翌日、ブランは他国の女神達に連絡を入れた。
「……という事よ」
『まぁ……クリストちゃんが……』
『そこじゃないでしょ。いや、それもだけど……アンチクリスタルの力を使うって本当?』
『そうだよ。ブランが疲れてたからそう感じたんじゃないの?』
「いや……間違いないわ。あなた達もやられてみればわかるわ」
『そんな野蛮な……』
四人はそれから対策を話し合った。結果、やはり拠点を叩くことが一番という結論に至った。
『とにかく、元凶を叩く必要があるわね』
『私達も協力しますわ。そんな危険な存在、放っておけませんわ』
『じゃあみんな頑張ってね〜。わたしは来るべき決戦に備えて支度するから〜』
「おい、何様のつもりだ」
『果報は寝て待て、って言うでしょ?』
「サボる気満々じゃねーか!!」
何はともあれ、ブランは女神達の協力を得ることができた。
「はぁ……私の方も頑張らなきゃ……」
❅
「はい、ご飯だよー」
「……」
トーシャは鉄格子の下から食事を入れた。
「大丈夫、毒も薬も入ってないよ〜」
「……あれはどうなったの?」
「複製体の事? あれならルウィーの教会で挨拶を済ませてきたとこらしいよ」
「ブラン様達に何もしてないな?」
「それはわからないなぁ」
「……」
クリストはトーシャを睨んだ。
「ただいま〜」
「お、ウワサをすればなんとやら」
牢の前にもう一人のクリストが現れた。
「お前……」
「やぁクリスト。元気?」
「元気に見える?」
「全然」
「クリストって?」
「こいつの名前。女神もそう呼んでた」
「ほう」
もう一人の方はやたら楽しそうにニコニコしている。
「ところでさぁ、トーシャ」
「何?」
「私も名前欲しい」
「いきなりだね。でも確かに、区別できた方が良いか……うーん…………」
「せっかく瓜二つなんだからって似た名前がいいな」
「……じゃあ、最近読んだ本に出てきた名前から……エクストなんてどう?」
「エクスト……悪くない!」
「じゃ決定〜」
(えらくあっさり決まったな……)
楽しそうに会話をする二人をクリストは黙って眺めていた。
「あれ、ご飯食べないの?」
「食べる空気じゃないでしょ」
「あー悪いね。ほら、行くよエクスト」
「はーい」
二人は牢の前から立ち去った。クリストは静かになった空間で、少し冷めた食事を口に運んだ。
❅
牢の生活は快適だ。快適過ぎて怖いくらいには快適。今も牢に備え付けのシャワーを浴びている。
「はぁ……今頃ブラン様達何してるかな……」
側近として、傍に居られないのは不甲斐なさを感じる。
(早く出る方法を探さないと……でも食器は使い捨てだから殺傷能力無いし、魔法使えないんじゃ壁も破れない。うーん……)
ふと、鏡を見ると、背後に何かいるのに気付いた。白髪で片目が紫の女の子。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
「うるさい! 急に叫ばないで!」
「いやいやいや! 何で君がここに居るのさ!」
「背中流してあげようと思って。ほら、私はあなたであなたは私だし」
「ちょっと意味わかんない!」
クリストはエクストの方を見る。どこを見ても自分と同じ存在というのはやはり慣れない。双子と思い込めば良いかと思ったが、情が移るのは嫌なのでやめている。
「なんの用?」
「話したいことがあってさ」
「何?」
「ちょっと手合わせしてみない?」
「は?」
エクストはニヤッと笑うと、話を続けた。
「あなたは普通の人間だから、アンチクリスタルから受ける影響は女神より小さい。なら戦ったって問題ないでしょ?」
「……やるメリットはあるの?」
「勿論。あなたが勝ったらここから出してあげる
「……!」
「女神に対しての脅威を排除して、女神の元に帰れる。それって素晴らしい事だと思わない?」
「……負けたら?」
「負けたらまたしばらくここに居てもらう事になる」
エクストはクリストの肩に腕を置いた。そして耳元で囁くようにして聞いた。
「どうかな……?」
シャワーの音だけが響く。今のクリストに迷いはなかった。何を企んでいるかわからないが、勝てばいいのだから。
「わかった。その話乗った」
「うんうん。じゃあ明日やろうか〜」
エクストの手がクリストの背中を撫でる。何かヌルヌルした液体が付くのを感じる。
「うわぁ! 何塗ってんの!」
「ボディーソープ」
「勝手に塗るな!」
「背中流してあげようと思ってって言ったじゃん……」
「だからっていきなりやるか!?」
「まあまあ」
エクストはクリストにバックハグをした。
「自分に体流して貰うなんて滅多に無いことだよ? 貴重な経験だよ?」
「遠慮しとく! てか離れて!」
「なんでぇ」
「いくらなんでも……裸でくっつくのは……」
「………………ほぉーー」
エクストは楽しそうな声でクリストの体を撫でる。
「ウブだねぇクリストちゃんは♪」
「やめろって!!」
「遠慮しないで。私とイイこと……しよ?」
「ダメダメダメダメ!! それは絶対ダメ!!」
「あっはっはっはー! 何マジな反応してんの!? チョーウケる!!」
「この……クソガキィ!!」
「自分の幼女体型認めたか」
「黙れェ!!!!」
二人の喧嘩(?)はこの後しばらく続いたとか……。
❅
「あー楽しかった」
「エクスト、何で裸で歩いてんの? しかも濡れてるし……お風呂はさっき入ってたよね?」
「約束してきた」
「はいぃ???」
「とにかく、明日訓練室使うけどいいよね?」
「構わないけど、何するの?」
「私の力を……引き出すの」
なおエクストはクリストをからかっただけで、恋愛感情的なやつは抱いていません。