遊戯王VRAINS Re:Construction 作:師走F
オリキャラのキャラ紹介とか、葵ちゃんの可愛いところとか足した感じ
そこは白い壁に囲まれた小さな部屋だった。
デュエルディスクとカード、あるのはそれだけ。
「はぁはぁ……」
息が苦しい。
もう何日経ったのかも分からない。
───三つ数えるんだ
幻聴が聞こえる。
薄れゆく意識の中、縋るようにその声に意識を向けた。
───意識を強く持って、後もう少しで───
声に従い、再びカードを握る。
生きるために、戦うために。
◆
デンシティ。
インターネットが発達したその町の公立高校の教室で、藤木遊作は目を覚ました。
「おっと、起きてやがったのか」
彼の隣を通り抜けようとした男子生徒が、驚いたように身を引く。
「藤木だっけ? もう授業終わってるぜ」
一言で表現するならカバのような顔。
体は横に広いが、背は高くなく、深緑の髪をオールバックにしている。
そんな彼の容姿を一通り確認し、遊作は寝ぼけた顔で答えた。
「……お前、誰だっけ?」
「っおい!学校始まって一か月経つのに、まだクラスメイトの名前覚えてねぇのか?」
彼は呆れ半分に怒鳴る。
「友達いなさそうだもんな」
かと思えば、馬鹿にするようにニヤッと笑う。
表情がうるさいやつだなと言いたげに、遊作は溜め息を吐く。
「俺は島直樹。へっへーん。俺に何か言うことない?」
そう言って、彼はあからさまに左腕に装着されたデバイスを見せつける。
「別にないな」
「これでもっ!?」
遊作の反応にムキになって、島はそのデバイスを顔の近くまで持ってくた。
「ああそれ。SOLテクノロジーが提供してる、新型デュエルディスクか」
「気付いてくれたか~。ん?」
彼のわざとらしい反応にも、満足気に頷くと、ふと島は遊作の机に置かれたものに視線を向ける。
白い円形のものに、赤い枠で覆われた半球形のディスプレイ、その淵にはデュエルモンスターズのカードの束、遊作のデッキが収まっていた。
「お前のは、カード収納タイプの旧式か。俺のには、デュエルをサポートしてくれるAIが搭載してあるんだぜ」
『こんにちは』
「ああ、こんにちは」
AIに律義に挨拶を返すと、遊作はタブレットとデュエルディスクを鞄にしまう。
「SOLテクノロジーのクラウドに直結していて、データ化されたカードが使える。VR空間、LINK VRAINSにも優先的にアクセスできるんだぜ」
そう言って、彼は教室のモニターに、LINK VRAINS内でのデュエル映像を投影した。
そこでは様々な人達がVR空間にモンスターを呼び出し、中には自分もモンスターのように珍妙な格好をしてデュエルを楽しむ者までいた。
LINK VRAINS。
大手IT企業であるSOLテクノロジー社が運営する仮想空間サービスで、自宅にいながら世界中の人達と戦えるとのことで、現代のデュエリスト達の戦場となっている。
「LINKVRAINSにはよく行くのか?」
「バカかお前は!あそこは一流のデュエリスト達が集まる神聖な場所なんだぞ!お前が思ってるほど簡単じゃねぇの!カリスマデュエリストだっているし」
「ふーん」
「ああでも、行けばカリスマデュエリストや、プレイメーカーにも会えるかもな」
「プレイメーカー?」
「そんなことも知らねぇのか? 今LINK VRAINSで一番ホットなデュエリスト。ハノイの騎士ってハッカー達を成敗しているって噂の謎のデュエリストだよ」
「……お前、もしかしてプレイメーカーの画像とか持ってるのか?」
「あるわけないだろ。正体が分からねぇってところがクールなんだろ。憧れるよなぁ」
「そうか。頑張れよ」
もう興味はないと言わんばかりに、遊作は島に背を向ける。
「なぁ、よかったら俺がデュエル教えてやろうか?」
「結構。お前があんまり強くなさそうって分析を三つしてやろう」
島の方を向き、指で三を作る。
「一つ、アイテムを自慢するのは、デッキに興味がないから。二つ、未だLINK VRAINSに行っていないのは、自分の腕に自信がないから。三つ、外見以上に相手を分析しないのは、デュエリストとしてどうなんだ?」
「なっ……」
痛いところを突かれて、島は口を開いたまま固まっている。
