「なんでお前がここに居る……!」
ブランはハンマーを握りながらエクストを睨んだ。
「ちょっと待って。敵意は無いから。その鈍器しまってよ」
「じゃあその手のやつはなんだよ」
「回復魔法が使える方の杖」
「反対は?」
「クリストの中にあったアンチクリスタルだよ」
「本当かよ……」
「じゃあ確かめてみたら?」
エクストは杖をダガーに戻し、腰の鞘に収めると、壁にもたれて立った。ブランは警戒しつつ、ベッドの上のクリストに近付いた。
「クリスト……」
「はぁ……う……ブラン、様?」
「……!」
クリストはハッキリとブランの名前を呼んだ。その声を聞き、感極まったブランはクリストを抱きしめた。
「クリスト……よかった……」
「……ブラン様」
エクストはその様子を見て口角を上げた。
「ね? 私はただアイツを助けただけだよ」
「……本当だなんて」
「なんか、信用されてない……」
「今までがアレだったから……」
「……。とりあえず、これは処分しておくよ」
エクストは武器を魔導書に変え、開くと、その中にロストアンチクリスタルを置き、勢いよく閉じた。
「……エクストはこれからどうするの?」
「まだわからない」
「そっか……」
「ま、いつか運が良ければ会えるんじゃないかな? そしたらその時は……ご飯でも奢ってよ」
そう言うと、窓の方に歩いていった。
「じゃ……さよなら、トーシャ」
「ちょ……待って!」
そして窓から飛び降りる。トーシャは慌てて窓まで走り、下を見たが、そこにエクストの姿は無かった。
「……」
トーシャはブランとクリストを見た。こちらの出来事には気付いて居ないようだ。
「……お礼、言えなかったな…………」
そう呟いて、空を見る。東の空が微かに明るくなっていた。
❅
「助けてきたよ」
「……ありがとう」
エクストはレイラに報告に戻っていた。窓からは陽の光が射し込んでくる。
「私の役目は終わりだね。だから……」
エクストはダガーを抜くと、柄をレイラに向けて差し出した。
「?」
「あんたの妹を苦しめたんだ。憎いだろ? これ使って私を殺してくれ」
「嫌だ」
「……はぁ?」
「だって、あなたはクリストを助けたんでしょ? じゃあもう恩人だよ。私は恩人を殺すことはできない。それに、せっかく助かった命だよ? 簡単に捨てようとしないで」
「……私がまた事件を起こすかもしれないぞ? 良いのか?」
「起こす訳ないじゃん」
「なんでそう言いきれる」
「悪人なら人助けはしないから」
「……」
エクストは小さく笑った。
「なんというか……アイツも同じ事良いそうだな」
「姉妹だからね」
レイラは誇らしげに胸を張った。
「わかったよ。あんたに助けられた命だ。無駄にしたりはしない。約束するよ」
「へへっ。ありがとう」
「……じゃあ、私はもう行くよ。介抱から何から、ありがとうね」
「こちらこそ。クリストのこと、ありがとう」
二人は小屋を出ると、レイラはルウィーの方へ、エクストとはレイラとは逆の方へ歩き出した。
「……」
エクストは雪原の真ん中で足を止めた。朝の寒冷地に吹く風を浴びながら、結んでいた髪を解く。風に揺られ、綺麗な白髪がふわりと広がる。それを手で束ねると、ダガーを持ち、一気に切った。切った髪が雪原に溶けていく。
「これで、少しはあいつと違う存在になれたよな」
ダガーを収めると、再び歩き出した。まっさらな雪原に足跡を付けながら、宛もなく歩いていく。
雪国の産まれだからわかるんです。めっちゃ天気いい日の冬の外ってなんか気持ちいいんですよ。寒さすら心地いいみたいな