かつ、オリキャラのみの回です
「クリスト……道を……間違えたな……」
そう言い残し、エクストは瓦礫に飲まれた。体が全く動かない。何かが体に刺さっているような痛みがある。
(死ぬんだな……私……当然…………か……)
エクストはゆっくりと目を閉じた。そしてこの目は二度と開かない。そう思っていた。
❅
「……!」
(……あれ?)
最初に見えたのは木の天井。そこから視線を巡らせると、窓や机も見える。ここが木造の建物の中だと理解するのに時間はかからなかった。エクストは部屋の隅にあるベッドの上に寝かされているようだ。
「……??????」
体を起こして周りをよく見る。近くには食器や、大きなリュックが見える。
「……夢?」
確かめるために軽く頬をつねってみた。じわりとした痛みを感じる。
「夢じゃない……じゃあなんだ? 死後の世界?」
そう思い、自分の身体を見てみる。ここで初めて気付いたが、どういう訳か下着姿だった。その上、戦闘で受けた傷が全く無い。どこを見ても傷跡一つ無い、綺麗な身体になっていた。
「…………やっぱ死後の世界か」
「違うよー」
「わぁ!?」
部屋の中にエクストの声が響き渡る。
「あーごめん。驚かせちゃったね……」
ドアの向こうから人が現れた。黒いコートを羽織り、フードを被っている。フードの下からは白髪が見え、右目を隠すくらいの長さがある。コートの下に着ているのは白い道着と黒い袴、更に胸当てをしている。
(また和服か。あいつが剣道ならこいつは弓道っぽいな……)
「身体、悪いとこない?」
「え? あー……強いて言えばお腹がすいてる……かな」
「だよね。二週間寝てたもんね。その時は栄養ドリンク無理矢理飲ませて繋いでたから……。今から作るから、少し待ってて」
(二週間……マジか)
そう言うと、リュックの中から食材を取り出し、その場で調理を始めた。
「あんた、名前は?」
「レイラだよ」
「レイラ、か。……なんで私を助けたんだ?」
「たまたまあなたを見つけてね。まだ脈があったし、放っておけなくて」
「そうか……」
「あなたは?」
「ん?」
「名前」
「あぁ、エクストだ」
「エクスト…………ね」
レイラはサンドイッチを作ると、エクストに差し出した。
「ごめんね。簡単なのしか作れなくて」
「いや、いいよ。いただきます」
「ありがとう。あ、あと、服ボロボロだったから、縫って直して洗っておいたから、食べたら着てね」
「……何から何まですまないね」
そう言って、畳まれた服を受け取った。
「……」
「……あの、あまりまじまじと見られると恥ずかしいんだけど」
「あ、ごめんね。つい……」
「食べてる人を見るのが好きなの?」
「ううん。……あなたには失礼かもしれないけど、なんか……妹に似てるなって」
「妹?」
「うん」
妹なんて、複製であるエクストにとっては無縁な存在だ。だからこそ、逆に興味が湧いた。本当の姉妹の話を聞きたくなった。
「その話、聞かせてもらえない?」
「聞きたいの?」
「あぁ」
「わかった」
レイラはイスに座ると、妹について話し始めた。家族の話から始まり、両親が早くに死んだこと、だから自分が妹にとっての母親代わりになろうとした事、妹が可愛い事、妹の好きな物や嫌いな物の事、妹が独り立ちした事等……色々は話を聞かされた。エクストはそれをサンドイッチを食べながら、食べ終わったら服を着ながら聞いていた。
「……で、そろそろ妹に会いたくなってきてね。旅商人しながら妹を探してるんだ」
「へぇ。でも、宛はあるのか?」
「勿論。今はルウィーの女神様の側近してるんだって。だからルウィーを目指してる」
「……!!!!???」
思わず、目を見開いて固まってしまった。
「ど、どうしたの?」
「い、いや……」
エクストはレイラの身体をまじまじと見た。
(白い髪、黒い瞳孔、和服……確かに共通点は多い。でもまさか……あいつの姉だなんて……)
「な、何何……」
「もしかして……さ、その妹の名前……クリストだったりしない?」
「……そうだけど、知り合い?」