「……だが、いいところも三つある。一つ、相手にもデュエルの話を振るのは、根っからのデュエルモンスターズ好き、二つ、新型デュエルディスクを早速手に入れているのは、中々の事情通、三つ、俺みたいな一人でいるやつにわざわざ声をかける、悪人じゃなさそうだ」
「~~~~~~なんだよさっきから三つ三つって! なんのこだわりだよ!もういい!一人でデュエルやってろ!」
島はそう言い捨てて、教室を出て行ってしまった。
◆
LINK VRAINS内の都市エリアの一つ、様々なネットショップがひしめくこのエリアでは、多くの人がショッピングを楽しんでいた。
「やれやれ、とんだ目にあったぜ」
そんなネットショップの建物の壁に張り付くように、黒い眼玉のようなプログラムがキョロキョロと動いていた。
「ハノイの野郎、サイバース世界にまで……おっと」
気配を察知したそれは、サッと物陰に身を潜める。
その直後、付近を飛ぶドローンのようなプログラムが通り過ぎて行った。
「警備AIか。見つかったら不正プログラム扱いで削除されちまう。これからどうすっかな……ん?」
電脳空間の壁を滑るように移動する中で、ひと際混みあったエリアに出てきた。
「さぁデュエルもいよいよ大詰め! LINK VRAINSのランキングを決めるランクデュエル!勝つのはどっちだ!?」
電脳空間を流れるデータの波、サーフボードのようなガジェットでその波に乗って二人のデュエリストがデュエルを繰り広げている。
「ありゃ、スピードデュエルか」
眼玉は見つからないように建物の高い位置まで登り、デュエルを観戦する。
「ランキング一位の我らがGo鬼塚!しかしフィールドにはモンスターゼロ!ここから逆転なるか!?」
プロレスラーのような体格のいい男は、真剣な面持ちで対戦相手を見つめている。
「そして、Go鬼塚を追い詰めるのは、LINK VRAINS界のアイドル!ブルーエンジェルだぁ!」
ドローンが寄ると、青髪のツインテールの少女がカメラの向こうの観客に手を振る。
「いくぞ。俺のターン!」
Go鬼塚は引いたカードを確認すると、不敵に笑う。
「俺は
空間に穴が開き、獣のマスクを被った筋骨隆々の戦士が姿を現す。
「さらに剛鬼ライジングスコーピオを通常召喚。こいつは俺の場のモンスターが剛鬼のみの場合、リリースなしで召喚できる」
「Go鬼塚、がら空きのフィールドに一気に三体モンスターを呼び出したぁ!」
「現れろ、俺様のサーキット!」
Go鬼塚が手を伸ばすと、彼の道の先に、青いサークルが出現する。
「召喚条件は、「剛鬼」モンスター2体以上!俺は剛鬼スープレックス、ツイストコブラ、ライジングスコーピオの3体をリンクマーカーにセット!」
彼のフィールドのモンスターがサークルに吸い込まれ、赤い矢印を浮かび上がらせる。
「リンク召喚!現れろLINK3、剛鬼ザ・グレート・オーガ」
鋼の装甲にマントをたなびかせ、雄々しい角のついたマスクを被った戦士がフィールドに降り立った。
「俺は墓地に送られた剛鬼モンスターの効果で、デッキから剛鬼モンスターを手札に加える。そして、手札の剛鬼ヘッドバットの効果発動!手札の剛鬼カードを墓地に送り、このカードを守備表示で特殊召喚!さらにザ・グレート・オーガの攻撃力を800アップする」
ヘッドバットの支援を受けて、ザ・グレート・オーガの攻撃力は3400となった。
「バトルだ!剛鬼ザ・グレート・オーガで、トリックスター・ホーリーエンジェルを攻撃!」
「そんなっ!」
グレート・オーガの斧の一振りが、ホーリーエンジェルを切り裂き、そのままブルーエンジェルのライフを一気に削り切った。
「決まったぁぁっ!勝者!Go鬼塚! 絶体絶命の状況から見事な大逆転だぁっ!」
デュエルが終了し、地上に降りた二人の元に、インタビュアーと野次馬が近付く。
「中々面白いデュエルだったな。俺も強いデュエリストを味方につければ……」
ぶつぶつと言いながら、眼玉はまた壁を滑るように移動して、どこかへと消える。
「ブルーエンジェル、今回は惜しかったですね」
「負けたのは悔しいけど、みんなの応援のおかげで楽しいデュエルができたわ。みんな、これからも応援よろしくね」
◆
「何が楽しいデュエルよ」
デンシティ高層マンション、その最上階の一室のベッドの上で、ブルーエンジェルこと財前葵は不貞腐れていた。
「葵様、はしたないですよ」
制服のまま寝そべる彼女に、彼女と同年代くらいのメイド服を着た少女が注意する。
