女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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4.封印の鎖

 部屋の壁を破ってホワイトハートが教会の外に落ちる。

 

「くっ……そ」

「なんだぁ。この程度なの?」

 

 次いでエクストも飛び降りる。上手く動けないホワイトハートにゆっくりと歩み寄る。

 

「やっぱ凄いね。アンチクリスタルの力があれば女神さえもコロっと捻れちゃう」

「こいつ……強化まで身につけやがって」

「あの娘のおかげだね〜」

 

 ケラケラと笑う。

 

「でも……まだだ」

「そういうとこも一緒だね。あの娘の無謀な勇気はあなたに似たのかな?」

「無謀……?」

「無謀じゃん。その不屈のせいであの娘は……」

「お前、クリストに何をした」

「はい?」

「何したって聞いてんだよ!!」

 

 地面に思いっきり戦斧を叩きつける。衝撃で粉雪が舞う。

 

「知りたい? なら教えたげるよ」

 

 エクストは左眼を瞑ると、瞼の上から、左眼を軽くつつく

 

「こう……グサッとね♪」

「なっ……」

「大丈夫大丈夫。それだけだよ。命に別状は無いよー」

 

 エクストは笑いながらホワイトハートを見下す。

 

「さ、どうする? 可愛い可愛い側近さんを痛ぶったやつを許すわけないよね〜」

「……その手には乗らねーぞ」

「おや、そこは冷静か。流石女神」

「ところでお前、随分ダラダラと喋っていたが、良かったのか?」

「あ」

 

 会話中に失った力を取り戻し、立ち上がって戦斧を構える。

 

「狡いなぁ……卑怯じゃん」

「お前から話始めたんじゃ……」

「知りませーん」

「……お前中々いい性格してるな」

「えへっ」

「褒めてねーから! クソっ! 何だこの茶番は!!」

 

 ホワイトハートは苛立ちをぶつけるように、再び戦斧を地面に叩きつける。

 

「まぁいっか。どうせまた力を削ぐし。そしたら今度こそ殺してあげるよ」

「やってみろよ。私はそう簡単にはくたばらねーぞ」

「ほぉー。なら試してみる?」

 

 エクストはダガーのスロットのボタンを押した。ピンク色のボタンだ。

 

「さっき完璧にしたんだ。メモリーカセット第七出力!」

 

 ピンク色のラインが入った杖を手に取ると、氷の剣を形成した。

 

「まさか、アイスカリバーか!?」

「知らないけど、あなたの妹の力だよ。さぁ、耐えれるかな?」

 

 防御の構えをとって受けようとする。が、氷の剣が戦斧に届く前に、横から飛んできた槍によって砕かれてしまった。

 

「なっ!?」

「あら、意外と脆いんですわね。所詮は紛い物ですものね」

「あなたか……。リーンボックスの守護女神、グリーンハート!」

 

 エクストの視線の先には、宙に浮くグリーンハートの姿があった。既に槍は生成されている。

 

「油断してると死にますわよ。いくらあなたが耐久力に自信があるとは言え、相手は私達の弱点そのものなんですから」

「わかってる。とにかく……助かった」

 

 グリーンハートはホワイトハートの隣に着地した。

 

「……ま、良いよ。増えてもやる事は同じだから」

「来ますわよ!」

「さぁ、この弾幕は凌げるかな?」

 

 杖から数発の氷柱を放つ。放たれた氷柱は空中で分裂を繰り返し、密度の濃い弾幕を形成した。

 

「お姉ちゃん達! 動かないで!」

「え?」

 

 直後、二人の周囲に分厚い氷の板が形成され、氷柱を防いだ。

 

「ロムとラムか……」

「ちっ……邪魔をして……」

 

 教会の窓から二人の女神が飛び降りる。ホワイトシスターロムとホワイトシスターラムだ。

 

「さっきはよくもやってくれたわね!」

「絶対に許さないから……!」

「ちぇ……もっと痛ぶっておくべきだったなぁ」

 

 エクストは小さくため息をついた。

 

「まぁ、四人になった事でやる事は……」

「まだそんな事言える!?」

「あん?」

 

 声のした方を向くと同時に、エクストの目前にビームと弾丸が落ちる。

 

「おぉ!?」

 

