「クリストはあなたと過ごしたい……そう言ってたわ」
「そうですか……」
ブランは教会に訪れたレイラに、昨晩クリストから聞いた事を話した。レイラはどこか嬉しそうな目をしている。
「クリストには私から話しておくわ。主従関係を切る事も含めてね」
「それは……大丈夫なのですか? 女神様の職務に関しても……」
「大丈夫よ。元は側近なんて居なかった訳だし」
「あ、そうなんですか」
「えぇ、そこの心配は不要よ 」
突然、部屋の扉がノックされた。
「誰かしら……。どうぞ」
「失礼します。ブラン様、この書類……!?」
扉を開けて現れたのはクリストだった。クリストはレイラを見ると、明らかに驚いたような様子を見せた。
「…………は、どこにしまっておけば……」
「あぁ、良いから。それは私がやるわ」
ブランは席を立つと、クリストの手から書類を取り上げた。
「私が席を外す間、お客さんの接待よろしくね」
「えぁ、ブラン様!?」
ブランは書類を持って部屋を出ていった。クリストはゆっくりと、視線をレイラに向けた。
「……お姉ちゃん?」
「あ、覚えててくれた?」
「……忘れないよぉ」
クリストはレイラに駆け寄り、抱きついた。
「暖かい……」
「ふふ、よしよし……」
レイラは優しくクリストの頭を撫でた。久しぶりに撫でた妹の髪は変わらず柔らかかった。
「えっと……そろそろ良いかしら」
部屋の入り口からブランが声をかけた。
「はっ……だ、大丈夫です!!」
クリストはサッとブランの方を向いて立った。
「あぁ、座ってていいわよ。二人に話しがあるから」
ブランは向かいに座り、レイラに紙を渡した。
「これは……」
「良さげな物件を探しておいたわ。あなた達にプレゼント」
「……え!?」
「あら、定住しないの?」
「え、いや……しますします。クリストを見つけたらそこで物件探すつもりだったので……。いや、そこじゃないんです! プレゼントってなんですか!?」
「クリストの退職祝い的な……そういうやつよ」
「は、はぁ……」
「……退職祝い?」
クリストの表情が固まる。
「それって……」
「あなたも、家族が来たらそっちと暮らすって昨日言ったじゃない」
「言いました……けど」
「そうするなら、側近としてはやっていけなくなるでしょ?」
「……」
「……あなたをずっと傍に置く、その約束を破ることになるのはわかってるわ。でも、あの約束のせいであなたと家族を引き離したくはないの」
「……ブラン様」
クリストの事を思っての発言な事はわかっている。だが、ブラン達と離れたくない気持ちもある。
「……最終的に決めるのはあなたよ。どうしたい?」
「私は……」
少しの沈黙の後、クリストは顔を上げてブランの目を見た。
「私は……お姉ちゃんと暮らしたい」
「わかったわ」
ブランはどこか安心したような表情を見せた。
「そしたら……物件についてはここの職員に案内してもらうから、あなたはそれに従って」
「わかりました」
「クリストの私物もまとめてもらうから……」
「え!?」
「大丈夫よ、ちゃんと女性職員に任せるわ」
「あぁ……良かった」
「その間、最後の挨拶してきたら?」
「……わかりました。そうします」
それからレイラは物件を見に教会を離れ、クリストはお別れの挨拶をしにロムとラムの元へ向かった。
「やっぱり行っちゃうんだ……」
「さよならなんだ……(うるうる)」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ! きっとまた遊びに来てくれるでしょ?」
(遊びに……)
「……えぇ、必ず」
「だったら寂しくないよ! ね、ロムちゃん!」
「うん……また遊べるなら寂しくないよ」
二人はクリストに笑顔を見せた。言葉は返せなかったが、クリストはそれに笑顔で返した。
次にフィナンシェの元へ向かった。
「そうですか……。それがクリストさんの選択なら、私は引き止めたりしませんよ」
「……ありがとうございます」
「また余裕出来たらお茶でもしましょうね」
「はい……!」
クリストはフィナンシェに挨拶をすると、ブランを探して教会の中を歩いた。ブランはエントランスに立っていた。
「挨拶は済んだ?」
「えぇ」
「こっちも荷物がまとまったわ。ちょっと待っててね。ロム達を呼んでくるから」
「……待ってください」
「……ん?」
「その……最後に二人で少しお話ししませんか?」
「……良いわよ」
二人は一緒にブランの部屋に向かった。
「……何を話したいの?」
「最後に……一つだけ我儘良いですか?」
「……内容次第ね。言ってみなさい?」
「主従関係は切れますが……その、これからは……友達として接してくれますか?」
「……」
ブランは口を手で隠しながら小さく笑った。
「なんだ、そんな事ね。全然構わないわよ」
「……! ありがとうございます!!」
クリストは深く頭を下げた。
「あ、あと……」
「何?」
「このケープ、持っていって良いですか?」
「あー……普段使いしないなら」
「そこは大丈夫です。思い出の物として保管しておきたくて……」
「それなら構わないわ」
「ふふっ、ありがとうございます」
二人は再びエントランスに向かった。途中ロムとラム、フィナンシェにも声をかけ、エントランスに集まる。
「では……今までありがとうございました」
「またね、側近さん!」
「絶対遊びに来てね……!」
「いつでも歓迎しますからね」
「クリスト、次会うときは……」
「えぇ。次会うときは友達として……!」
クリストは四人に手を振りながら教会を出た。こうして、クリストの側近としての生活は幕を下ろすことになった。
「……で、なんで君も居るの?」
「行く宛てが無くってね。居候させてよ」
新居の中に居るのはクリストとレイラ、それとトーシャだ。
「お姉ちゃん……良いの?」
「良いよ。クリストの友達でしょ?」
「友達……?」
「誰が延命に尽力したと思ってるの!?」
「ん……ありがとうございますっ」
「はぁ……安心して。家事とかは手伝うからさ」
ルウィーの街にある一件の家、そこで三人の新たな暮らしが始まろうとしていた。
本作を最終話まで読んで頂き、本当にありがとうございました。前作と違ってちゃんとしたストーリーがあるやつでしたが、こっちの方が書きたいように書けた気がします。
さて、こんな終わり方したものですから、クリスト達のお話は今作で最後になります。これ以上は二次創作である必要がありませんからね。残念です……めちゃくちゃ愛着湧いてるんですよ、この四人。何かしらの形でまだ書きたいんですよね……。公開しないでSS書いて満たそうかなってのも考えてます。一番の需要は俺にあるので。
で、最終回とは言いましたが、後日談のお話を二、三話くらい上げるつもりでいます。それ上がったら本当に完結ですね。くぅ疲できるわけです。
ですので、あと数話だけ御付き合いください。よろしくお願いします。