「いいでしょ美海。自分の部屋くらい好きにさせてよ」
「全く、晃様やご両親が見たらなんと申されるか……」
ため息をついて、美海はタブレットを取り出す。
「今月のランキングデュエルの戦績は十勝七敗、このままだと次は順位を落としてしまいます」
「分かってるわよ。だからもっとデュエルを……」
「晃様達に見つからないように、隠蔽工作をする私の身にもなってください。この前だって、葵様が私に黙ってLINK VRAINSに行ったせいで、ログの消去が遅れて……」
「だから、あれは謝って───」
「葵、いるか」
その時、ドアをノックする音と共に、扉の向こうから葵を呼ぶ声がした。
「お、お兄様、大丈夫よ」
葵は慌てて跳び起きて、髪を整えて兄である財前晃を出迎えた。
「美海もいたのか。ちょうど良かった。さっきお父様から連絡があってな。今晩、久しぶりに家族で食事でもどうかって」
「うん。もちろん行くわ」
「そうか。美海もどうだ?」
「……いえ、せっかくのお誘いですが、私はご遠慮させていただきます」
葵の後ろ控えていた彼女は、また一歩後ろに下がって、二人から距離を置く。
「ご家族水入らずの時間を、邪魔するわけにはいきませんから」
「そんな、邪魔だなんて……」
「葵」
食い下がろうとする葵の肩に手を置き、晃は静かに首を振る。
「では、私はリビングの掃除をしてまいります」
そう言って、美海は二人の脇を通り抜けて部屋を出て行ってしまった。
◆
夕方、学校から帰った遊作はデンシティの中央広場に訪れた。
「遊作、戻ったか」
広場の一角を陣取るキッチンカー、そのカウンターから草薙翔が顔を出した。
「草薙さん、店番変わるよ」
「その前に、お前に見て欲しいものがあるんだ」
草薙に案内され、キッチンカーの中へと案内される。
草薙が壁のパネルを操作すると、食器棚のガラスがモニターに変わる。
「こいつを見てくれ」
画面が切り替わり、LINK VRAINSの全体マップが表示された。
マップ上で、赤い点が動いている。
「これは?」
「さっきLINK VRAINSで、妙なプログラムが検出されたんだ」
「こいつは……AIか?」
「ああ。さっき偶然補足できたんだが、遠隔で解析しても見たことのないコードで組まれている」
「見たことないコード……まさか”イグニス”か!?」
イグニス。
とある理由からハノイの騎士を追う遊作達が、その過程で見つけたハノイの目的。意思を持つAIと言われており、10年前にどこかの実験施設から逃げ出したらしい。
「あくまで可能性の話だ。だが、もしこいつがハノイの追っているAIなら、奴らの正体を掴めるかもしれない」
「草薙さん、そいつを捕まえられないのか?」
「いや、捕捉するので精いっぱいだ。無理に捕まえようとすれば逃げられる。」
「そうか」
遊作としては、せっかく見つけた手掛かりを逃したくはない。だが、このままでは何もできないのも事実だ。
「何かきっかけがあれば……」
その時、モニターにホップアップメッセージが表示された。
「これは、LINK VRAINS内で大規模スキャンが開始されたぞ」
「何?」
LINK VRAINSは多数のファイアウォールによって守られている。
だが、大規模スキャン時には、サーバーの処理能力をそちらに回すせいで、ファイアウォールの強度が一時的に下がる。
「今そんなことをすれば、ハノイの的になるぞ」
「このタイミングでスキャンをかけるなんて、まさかSOLテクノロジー社もイグニスを狙っているのか?」
「っ!」
すると遊作は何かを思い立ったのか、モニターの前に座り、備え付けのキーボードを操作し始める。
「何をする気だ?」
「イグニスを捕まえる」
「はぁ?」
「正確には、逃げ道を作るんだ。大規模スキャンの間はそいつの居場所はどこにもなくなる。その時だけ現れる抜け穴を用意する。こいつの中に」
遊作は自身のデュエルディスクを指さす。
「無理だ。時間がなさすぎる」
「できるさ、俺とあんたなら」
「……分かった。やるだけやってみよう」
◆
同刻、LINK VRAINS
「まずいまずいまずい」
眼玉はあっちへこっちへ移動して、どうにかスキャンを潜り抜けている。しかし、電脳空間全体に及ぶスキャンから逃げられなくなるのは時間の問題だ。
その時、
パリィンッ!
