部屋の壁を破ってホワイトハートが教会の外に落ちる。
「くっ……そ」
「なんだぁ。この程度なの?」
次いでエクストも飛び降りる。上手く動けないホワイトハートにゆっくりと歩み寄る。
「やっぱ凄いね。アンチクリスタルの力があれば女神さえもコロっと捻れちゃう」
「こいつ……強化まで身につけやがって」
「あの娘のおかげだね〜」
ケラケラと笑う。
「でも……まだだ」
「そういうとこも一緒だね。あの娘の無謀な勇気はあなたに似たのかな?」
「無謀……?」
「無謀じゃん。その不屈のせいであの娘は……」
「お前、クリストに何をした」
「はい?」
「何したって聞いてんだよ!!」
地面に思いっきり戦斧を叩きつける。衝撃で粉雪が舞う。
「知りたい? なら教えたげるよ」
エクストは左眼を瞑ると、瞼の上から、左眼を軽くつつく
「こう……グサッとね♪」
「なっ……」
「大丈夫大丈夫。それだけだよ。命に別状は無いよー」
エクストは笑いながらホワイトハートを見下す。
「さ、どうする? 可愛い可愛い側近さんを痛ぶったやつを許すわけないよね〜」
「……その手には乗らねーぞ」
「おや、そこは冷静か。流石女神」
「ところでお前、随分ダラダラと喋っていたが、良かったのか?」
「あ」
会話中に失った力を取り戻し、立ち上がって戦斧を構える。
「狡いなぁ……卑怯じゃん」
「お前から話始めたんじゃ……」
「知りませーん」
「……お前中々いい性格してるな」
「えへっ」
「褒めてねーから! クソっ! 何だこの茶番は!!」
ホワイトハートは苛立ちをぶつけるように、再び戦斧を地面に叩きつける。
「まぁいっか。どうせまた力を削ぐし。そしたら今度こそ殺してあげるよ」
「やってみろよ。私はそう簡単にはくたばらねーぞ」
「ほぉー。なら試してみる?」
エクストはダガーのスロットのボタンを押した。ピンク色のボタンだ。
「さっき完璧にしたんだ。メモリーカセット第七出力!」
ピンク色のラインが入った杖を手に取ると、氷の剣を形成した。
「まさか、アイスカリバーか!?」
「知らないけど、あなたの妹の力だよ。さぁ、耐えれるかな?」
防御の構えをとって受けようとする。が、氷の剣が戦斧に届く前に、横から飛んできた槍によって砕かれてしまった。
「なっ!?」
「あら、意外と脆いんですわね。所詮は紛い物ですものね」
「あなたか……。リーンボックスの守護女神、グリーンハート!」
エクストの視線の先には、宙に浮くグリーンハートの姿があった。既に槍は生成されている。
「油断してると死にますわよ。いくらあなたが耐久力に自信があるとは言え、相手は私達の弱点そのものなんですから」
「わかってる。とにかく……助かった」
グリーンハートはホワイトハートの隣に着地した。
「……ま、良いよ。増えてもやる事は同じだから」
「来ますわよ!」
「さぁ、この弾幕は凌げるかな?」
杖から数発の氷柱を放つ。放たれた氷柱は空中で分裂を繰り返し、密度の濃い弾幕を形成した。
「お姉ちゃん達! 動かないで!」
「え?」
直後、二人の周囲に分厚い氷の板が形成され、氷柱を防いだ。
「ロムとラムか……」
「ちっ……邪魔をして……」
教会の窓から二人の女神が飛び降りる。ホワイトシスターロムとホワイトシスターラムだ。
「さっきはよくもやってくれたわね!」
「絶対に許さないから……!」
「ちぇ……もっと痛ぶっておくべきだったなぁ」
エクストは小さくため息をついた。
「まぁ、四人になった事でやる事は……」
「まだそんな事言える!?」
「あん?」
声のした方を向くと同時に、エクストの目前にビームと弾丸が落ちる。
「おぉ!?」
氷の壁を作って攻撃を防ぐ。
「来ましたわ」
グリーンハート達の傍に着地したのは……
「すみません、遅くなりました!」
「タイミング悪いわね……まだ途中だったのに」
