女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

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今回イストワールの扱いが少し、はい、少し悪いかもしれません。


5.次元跳躍、開始

 トーシャとエクストは朝食を摂っていた。朝食を摂りながら一日の計画を話す、それが日課なのだが、今日はそうでは無いようだ。

 

「エクスト、最近好き勝手動きすぎじゃない?」

「ダメ?」

「あのね、あなたは私の計画の道具に過ぎないんだよ。あまり好き勝手動くようならこっちにも考えが……」

 

 ヒュン、と銀色の何かがトーシャの頬を掠める。じわりとした痛みが頬に広がる。

 

「私が、なんだって?」

「っ……」

「あまり調子に乗るなよ。確かに私はあなたに作り出されたけど、従う気なんてさらさらないから」

「……」

「道具だって言うなら、ちゃんと制御してみなよ。出来てる? 出来てないよね?」

 

 エクストは椅子から立ち上がり、部屋を出ようとする。

 

「せいぜい私の衣食住の為に尽くしてね。そしたら私もあなたに協力してあげる。あなたの目的……女神の殺害にね」

 

 エクストは部屋を出ていった。部屋に残ったトーシャは黙って扉を見つめていた。残った朝食を食べる気なんて、起きなかった。

 

 

「ご飯……だよ」

「……今日はえらく元気がないね」

 

 牢の中に居るクリストに朝食を渡すと、トーシャは格子にもたれて座り込んだ。

 

「私は……とんでもないものを生み出したんじゃないかな」

「今更?」

「あのままいくと、多分アレは女神を殺す。私は……私はそんなの望んでないのに」

「じゃあ……なんでアンチクリスタルなんか埋め込んだの」

「脅しのつもりだった……」

「何のために」

「私の……研究の成果を知って欲しかったから」

「どういう事?」

 

 トーシャは一度深呼吸をした。そして鉄格子の向こうに居るクリストに向かって話を始めた。

 

「私は『複製』に焦点を当てた研究を行ってきた。これが上手くいけば食料難や資源の枯渇にも対処出来ると考えてね。それで研究の末……私はあなたにやったみたいに、生命体を複製する術まで身につけた。でも……報告会では非難を浴びたよ。生命体の複製は倫理に反するって」

「それはそうだと思うけど……」

「でも、それと物体の複製技術は別に見るべきじゃないの? そのせいで物体の複製まで非難されるなんて……耐えられなかった。私の研究が、無駄だったみたいで……」

「……」

「だから私は無理やりにでも注目を集めるために、あなたの……いや、誰でもよかった。とにかく、人間の複製体にアンチクリスタルを埋め込み、女神に仕掛けた」

「そんな……そんなつまらない理由でお前は!」

 

 鉄格子越しにトーシャの胸ぐらを掴む。

 

「私だってこうなるなんて思わなかった! 普通なら、アンチクリスタルの力なんて人間は数日と耐えられない。なのにアレは……エクストはいつまでも平気な顔で動いている」

「作ったら消す方法だってあるでしょ! 危ないってわかったならすぐアイツを止めてよ!」

「勝手に死ぬって想定して作られたやつにわざわざ削除の為の手があると思ってるの……?」

「この……無能!」

「っ……!」

 

 トーシャの表情が引きつった。クリストは思わず手を離す。

 

「……言い過ぎた」

「………………いや、いい」

 

 トーシャは再びクリストに背を向けた。

 

「ねぇ、あなたは……女神がアイツに勝てると思う」

「そう願うしかないよ。でも実際……女神達は奇跡を起こしてきた。私達は、信じ、縋るしかない」

「……あなたが倒すって選択肢は消えたの?」

「うん……」

 

 クリストは左の瞼を撫でる。もう開くことは無い、閉ざされたままの瞼。

 

「私は……もうエクストとは戦いたくないから……」

「……」

 

 

 プラネテューヌ教会内の会議室。ネプテューヌとネプギア、そしてイストワールは三人で話し合いをしていた。

 

「とにかく、あんな無茶な物、二度と作らないでくださいね」

「えー。でもいーすん、アレがないとブランの側近のニセモノの……」

「エクストさん、ね」

 

 ネプギアが話に割り込む。

 

「そうそれ! エクストを倒せなかったよ?」

「ですが……いくらなんでもリスクが大きすぎます」

「わかったよ。皆と話し合って次までに良い案考えておくよ。心配してくれてありがとう、いーすん」

「いえ。教祖として当然の事です」

 