空間が砕け、上空に黒いドラゴンと、それに乗る奇妙なマスクをつけた白服の男が現れた。
「ハノイの騎士まで、くそっ……ん?」
ふと、視線を向けると、青白い光がレールのように伸びていた。
「こいつを使えば」
一か八かそこに飛び込み、眼玉はそのまま空間を駆けた。
◆
「よし。成功だ」
遊作のデュエルディスクの中に、眼玉のような物体が映っていた。
「あれ? 俺もしかして捕まっちゃったの?」
「お前が連中の探してるAIだな」
「お、俺はただの通りすがりのAIなんです~」
涙目で訴える眼玉を一瞥し、モニターに映るLINK VRAINSの様子に目をやる。
そこではハノイの騎士が、ドラゴンに乗って暴れている。
「時間がない行くぞ」
「えぇ~! 俺あそこから逃げてきたんだけど」
遊作はデュエルディスクを装着する。
「デッキ、セット!イントゥザヴレインズ!」
◆
「どこだ!イグニス!」
ハノイの騎士が従えるドラゴンは、手当たり次第に光線を吐いて、LINK VRAINSを攻撃する。
「そこまでだ!」
そこにログインした一人の少年が立ちふさがった。
「誰だ貴様は!?」
「俺はプレイメーカー、ハノイの騎士、お前の探しているものはここにある!」
プレイメーカーこと遊作は、自分のデュエルディスクに閉じ込められたAIを見せつける。
「LINK VRAINSへの攻撃を今すぐやめろ! さもなくば、こいつを消す」
「ちょっ、俺は人質かよ!」
「このAIは、デュエルプログラムに変換した。こいつを手に入れたいなら、俺にデュエルで勝つしかない」
「……いいだろう。ハノイを敵に回したことを後悔させてやる」
ハノイの騎士は、サーフボードのようなガジェットを出現させ、電脳空間を流れるデータの波、データストリームに飛び乗る。
それを見て、プレイメーカーも同様にデータストリームに乗る。
「はぁ……お前、あいつに勝てるのか?」
もうデュエルが始めるのは止められないとみて、眼玉はプレイメーカーに尋ねる。
「捕まりたくないなら神にでも祈っていろ」
「AIは祈ったりしない。するのは、勝つための計算だけだ」
すると、デュエルディスクが光を放ち、収納されたカードが粒子になって消える。
「これは……」
かわりに、眼玉から何枚ものカードが出現し、デュエルディスクの中に納まる。
「お前のデッキをアップデートしてやった。こいつで頑張ってくれ」
「ふんっ、いいだろう」
プレイメーカーがボードで駆けて、ハノイの騎士に追いつく。
「いくぞスピードデュエル!」
ターン1 ハノイの騎士
「先攻はもらった。私はハック・ワームを特殊召喚。このカードは相手フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる。さらにもう1体」
フィールドに二体の機械の体の芋虫が出現する。
「続けて、このモンスター二体をリリースして、アドバンス召喚!こい、クラッキング・ドラゴン」
ハノイのモンスター二体を食らって現れたのは、先程LINK VRAINSを襲っていた黒いドラゴンだった。
「私はこれでターンエンド」
ターン2 プレイメーカー
「俺のターン」
プレイメーカーは自分の手札を確認する。
(サイバース族? 見たことない、いや……)
不意に、朧げな記憶がフラッシュバックする。
(俺は、こいつを知っている……?)