 氷の壁を作って攻撃を防ぐ。

 

「来ましたわ」

 

 グリーンハート達の傍に着地したのは……

 

「すみません、遅くなりました!」

「タイミング悪いわね……まだ途中だったのに」

 

 プラネテューヌの女神候補生、ネプギアことパープルシスターと、ラステイションの女神候補生、ユニことブラックシスター。彼女達の背には、ぐったりした様子のネプテューヌとノワールの姿もある。

 

「どうした……」

「い、色々あったんです……。置いてくるつもりだったんですけど、どうしても行くって……」

「そうそう……やっぱり主人公が居なきゃじゃん?」

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ……早くアレ出しなさいよ……」

「あー……はいよぉ……」

 

 ネプテューヌがパーカーのポケットの中から取り出したのは、強い光を放つ青い結晶。

 

「これは……」

「圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)だよ。ハイパーシェアクリスタルに更にシェアを注ぎ込んだ物……これならアンチクリスタルの力に打ち消されずに戦えるよ……」

「まずは私とネプテューヌのシェアを注ぎ込んでみたわ……でもこれでも……充分かも……」

「なるほど。だからこんなにぐったりしてるのか……」

「ちょっと! 私を放置してお喋りかい!?」

 

 エクストが会話に割って入る。ホワイトハートは圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)を受け取り、エクストの方を向いた。

 

「今から構ってやるよ。こいつでな!」

 

 ホワイトハートは圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)を掲げる。

 

「ネクストプログラm……」

「ネクストプログラム、起動!」

 

 ホワイトハートの手から圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)が離れる。クリスタルを掲げて声高らかに宣言したのは、グリーンハートだった。クリスタルから眩い光が溢れると、中からネクストグリーンが現れる。

 

「ベールテメェ! ここは私がやるとこだろ!!」

「だって、せっかくルウィーまで来たのに何もせずに帰るなんて……あまりにもつまらないでしょう?」

「うぇ……あれがネクストフォームか」

 

 ネクストグリーンを前にエクストも身構える。流石に、彼女にとってもネクストフォームは脅威になるようだ。

 

「いつものネクストフォームとは桁が違いますわよ。さぁ、準備はよろしくて?」

「勝ち目の無い戦いはしたくないが……やる事まだあるからなぁ」

 

 先に仕掛けたのはエクストだった。武器を戦斧に変え、ネクストグリーンに攻めかかる。しかし、槍であっさりと防がせてしまう。

 

「ちっ……」

 

 距離を取ると、今度はネクストグリーンが攻めに転じた。

 

「はっ!」

 

 刺突攻撃を仕掛けてくるのを、戦斧を盾にして防ごうとする。

 

「甘いですわ!」

 

 バリン、と音を立てて、ネクストグリーンの槍がエクストの戦斧を貫く。目前まで迫った槍を

 

「危ねっ!!」

 

 ギリギリで避ける。どっと冷や汗が吹き出てくる。

 

「嘘じゃん……これそこそこ硬いんだが?」

「それだけこちらが有利という事ですわ」

「確かに……強い光は影を消す……か」

「さて、そろそろ終わりにしましょうか」

 

 戦斧をバラバラに砕くと、槍を振り回してエクストに攻撃を叩き込んだ。

 

「あぐっ!?」

「はぁっ!!」

 

 全力の刺突。エクストの体は大きく後ろに吹っ飛んだ。

 

「ぐぎ……き、効いた……」

 

 武装も全て砕けており、丸腰の状態になってしまった。

 

「スキルを使わずにここまでやれるなんて……すごい物を作りましたわね」

「はぁ……っ……どうやら……私は守護女神という存在を……甘く見すぎていたかもしれない……」

 

 ヨロヨロと立ち上がりながら、エクストが話す。

 

「まだ足掻くか、アイツ……。ベール、油断するなよ」

「勿論ですわ」

「いーや。もうあなた達を倒せる力は残ってない……だから今日はもう帰るよ」

「逃がしませんわよ!」

「捕まるもんか!」

「全員で行くぞ! 絶対に逃がすな!」

「はい!」

「わかった!」

 

 ホワイトハートの掛け声に合わせて、ネプテューヌとノワールを除く六人の女神がエクストに迫る。

 