プラネテューヌの女神候補生、ネプギアことパープルシスターと、ラステイションの女神候補生、ユニことブラックシスター。彼女達の背には、ぐったりした様子のネプテューヌとノワールの姿もある。
「どうした……」
「い、色々あったんです……。置いてくるつもりだったんですけど、どうしても行くって……」
「そうそう……やっぱり主人公が居なきゃじゃん?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ……早くアレ出しなさいよ……」
「あー……はいよぉ……」
ネプテューヌがパーカーのポケットの中から取り出したのは、強い光を放つ青い結晶。
「これは……」
「圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)だよ。ハイパーシェアクリスタルに更にシェアを注ぎ込んだ物……これならアンチクリスタルの力に打ち消されずに戦えるよ……」
「まずは私とネプテューヌのシェアを注ぎ込んでみたわ……でもこれでも……充分かも……」
「なるほど。だからこんなにぐったりしてるのか……」
「ちょっと! 私を放置してお喋りかい!?」
エクストが会話に割って入る。ホワイトハートは圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)を受け取り、エクストの方を向いた。
「今から構ってやるよ。こいつでな!」
ホワイトハートは圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)を掲げる。
「ネクストプログラm……」
「ネクストプログラム、起動!」
ホワイトハートの手から圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)が離れる。クリスタルを掲げて声高らかに宣言したのは、グリーンハートだった。クリスタルから眩い光が溢れると、中からネクストグリーンが現れる。
「ベールテメェ! ここは私がやるとこだろ!!」
「だって、せっかくルウィーまで来たのに何もせずに帰るなんて……あまりにもつまらないでしょう?」
「うぇ……あれがネクストフォームか」
ネクストグリーンを前にエクストも身構える。流石に、彼女にとってもネクストフォームは脅威になるようだ。
「いつものネクストフォームとは桁が違いますわよ。さぁ、準備はよろしくて?」
「勝ち目の無い戦いはしたくないが……やる事まだあるからなぁ」
先に仕掛けたのはエクストだった。武器を戦斧に変え、ネクストグリーンに攻めかかる。しかし、槍であっさりと防がせてしまう。
「ちっ……」
距離を取ると、今度はネクストグリーンが攻めに転じた。
「はっ!」
刺突攻撃を仕掛けてくるのを、戦斧を盾にして防ごうとする。
「甘いですわ!」
バリン、と音を立てて、ネクストグリーンの槍がエクストの戦斧を貫く。目前まで迫った槍を
「危ねっ!!」
ギリギリで避ける。どっと冷や汗が吹き出てくる。
「嘘じゃん……これそこそこ硬いんだが?」
「それだけこちらが有利という事ですわ」
「確かに……強い光は影を消す……か」
「さて、そろそろ終わりにしましょうか」
戦斧をバラバラに砕くと、槍を振り回してエクストに攻撃を叩き込んだ。
「あぐっ!?」
「はぁっ!!」
全力の刺突。エクストの体は大きく後ろに吹っ飛んだ。
「ぐぎ……き、効いた……」
武装も全て砕けており、丸腰の状態になってしまった。
「スキルを使わずにここまでやれるなんて……すごい物を作りましたわね」
「はぁ……っ……どうやら……私は守護女神という存在を……甘く見すぎていたかもしれない……」
ヨロヨロと立ち上がりながら、エクストが話す。
「まだ足掻くか、アイツ……。ベール、油断するなよ」
「勿論ですわ」
「いーや。もうあなた達を倒せる力は残ってない……だから今日はもう帰るよ」
「逃がしませんわよ!」
「捕まるもんか!」
「全員で行くぞ! 絶対に逃がすな!」