「どうした? 怖気づいたか?」
「……俺はサイバース・ウィザードを召喚」
プレイメーカーが召喚したのは、白いローブを着た魔法使いだった。
「クラッキング・ドラゴンの効果!相手モンスターが召喚・特殊召喚に成功した場合、そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで、そのレベル×200ダウン!」
クラッキング・ドラゴンの体のパーツが緑に光る。
その光を浴びたサイバース・マジシャンが、力を奪われて膝をつく。
サイバース・ウィザード:ATK1800→1000
「さらに下がった数値分、相手にダメージを与える」
プレイメーカー:LP4000→3200
クラッキング・ドラゴンが光線を吐く。
その一撃で、プレイメーカーのライフが削られた。
「くっ、俺はカードを2枚伏せる。そしてサイバース・ウィザードの効果発動!相手フィールドのモンスター1体を守備表示に変更!サイバース・アルゴリズム!」
サイバース・ウィザードが杖を掲げると、クラッキング・ドラゴンは力が抜けたように首を下に向ける。
「この効果適用後、俺のサイバース族モンスターは守備モンスターを攻撃した時、相手に貫通ダメージを与える。バトルだ!サイバース・ウィザードで、クラッキング・ドラゴンを攻撃!」
サイバース・ウィザードの杖から電撃が発射される。
「クラッキング・ドラゴンの効果!このカードは自身のレベル以下のモンスターとの戦闘では破壊されない」
「だがダメージは受けてもらう!」
ハノイの騎士:LP4000→3000
ターン3
「私のターン、私はスキルを発動する」
スキル。
デュエル中1度だけ使える、いわばデュエリスト自身の効果。
ドローの強化や、モンスターの攻撃力アップなど、様々なことが行える。スピードデュエル最大の特徴だ。
「スキル、トリプルドロー!デッキからカードを3枚ドローする」
「何っ!」
「あんなスキル知らないぞ!ハノイが勝手に作ったプログラムだな!」
想定外の出来事に驚く二人に対して、ハノイの騎士はニヤニヤと笑う。
「いくぞ。私はカードを1枚伏せて、魔法カード、アイアンコールを発動。墓地のレベル4以下の機械族モンスター1体を、効果を無効にして特殊召喚。私は墓地からハック・ワームを特殊召喚」
クラッキング・ドラゴンが雄叫びを上げると、それに呼応するようにして空間に穴が空き、中からハック・ワームが再び姿を現した。
「何をする気だ?」
「魔法カード、機械複製術を発動。デッキからハック・ワームを特殊召喚」
ハック・ワームの像が揺らぎ、二体に分裂する。
「私はハック・ワーム2体をリリースして、もう1体のクラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚!」
「2体目だと!?」
「バトルだ。クラッキング・ドラゴンで、サイバース・ウィザードを攻撃!」
クラッキング・ドラゴンが大口を開けて、エネルギーをチャージする。
「
スリーフェイト・バリア
通常罠
(1) 以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このターン、自分のモンスターは戦闘・効果で破壊されない。
●このターン、自分はダメージを受けない。
●このターン、自分のモンスター1体は1度だけ戦闘で破壊されず、その戦闘によって戦闘ダメージを受けるかわりに、その数値分、自分のライフを回復する。
(2)自分がダメージを受けた場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。
「俺はモンスターの戦闘破壊を防ぐ効果を選ぶ!」
サイバース・ウィザードを緑色の球体が包み、攻撃を防いだ。
「だがダメージは受けてもらう!」
プレイメーカー:LP3200→2000
「
「まだだ!もう1体のクラッキング・ドラゴンでアタック!」
サイバース・ウィザードはバリアに守られているが、プレイメーカーへはダメージが入る。
これで彼のライフは残り800となる。
ターン4
「俺のターン───」
「
プレイメーカーのフィールドに、電気を帯びた球体がいくつも出現し、電気の鎖でサイバース・ウィザードを拘束した。
