やっぱり力尽きてしもうたんや……
……長い夢を見ていた。見慣れた一室を見渡しながら俺は思った。ローテーブルの上には洒落たグラスがまだ鎮座している。黄金色の蜂蜜みたいな酒がグラスの三分の一程残っていた。度の強い酒であり、そのせいで不思議な長い夢を見ていたのだろう。
そうだとも。あれは夢に違いない。妙に覚醒した頭で俺はそう思った。夢の中で俺は妖怪として第二の生を享けていた。しかも贔屓にしていたアニメ「九尾の子孫、最強を目指すってよ」の世界観でだ。
しかし夢だったのなら何で源吾郎とかではなく、悪役だった雪羽の兄という、まだるっこしく微妙な立ち位置だったのだろうか。
少しだけその事が引っかかった俺だったが、別に夢は夢だし構わないかと思っていた。
とはいえ、夢というにはあの日々の事はまだ生々しく残っている。記録に残していてもばちは当たらないかもしれない。俺はそんな事を思いつつノートパソコンを開いた。「九尾の子孫、~」は人気作故に二次創作も盛んである。もしかすると、二次創作を漁っていたら何か面白い事が解るかもしれない。
※※
ある研究センターの一室。そこは元々妖狐が寝泊まりする場所でもあったのだが、その日はたまたま彼の友達である雷獣の若者も泊り込んでいた。仕事が遅くなったから泊めてくれと懇願され、妖狐もそれを了承したのである。
朝になって目を覚ました雷獣は、寝起きらしいぼんやりとした表情を浮かべていた。同じく起きていた妖狐は若干呆れたように口を開く。
「泊っていくのは良いけれど、まさか部屋で酒盛りされるとは思ってなかったぜ。それにしても眠そうだな。やっぱりまだ酒が残っているんじゃないのか?」
「そうかもしれない」
妖狐の言葉に雷獣は割合素直に頷いた。何処で購入したのか定かではないが、雷獣は黄金色に輝く酒を飲み、それから寝に入っていたのだ。
あの酒を飲んだから不思議な夢を見た。雷獣は平然とした表情でそんな事を言ってのけた。
「夢の中で俺には兄がいたんだ。同い年で、色々と面倒を見てくれる優しい兄がね」
夢の内容を語る雷獣は少し寂しげでもあった。兄がいるという言が夢の世界の話である事は妖狐もよく知っていた。雷獣自身には弟妹が大勢いるが、彼は長男で兄がいない事を知っているからだ。
「ふふふ、お兄ちゃんみたいな存在に甘えたいっていう願望かもしれないな」
「そっかぁ。それじゃあ俺、今日は先輩に甘えちゃおうかな」
「何でそうなるねん!」
軽いやり取りを繰り返しながら、妖狐と雷獣――島崎源吾郎と雷園寺雪羽は笑い合いじゃれあっていた。
最後に源吾郎君と雪羽君が元気そうな姿を見せていて良かったです。
思った事としては……二次創作の雪羽君の方が良い子だったという事ですね。原作では長男であり、甘え下手だったり「お兄ちゃんなんだから」みたいな気負いがあるのです。
しかしこちらでの雪羽君は次男・中間子なんですね。すぐ傍に頼れる存在がいたから精神的に安定していた……みたいな差があるのかもしれません。