女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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16.希望未だ見えず

 アンチクリスタルの事件を解決してから丁度一週間が経っていた。

 

「クリストが目を覚ましたよ」

「……本当に!?」

「うん。すぐ来て!」

 

 トーシャからの知らせを受け、ブランはクリストの居る部屋へ向かった。

 

「クリスト!」

「ちょっと、そこ横開きだから横に……」

「クリストォ!」

「お、落ち着いて……」

 

 部屋の中のクリストは虚ろな目でブランを見た。

 

「……」

「クリスト……良かった……」

「……ぅ」

 

 クリストは弱々しくブランに手を伸ばした。ブランはその手を優しく握った。

 

「……辛かったでしょ」

「……」

「……クリスト?」

「無理だよ。話せないから」

 

 ブランの後ろからトーシャが言った。

 

「話せない……?」

「あなたに面会をさせる前に、少し検査をしておいたんだ。そこでわかったことだけど、あらゆる機能が衰えている。今言った通り、話すことは出来ないし……後、聴覚と多分痛覚も」

「……冗談じゃない」

 

 ブランはクリストの手を握ったまま話しを続けた。

 

「やっぱり、原因はクリストの中のアンチクリスタル?」

「間違いないよ。今、この子のアンチクリスタルの濃度はかなり上がってる」

 

 トーシャはタブレット端末を操作しながら話した。

 

「この端末が来たのも最近だから、データは少ないけど、確実に昨日よりは濃くなってる。このままいくと、更に機能が障害されるかも……」

「……早く手を打たないと」

「だね。今までの案は全て上手くいかなかったし……早く正解にたどり着かないと」

 

 

 あの日から一週間。様々な手を施したが、クリストの容態は全く良くならなかった。それどころか悪化の一方で、ブラン達の間にも焦りの色が濃くなってきた。

 

「やはり最終手段を使うしかない。アンチクリスタルの力をシェアクリスタルの力で相殺する……これしかないよ!」

「でも……そうしたらクリストはどうなる!? 少なくとも人間では無くなるんだろ?」

「そうだね。あの子は……女神の素質がある。だからシェアクリスタルを入れれば、女神になり、シェアの力を受け取らないと生きていけない体になる。でも、アンチクリスタルの力もある。今度アレが目覚めれば、女神の力とアンチクリスタルの力が合わさって、前とは比べ物にならないくらい厄介な存在になる」

「……クリストを女神には出来ない」

「やらなきゃこのまま死んじゃうんだよ!?」

「だから他の手を考えてるんだろうが!」

「じゃああるの!? 他の手段が!!」

 

 ブランからの返事は無い。

 

「迷ってる時間は無いんだよ。延命でもいい。とにかく今はあの子を死なせないのが一番なの」

「でも……だからってクリストの人生を壊したくはない」

「……そうしないとクリストは助からない」

 

 沈黙が部屋に満ちる。ブランも、こうする他手は無いことは分かっていた。でも、それに踏み切る勇気が、クリストの人生を変えてまで助ける勇気は無かった。

 二人の間に重い空気が流れる。そんな中、遠くからガラスが割れたような音が僅かに聞こえてきた。

 

「なんだ……?」

「何か、割れた……?」

 

 深夜、職員も皆寝静まったような時間帯に何かが割れるのは不自然だ。そう思った直後、悲鳴が聞こえてきた。

 

「……何かあったな!」

「なんなの、こんな時に!」

 

 二人は部屋を出て悲鳴のする方へ向かった。その方向は、ある部屋と同じ方向だった。

 

「クリストの居る部屋……からか?」

「だとしたらヤバいんじゃない!?」

 

 二人は更に足を早めた。途中、悲鳴は途絶えたが、構わず二人はクリストの居る部屋に走る。

 

「クリスト!!」

 

 そして、扉を開けた先にいたのは

 

「……やっぱり、来てくれたね。ホワイトハート」

 

 軍服のような服を身にまとい、左手には血に塗れた黒い結晶、右手には杖を持った少女……。

 

「エクスト……?」

 

 トーシャが小さく呟いた。そこに立っていたのは、間違いなく、エクストその人だった。




実はこの作品の書きだめ結構あるんですよね。気分次第ではもう一回更新あるかもです。
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