「どうすんだ? プレイメーカー様?」
「……もう勝負はついた」
「だな、さっさとやっちまおうぜ」
「いくぞ、俺はスタック・リバイバーを通常召喚」
現れたのは四角い機械、だがそれもパルスボムの効果で守備表示にさせられる。
「血迷ったか。クラッキング・ドラゴンの効果を忘れたのか!」
二体のクラッキング・ドラゴンがスタック・リバイバーを狙って口を開ける。
「スタック・リバイバーは自身のレベル×200攻撃力がダウン、そしてその分相手にダメージを与える。スタック・リバイバーのレベルは2、2体なので合計800のダメージを受ける!これで終わりだ!」
クラッキング・ドラゴンが光線を吐き、スタック・リバイバーを攻撃。そのままプレイメーカーへダメージを与える。だが、
プレイメーカー:LP800→700
「バカな!なぜライフが残っている」
「クラッキング・ドラゴンの効果は攻撃力を下げた数値分ダメージを与える。だが、スタック・リバイバーの攻撃力は元々100、2体いようがダメージは変わらない」
「くっ……」
「俺は墓地のスリーフェイト・バリアの効果!ダメージを受けた時、このカードを除外することで、このターン、俺は効果ダメージを受けない。そして、自分フィールドにサイバース族モンスターがいる時、バックアップ・セクレタリーを特殊召喚できる!」
プレイメーカーのフィールドにモンスターが3体並ぶ。
「現れろ、未来を導くサーキット!」
プレイメーカーの前方に、アローヘッドが出現する。
「召喚条件は効果モンスター2体以上!俺はサイバース・ウィザード、バックアップ・セクレタリー、スタック・リバイバーの3体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」
アローヘッドに三方向の赤い矢印、リンクマーカーが浮かび上がる。
「リンク召喚!LINK3、デコード・トーカー!」
現れたのは黒い体に青い鎧を身に着けた電脳の騎士だ。
「リンクモンスターはレベルを持たず、そして守備力もない。よってクラッキング・ドラゴンの効果も、パルスボムの効果も受けない!」
「くっ!」
「そしてスタック・リバイバーの効果発動!リンク素材となった時、墓地のレベル4以下のサイバース族モンスターを特殊召喚!来い!サイバース・ウィザード!」
サイバース・ウィザードが、デコード・トーカーのリンク先に出現する。
「サイバース・ウィザードの効果!クラッキング・ドラゴンを守備表示にする!サイバース・アルゴリズム!」
杖を掲げると、空中に魔法陣が展開される。
そこから放たれた電撃が、クラッキング・ドラゴンの力を奪い、守備表示にする。
「バトルだ!デコード・トーカーで、守備表示のクラッキング・ドラゴンを攻撃!デコード・トーカーの効果!リンク先のモンスターの数×500、攻撃力がアップする!パワーインテグレーション!」
サイバース・ウィザード、クラッキング・ドラゴンよりエネルギーが吸収され、デコード・トーカーに力が集まる。
「攻撃力3300だと!?」
「終わりだ!デコード───」
デコード・トーカーが剣を振り上げる。
「───エンド!」
一刀両断。
クラッキング・ドラゴンを破壊し、ハノイの騎士のライフを0にした。
◆
デュエルが終了した後、プレイメーカーはさっきのハノイの騎士を追いつめた。
「さあ、知っていることを吐いてもらうぞ」
「お前たちに教えられるわけないだろう」
すると、ハノイの騎士の仮面が赤く光る。
「こいつ!自爆する気か!」
「プレイメーカー!くっ!」
すると、眼玉のAIはデュエルディスクから黒い何かを伸ばしてハノイの騎士を拘束する。
「何をするっ!?」
それは生き物のように口を大きく開けて、ハノイの騎士を飲み込んでしまった。
「……お前、何をした」
「お前を守ったんだよ。ああでもしなきゃ、現実のお前がダメージを負っていたからな。さあ、さっさとログアウトしようぜ」
「ああ」
◆
デンシティ中央広場、その巨大モニターに映し出されたプレイメーカーとハノイの騎士のデュエルを見て、人々は興奮に湧いていた。
「へぇ、俺以外にサイバースを使うやつがいたなんてな」
そんな中、周囲の人間とは違う反応を示す者がいた。
「しかもイグニスまで手に入れたか。これは、面白くなりそうだな」