雷獣様の兄   作:斑田猫蔵

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 大天狗って修験道とか仏教とかの関係で少年を攫うって言う話ばっかりなんですよ。
 なので……お察し下さい(白目)


大天狗からのロックオン

 長雨のあの日に八頭怪に出くわし、俺は意味深な言葉を投げかけられた。あいつはアニメの中でも厄介な黒幕として暗躍していた。しかし実際に顔を合わせるとアニメ以上に厄介な存在だと思わざるを得なかった。

 八頭怪がまたちょっかいをかけてこないか。それが心の中に不安としてノイズのように差し挟まれてしまう。

 

 よくよく考えれば、今のこの段階では自分が原作通りに動いているのか、自分の存在で原作からうまい具合に変化が生じているのかははっきりとしないのだ。アニメでは島崎源吾郎の視点で物語は進んでいく。源吾郎が生まれる前の事、雪羽の生い立ちや叔父たちとの暮らしはほんのわずかな記載しかないのだ。

 記載が無いというのは何も無いという事ではない。どのような事が起きてもおかしくないという意味ではなかろうか。

 それに奴は……八頭怪はアニメの世界だけではないと言っていた。確かに「九尾の子孫、最強を目指すってよ」は書籍版ありきのアニメである。書籍版とアニメ版では何か大きく展開が違うのか……? だが俺は書籍版の内容は知らない。どうにもならないじゃないか。

 

「ふぅ……」

 

 すやすやと眠る雪羽の隣で俺はため息をついた。寝ている間に不安が込み上げてきて、思わず眠れずにいたのだ。だがあれこれ考えるのは健康にも悪い。

 流れる所は流れに身を任せ、マズそうな展開にならないように動けば良いのだ。俺はそう結論付ける事にした。

 それに俺は今は人間ではなく妖怪なのだ。幸いこの世界の妖怪たちは実力主義を重んじている。さらに言えば俺は現時点でかなり強いらしい。

 であれば、力を示して俺や雪羽には逆らえない事を示せばいいのではないか。

 

 

「疾風、雪羽。今日は萩尾丸さんの所へご挨拶に行こうか」

 

 かしこまった様子で三國叔父さんは俺たちにそう言った。萩尾丸。この大天狗の名を聞いた俺は、それこそ雷撃でも受けたかのように棒立ちになっていたのだ。

 この世界に来て萩尾丸にはまだ数回しか会っていない。しかし「九尾の子孫~」の中ではかなり重要な役回りである事は知っている。何しろ主人公である源吾郎とも、彼のライバルである雪羽とも深いかかわりがあるのだから。

 源吾郎の兄弟子であり極めて優秀な指導者・統率者としての側面を持つ彼は、不祥事を起こした雪羽を引き取り、手元で再教育している妖物でもあるのだ。アニメ内では毒舌な上にノンケではない事がしばしば取り上げられネタキャラとしての側面も強いが、優秀で力の強い妖怪である事は事実だ。

 実際俺もこの世界で萩尾丸の姿を見た事があるが、やはり強そうな妖怪だと思ったくらいだし。

 それに何より、日頃は強気な三國叔父さんがしおらしく神妙な様子を見せている。それこそが萩尾丸の存在の大きさを証明しているのではなかろうか。

 

「叔父さん。どうして萩尾丸さんは俺たちに会いたがってるの?」

 

 思わず俺は問いかけた。既に転生してから数年は経っているために、子供っぽい喋り方が板についてきたと思っている。というよりも、思考が段々見た目相応になってきていると言った方が良いのだろうか。

 俺たちに視線を向ける三國叔父さんは、誇らしげな笑みを浮かべていた。

 

「そりゃあ、君たちが熱心に頑張って優秀だからだよ。俺も若い頃はお世話になったけど、あの妖は若手妖怪の育成とか教育とかが大好きなんだ。

 それで今回、疾風や雪羽と直接会いたいって言ったんじゃないかな」

 

 三國叔父さんの笑みはいつの間にか気恥ずかしそうな表情になっていた。雪羽だけではなく三國叔父さんも萩尾丸の世話になっていたという話も、俺はアニメで把握済みだった。だけど隣の雪羽に倣い、感心したような表情を見せておく。

 

「それに萩尾丸さんも若い子を従えているからね。今回その子たちと君らを挨拶させたいとも言ってたかな」

 

 若い妖怪に会えると聞き、雪羽は目を輝かせている。三國叔父さんの許で暮らす俺たちは、世話を焼いてくれる妖怪たちと顔を合わせている。だけど俺たちが友達というには年上過ぎた。

 挨拶させたいと聞いて喜ぶ雪羽を尻目に、俺はあれこれ考えこんでいた。雪羽は挨拶という言葉から友達を連想したのかもしれない。しかし俺たちは人間で言えばまだ小学校中学年か高学年くらいでしかない。三國叔父さんの部下たちも結構若いが、それでも人間で言えば高校生くらいだ。萩尾丸の部下たちだって、それくらいの年恰好だろうと俺は密かに思っていた。

 それに、雪羽に仲間の妖怪が出来ると聞くとどうしても心がざわつく。

 それは恐らく、長じた雪羽が取り巻きを引き連れて闊歩しているという事を連想するからなのかもしれない。

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