「知り合いっちゃ知り合い。しかし、それなら…………こっちも話す事があるな」
「……?」
「……落ち着いて聞いて欲しい」
それからエクストは自分がどう生まれたか、クリストとどう繋がりがあるのか、そして何をしたかを洗いざらい話した。レイラは話に割り込むことなく、相槌を打って聞いていた。
「以上だ……」
「……」
「今、あいつがどういう状態かはわからない。生きてるのか死んでるのかも。ただ……衝動に任せたとは言え左眼を潰した事や、瀕死に追い込んだことは事実。恨んだって構わないよ」
レイラは表情を変えずに話を聞いていた。
「クリストは……助からないの?」
「……状態次第だけど、私なら治せるかも」
「本当?」
「うん」
「なら、お願い」
レイラはエクストの肩を掴みながら話した。
「即答……」
「当たり前でしょ! 早く! 行って!!」
そのまま前後に揺さぶり始めた。
「お、おぉ……わかった。わかったから離してぇ……」
「行けぇ!!!!」
「わかっ……うえぇ…………」
レイラから解放され、深呼吸して体調を落ち着かせた。
「そしたら行ってくる。少し待っててくれ」
エクストは走って部屋から出ていった。レイラはその背中を黙って見守った。
外は日が沈んでいて暗く、地面に積もった雪だけが明るく見えた。しんしんと雪が降る中、エクストは教会へ駆ける。
(二週間経ってるなら、何かしらの異変が起きててもおかしくない……間に合えよ……!)
真っ暗な中、雪原を抜け、ルウィーの街を駆け、遂に教会にたどり着いた。
「はぁ……着いた……。居場所は……何となくわかるな」
エクストは自分と同じ、アンチクリスタルの力を感じ取り、それを頼りにクリストのいる部屋を探した。
「上かぁ。仕方ない……第十出力、黄爪『イノセント』」
ダガーをクローに変えると、それを使って壁を登った。
(居た……)
窓の向こうに、ベッドで横になるクリストの姿が見えた。様々な機械に繋がれ、やっと命を繋いでいる状態なのがわかる。
(間に合ったか……。よし)
エクストはクローを使って窓を割ると、クリストの部屋に侵入した。そして武器を杖に変えつつ、クリストに歩み寄る。
「クリスト」
声をかけても返事無い。ただ、虚ろな目で天井を見ていた。
「……今楽にしてやるからな」
そう呟くと、エクストは左手をクリストの胸に添えた。そして自分へアンチクリスタルの力を集める。
「……!?!?」
「耐えろよ……!」
更に力を強める。徐々にだが、手の中に結晶が集まってくるのがわかる。
「が……あああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「頑張れ……もう少しだ……!」
クリストも身体を暴れさせながら痛みに耐えている。エクストはそれを押さえつつ、クリストの中のアンチクリスタルを取り出す。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「うぅ……オラッ!!」
エクストは手の中の結晶を握りしめ、思いっきり引っ張る。クリストの中にあったアンチクリスタルの力は全て結晶に還り、身体から出てきた。しかし、その時胸を突き破ったせいで、血が大量に流れてきている。
「やっぱこうなるよね……でも大丈夫」
エクストはクリストをおさえる時に捨てた杖を拾い、クリストの胸に回復魔法をかけた。みるみるうちに傷は塞がり、血も止まった。
「はっ、はっ……」
「お疲れ様、クリスト。ゆっくり呼吸するんだ」
エクストはそう呟くと、手に残ったアンチクリスタルを眺めた。
(ほぼあのままか……さぞ大変だったろうな。さて、クリストの事は大丈夫だと女神に伝えなきゃいけないが……)
廊下の方からドタドタと走る音が聞こえてくる。エクストは部屋の扉に視線を向けた。
「クリスト!!」
勢いよく扉を開けて入ってきたのは、ルウィーの守護女神、ホワイトハートことブランと、背後にはトーシャの姿もあった。
「……やっぱり、来てくれたね。ホワイトハート」