女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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前回の少し前、エクスト側のお話
かつ、オリキャラのみの回です


17.その闇は希望となるか

「クリスト……道を……間違えたな……」

 

 そう言い残し、エクストは瓦礫に飲まれた。体が全く動かない。何かが体に刺さっているような痛みがある。

 

(死ぬんだな……私……当然…………か……)

 

 エクストはゆっくりと目を閉じた。そしてこの目は二度と開かない。そう思っていた。

 

 

「……!」

(……あれ?)

 

 最初に見えたのは木の天井。そこから視線を巡らせると、窓や机も見える。ここが木造の建物の中だと理解するのに時間はかからなかった。エクストは部屋の隅にあるベッドの上に寝かされているようだ。

 

「……??????」

 

 体を起こして周りをよく見る。近くには食器や、大きなリュックが見える。

 

「……夢?」

 

 確かめるために軽く頬をつねってみた。じわりとした痛みを感じる。

 

「夢じゃない……じゃあなんだ? 死後の世界?」

 

 そう思い、自分の身体を見てみる。ここで初めて気付いたが、どういう訳か下着姿だった。その上、戦闘で受けた傷が全く無い。どこを見ても傷跡一つ無い、綺麗な身体になっていた。

 

「…………やっぱ死後の世界か」

「違うよー」

「わぁ!?」

 

 部屋の中にエクストの声が響き渡る。

 

「あーごめん。驚かせちゃったね……」

 

 ドアの向こうから人が現れた。黒いコートを羽織り、フードを被っている。フードの下からは白髪が見え、右目を隠すくらいの長さがある。コートの下に着ているのは白い道着と黒い袴、更に胸当てをしている。

 

(また和服か。あいつが剣道ならこいつは弓道っぽいな……)

「身体、悪いとこない?」

「え? あー……強いて言えばお腹がすいてる……かな」

「だよね。二週間寝てたもんね。その時は栄養ドリンク無理矢理飲ませて繋いでたから……。今から作るから、少し待ってて」

(二週間……マジか)

 

 そう言うと、リュックの中から食材を取り出し、その場で調理を始めた。

 

「あんた、名前は?」

「レイラだよ」

「レイラ、か。……なんで私を助けたんだ?」

「たまたまあなたを見つけてね。まだ脈があったし、放っておけなくて」

「そうか……」

「あなたは?」

「ん?」

「名前」

「あぁ、エクストだ」

「エクスト…………ね」

 

 レイラはサンドイッチを作ると、エクストに差し出した。

 

「ごめんね。簡単なのしか作れなくて」

「いや、いいよ。いただきます」

「ありがとう。あ、あと、服ボロボロだったから、縫って直して洗っておいたから、食べたら着てね」

「……何から何まですまないね」

 

 そう言って、畳まれた服を受け取った。

 

「……」

「……あの、あまりまじまじと見られると恥ずかしいんだけど」

「あ、ごめんね。つい……」

「食べてる人を見るのが好きなの?」

「ううん。……あなたには失礼かもしれないけど、なんか……妹に似てるなって」

「妹?」

「うん」

 

 妹なんて、複製であるエクストにとっては無縁な存在だ。だからこそ、逆に興味が湧いた。本当の姉妹の話を聞きたくなった。

 

「その話、聞かせてもらえない?」

「聞きたいの?」

「あぁ」

「わかった」

 

 レイラはイスに座ると、妹について話し始めた。家族の話から始まり、両親が早くに死んだこと、だから自分が妹にとっての母親代わりになろうとした事、妹が可愛い事、妹の好きな物や嫌いな物の事、妹が独り立ちした事等……色々は話を聞かされた。エクストはそれをサンドイッチを食べながら、食べ終わったら服を着ながら聞いていた。

 

「……で、そろそろ妹に会いたくなってきてね。旅商人しながら妹を探してるんだ」

「へぇ。でも、宛はあるのか?」

「勿論。今はルウィーの女神様の側近してるんだって。だからルウィーを目指してる」

「……!!!!???」

 

 思わず、目を見開いて固まってしまった。

 

「ど、どうしたの?」

「い、いや……」

 

 エクストはレイラの身体をまじまじと見た。

 

(白い髪、黒い瞳孔、和服……確かに共通点は多い。でもまさか……あいつの姉だなんて……)

