女神の従者の願うこと   作:よっしー希少種

9 / 24
8.エクスト、帰還

「はぁ!? ベールのとこにエクストが湧いたぁ!?」

 

 リーンボックスの教会職員からの連絡に、ブランは少し冷静さを失っていた。

 

「おい、大丈夫なのか? まだベール一人なんだろ!?」

『なんとかシェアクリスタルがある部屋からは遠ざけましたが、いまだ劣勢で……』

「……わかった。すぐに向かう!」

 

 ブランは受話器を置くと、コートを羽織った。

 

「アイツ……よりによって女神が一人しかいないリーンボックスから狙うなんて……卑怯なヤツめ」

「お姉ちゃん、私達も行くよ!」

「一緒に戦う……!」

 

 ロムとラムが、杖を握りしめながらブランに言った。

 

「悪いけど、二人には留守番をしてもらいたいの。私に何かあった時、この国を守れるのはロムとラムだけなんだから」

「お姉ちゃん……」

「大丈夫。私もそんな簡単に負けたりはしないわ。安心して」

 

 ブランは二人の頭を優しく撫でた。

 

「……わかった」

「良い子ね。お留守番頼んだわよ」

「任せて!」

「あと、クリストに関しても。絶対にリーンボックスには向かわせないでね」

「わかった!」

 

 二人に伝える事を伝え、ブランはリーンボックスへ向かった。

 

 

「中々……やりますわね」

「まぁね。ただ観光してきた訳じゃないから」

 

 ベールとエクストは教会の中庭で睨み合っていた。エクストの手には、M.P.B.L.と同じ形状をした灰色のガンブレードが握られていた。

 

「あんたを傷付けるつもりは無いんだけどなぁ。私の目的はあくまでシェアクリスタルだよ」

「何を今更。目的が変わったとしても、どの道私達にとっての障害になる事は変わりませんわ」

「それは仕方ないさ。私とあんた達は光と影、水と油、決して相容れないからね」

 

 ふと、背後から女神の気配が近付いてきてるのに気が付いた。

 

「……一人来たみたいだね」

「ブラン……」

「厄介事が増えたな……!」

 

 エクストは振り向くと、空を飛ぶホワイトハート目掛けてビームを数発放つ。

 

「ちっ……!」

 

 奇襲のつもりで武器を構えていたホワイトハートだったが、ビームを防ぐために構えを解き、防御に徹した。

 

(これであっちは攻撃に転じるのは不可能。後は……)

 

 振り向く勢いも使いながら、ベールの槍を防ぐ。

 

「そう来ると思ったよ」

「流石にこの程度では捉えられませんわね」

 

 ベールは飛び引き、ホワイトハートも傍に着地する。

 

「よく耐えたじゃねえか」

「前よりも攻撃の手が甘かったおかげですわ」

「……?」

「はぁ。数的不利な状況になったね」

 

 エクストは武器を地面に刺しながら呟いた。

 

「よくわからねーが、手抜いてるって事だな。このまま一気に倒すぞ!」

「そう簡単にいくと良いのですけど」

「大丈夫。簡単には負けないから安心しな。覚醒!」

 

 宵闇のマントを羽織り、反晶覚醒に移行した。

 

「来ますわよ!」

「わかってる!」

「せっかくだ。この次元旅行で身に付けた新しい技術、見せてあげるよ」

 

 エクストは武器を手に取り、カセットのスロットに手をかける。

 

「ダブルチェンジ! 第一出力、紫刀『スロウス』、第二出力、黒剣『エスケープ』!」

 

 紫と、青枠の黒いボタンを押す。右手には、紫のラインが入った灰色の太刀が、左手には黒いラインが入った灰色の剣がそれぞれ現れた。

 

「こいつ、二つ一気に扱えるようになったか」

「この姿限定だけどね。さぁいくよ!」

 

 二刀流となり、ベールとホワイトハートに迫る。二人はエクストの攻撃を武器で弾き、隙を見て攻撃しようとするが、防具で防がれたり、防御が間に合ったり……武器がお互いを捉えることは無かった。

 

「二刀流の相手は慣れてるつもりなんだけどな……。てかベール、なんで変身しないんだよ!」

「できたらしてますわよ!」

「まさかまたアレくらったんじゃ……」

「違いますわ! 最近徹夜続きで変身できる程体力に余裕が無いだけで……」

「テメェ何してんだぁ!!」

「えぇい! 戦闘中にごちゃごちゃ喋るなぁ!!」

 

 エクストが両手の武器を使ってベールの槍を大きく弾く。

 

「っ!?」

「もらっておけ! 『バイオレットナイト』!!」

 

 大きく隙を晒したベールに対して、両手の武器を使っての連撃を叩き込む。

 

「ああぁぁっ!」

「ベール!」

「第四出力、緑槍『ロンリネス』。くらえっ!」

 

 剣を槍に変え、ホワイトハートに投げる。しかし槍は戦斧に防がれてしまった。

 

「甘いんだよ!」

「そっちもね! 第五出力、対女神兵器『A.H.B.L.(アンチハードビームランチャー)』!」

 

 太刀をガンブレードに変えると、大きく跳躍、そのまま武器を背後に向け、ビームを放った。

 

「合わせ技か!」

「そういう事! くらいな! 『ディストラクションコメット』!!」

 

 ビームの勢いを利用して加速。そのまま右足を突き出してキックの姿勢でホワイトハートに迫る。そして戦斧に刺さったままの槍を思いっきり蹴る。

 

(! やばい!)

 

 槍が戦斧を貫く。手に伝わる衝撃から、戦斧の破壊を察知したホワイトハートは戦斧を手放して後ろに避けた。

 

「ちっ……」

 

 地面に刺さった槍を手に取りながら、ホワイトハートを睨む。

 

「……まぁいいや。今日はただの下見だったし。私の目的の為にはまだ力が足りない」

 

 反晶覚醒を解除し、ホワイトハートに背を向けた。

 

「次会う時には、本当にあんた達を女神として終わらせるから」

「おい待て!」

 

 そう言い残し、瞬間移動でその場を去った。

 

「逃げたか……。ベール、体は大丈夫なのか?」

「えぇ。どういうわけか、かなり浅くて加減された斬撃でしたから」

「……なんで加減なんかするんだ? 意味がわからん」

「とりあえず……ネプテューヌとノワールにも知らせた方がいいですわよね」

「だな。私も一旦ルウィーに戻る。戻り次第、テレビ通話繋いで会議するぞ」

「それがいいですわ」

 

 ベールは教会に、ホワイトハートはルウィーにそれぞれ戻った。

 

(…………あいつ、私に対しても手を抜いてたな。攻撃が全体的に軽かった。何故だ……?)

 

 

 エクストはトーシャの研究所に戻ってきた。

 

「……この荒れよう、捕まったか」

 

 研究所の地下へと向かい、部屋の隅に置いてあるダンボールの一番奥に入っている箱を取り出した。

 

(よかった。これは手を付けられてないか……)

 

 安堵のため息が漏れる。

 

「これが無いと私の計画は完遂しないからなぁ」

 

 箱を持ち、立ち上がる。

 

「トーシャが居なくなった以上、これから先は一人でやるしかない……。とりあえず、やれるとこまでやるか」

 

 エクストは箱を開けた。中にあったのは、普通のアンチクリスタルよりも黒ずんでいる異質なアンチクリスタルだった。




 M.P.B.L.もそうなんですけど、アレって武器種で表すならなんて表せばいいんでしょうね。ガンブレード、ガンスラッシュ、銃剣……。結構あやふやな気がします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。