気が流れる。そんな中、遠くからガラスが割れたような音が僅かに聞こえてきた。
「なんだ……?」
「何か、割れた……?」
深夜、職員も皆寝静まったような時間帯に何かが割れるのは不自然だ。そう思った直後、悲鳴が聞こえてきた。
「……何かあったな!」
「なんなの、こんな時に!」
二人は部屋を出て悲鳴のする方へ向かった。その方向は、ある部屋と同じ方向だった。
「クリストの居る部屋……からか?」
「だとしたらヤバいんじゃない!?」
二人は更に足を早めた。途中、悲鳴は途絶えたが、構わず二人はクリストの居る部屋に走る。
「クリスト!!」
そして、扉を開けた先にいたのは
「……やっぱり、来てくれたね。ホワイトハート」
軍服のような服を身にまとい、左手には血に塗れた黒い結晶、右手には杖を持った少女……。
「エクスト……?」
トーシャが小さく呟いた。そこに立っていたのは、間違いなく、エクストその人だった。
実はこの作品の書きだめ結構あるんですよね。気分次第ではもう一回更新あるかもです。