「な、何何……」

「もしかして……さ、その妹の名前……クリストだったりしない?」

「……そうだけど、知り合い?」

「知り合いっちゃ知り合い。しかし、それなら…………こっちも話す事があるな」

「……?」

「……落ち着いて聞いて欲しい」

 

 それからエクストは自分がどう生まれたか、クリストとどう繋がりがあるのか、そして何をしたかを洗いざらい話した。レイラは話に割り込むことなく、相槌を打って聞いていた。

 

「以上だ……」

「……」

「今、あいつがどういう状態かはわからない。生きてるのか死んでるのかも。ただ……衝動に任せたとは言え左眼を潰した事や、瀕死に追い込んだことは事実。恨んだって構わないよ」

 

 レイラは表情を変えずに話を聞いていた。

 

「クリストは……助からないの?」

「……状態次第だけど、私なら治せるかも」

「本当?」

「うん」

「なら、お願い」

 

 レイラはエクストの肩を掴みながら話した。

 

「即答……」

「当たり前でしょ! 早く! 行って!!」

 

 そのまま前後に揺さぶり始めた。

 

「お、おぉ……わかった。わかったから離してぇ……」

「行けぇ!!!!」

「わかっ……うえぇ…………」

 

 レイラから解放され、深呼吸して体調を落ち着かせた。

 

「そしたら行ってくる。少し待っててくれ」

 

 エクストは走って部屋から出ていった。レイラはその背中を黙って見守った。

 外は日が沈んでいて暗く、地面に積もった雪だけが明るく見えた。しんしんと雪が降る中、エクストは教会へ駆ける。

 

(二週間経ってるなら、何かしらの異変が起きててもおかしくない……間に合えよ……!)

 

 真っ暗な中、雪原を抜け、ルウィーの街を駆け、遂に教会にたどり着いた。

 

「はぁ……着いた……。居場所は……何となくわかるな」

 

 エクストは自分と同じ、アンチクリスタルの力を感じ取り、それを頼りにクリストのいる部屋を探した。

 

「上かぁ。仕方ない……第十出力、黄爪『イノセント』」

 

 ダガーをクローに変えると、それを使って壁を登った。

 

(居た……)

 

 窓の向こうに、ベッドで横になるクリストの姿が見えた。様々な機械に繋がれ、やっと命を繋いでいる状態なのがわかる。

 

(間に合ったか……。よし)

 

 エクストはクローを使って窓を割ると、クリストの部屋に侵入した。そして武器を杖に変えつつ、クリストに歩み寄る。

 

「クリスト」

 

 声をかけても返事無い。ただ、虚ろな目で天井を見ていた。

 

「……今楽にしてやるからな」

 

 そう呟くと、エクストは左手をクリストの胸に添えた。そして自分へアンチクリスタルの力を集める。

 

「……!?!?」

「耐えろよ……!」

 

 更に力を強める。徐々にだが、手の中に結晶が集まってくるのがわかる。

 

「が……あああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「頑張れ……もう少しだ……!」

 

 クリストも身体を暴れさせながら痛みに耐えている。エクストはそれを押さえつつ、クリストの中のアンチクリスタルを取り出す。

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「うぅ……オラッ!!」

 

 エクストは手の中の結晶を握りしめ、思いっきり引っ張る。クリストの中にあったアンチクリスタルの力は全て結晶に還り、身体から出てきた。しかし、その時胸を突き破ったせいで、血が大量に流れてきている。

 

「やっぱこうなるよね……でも大丈夫」

 

 エクストはクリストをおさえる時に捨てた杖を拾い、クリストの胸に回復魔法をかけた。みるみるうちに傷は塞がり、血も止まった。

 

「はっ、はっ……」

「お疲れ様、クリスト。ゆっくり呼吸するんだ」

 

 エクストはそう呟くと、手に残ったアンチクリスタルを眺めた。

 

(ほぼあのままか……さぞ大変だったろうな。さて、クリストの事は大丈夫だと女神に伝えなきゃいけないが……)

 

 廊下の方からドタドタと走る音が聞こえてくる。エクストは部屋の扉に視線を向けた。

 

「クリスト!!」

 

 勢いよく扉を開けて入ってきたのは、ルウィーの守護女神、ホワイトハートことブランと、背後にはトーシャの姿もあった。

 

「……やっぱり、来てくれたね。ホワイトハート」

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