 ネプテューヌとネプギアが会議室を後にした。イストワールは会議室に残り、ネプテューヌ達が作った圧縮ハイパーシェアクリスタル(仮)を眺めた。今はシェアが抜けているからか、ガラスのように透き通っている。

 

(ああは言いましたが、相手は女神の天敵……。もし手段が無ければ……)

「ほーん、これが私を追い詰めたやつか。ガラス細工みたいになってる」

「…………えっ!?」

 

 イストワールの背後にはエクストが立っていた。イストワールは驚いてエクストから離れた。

 

「あ、あなたいつの間n……!?」

「はい、ちょっと失礼〜」

 

 エクストはイストワールの口にメモリーカセットを差し込んだ。

 

「ん……ぐぐぅ……」

 

 カセットを抜こうと抵抗するが、エクストはイストワールの後頭部を抑え、更に深く差し込んだ。

 

「ーーーー!!!!???」

「ちょっと、黙って黙って……」

 

 テーブルに押し付けて逃げ道を断った。イストワールももがくが、体格差のせいで全く敵わない。

 

「……出来た!」

 

 イストワールの口からカセットを抜き取り、ハンカチで唾液を拭き取る。

 

「は……はひ……はう……」

「お疲れ様〜。もう用無しだよ」

「な、何を……」

「あなたの力をコピーしたのさ。ただそれだけ。後は用はないからあなたに危害も加えないよ」

 

 カセットの端子部に軽く息を吹きかけ、ダガーのスロットに差し込む。

 

「さて、第……」

「そこまでだ!」

 

 バン、と会議室の扉を蹴破って誰かが入ってきた。白い服に大きなオレンジのネクタイ、赤い髪を左右で纏めた少女だ。

 

「あなたは……」

「ほう。俺を知っているのか?」

「……」

「…………」

「………………」

「……………………」

「……………………天王星うずめ?」

「おい! なんで疑問形なんだ!」

「仕方ないじゃないか! オリジナル(クリスト)が実際に会ってないみたいだし、そのせいか写真の記憶しかないんだよ!」

「クッソー……こんなんならルウィーに行っときゃ良かったぜ……」

「で……何の用なの」

「何の用……か。決まってるだろ」

 

 うずめはメガホンを手に取り、エクストに向けた。

 

「お前を止めに来たんだよ」

「なるほど。女神がみんな集まって私と戦った時に居なかったのは、こういう時の保険って訳か」

「ま、そういう事だ。ヒーローは遅れてやってくるってな!」

「……しかし何故バレた? イストワールは抑え込んでたはず」

「監視カメラだよ」

 

 視線を部屋の隅に巡らす。確かに、監視カメラが一つあった。

 

「またか……」

「残念だったな。こっちも女神としてこれ以上好き勝手されるのは困るんだ」

「なら好き勝手してやる」

「余裕だな」

「負ける気しないから」

 

 エクストはスロットのボタンに指を添える。緑色のボタンだ。

 

「メモリーカセット第四出力……緑槍(りょくそう)『ロンリネス』」

 

 トリガーを引くと、ダガーが光に包まれ、灰色の槍が現れる。シルエットはグリーンハートのものと同じ。所々に緑のラインが入っている。

 

「じゃ、やるか」

「いくぞ!」

 

 うずめの脚とエクストの槍が激しくぶつかる。果敢に攻めるうずめだが、アンチクリスタルの性質と、リーチの差で有利に立てない。

 

「くっそ……このままじゃ埒が明かねぇ」

「はぁ……とか言いつつそっちも無傷だし。埒が明かないのはこっちも同じか」

「つまんねーだろ」

「つまらない」

「なら今面白くしてやる! 変身!」

「結果負けるのは嫌だけどね! 覚醒!」

 

 うずめはオレンジハートに変身、エクストは反晶覚醒になった。

 

「よーし、うずめのとっておき、見せてあげるよー!」

 

 オレンジハートは左腕を掲げた。エクストにはわかった。そこしシェアエネルギーが集まっていくのが。

 

「いくよー! シェアリングフィールド、展開!」

「っ! させるか!」

 

 エクストは持っていた槍をオレンジハートの左腕の円盤目掛けて投げる。刺さりはしたが、浅かったのか、シェアリングフィールドの展開は止められてない。

 

「これなら!」

 

 エクストは走ってオレンジハートに接近。近付くにつれて、段々と体が重くなっていく。

 

「っ……うあぁぁぁぁっっ!!」

 