「…………なんてね。バーカ」

 

 エクストはダガーを地面に刺すと、残った力を集中させる。すると、周りの空間に丸い何かが現れる。そこから真っ黒な鎖が現れ、女神達を包囲した。

 

「何これ……」

「鎖?」

「まぁ見てなって。『ボイドチェイン』!!」

 

 漆黒の鎖は女神八人の胸を貫いた。直後、変身していた六人の変身が解けた。

 

「うわっ!」

「な、何これ……」

「この感覚……シェアを無力化した……?」

「上手くいったね。これでしばらくあなた達はシェアの力を使えない筈だ」

「あなた……やられたフリをして私達の油断を誘うなんて……」

「いや、やられていたのは事実だよ。実際、あなたの攻撃はかなり効いてた。だから引き上げるんだよ」

「こいつ……」

 

 ブランは武器を形成しようとするが、それすらも出来ない。

 

「いやぁ、女神も無力化出来たし、あなた達の武器の情報も、鎖越しに手に入った。まず私の勝ちかな?」

 

 エクストはメモリーカセットを見せながら話した。

 

「次会う時までに守護女神について理解を深めておくよ。それじゃあみなさん、さようなら……」

 

 指を弾くと、エクストは瞬間移動でその場を後にした。女神達の間を、刺すような冷たさの風が通り抜けていく。

 

「あれ……私何もせずにただ力封じられただけ?」

「だから待ってる方がいいって言ったのよ……!」

 

 

 深夜のルウィーの教会。職員もほとんど休んでおり、不気味なくらい静かになっている。そんな教会にある図書室に、人影が一つ。

 

「うはー……深夜の教会怖すぎ……。絶対お化け出るじゃん」

 

 懐中電灯片手に、エクストが侵入していた。懐中電灯の明かりを頼りに、真っ暗な図書室を探索する。

 

「さて、女神に関する文献は……。お、あれかな?」

 

 近くにあった脚立を使い、本を手に取る。そして懐中電灯の明かりを使ってその場で読んだ。

 

「……ふむふむ」

 

 また別の本を手に取り、読む。

 

「…………なるほど」

 

 役に立ちそうな本は片っ端から読む。

 

「………………なんと」

 

 そうして本を読み漁っていると、急に図書室の明かりがついた。

 

「うわっ!?」

 

 いきなり明るくなった事に驚き、脚立から落ちてしまう。

 

「いったたたた……お尻打った……」

「あっちから音がしたぞ!」

「げ、なんでバレた?」

 

 立ち上がり、辺りを見回す。すると、天井の方にあるものを見つけた。

 

「監視カメラ……クソっ、何であるんだよ」

「居たぞ!」

 

 武装した職員がエクストの周りに集まる。

 

「勉強しに来ただけなんだけどなぁ」

「抵抗するなよ。大人しくお縄にかかるんだな!」

「……ヤダ!」

 

 指を弾き、瞬間移動で包囲から逃れる。

 

「なっ!? どこに行った!?」

「じゃーね職員のみなさん! おやすみー!」

「入り口の方だ! 追え!!」

 

 職員達が図書室から出る頃には、既にエクストの姿は無かった。

 

「クソっ、あいつどこに行きやがった!」

「捕まえてボッコボコにしないと気が済まん!」

「俺たちのブラン様にあんなことをして……タダで済むと思うなよ……!」

 

 騒ぐ職員達に、近付く小さな人影が一つ。

 

「うるせぇ!! テメェら今何時だと思ってんだ!!!!」

 

 静かな教会の中に、ブランの怒号が響いた。

 

 

「トーシャ、明日からちょっと旅してくる」

「旅って……いきなりだね。行先は?」

「別次元」

「……もう寝な?」

「本気だよ?」

「手段は? アンチクリスタルの力じゃ無理だからね」

「知ってる。だから次元を跨ぐためにまずプラネテューヌに行くよ」

「プラネテューヌに?」

「そう。……イストワールの力を使って、次元を渡る!」




ボイドチェイン……エクストが使うスキルの一つ。女神のシェアエネルギーを、鎖状にしたアンチクリスタルのエネルギーで中和することで、一時的に女神の全能力を封じる。封じることができる期間は長くて三日。
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