「はい!」
「わかった!」
ホワイトハートの掛け声に合わせて、ネプテューヌとノワールを除く六人の女神がエクストに迫る。
「…………なんてね。バーカ」
エクストはダガーを地面に刺すと、残った力を集中させる。すると、周りの空間に丸い何かが現れる。そこから真っ黒な鎖が現れ、女神達を包囲した。
「何これ……」
「鎖?」
「まぁ見てなって。『ボイドチェイン』!!」
漆黒の鎖は女神八人の胸を貫いた。直後、変身していた六人の変身が解けた。
「うわっ!」
「な、何これ……」
「この感覚……シェアを無力化した……?」
「上手くいったね。これでしばらくあなた達はシェアの力を使えない筈だ」
「あなた……やられたフリをして私達の油断を誘うなんて……」
「いや、やられていたのは事実だよ。実際、あなたの攻撃はかなり効いてた。だから引き上げるんだよ」
「こいつ……」
ブランは武器を形成しようとするが、それすらも出来ない。
「いやぁ、女神も無力化出来たし、あなた達の武器の情報も、鎖越しに手に入った。まず私の勝ちかな?」
エクストはメモリーカセットを見せながら話した。
「次会う時までに守護女神について理解を深めておくよ。それじゃあみなさん、さようなら……」
指を弾くと、エクストは瞬間移動でその場を後にした。女神達の間を、刺すような冷たさの風が通り抜けていく。
「あれ……私何もせずにただ力封じられただけ?」
「だから待ってる方がいいって言ったのよ……!」
❅
深夜のルウィーの教会。職員もほとんど休んでおり、不気味なくらい静かになっている。そんな教会にある図書室に、人影が一つ。
「うはー……深夜の教会怖すぎ……。絶対お化け出るじゃん」
懐中電灯片手に、エクストが侵入していた。懐中電灯の明かりを頼りに、真っ暗な図書室を探索する。
「さて、女神に関する文献は……。お、あれかな?」
近くにあった脚立を使い、本を手に取る。そして懐中電灯の明かりを使ってその場で読んだ。
「……ふむふむ」
また別の本を手に取り、読む。
「…………なるほど」
役に立ちそうな本は片っ端から読む。
「………………なんと」
そうして本を読み漁っていると、急に図書室の明かりがついた。
「うわっ!?」
いきなり明るくなった事に驚き、脚立から落ちてしまう。
「いったたたた……お尻打った……」
「あっちから音がしたぞ!」
「げ、なんでバレた?」
立ち上がり、辺りを見回す。すると、天井の方にあるものを見つけた。
「監視カメラ……クソっ、何であるんだよ」
「居たぞ!」
武装した職員がエクストの周りに集まる。
「勉強しに来ただけなんだけどなぁ」
「抵抗するなよ。大人しくお縄にかかるんだな!」
「……ヤダ!」
指を弾き、瞬間移動で包囲から逃れる。
「なっ!? どこに行った!?」
「じゃーね職員のみなさん! おやすみー!」
「入り口の方だ! 追え!!」
職員達が図書室から出る頃には、既にエクストの姿は無かった。
「クソっ、あいつどこに行きやがった!」
「捕まえてボッコボコにしないと気が済まん!」
「俺たちのブラン様にあんなことをして……タダで済むと思うなよ……!」
騒ぐ職員達に、近付く小さな人影が一つ。
「うるせぇ!! テメェら今何時だと思ってんだ!!!!」
静かな教会の中に、ブランの怒号が響いた。
❅
「トーシャ、明日からちょっと旅してくる」
「旅って……いきなりだね。行先は?」
「別次元」
「……もう寝な?」
「本気だよ?」
「手段は? アンチクリスタルの力じゃ無理だからね」
「知ってる。だから次元を跨ぐためにまずプラネテューヌに行くよ」
「プラネテューヌに?」
「そう。……イストワールの力を使って、次元を渡る!」
ボイドチェイン……エクストが使うスキルの一つ。女神のシェアエネルギーを、鎖状にしたアンチクリスタルのエネルギーで中和することで、一時的に女神の全能力を封じる。封じることができる期間は長くて三日。