 無理矢理に体を動かし、刺さったままの槍を、思いっきり殴る。

 

「え……」

 

 バリン、と音を立てて槍が円盤と腕を貫通する。同時に、シェアリングフィールドの展開が中断された。

 

「はあっ!」

「あぁっ!!」

 

 無理やり槍を引き抜くと、今度は緑枠の黒いボタンを押した。

 

「第六出力、黒銃『エンヴィー』!」

 

 現れたのは大きな銃。ブラックシスターと同じシルエットのそれを片手で操り、オレンジハートに銃口を向ける。

 

「ファイア!」

「うあぁぁ!!」

 

 放たれた弾丸はオレンジハートに全弾命中。女神化は解け、うずめはその場に膝をついた。

 

「こいつ……」

「はっ、大したことないね。そもそも一人で立ち向かおうなんてのが無謀なんだよ」

「くっ……」

 

 血が流れる左手首を押さえながらエクストを睨む。対するエクストは不敵な笑みを浮かべると、うずめに背を向けた。そして左手の親指を立てて見せる。

 

「ちゃんと怪我の手当はしなよ? あなたも今から人間と同じになるんだから」

「どういう事だ!」

 

 うずめの真上に黒い鎖が現れる。

 

「こういう事だ……。『ボイドチェイン』!!」

 

 エクストが親指を下に向けると同時に、鎖がうずめを貫いた。うずめの中の、シェアの力が消え去る。

 

「……? まさか……ねぷっち達が受けたのは……」

「うん、ちゃんと武器のデータとれたね。これは……十二個目? なんでこんな中途半端……?」

 

 ブツブツと呟くエクストの背後で、うずめは武器を再び形成しようとした。が、全く出る気配がない。

 

「くそっ……くそっ!」

「さて、気を取り直して第z……」

「そこまでよ!」

 

 部屋に入ってきたのは教会の職員と、それを率いるアイエフとコンパだ。

 

「ここは完全に包囲したわ。大人しく降伏しなさい」

「絶対逃がさないですよ〜!」

「次から次に……。悪いけど降伏する気は無い!」

「なら実力行使よ!」

 

 アイエフはカタールを、コンパは注射器を手に取り構えた。

 

「仕方ない。じゃ、早速使うよ」

 

 エクストは銃のスロットについているオレンジのボタンを押した。形成されたのは、オレンジのラインが入ったメガホン。

 

「第十一出力。名前は……後で決める」

「全員警戒して! 仕掛けてくる!」

「はっ。警戒して何とかなるものかね」

 

 メガホンを構えると、思いっきり息を吸った。

 

「おい、早く逃げろ!」

「え」

「ぶっ飛べえぇぇぇぇっっっっ!!!!!!!!」

 

 エクストの声はメガホン越しに拡散。声は衝撃波となり、部屋の中に居た全員と、外に居た職員にまでダメージを与えた。

 

「おぉ♪ これが音響兵器ってやつ? 正直ナメてたけど、結構使えるじゃん」

「っ……やられた……」

「耳がじんじんしますぅ……」

「っし。じゃあ、三度目の正直だ! 第零出力! 魔導書『エタナワール』!!」

 

 メガホンから形を変え、今度は一冊の本になる。灰色のその本を開くと、エクストの目の前に灰色の幕のようなものが現れた。

 

「じゃ、私は女神の理解を深める旅に出てくるよ。知識を付けて、帰ってきたら必ず女神を皆殺しにするから!」

 

 そう言い残して幕をくぐる。エクストの姿は幕の中に消えてしまった。

 

「……コンパ。急いで怪我人の手当をしましょう。私はイストワール様に報告してくるから」

「私はここです……」

 

 テーブルの下から声が聞こえる。覗いてみると、イストワールが頭を抑えて隠れていた。

 

「イストワール様!?」

「散々な目にあいました……。口にカセット突っ込まれるわ、近くで戦いが始まるわ……」

(あぁ、イストワール様の胃にまたダメージが……)

「……この通り、私も見ていたので報告は結構です。なので、先にうずめさんの手当をお願いします」

「わかりました」

 

 アイエフはうずめの元に駆け寄った。かなり落ち込んでいる様子だ。

 

(想定以上ですね……。しかし一体どこへ? 私の力を使ってまで向かう場所…………)

 

 おおよその検討は付いた。しかし、探すとなるとあまりにも無謀だ。

 

(今この次元にあれが居ないのは事実。拠点を潰すなら今かもしれませんね……)

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