はあっと口から吐き出した息は水蒸気となって銀世界に消えてゆく。そんな光景にほんの少しだけ空虚感を抱いて、涙が頬を伝っていくのが分かった。
雫となった液体は地面に落ちると淡く消えてしまう。こんなふうに想いも全部、消えてくれたらいいのに。
ずっと欲しいものがあった。
取り繕った上辺だけの関係じゃ手に入れられない、温かく心地の良いもの。その存在を知って、その温もりに触れてしまったから。手が届くのだと勘違いをして。それが叶わぬ願いだと知っても、奪い去ってしまいたかった。
でも、出来なかった。最初から、そこにわたしはいなかったのだ。
街を彩るイルミネーションに眩暈がする。
すれ違うカップルはわたしへの当てつけのように見えて、逃げるように早足でその場から離れた。
わたしの人生、こんなふうに逃げてばっか。
サンタクロースの恋人はいないし、わたしを待つ白い恋人もいない。ひとりぼっちのクリスマス。
昔のわたしならどう過ごしただろう。というか、どう過ごしていたんだっけ。
それまでの過去はあの日の情景に霞んで見えなくなった。
でも、いいんだ。
本当に大切なことは、憶えているから。
数えきれない恋をした。
それが成就しないことだってあった。
それでも、地球が回るように、新しい恋を見つけて。
ずっと、それの繰り返し。
でも、それはきっと間違い。そんなもの、恋だなんて言わない。
──失恋がこんなにも痛いだなんて知らなかった。
きっとわたしは、誰かを本気で好きになったことなんてなかったんだ。
ずるくて、面倒くさくって、わがままなわたしだから。
本当の恋なんて、したことなかったんだ。
だからきっと、この胸の痛みは愚かな自分への戒め。
もう二度と過ちを繰り返さないように、破裂してしまいそうなくらい締め付ける。そうでもしないと、わたしが何もかも壊しちゃいそうだったから。
今も心に棲み着く猫背の彼。
目が腐ってて捻くれてて、何事も斜に構えた捉え方しか出来なくて、シスコンでたまに気持ち悪くて、なのに優しくてカッコいいとことかほんと、困る。
彼と過ごした一年とちょっとは、彼にとってどんな意味を持つのかわからないけれど、それが何であってもきっと、わたしは嬉しい。
きっとこれが、恋なんだ。
強く吹いた寒風が茹だった頭を冷やす。
いい加減、前を向かなきゃ。わたしは、強い女の子だから。
今日で全部おしまい。これで本当に終わりにしよう。
純白の雪が降る星空に、祈りを込めて。
淡い、泡沫のようなそれは、果たして消えてくれるだろうか。
再び見上げた空に、ずっと胸の内に秘めていた想いが吐露する。
「わたしも、本物が──」
続くはずの言葉は、子供の願いを叶える老人の悪戯に掻き消された。